プロジェクト成功の定義とは、顧客が求める要件を満たし、プロジェクトを予算内に収め、納期を守ることです。この“QCD(品質、コスト、予算)”の考え方は、時代が変わっても色褪せないプロジェクト成功の3要素と言っていいでしょう。
このQCDに加えて顧客の期待を上回るものを提供したり、付加価値を提供できれば、お客様にとっても企業にとっても成功以上の価値を生むことができます。
では、プロジェクトを成功させるためには何をすれば良いのでしょうか?
多くのプロジェクトマネージャーが常にこのことを考え、経験や知恵を絞ってプロジェクトを成功へ導こうとします。しかし、それでも失敗してしまうことはあるかもしれません。
ここではプロジェクトを成功へ導くために、企業やプロジェクト現場に取り入れてほしいプロジェクト管理手法と、プロジェクトを成功させるためのポイントについてご紹介します。
代表的なプロジェクト管理手法
まずは代表的なプロジェクト管理手法について紹介していきます。
プロジェクト管理手法には実に様々なものがありますが、すべてを取り入れればいいというわけではありません。プロジェクトの規模や種類、特徴に応じていずれか、あるいは複数を取り入れます。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)
PMBOKは、プロジェクト管理のノウハウや知識を初めて体系立ててまとめたものです。
ガイドブックも出版され、プロジェクト管理の教本として知られています。
PMBOKの基本は、プロジェクトの最終目標であるQCDをそれぞれ1つのエリア(計3エリア)として分け、その目標に至るまで計10の知識エリアによってプロジェクト管理を行います。
以下に、その10の知識エリアをまとめました。
- 統合管理
- スコープ管理
- スケジュール管理
- コスト管理
- 品質管理
- 組織管理
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- 調達管理
- ステークホルダー管理
ただし、PMBOKではプロジェクト管理の基本概念からさまざまなノウハウや知識がまとめられていますが、実践的ではありません。従って、PMBOKのノウハウや知識が実装されたシステムの導入が有効です。
WBS(Work Breakdown Structure)
「作業分解構成図」と言って、プロジェクト全体を細かな作業に分断して、構成図を作成します。作成した構成図からプロジェクト全体の概要を掴んだり、作業の流れを確認するために大切な管理手法です。
また、WBSによってプロジェクト全体を構成図化すれば、プロジェクトが始動する前に問題になるであろう作業を特定することができます。
WBSについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
WBSの基礎知識と書き方のコツを伝授
ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクト管理などで用いられる表のことをいいます。表の横軸に時間、縦軸に担当者名や業務内容を配置し、工程やタスクごとに作業開始日、作業完了日の情報を帯状グラフで記載します。
ガントチャートはプロジェクト全体の視覚的な表現に優れており、計画の全体像を効率的に見える化できます。
また、小さいタスクも可視化されるため漏れなく全体の進捗状況を確認でき、作業の逼迫などにも先手の対応が可能です。ガントチャートはエクセルなどで作成もできますが、効率的に作業を進めたいのであればプロジェクト管理ツールによる対応がおすすめでしょう。
ガントチャートは以下の記事で詳しく解説しています。
ガントとは?使うメリットとWBSとの違いについて
P2M(Project & Program Management)
プロジェクト管理に加えて、プログラム管理の思想を取り入れた管理手法です。プログラム管理とは複数のプロジェクトを統合して捉え、全体管理を行うための管理手法であり、PPMに近い概念を持ちます。
プロジェクトの監視・管理といった意味合いが強いPPMに対し、P2Mには個々のプロジェクトを制御するという違いがあります。
PERT(Program Evaluation and Review Technique)
PERTは、プロジェクトにおける工程管理の手法で、1950年代にアメリカ海軍で誕生しました。
弾道ミサイル開発のプロジェクトでPERTは考案され、現在では世界で用いられています。PERTの特徴は、プロジェクトの各工程の依存関係を明確にして所要時間を見積もり、重要な工程を見える化できる点です。
大きなプロジェクトになると全体像の把握に苦労しますが、PERTを活用すれば多くの問題を解決できます。PERTでプロジェクトの流れがはっきりすればプロジェクトメンバー間の情報共有はスムーズになり、各工程の優先順位も分かるためスケジュール把握も正確に行えます。
QFD
QFDは、Quality Function Deploymentの略で、日本の製造業で生まれた品質管理手法です。
「品質機能展開」とも呼ばれ、現在では世界でプロジェクト管理を行うために活用されています。QFDでは各工程の目標と課題を明確化してプロジェクトを進行します。
例えば、製造業であれば開発設計・生産技術・調達・製造・品質保証などすべての工程がQFDの管理対象です。高品質の製品開発を確実に行うことができ、プロジェクトの方向性のぶれをなくします。また、顧客ニーズに的確に応えられる点から、QFDは商品企画手法としての適用も進んでいます。
システム開発の手法
続いて、システム開発で用いられる代表的な2つの手法について解説します。
ウォーターフォール
まずは、ウォーターフォール型の開発から見ていきましょう。
特徴
ウォーターフォール型の開発は、システム開発の工程を上流から順に行う手法です。ウォーターフォールという名前が示す通り、滝の水が落下するように開発が進みます。
ウォーターフォール型の開発は、まずシステムに搭載する機能や細かな仕様をすべて決めることが始まりです。その後は、外部設計・内部設計・コーディングなど、それぞれの工程を確実に完了させながらリリースまで進めます。基本的に前の工程には戻らずに開発が進行する点も、ウォーターフォール型の開発の特徴です。
メリット
ウォーターフォール型は、綿密な計画を立案して開発を進めるため、品質を担保しやすいメリットがあります。
作りたいものや実装する機能などの大幅な変更が加えられることは少ないため、顧客にも安心感を与えられるでしょう。
また、スケジュール管理の面でもウォーターフォール型は優れます。開発のスタート段階で工数も判明するため、人材確保も計画的に行えます。
デメリット
ウォーターフォール型のデメリットは、まず仕様や計画の変更が難しいことです。計画を細部まで決めて開発を進めるため、柔軟な対応は不得手です。顧客の要望の反映や想定外の問題発生など、計画されていない事柄への対応へは大きなコストと労力が発生します。
また、企画や要件定義をじっくりと行ってから開発をスタートするため、開発期間が長期化しやすいことも課題です。
アジャイル
続いては、アジャイル型の開発について解説します。
特徴
アジャイル型の開発は、大きな単位でシステムを区切らずに小単位で実装とテストを繰り返す手法です。
従来の開発手法に比べ、開発期間が短縮される傾向にあるため、素早いという意味のアジャイルと呼ばれています。開発途中に仕様や設計の変更を想定しているため、アジャイル型の開発ではソフトウェアの計画段階でも厳密な仕様を決めません。
また、開発の単位はイテレーションと呼ばれ、1週間~2週間ごとに機能のリリースが繰り返されます。
メリット
アジャイル型の開発は、不具合が発覚した際に戻る工数が少なくて済みます。
ウォーターフォール型の開発だと、それぞれの工程で決定した計画を重視していて後戻りへの配慮は少ないため、トラブルが発生すると工数が大きく時間やコストも膨みます。
一方、アジャイル型の開発は小さな単位で動いているので、トラブルにも柔軟に対応可能です。また、計画段階で仕様を細部まで決めないため、お客様のニーズを反映しやすいメリットもあります。
デメリット
アジャイル型の開発では詳細な計画を立案しないため、スケジュール管理が複雑です。
チームそれぞれで小単位の開発を繰り返すため、全体像が掴めず、納期が目前に迫っていたというケースも少なくありません。そして、開発の方向性もはっきりしない場合があります。
より良い製品にしようと改善を繰り返すことは良い取り組みですが、当初の計画から大きく脱線するリスクもあります。
プロジェクトを成功へ導く8つの管理ポイント
それでは、プロジェクトを成功へと導く8つの管理ポイントをまとめます。
プロジェクトの目的を改めて考える
まずは、なぜプロジェクトを進めているのか、「目的」を改めて考えてみましょう。
目的が不明確であったり、チームの認識にずれがあったりすると、プロジェクトはスムーズに進みません。何のためのプロジェクトでどこに向かって進んでいるのかチームで明確にしましょう。
特に、伝えなくても分かっているだろうと想定での行動は危険です。同じチームに所属していても、人はそれぞれ考え方が異なります。全員で協力して目指しているゴールはどこか、チームで確実に共有しましょう。
チームメンバーの意識を改める
チームメンバーのモチベーションを高める工夫も、大切です。
プロジェクトを成功させるには、メンバー全員の当事者意識が欠かせません。当事者意識のあるメンバーは、プロジェクトをより良くするために主体的に考え行動します。
そして、問題が発生しても他責にせずに解決策を模索するでしょう。チームメンバーに当事者意識を持たせる方法としては、それぞれに目標を設定し期待している役割を伝えましょう。
また、定期的にコミュニケーションをとる機会を設け、取り組みに対するフィードバックをすることも大切です。
十分なリソースの確保
プロジェクトの進行は、リソースの確保が欠かせません。
プロジェクトにおけるリソースとは人・物・お金を指し、リソースが不足しているとプロジェクトにも影響が出ます。状況によってはプロジェクトがストップしてしまうケースもあるでしょう。
リソースの問題を回避するためには、プロジェクトの全体像を正確に把握する必要があります。必要とされている各工程のリソースを、漏れや無駄なく明確にリスト化しましょう。
そして、人・物・お金をどのように分配して使用するかも考えなくてはなりません。チームメンバーの意見もよくヒアリングして、調整を行ってください。
コミュニケーションは徹底する
チーム内で、コミュニケーションを十分に行える環境を構築しましょう。
コミュニケーション不足は、チーム内の信頼関係やプロジェクトの進行にマイナスに働きます。特に、プロジェクトの規模が大きくなると関係者の数も増えるため、コミュニケーション不足が発生しやすくなるため、注意が必要です。
工程はできるだけ細分化する
プロジェクトの進行に必要な工程は、できるだけ細分化してスケジュールに落とし込むようにしましょう。
工程を細分化しておくと、業務量やプロセスを可視化できます。大きすぎる工程は全体像が把握しづらく、タスク完了までのプロセスも見えてきません。
また、場合によっては時間をかけても終わらない工程に、チームのモチベーションを低下させる恐れもあります。細分化しておけば効率的に仕事を進められ、状況に応じて社内分業も可能です。
リスクと対策について考える
プロジェクトの進行では、問題が発生せずにすべてが順調に進むことは稀です。プロジェクトにはさまざまなリスクがあり、ある程度対策を練っておく必要があります。
まずは、考えられるリスクを洗い出しましょう。人材の欠員やエラーの発生など、プロジェクトに関わるリスクを一覧のリストにします。
次に、把握したリスクを評価しましょう。リスクの発生確率と影響度で評価すると優先順位が分かります。そして、発生確率が高く影響の大きいリスクから順に対応策を考えます。
情報共有を徹底する
情報共有の徹底も心がけましょう。
適切な情報共有が行われないプロジェクトでは、業務が見える化されません。プロジェクトの状況も正確に把握できず、問題が発生しても気付くのに遅れてしまいます。
また、仕事の属人化も懸念されるため、プロジェクトメンバーが必要としている情報にすぐにアクセスできる環境整備が大切です。プロジェクトでスムーズな情報共有を実現する方法としては、チャットツールや後述するプロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。情報共有をいつでも行える環境が整えば、コミュニケーションもより円滑になるでしょう。
プロジェクト管理ツールを有効活用する
プロジェクト管理ツールは、工程やスケジュールを可視化して、プロジェクトに関わる情報を一元管理できるツールです。
プロジェクト管理の方法はさまざまですが、エクセルなどの汎用ツールを活用しているケースも多いでしょう。小規模なプロジェクトであれば、エクセルで管理できる可能性もありますが、人為的なミスの発生や機能不足など問題も起こるでしょう。
プロジェクト管理ツールを活用すれば、効率的に作業を進められ、エクセルでの管理で懸念されるような課題をすべて解決可能できます。
情報の共有も容易になり、快適にプロジェクト管理を行えるでしょう。
次章では、おすすめのプロジェクト管理ツールをご紹介していきます。
おすすめのプロジェクト管理ツール OBPM Neo
プロジェクト管理ツールの導入は、大切なプロジェクトを成功へと導くために欠かせません。責任者として適切にプロジェクトを管理し効率的に業務を遂行したいのであれば、ぜひOBPM Neoをご利用ください。
OBPM Neoとは?
OBPM Neoは、統合型プロジェクト管理ツールで、プロジェクトマネジメントの世界標準基準として広く浸透しているPMBOKに準拠して開発されました。
機能面に優れ、品質・コスト・スケジュール・要員管理・リスク管理・コミュニケーション・調達管理など、プロジェクト管理で必要なプロセスを網羅的に統合して管理できます。
すべてのプロジェクトがクラウドデータベースで一元管理されるので、見える化によって業務効率が飛躍的にアップします。OBPM Neoが導入されれば、エクセルなどによるアナログなプロジェクト管理はもう必要ありません。
OBPM Neoについてはこちらで詳しくご紹介しております。
OBPM Neo
まとめ
プロジェクト管理には数多くの手法が用いられており、どの方法にも先人のノウハウや工夫が詰まっています。
例えば、PMBOKは10の知識エリアによってプロジェクト管理を行う特徴があり、プロジェクト管理ツールにも応用されています。そして、システム開発の手法としてはウォーターフォール型とアジャイル型が代表的で、開発したいシステムによって使い分けなければなりません。
また、プロジェクトを成功させるには、メンバーの意識改革や工程の細分化など多くのポイントがりますが、特に強調したいのはプロジェクト管理ツールの活用です。
弊社では、プロジェクト管理ツールに関連したお役立ち資料を無料で公開していますので、ぜひご活用ください。
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