QC、QA、TQC、TQM、ISO9000_品質管理の進化
品質管理は、もともとは製造業における製品の品質強化を中心に発達してきました。その過程でQCやQA、TQC、TQM、ISO9000などのキーワードが次々と出現してきたので、ここで少し整理しておきましょう。
古くは1950年頃からQC(Quality Conroles:品質管理)に統計的手法が適用されるようになりました。50年代後半にはTQC(Total Quality Controles:全社的品質管理)が始まり、特定の部門だけでなく全社的に(さまざまな部門が関わって)品質向上を実現しようという考え方が広がりました。1987年にはISO9000(国際標準化機構の品質マネジメントシステムに関する規格)が制定され、日本でも1991年にJIS化されています。
QCとは
QCとは、Quality Controlsの略で「品質管理」と訳されます。一般に製品やサービスの品質目標を設定し、それを実現するための”社内での取り組み”を指す言葉です。日本では1970年頃から製造業を中心に「QCサークル」という小グループでの品質改善の取り組みが活発に行われ、このボトムアップの活動が今日の世界トップクラスの品質を築く源となっています。このようにQCは、品質向上に向けたあくなき改善活動であり、地道な取り組みでもあります。
QAとは
QAとは、Quality Asuuranceの略で「品質保証」と訳されます。一般にお客様に対して製品の性能や機能を保証することを指す言葉です。QAというと保証するための”検査”のイメージが強いですが、保証するためには、どの程度の品質なら”合格”かという基準も持たなければなりません。そのためQAには合格基準を定義したり、どのような検査で合否判定するかというプロセスを決めることも含まれます。
TQMとは
TQCは、1996年にTQM(Total Quality Management:統合的品質管理)に呼称変更されました。TQCはボトムアップ的活動の要素が強かったのですが、TQMはISO9000のトップダウン的要素を取り込んでおり、その両方の良さを生かしながらさまざまな企業でTQM活動が行われています。
QCとQAの違い
QCを中心に品質管理は進化してきたのですが、ISO9000の制定の頃から、QA(Quality Asuurance:品質保証)という言葉が普及してきました。QCが品質を向上させるための内部的なプロセス中心の活動だったのに対し、QAは「顧客の求めている品質をきちんと保証する」というもので、ライザップのCMのように”結果にコミットする”ものです。もちろん、品質をよくするためにはQCやTQMは欠かせないのですが、最後にQAを行うことで不良品がそのまま流れ出るリスクを減らそうというのです。
QAはQCと違って、品質が高いほどいいという観点ではなく、あくまでも合格ラインに達しているかを判定するものです。また、QCがPDCAをまわす継続的な改善の取り組みなのに対して、QAは対象の製品・サービスの合否を客観的に判定することに重きを置いています。とは言っても、もちろん、より効率的な判定を行うための仕組み作りといった継続的な取り組みは含まれます。また、QCが当事者である開発(製造)部門を中心とした自己改善活動なのに対し、QAは第三者が合格基準を満たしているかを検査して判定する取り組みとなります。
図1:QAは、顧客に向けた第三者の検査&保証
ISO9000とは
1987年に制定されたISO9000は、実際には複数の規格から構成されているのでISO9000シリーズとも呼ばれています。最初に制定されてから規格の統合などもあり、現在は次の3つで構成されています。
規格 |
内容 |
ISO9000 |
品質マネジメントシステムー基礎と用語 |
ISO9001 |
品質マネジメントシステムー要求事項 |
ISO9004 |
組織の持続的成功のための管理方法ー品質マネジメントアプローチ |
・ISO9000ー基礎と用語
>ISO9000という世界的な品質規格は幅広く知られていますが、実は、それはISO9000シリーズ全体のことです。ISO9000という規格単体での役割は、品質管理に関わる基礎と用語のみをまとめたものです。内容は、「品質とは」「品質マネジメントシステムとは」というような概念を定義した、いかにも規格らしい堅苦しいもので、まあ、読む必要はないでしょう。
・ISO9001ー要求事項
この規格は品質管理を強化するためのプロセスとしてPDCAサイクルを回すアプローチを採用しており、「組織」「リーダーシップ」「計画」「支援」「運用」「パフォーマンス評価」「改善」などについて解説しています。
最初にTQMの構想に基づいて品質管理を行える「組織」を整備し、トップダウンで品質管理を強化する「リーダーシップ」を持った上で、品質マネジメントシステムの「計画」を策定するという部分がPlanに相当します。
実際に品質管理を行う際に、組織はどんな「支援」するか、どのように「運用」を管理するかの部分がDo、実際の品質を監視、分析、評価する「パフォーマンス評価」がCheck、そして評価結果をもとにどのように「改善」するかというActionを解説しています。
・ISO9004ー持続的成功のための管理方法
>ISO9004も、ISO9001と同じようにPDCAサイクルをベースに解説しています。ISO9001では主として1サイクルにおける管理要素を中心に解説しているのに対し、ISO9004は、サイクルをぐるぐる回して持続的成功のために継続的改善を図ってゆく点を意識しています。
ISO9004では、「組織の持続的成功のための運営管理」「戦略および方針」「資源の運用管理」「プロセスの運営管理」「監視」「改善、革新及び学習」という一連のPDCAサイクルについて解説しています。
最初に持続的成功のための施策を掲げ、それを実現するための組織環境を整えて、持続的成功を達成するための戦略や方針を立てます。目標達成に必要な内部資源、外部資源を特定し、人的資源のアップのために人材育成計画も立てます。プロセスの運営管理では、継続的成功を持続するために必要なプロセスを計画し、その実行状況を監視し、改善するといった内容でPDCAが完結します。
図2:ISO9001とISO9004のPDCAサイクル
図2にISO9001とISO9004それぞれのPDCAサイクルを示しています。上がISO9001で下がISO9004です。対比してみるとわかるようにISO9004はISO9001で書ききれていない点を追補するような内容であり、ISO9001とは別の規格にするのではなくISO9001を改訂すれば済んだように思えます。
PMBOKがそのまま現場では使えないのと同様、ISO9000シリーズも堅苦しい表現でそのままでは使えません。ただし、書かれている項目自体は品質管理に関わりの深いものなので、各項目を”テーマ”として取り上げて、自社の品質管理強化に当てはめてみて深掘りするといいでしょう。
OBPMとQC、QA
OBPMは、QCの考えを取り入れて、プロジェクトの途中で品質チェックを行う仕組みを用意しています。品質チェック内容はドメインという標準化機能の「品質基準」で標準化されており、この品質基準をマイルストーンに連携することで品質チェックの実施管理も行えます。
品質基準に合格しているかどうかのチェックは、「出荷判定」というマイルストーンで行うのがQAです。出荷判定のレビューは、プロジェクトメンバーだけでなく、品質管理担当やPMOなど第三者も参加することを推奨しており、判定結果やコメントなどもOBPM上の記録されますので、後になってから内容を確認するのも容易です。
さらにバグトラッキングシステム(BTS)も装備しています。BTSでバグ実績を管理するだけでなく、テスト計画やその結果予想されるバグ曲線を描くこともできます。通常はBTSに登録されたバグ情報をもとにバグ曲線を描くだけですが、OBPMでは計画と実績を対比する形でバグ曲線を管理することができます。また、プロジェクト内だけでなく、組織内のプロジェクト全体のバグ情報を一元管理できるので、品質データを分析して組織的な”カイゼン”に役立てることもできます。
この記事の著者
株式会社システムインテグレータ 代表取締役会長
梅田 弘之
1995年に株式会社システムインテグレータを設立。2006年東証マザーズ、2014年東証第1部、2021年東証スタンダード上場。ECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」、統合型プロジェクト管理システム「OBPM Neo」など独創的なアイデアの製品を次々とリリース。また、ERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発。2019年に著書「AIのキホン」を出版し、現在はThinkITで「エンジニアならしっておきたいGPTのキホン」を連載中。
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