プロジェクトマネジメント講座

【第6章】大型プロジェクトにはCCPMを取り入れよう:CCPM とは

  • 2017.04.27
  • 株式会社システムインテグレータ
【第6章】大型プロジェクトにはCCPMを取り入れよう:CCPM とは

CCPMとは

CCPM(Critical Chain Project Management:クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)は、プロジェクトの各タスクの予算やスケジュールをぎりぎりに抑えて、その分、プロジェクト・バッファという余裕を設けておく管理手法です。

例えばホームパーティにお客様を招いて10人分のカツサンドを作るとしましょう。豚肉を切り、塩、胡椒をして小麦粉、卵、パン粉を付けるのに20分、キャベツをみじん切りしてマヨネーズをあえるのに10分、パンにバターとマスタードを塗るのに5分、サラダ油を熱してカツを揚げるのに20分、パンにキャベツとカツを挟んで3等分に切るのに5分と見積ると合計60分かかります。

通常、これらの工程はある程度余裕を含んでいます。各工程で見ている余裕を20%とした場合、それらを取っ払ってぎりぎりで計画すると、豚肉の準備16分、キャベツ用意8分、パン4分、カツ揚げ16分、仕上げ4分の合計48分となります。

ccpm06_01.jpg図1:CCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)の考え方

縮めた12分間をプロジェクト・バッファとして別途とっておき、各工程はぎりぎりにした計画で作業を進めます。結果、キャベツのみじん切りに2分多くかかり、カツを揚げるのに3分多くかかったとしましょう。それぞれの2分、3分をプロジェクト・バッファから補充するとプロジェクト・バッファの残は12分-(2+3)分=7分。当初の見積の60分よりも7分早まり53分でおいしいカツサンドが出来上がることになります。

なぜ、このような管理をするのでしょうか。それは人は目の前の目標に向かって進む習性があるので、余裕を含んだ計画値を与えたらその計画通りに作業をしてしまいがちだからです(パーキンソンの法則)。また、夏休みの宿題と同じく期限ぎりぎりになるまで緩んでしまう習性や、早く終わった場合にそれを報告しないという狡さもあります。

タスクに含まれる安全余裕を取り除いた上でタスクをつなげる(チェーンする)。その代わりとして工程の最後にバッファを設けます。そうすると各タスクはできるだけバッファを使わずに進もうと努力してくれるので、たとえオーバーしてバッファを取り崩すタスクがあったとしても全体的には予定期間内に作業を終えることができるのです。

CCPMは経営にも効果が大きい

実は当社(システムインテグレータ)は2011年度から経営にもCCPMを導入し、2年連続過去最高利益の更新という大きな成果を上げています。通常、会社の予算(売上・利益)は各部門の予算の積上げ(逆に会社の予算を各部門に割り振りということでも同じ)となります。

① Σ各部の予算=全社の予算
この式だと、すべての部門が予算達成して初めて会社の予算が達成されることになります。逆に言えば、どこかの部門がコケてしまうと会社の予算も未達になってしまうリスクがあります。

そこで全社予算を決めた後で、各部の予算を5%積上げることによりバッファを用意します。どこかの部門がコケてもバッファから取り崩してカバーできるので会社の予算が達成されやすいのです。
② Σ各部の予算=会社の予算+バッファ(各部の予算×5%)

一見すると各部が予算に加えて努力目標を持つ方式に似ていますが、各部ごとに努力目標(バッファ)を持つのではなく、全体でバッファを持つことに意味があります。自分のバッファだと安心して使うことができますが、全体の共有バッファだと使うことに抵抗感があるからです。

このように会社経営にCCPMを取り入れた結果、若干のバッファの取り崩しはありましたがバッファが最後まで残存して会社の予算を上回る決算を迎えることができました。この効果が期待以上だったので、以後、当社は大型プロジェクトに対してCCPMを適用しているのです。

CCPMの具体的なやり方

CCPM的管理手法を導入する場合、どのように計画を立てて管理していくかを考えてみましょう。

ぎりぎりの計画(ABP: Aggressive but Possible)

「ぎりぎりの計画」とはどういうものでしょう。安全余裕を取り除くと言っても、人によりそれでも余裕を残すタイプとやり過ぎてしまうタイプがいます。一般的には確率50%、つまりその計画で収まる場合と収まらない場合が半々になるくらいでと言われていますが、そんな数値を持ち出したところで“ぎりぎり”の精度が高まるわけでもありません。

精度の高い「ぎりぎりの計画」を立てるコツはWBSをきちんと分解することです。分解された個々のタスクを“順調に行ったとして”と仮定して計画を立てることにより、全体の予定が“ぎりぎり”となるのです。


正規の計画(HP: Highly Possible)

いずれにしても「ぎりぎりの計画(内部目標)」と「正規の計画(外部公表値)」の両方を見積らなければ、どれくらいバッファにまわせるかが決定できません。計画を立てる順番としては、「ぎりぎりの計画」を立てた後に、余裕を加えて正規の計画を立てたいところですが、実際には「正規の計画」を立てた後で、余裕を取り除いた「ぎりぎりの計画(内部目標)」を立て、その差分をバッファとしてスタートする方が現実的です。 


バッファ捻出の工夫

バッファの捻出を、次の手順で行うとしましょう。
① WBSを展開する
② 個々のタスクを見積り、合計を正規の計画とする。
③ 個々のタスクの余裕分を取り除き、合計をぎりぎりの計画とする。
④ 正規の計画―ぎりぎりの計画=バッファとして準備する
この時に、難しいのは③の作業です。どの程度を余裕とみなすかは人に依存しますので、人に依ってはほとんどバッファが出てこないケースがあります。そのため、当社では正規の計画から一律20%を余裕としてスコーンとバッファにまわすという荒っぽいやり方を採っています。


管理上の注意点

CCPMでプロジェクト管理する場合、個々のタスクの進捗と同時にバッファの残を管理します。バッファの数値を残量に応じて緑⇒黄⇒赤と色を変えるのもよくやる方法です。この場合単純に残量に応じて色を変える方法と進捗と残量の関係に応じて色を変える方法があります。 ccpm06_02.jpg

例えば、表1のように4つのタスクからなるプロジェクトで、各タスクの計画値の合計が3000、バッファを600取っていたとしましょう(つまり実行予算は3600)。タスクAでバッファを100使い、タスクBで50返し、タスクCで250使ったとするとタスクC完了時点でバッファ残量は300となります。もう少し頑張れるならタスク単位でバッファ使用量を把握するだけでなく、さらにタスク単位・月単位でバッファ使用量を管理します。

ccpm06_03.jpg表1:タスク単位でバッファ使用量を管理

CCPMにはコストとスケジュールの2つの要素があります。コストのバッファ管理は表1のように簡単ですが、スケジュールのバッファは、クリティカルパスを考慮しなければなりません。

クリティカルパス上のタスクが遅れた場合は、バッファを取り崩さなければなりませんが、そうでないタスクが遅れたのであれば、トータルスケジュールに影響がないのでバッファはそのままです。つまり、スケジュールのCCPMを考える場合は、どれがクリティカルパスなのかをきちんと認識しておく必要があるのですCCPMCCCritical Chainである所以です)。

CCPMの課題

CCPMの課題はいかにぎりぎりの計画を見積もれるかということです。各タスクの安全余裕を取り除いてそれを集計するにしても、正規見積の20%をスコーンとカットするにしても、実行部隊からすると余裕のない状態で作業をさせられる感がつきまといますので、巧妙に見えない形で安全余裕を持とうとしたりしがちです。

肝心なのはバッファを使って赤くなっても問題じゃないということを全員が共有することです。バッファがマイナスになって初めて予算オーバーとなるのですから、バッファを使ったからと言って責めない雰囲気作りを心がけるようにしましょう。

CCPMとOBPM

当社は1000万円以上のプロジェクトに対してCCPMを行っています。まず、各タスクの原価を普通に見積もって実行予算(画面1上部の51,239,000円)を承認し、実行時には各タスクの原価を2割カットしたぎりぎりの計画を設定します。

各タスクのぎりぎりの計画を月別に集計し、その合計(画面右端の原価と販間費の合計)がぎりぎりの計画となります。このぎりぎりの計画に対して、毎月の実際原価が置き換えられ(画面の例では6月までが実績)、過去の実際原価+今後の計画の合計(画面右端の原価30,418円と販間費10,958円)と実行予算との差がバッファの残りということになります。

バッファの減り具合はEVM を見ると一目瞭然です。画面2のEVMに切り替えると実行予算(PV:赤)と実コスト(AC:緑)の計画と実績がグラフ表示されます。このPV-ACがプロジェクト・バッファの残ということになります。

cap01.gif

画面1:実行予算(外部公開値)とぎりぎりの計画(内部目標)を月次で管理

cap02.gif

画面2:EVMグラフでバッファの残りを確認

(株式会社システムインテグレータ代表取締役社長梅田弘之)

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