サービス品質を向上させるプロジェクト管理
企業の多くは目に見える価値だけでなく、目に見えない価値をサービスとして事業を運営しています。例えばスターバックスコーヒーではただコーヒーを販売するのではなく、気持ちの良い接客やお洒落な空間など、サービスとしてお客様に“プラスα”を提供しています。
「スターバックスより美味しいコーヒーは、自宅でもいれられるよ!」という方もいるかもしれません。それでも多くの人がスターバックスでコーヒーを買うのは、やはり“質の高いサービス”を提供している点にあるのでしょう。サービス品質を向上させれば、リピーターは自然と付いてきます。ひいては利益の向上に繋がるので、多くの企業がサービス品質向上に取り組むわけです。
しかし、サービス品質向上に成功している企業は多くありません。原因はどこにあるのでしょうか?そして、成功するためには何を実践すればいいのでしょうか
今回は、サービス品質向上を成功させるために、プロジェクト管理と絡めたお話をしていきます。
まずはサービス品質“向上”ではなく“改善”
企業がサービス品質向上に失敗する原因の多くは、実はかなり基本的な部分にあったりします。そもそも、サービス品質向上への取り組み姿勢が間違っている場合も垣間見られます。
まず、”向上”という言葉には「よりよい方向、すぐれた状態に向かうこと」という意味があります。つまり現状の環境を良しとして、さらに良い方向へ向かうためへの取り組みです。逆を言えば「現状に問題点はない」と言っているようなもので、サービス品質の悪さに目を向けていません。
言葉とは不思議なもので、何気なく聞いているものでも潜在意識に語りかけ、人の行動を変えてしまう力があります。例えば現状の問題点を見つめサービス品質を高めようとしている企業でも、サービス品質“向上”という言葉を発しつづけたり聞きつづけたりすることで、次第に現状の環境を良しとして、その上でどうサービス品質を高めていくかという考え方に変わってしまいます。
これで本当にサービス品質向上は成功するのでしょうか?答えは当然「No」でしょう。ボタンの掛け違いに気付かないままでは最終的にボタンの位置が合わなくなってしまうように、間違ったサービス品質をさらに向上させようとしても、間違った方向にしか行きません。
こうした基本的な問題に気づかないままプロセスが悪いだの担当者が悪いだの、場違いの責任追求を行ってしまう企業が多いのも事実でしょう。
本当にサービス品質を向上させたいのであれば、現状のサービス品質の悪さを認め、それを“改善”していくという姿勢が大切です。ですので、組織としてサービス品質向上のスローガンを掲げるのであれば、サービス品質改善とするのが正しいのかもしれません。
ちなみに「サービス品質の悪さを認める」と言っても、現状のすべてを悪者にすることではありません。良いところはそのままに、サービス品質の妨げになっている部分だけを抽出し、改善していきましょう。
大切なことはサービス品質改善の“プロジェクト化”
サービス品質改善に取り組んでいる企業の中には、場当たり的な改善活動になっているケースをよく見かけます。自社サービスの悪い点を洗い出したらそれを課題として、改善策を立てて片っ端から実践していく。こうした取り組みで得られた成果は、ほとんど無いと言っても良いかもしれません。
理由はいくつもありますが、場当たり的な改善活動では、実践に対する”評価”が無い場合がほとんどです。つまり、改善策が上手くいったのかどうかを判断できないのです。
そこで大切なのがサービス品質改善の“プロジェクト化”です。どういうことかというと、サービス品質改善という取り組みを一つのプロジェクトとして捉え、綿密な計画とタスクを設定することで、最終目標(サービス品質の向上)を達成するために行動します。
これは、EPM(Enterprise Project Management)というプロジェクト管理概念に近いものです。
EPMとは企業内の活動をすべてプロジェクトとして捉えて管理する概念またはその手法です。例えば経理部なら財務会計、管理会計、年度末決算、資金調達など様々な業務がありますが、それら一つ一つをプロジェクトとして管理することで、効率良く、かつリソースを最小限に目標を達成します。
例えば「結婚しよう!」とプロポーズして相手が合意してくれたとします。結婚式を挙げるならば、今からどんな会場を見に行って、どんな選定ポイントで決めて、会場が決まったらならば、どんな人を呼んで、こんなパーティにして、両親への御礼の言葉は・・とたくさんの作業を計画・実行し、決定していかなければなりません。これら結婚式というイベントもプロジェクトであり、EPMの概念に入るのです。
システム開発に関する事だけがプロジェクトではなく、会社の業務はすべてプロジェクトであると考え、EMPを導入している企業は増えています。
※詳しい解説は「EPMの考え方を導入しようEPM とは」で行っているので本稿では割愛します
このように、サービス品質改善は“プロジェクト化”を行い、もっと計画的に、もっと慎重に行わなければ実現しません。
“成功の定義”をどこに置くか
サービス品質改善をプロジェクト化するということは、当然ながら最終目標を設定しなければなりません。言い方を換えれば“成功の定義”とも言え、何をもってサービス品質改善プロジェクトを成功とするのかを決めなければなりません。
多くの場合はこれを“顧客満足度”として定義しますが、定量分析が難しい指標なので、ベストとは言えません。最も分かりやすいのは“売上げ”と“顧客リピート率”でしょう。継続して提供するようなサービスなら“LTV(顧客生涯価値)”が主な指標になるかと思います。
最終目標を決めたら次に、そこに向かうまでの要素を洗い出し、さらにタスクを整理します。タスク間の依存関係もしっかりと考慮した上で、初期計画とタスク割り振りを行わなければなりません。こうしたプロジェクトの大まかな流れは次のようになります。
- 最終目標の設定(定量的に)
- 最終目標を達成するための要素を洗い出す
- 各要素を実現するためのタスクを洗い出す
- WBS(作業分解構成図)を使ってタスクを整理する
- タスク間の依存関係を把握する
- 初期計画立案とメンバーへのタスク割り振りを行う
- 情報共有の環境を整える
- 確実期日に従ってタスクを実行していく
- 定例会議でタスク進捗と計画変更の有無を
- 計画変更が生じた場合は新たな対応策を練る
- 新たな対応策を実施して計画の微調整を図る
明文化すると、非常に細かいプロセスがあることがわかります。しかし、本当のサービス品質改善を実現するためには、これらのプロセスは全て欠かせないものです。
プロジェクト管理ツールでサービス品質改善を目指す
実は、先に紹介したプロセスの大部分を、一つのシステム上で行う方法があります。それが“プロジェクト管理ツールの導入”です。
プロジェクト管理ツールとは、プロジェクト管理に重要な機能を多数備え、マニュアルでは複雑で難しいプロジェクト管理を円滑に行うためのツールです。タスクの洗い出しやWBSを作成することはもちろん、計画立案や計画変更への対応など、プロジェクト管理ツールを使って様々なものを管理することができます。
こうしたツールを活用してサービス品質改善に取り組めば、効率よく、かつ効果の高い取り組みが実現できるでしょう。
最後に繰り返しになりますが、サービス品質改善(向上)は、計画的でなくては成功しません。プロジェクト管理ツールを導入して、場当たり的な改善活動をやめ、プロジェクト管理の考えを取り入れ、利益を生み出すサービス品質改善を行いましょう。
また、プロジェクト管理力強化につながるポイントをまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。
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