プロジェクトの進め方は、「そんなの知っているよ」というベテランの方もいれば、初めてプロジェクトリーダーを任され、どのように進めていけばわからないといった方もたくさんいらっしゃいます。
基本的なプロジェクトの進め方は会社毎に決まりがあるにしても、必ずその通りに進めれば上手く行くということでもなく、プロジェクトの進め方については苦慮されているのではないでしょうか。
1人で完結する作業は、計画の立案から実行まで自分の管理だけで進みますが、いろいろな立場の複数の人を巻き込んでプロジェクトとして目標達成に向けて進めていくとなると、難易度が格段に上がります。
今回は、そんなプロジェクトを成功に導くために重要な進め方について、考えていきたいと思います。
プロジェクトの進め方は?
規模や予算によってプロジェクトの進め方はさまざまですが、ここでは代表的なプロジェクト管理の手法「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」についてご紹介します。
PMBOKでは、プロジェクトの開始から終了までを「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・管理」「終結」の5つのプロセスに分けて考えます。
そして、5つのプロセスを横軸に配置し、縦軸はプロジェクト管理に関する「10の知識エリア」を配置。プロセスと知識エリアが直交するポイントでは、そのプロセスにおいてやるべきこと・やらないことが定義付けられています。
PMBOKはあくまでもプロジェクト管理に関する知識のひとつです。具体的にプロジェクト管理に活用するためには、PMBOKの考え方を理解し実行することが重要です。
ここからは、PMBOKの体系を意識する上でポイントとなる5つプロセスについて、ご紹介します。
ちなみに、以下の記事でもPMBOKについて詳しく解説しているので、ぜひ本記事とあわせてチェックしてみてください。
立ち上げ
プロジェクトの進行がスムーズに進むかどうかは、計画立案時の成果次第です。具体性のある実現可能な計画でなければ、プロジェクトがどこに向かえばよいのか定まりません。プロジェクトの成功は、この立ち上げプロセスで決まるといってもよいでしょう。
プロジェクト立ち上時には、クライアントから受領した要件定義書などをもとに、仕様書や提案書を作成・提出します。このプロセスでポイントとなるのが「開発期間」「予算」「リソース」「リスク」です。それぞれポイントで妥当性のあるものか、確実な確保が可能かといった要素を精査します。
そして、プロジェクト立ち上げ時において、提案から受注前後が最も慎重に作業を進めるべきタイミングです。プロジェクトマネジメントやプロジェクトリーダーによってチェックを実施するだけでなく、第三者視点からのチェックも行いましょう。
PMO(Project Management Office)など第三者視点が入ることで、予算や開発期間の過不足の見落としなどを未然に防ぎます。
PMOについてはこちらの記事で解説しています。
PMOとは?その意味と具体的な業務について
計画
計画プロセスでは、プロジェクトをより具体的に進めるために「WBS(Work Breakdown Structure)」を作成します。
WBSをもとにしてタスクごとから全体像までスケジュールを算出したり、必要なリソースの見積もりをしたりして計画を遂行可能なレベルに仕上げます。
また、計画プロセスにおいてリソース配分の計画が最も重要な作業です。各タスクに割り当てるべきリソースの過不足を把握し、不足している場合は調達しましょう。
WBSについては以下の記事で詳しく解説しています。
WBSの基礎知識と書き方のコツを伝授
実行
実行プロセスで最も重要となるのが、プロジェクトメンバーのマネジメントです。大規模プロジェクトほど個々のメンバーの状況把握が難しくなる傾向にあり、生産性が低下していてもそのままプロジェクトが進行してしまうリスクがあります。
こうした状況を回避する方法のひとつが「プロジェクト管理ツール」です。実行プロセスにおけるプロジェクトメンバーの稼働状況を可視化して、把握するのに役立てられます。
また、情報共有やコミュニケーションを活発にさせる役割もあり、プロジェクト完遂への目的意識の共有へとつなげることが可能です。
プロジェクト管理ツールについては、後ほど詳しく解説します。
監視・管理
監視・管理は、プロジェクトの実行段階で発生する、さまざまな変更に対応するプロセスです。
プロジェクトが実行段階にあるにも関わらず、条件や仕様の変更があることは十分に想定できます。変更の必要性が生じたとしても、スピーディーな対応によって作業の遅延を最小限に抑えることが求められるでしょう。
しかし、そのためには日頃から進捗や工数をリアルタイムで管理・監視することが重要です。
また、変更内容についてプロジェクトメンバーで共有する仕組みも肝心で、変更管理表などを活用して情報共有が行なわれています。
終結
成果物をクライアントに引き渡し、プロジェクトが完了したプロセスです。
このプロセスでは、完了したプロジェクト内容を評価・分析します。
クライアントからプロジェクトメンバーまで、関係者からプロジェクトに対する評価を集計し、集約した評価を分析することで、保守・改修の際に利用したり、次のプロジェクトに活かしたりします。
プロジェクトの進め方ポイント
プロジェクトを進めるポイントは、PM・PLとメンバーでは異なります。
それぞれの立場や役割ごとのポイントを意識することで、プロジェクトを効率良く進めることが可能です。
PMとPLの違いについてはこちらの記事でもご紹介しています。
プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの役割
PMとPLのポイント
PMとPLが意識すべきポイントは、以下のようなものがあります。
ゴールや目的を明確にする
ゴールや目的を明確に設定することは、プロジェクトを進める上で最も重要なポイントです。
もし、ゴールや目的が曖昧なままプロジェクトを進めるようなことがあれば、「タスクの優先順位の判断ができない」「共通認識が無いゆえにメンバーのモチベーションが低下する」といったさまざまな問題が起こります。
従ってPMとPLは、プロジェクト関係者が共通認識としてプロジェクトのゴールと目的を理解している状況を構築しなければなりません。
ゴールと目的を明確にすることで、今やるべきことの判断が瞬時につき、最適な指示を出せるのです。
役割を明確にする
プロジェクトメンバーがそれぞれのやるべきことをしっかりと理解していることがプロジェクトを効率的に進める上でのポイントです。
各々のメンバーが自身の役割を理解していれば、自分の作業範囲に集中してタスクをこなすことができるようになります。
さらに、役割がはっきりとすることで、タスクの重複防止や複数のタスクの同時進行がしやくなるといった利点もあり、プロジェクト遂行の生産性向上が見込めます。
チームをまとめる
プロジェクトメンバーは常に一定とはいかず、プロジェクトによってアサインされるメンバー・人数は異なります。
個々のメンバーが高いスキルを持っていたとしても、チームワークが発揮できなければプロジェクトを成功へと進めることはできません。
したがって、PMとPLはコミュニケーションを円滑にする旗振り役となり、チームメンバーがそれぞれにパフォーマンスを発揮できる環境を整える責任があります。
信頼を得る
プロジェクトメンバーと信頼関係を構築することは、PMとPLにとって重要な役割です。
管理スキルだけあっても、プロジェクトを円滑に進めることは難しいでしょう。これは、プロジェクト成功には、プロジェクトメンバーの力が必要だからです。
PMとPLはプロジェクト管理とコミュニケーションの2つのスキルでメンバーと信頼関係を築き、スムーズにプロジェクトを成功へと導かなければなりません。
余裕を持った計画にする
納期までにプロジェクトを完遂するためには、リソースの配分に余裕を持たせたマネジメントが求められます。どれだけプロジェクト管理スキルが優れたPM・PLだとしても、プロジェクトの規模や内容によっては目標通りにプロジェクトを進めることが難しいこともあるでしょう。
突然の変更依頼などに対応しても期日までプロジェクトを完了させるために、あらかじめリソースを確保しておくなどの余裕を持った計画をしておくことがポイントです。
適切な進捗管理をする
適切な進捗管理は、スケジュールの進捗状況を把握し、明確な進捗率の算出を可能にします。そのために、プロジェクトメンバーの主観による進捗率ではなく、工数を基準に進捗率を算出する必要があるでしょう。
主観で決める場合と、工数で決める場合とでは実際の進捗率に誤差が生じます。期限間際になって進捗の遅れが発覚してしまわないように、徹底した進捗管理を行いましょう。
メンバーのポイント
次にメンバーが意識すべきポイントについてご紹介します。
当事者意識を持つ
割り振られた役割を期限内に完了させていれば、役割外の作業やプロジェクトの全体像について「自分に関係ない」と考える方もいるかもしれません。
確かに、これらはPMやPLが管理する領域ではあります。
しかし、プロジェクトメンバーである限りそれぞれが当事者意識を持ち、率先してプロジェクトを進めることが重要です。
進捗が遅れているメンバーをフォローするなど、プロジェクトの進捗をカバーすることで、プロジェクトの完遂はもちろんのこと、自身の成長にもつながるでしょう。
報告を正確にする
報告する情報の正確性は、プロジェクトの精度に直結します。
当たり前ではありますが、どのような報告だとしても正確な事実を結果から伝えるようにする必要があります。実際に起こった事実を正確に報告できなければ、PMとPLはプロジェクトにどのような影響を及ぼすのかを把握することができません。
また、報告内容が事実と異なるためにプロジェクトの進行方向が誤ってしまうことも想定できます。コミュニケーションが取りやすく、正確に報告を行うことができる環境を整えることはPMとPLの仕事といえますが、正確に報告をする義務があるのはメンバー自身であることに変わりはありません。
プロジェクトの進め方に関する失敗例
前章でご紹介したプロジェクトの進め方のポイントを理解していたとしても、さまざまな要因からプロジェクトが失敗してしまうことはあります。
ここからは、プロジェクトの進め方が原因で引き起こすプロジェクトの失敗の例をご紹介します。
プロジェクト管理の全体像やポイントについてはこちらでも解説しています。
プロジェクト管理とは?成功のポイントと効果的なツールの活用方法
進捗報告が正確性に欠ける
前章でもご説明した通り、進捗報告は正確性が重要であり、正確な情報があるからこそ適切なプロジェクト管理が実現します。
定期的な進捗報告が義務化されていなかったり、そもそも進捗報告の仕組みが構築されていなかったりするケースも見受けられます。プロジェクトの状況把握ができなければ、問題が発生するのを防止すること難しくなります。
さらに、納期遅延を引き起こすだけではなく、プロジェクトが赤字となる原因にもなるのです。
スケジュールが短すぎる、長すぎる
プロジェクトのスケジュールは計画時に不測の事態に備えて、完全なものを目指すよりもマイルストーンをポイントにすることが基本とされています。
しかし、体裁を整えるためにスケジュール作成そのものが目的となってしまい、要件に見合わない短すぎたり長すぎたりするスケジュールが計画される場合があります。
このようなずさんな計画では、スケジュール管理で重要なタスクの細分化も十分に行われていない場合が多く、そもそもプロジェクト進捗管理が機能しない点が大きなリスクになります。
チームの連携不足
プロジェクトチームやプロジェクトメンバーの連携が十分ではないと、タスク漏れが発生することがあります。メンバー間の連携が不足していると、タスクに空きに対して「自分の役割ではない」「誰かがやるべきタスク」とタスク漏れが放置されてしまう可能性があります。
タスク管理によって回避できる問題ではありますが、根本的な原因を解決するためには連携を密にする体制の構築が必要不可欠です。そのために、プロジェクトチーム内で情報共有をスムーズに行うことが重要で、口頭ではなくツールなどを活用したコミュニケーションが必要となります。
人によって品質にバラつきがある
プロジェクトメンバーそれぞれに能力差があるのは当然であるため、メンバーの能力をしっかり把握し、プロジェクトを進めなければ成否に影響を及ぼします。
プロジェクトに配置できるメンバーをベテランで揃えることは困難で、経験不足のメンバーをマネジメントしながらプロジェクトを進めていくケースの方が多いでしょう。そのため、スキル差によって品質差が生じるのですが、PMやPLは品質のバラつきを抑えるために徹底した要員管理を行わなければなりません。
ここまでご紹介した失敗例はあくまでも一例にすぎません。以下の記事でも、プロジェクト失敗例の詳細を解説していますので、併せてご覧ください。
プロジェクトで起こりうる失敗の多くは、情報共有を含めたプロジェクト管理そのものが適切に行われていないケースで発生します。
次章で解説する「プロジェクト管理ツール」は、プロジェクトのシステム化によってあらゆる失敗を未然に防ぎます。
「プロジェクト管理ツール」とは?
プロジェクト管理ツールとは、プロジェクトを進める上で必要な進捗管理や情報共有をサポートするさまざまな機能を搭載したツールです。プロジェクト管理ツールを導入することで、プロジェクト全体を俯瞰的に把握することが可能になり、プロジェクトを効率的に進行させることが可能になります。
プロジェクト管理ツールの機能
プロジェクト管理ツールに搭載される機能は製品ごとに異なりますが、搭載される機能は主に以下のとおりです。
機能名 |
詳細な機能 |
進捗管理機能 |
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情報共有機能 |
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コミュニケーション機能 |
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外部連携機能 |
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コスト管理機能 |
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管理者機能 |
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プロジェクト管理ツールのメリット
プロジェクト管理ツールは、プロジェクトの進捗状況を可視化します。プロジェクト管理ツールでプロジェクトを可視化するメリットは非常に大きく、全体を俯瞰的に把握することが可能になり、具体的な数値を軸にした管理を実現することができます。
そして、プロジェクト管理ツールで様々な情報を一元管理することで、必要な情報に短時間でアクセスすることが可能です。
さらに、プロジェクト管理ツールに集約される情報はリアルタイムで更新されるため、現在のプロジェクトの状況を正確に判断することができます。
プロジェクト管理ツールの選び方
プロジェクト管理ツールの導入時に難点となるのが、その製品数の多さです。そのため、どのツール・プランが自社のプロジェクトにマッチするのかを見極めるのは困難でしょう。
プロジェクト管理ツールの導入検討段階では、ツール導入によって解決したい課題を明確化することが重要です。多機能・高機能なプロジェクト管理ツールを導入したとしても、プロジェクトの課題を解決できないツールでは生産性を向上させるどころか、余計な混乱を現場にもたらすだけになってしまうでしょう。
高い導入効果を得るためには、自社ニーズに最もマッチした機能・コスト・サポート体制を備えたプロジェクト管理ツールを選択するようにしてください。
プロジェクト管理ツール導入のメリット、選び方、おすすめのツールについてはこちらの記事でも詳しくに解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
プロジェクトを適切に管理して滞りなく進行させることが、プロジェクトを成功へと導きます。
そのためには、今回ご紹介したプロジェクトの進め方におけるポイントや失敗例を踏まえた管理体制の構築が重要です。
最後にご紹介したプロジェクト管理ツールは、煩雑なプロジェクト管理を飛躍的効率化させ、スムーズなプロジェクト進行を可能にするツールです。
プロジェクトの進め方に課題を感じている、もっと効率的な管理体制へとシフトしたい、そのような場合にはプロジェクト管理ツールの導入を検討してみてください。
プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意しています。ぜひご活用ください。
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