PMBOK(Project Management Body of Knowledge)など、プロジェクト管理に関する知識・ノウハウを吸収し、いざプロジェクト管理に挑もうという方は、一度初心に返ってみましょう。
“そもそもプロジェクト管理の目的とは何か”
実は、プロジェクト管理手法や知識、ノウハウなどを身に付けたプロジェクトリーダーでも、基本の「キ」どころか、基本以前に知っていなければならないことを、知らずにプロジェクト管理を行っていることが少なくありません。
今一度「プロジェクト管理の目的を、しっかりと理解しているのか」と、自分自身とチームメンバーに問いかけてみてください。もしもすぐに答えが出てこないようなら危険信号です。これから開始する、あるいは現在進行しているプロジェクトが失敗に終わる可能性があります。
失敗まではいかずとも、十分な成果を得ることなく終わってしまうでしょう。それほどに、プロジェクト管理の目的を理解しているか理解していないかが、重要になってきます。
今回はプロジェクト管理の目的を解説したいと思います。実はプロジェクト管理の目的をはっきりと理解していない、本来の目的を忘れてしまったなど、できる限り多くの方がプロジェクト管理本来の目的や要素を理解できるような内容になっています。
プロジェクト管理の目的
プロジェクト管理本来の目的が理解されていない原因は“プロジェクト管理”という言葉自体にもあります。どういうことかというと、管理という言葉に対して、単に決められた予算や納期を守り仕様通りのシステムや製品を作ること、と捉えている方が少なくないのです。
予算、納期、仕様(品質)=QCDを守ることはプロジェクト管理を行う上で当たり前にことであり、基本の「キ」です。QCDを守ることはプロジェクト管理の重要なことです。しかし、それ自体をプロジェクト管理の目的と理解してしまっているのです。
結果何が起きるのか顧客の期待を越えるどころか予想通りのシステムや製品を提示し、可もなく不可もなく、成功なのか失敗なのかもわからないままプロジェクトを完遂してしまいます。これは企業と顧客、双方にとってメリットのないプロジェクトです。QCDを第一の目的とするのではなく、そのプロジェクトで達成するべきビジネスが必ずあるはずです。ビジネスから見たプロジェクトの目的も意識するべきではないでしょうか。
顧客が求める“品質”は変化している
1990年代初頭の情報システムや製造の現場では、顧客が要望した仕様通りの製品を、できるだけ短納期、低コスト、高品質で提供することがプロジェクト管理の目的でした。顧客もそれ以上を求めることがなかったので、QCD管理だけに集中することができたのです。
しかし、1990年代中頃には顧客が求める品質の変化が始まりました。これまでQCDのみを追求した製品では満足できなくなり、顧客ごとのオリジナルや、必要とするものを必要なタイミングで提供しなければ、評価されなくなってしまったのです。
「納期も品質のひとつだ!」と言う人もいます。
しかしながら、高品質なものを低コストで、そして短納期で作れる時代は徐々に終わりを迎えます。
そこでプロジェクト管理に必要な要素も大きく変化しました。QCD管理だけで良かったものが、経営視点での管理が不可欠になってきたのです。
色々と説明が長くなりましたが、プロジェクト管理とはQCD管理を行うことはもちろん、そこに至るまでのプロセスも総合管理して、顧客が求めるときに求めるものを、適切なタイミングで届けることが本来の(または現代の)目的となります。
プロジェクト管理を行うもう一つの目的
ソフトウェア開発や製品開発といった現場では、年々顧客からの要件が厳しくなっている傾向にあります。高品質、低コスト、短納期はもちろんのこと、付加価値をつけろとまで要望してくる場合も少なくありません。
こうした顧客の要望に対し、自社の意見を貫きそれでも案件を獲得できるような、競争力のある企業は多くありません。皆が多かれ少なかれ、何かしら妥協して、顧客の要望をかなえようと必死になっています。プロジェクトが「毎度赤字ギリギリ」という企業も少なくないでしょう。
厳しい要件の中でも利益を最大限に高めていくためには、プロジェクト管理を徹底し、全体にかかる費用を抑えることが重要になります。簡単に言えば、一つのソフトウェア・製品開発にかかるコストを可能な限り抑えて、利益率を上げるという方法です。
しかし、品質を落とすことはできないので、開発工程にかかる作業などの原価を削減するのは得策ではありません。実は、広い視野を持ってプロジェクト全体を見回せば、意外と多くの“ムダ”が生じていることに気づきます。
例えば製品設計の承認フロー。承認者が多くフローを回すことだけで1週間もかかっていると、その分プロジェクトが遅延しますし、人件費も多くかかっています。これを1日に短縮するだけでも、おそらく相当なコスト削減になります。
こうした無駄をいち早く発見して、解決することで利益率を上げるのも、プロジェクト管理を行うもう一つの目的なのです。
プロジェクト管理で管理する項目
冒頭で登場したPMBOKとは、30年前にアメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が、プロジェクト管理に関する手法やノウハウを体系立ててまとめたものです。現在では、このPMBOKがプロジェクト管理の“バイブル”として、世界中に浸透しています。
PMBOKは、プロジェクト管理に関する知識を10の知識エリアに分類しています。プロジェクトの最終目標となるQ(品質)C(コスト)D(納期)の3エリアに加え、「調達管理」、「リスク管理」、「スコープ管理」、「要員管理」、「コミュニケーション管理」、「ステークホルダー管理」という6エリアを加え、さらに全体を管理する「統合管理」というという計10の知識エリアがあります。
統合管理
プロジェクトの開始と終了、コントロールと指揮など細かく分類れたプロジェクト管理の知識エリアを統合管理し、プロジェクト全体の推進を目指します。
コスト管理
原価管理、予算管理などに加えて予実管理など、プロジェクトにかかるコスト全体を管理します。
調達管理
製造業なら仕入先、ソフトウェア開発なら委託先などを管理して、サプライヤーという外部ステークホルダーが原因でのプロジェクト遅延を防ぎます。
リスク管理
プロジェクトが初期計画通りに運ぶことは非常に稀です。リスク管理は発生し得る問題を予測し、それに備えて対処することでリスク回避を行います。
スコープ管理
「何を行うか」というプロジェクトスコープ、「何を作るか」という成果物スコープの2種類に分けてプロジェクトの指針を明確にします。
要員管理
プロジェクトメンバーごとの負荷状況を把握してタスクを振り分けたり、適材適所を実現するための管理です。
コミュニケーション管理
プロジェクトメンバー内のコミュニケーションを管理することで、円滑なプロジェクト推進を目指します。
スケジュール管理
ガントチャートなどを用いて計画と実績を正確に管理します。また、計画変更に対し柔軟に対応するための管理も大切です。
品質管理
単に品質を管理するだけでなく、品質テストに関するタスクまで管理し、品質管理スケジュールを効率よくします。
ステークホルダー管理
顧客や仕入れ先といった外部はもちろん、プロジェクトメンバーや関係者各位も内部のステークホルダーとして管理し、全体として円滑なプロジェクト推進を目指します。
まとめ
プロジェクト管理本来の目的を忘れていた。あるいは、本来の目的を知らなかったという方は、今回紹介した内容を、ぜひ頭に留めておいてほしいと思います。また、昨今ではプロジェクト管理を中心に従事する方だけでなく、エンジニア個々に関してもプロジェクト管理の概念を取り入れることが大切だとされています。そうした方も、今後プロジェクト管理に深い興味を抱いていただければ幸いです。
プロジェクト管理全般について詳しくまとめた資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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