EPMとは?背景やメリットを理解しEPMの考え方を導入しよう

 2023.01.27  株式会社システムインテグレータ

EPMとは

EPM(Enterprise Project Management)とは、企業(Enterprise)内の活動をすべてプロジェクトとして捉えて管理するものです。たとえば人事部門であれば、新卒採用、中途採用、給与計算、目標管理、などさまざまな業務がありますが、こうした業務をそれぞれプロジェクトとして管理することで、業務効率が高まり、無駄な作業を減らすことができます。

なお、EPMという言葉はEnterprise Performance Managementの略でも使われます。こちらは”ビジネス業績管理”などと訳されており、企業の業績目標をブレークダウンした指標であるKPI(Key Performance Indicator)を設定し、目標と実績を対比させて経営情報の可視化やプロセスの改善などを行うことを意味します。

EPMの背景

「あらゆる組織は肥大化する」「間接業務は目的とは関係なく人の数に比例して増える」というパーキンソンの法則があります。企業が無駄な作業を減らして効率的な企業運営を行うためには、どんな業務があって、どれだけの資源(人や金)が使われているかをきちんと把握してコントロールする必要があります。
グローバルな競争時代になり、コストとスピードの両面で厳しい要求が突きつけられています。これまでのように1つ1つの業務がどんぶり勘定で管理されているようでは、業務改善も掛け声ばかりでままなりません。WBSで対象業務のタスクを洗い出し、ガントチャートで進捗をトラッキングし、工数管理でかかったコストを定量化する。業務をプロジェクト化することにより、初めてこうしたプロセス改善が実現して企業の競争力を高めることができるのです。
こうした時代のニーズを背景にEPMの重要性が叫ばれるようになり、一部の企業で取り組み始めています。当社でもOBPMを活用して徹底したEPMを実践していますが、驚くほどの高い効果が出ました。導入前に比べてはるかに利益の出やすい企業体質に変貌できたので、EPMの威力を改めて認識しています。

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もうひとつのEPM

企業内の業務をプロジェクトとして管理するという定義とは別に、単に複数プロジェクトを束ねて全社(組織)レベルで見える化することをEPMだと言う人もいます。つまり単一のプロジェクトマネジメントだけでなく、複数のプロジェクトのデータを集計したり、串刺しに見たりすることで企業全体の状態が見えてくるというものです。この定義の場合、管理対象はあくまでもソフトウェア開発やプラント工事、新製品のR&Dなど通常のプロジェクトであり、管理部門が日々行っている定常的業務は対象外となります。
当社でもOBPMにより、このようなEPMは当然できています。会社の各開発部門で行われているプロジェクトデータを、開発者に負担をかけることなく集計、一覧表示する仕組みができているので、問題プロジェクトの早期発見や部門の管理指標の見える化、要員の最適配分、プロジェクト管理の標準化など、非常に大きな成果を上げています。ただし、当社ではさらにもう一歩踏み込んで、これまでプロジェクトとして捉えていなかった業務をもプロジェクトマネジメントの対象として管理するEPMを実践しています。ここまで実践すると、管理部門や営業部門など非開発部門におけるコストとスピードの改善までメスを入れることができます。

EPMの対象スコープ

企業内の業務をすべてプロジェクトとして捉えて管理すると言うと、それは無理だ、難しいという声が聞こえてきます。なぜならば、業務には「プロジェクト型の業務」と「定型業務」があり、定型業務はプロジェクトとして捉えるのが難しいからです。
本当に無理かどうかを議論する前に、企業ではどのような業務があるかを整理してみましょう。企業の仕事は、お客様向けにお金をいただく「社外向け」の仕事と販売管理費などで処理される「社内向け」の仕事があります。そして、それぞれに納期(ゴール)を目指して作業する「プロジェクト型業務」と定常的にルーチンワークをこなす「定型業務」があります。
社外向けの仕事としては、システム開発や建設・工事などの請負プロジェクトはプロジェクト型業務、コールセンターのオペレーション作業やキーパンチ入力などは定型業務型の代表です。一方、社内向けの仕事としては、業務改善や新製品開発などがプロジェクト型で給与計算や月次決算などは定型業務型になります。
一般的には、プロジェクト型業務(下図の●印)は、プロジェクトマネジメントの対象として捉えて管理されますが、定型業務はプロジェクト管理対象外として、きちんと管理されていない傾向があります。また、社内のプロジェクトに関してはルーズな管理になってしまいがちです。EPMでは、このように従来きちんと管理されていなかった業務もプロジェクトと捉えて管理するのです。 

【第3章】EPMの考え方を導入しよう:EPM とは 1

EPMの管理項目

業務をすべてプロジェクトマネジメントの対象とすると言っても、業務によって管理項目が異なります。たとえば、事務職が毎日の注文データを入力する作業に対して、スケジュール管理や品質管理などはちょっとピンときません(多少、検討の余地はありますが)。しかしながら、こうした作業に対しても原価管理(工数管理)をしておくことはEPMとしては重要です。
たとえば当社では、販売管理費プロジェクトというものを作っておき、その中に「全社ミーティング」「社内研修」「社員旅行」などのタスクを用意しています。ソフトウェアの会社なので、社員が毎日どのプロジェクトのどのタスクに何時間作業したかを入力して原価管理しているのですが、その対象に「全社ミーティング」や「社内研修」が並びます。そうすることで、毎月、いくらくらいミーティングに労務費が費やされたか、社員旅行は旅費や宿泊代などの費用に加えて労務費分としていくら要しているか、ということが簡単に算出されるのです。
期初に作成する部門のアクションプランもプロジェクト化により大きな成果が上がります。当社では、今期にどのような取り組みをするかをWBSに分割し、担当者をアサインしてガントチャートにスケジュール登録しています。そして、その進捗情報を週1回の部門ミーティングでスクリーンに映し出して確認・フォローしているのです。以前はアクションプランの進捗が芳しくないまま1年を終了することが多かったのですが、このようにスケジュール化して情報共有した結果、達成度が飛躍的にアップしました。
システム部門の作業もプロジェクト化をしています。システム部門は、常にバックログが溜まっていて、現場部門からすると自分たちの依頼がいつまでもやってもらえてない不満があります。プロジェクト化して、抱えている全タスクをガントチャートで情報公開することにより、依頼作業の進捗状況が確認できるほか、いろいろなタスクをこなしていることに理解が得られやすくなります。
部門のアクションプランに関わる作業やシステム室の作業は、もちろん工数管理により原価計算も行われます。コストの見える化が行われる結果、効果の薄いアイデアを部門のアクションプランに掲げたり、不要不急のタスクをシステム室へ依頼するのも差し控えることになります。

【第3章】EPMの考え方を導入しよう:EPM とは 2

プロジェクト化するメリット

EPMの基本「会社の業務をプロジェクトとして捉えて管理する」ことのメリットはなんでしょうか。それは、プロジェクトとして管理することにより、作業が効率的・合理的に行われるようになるとともに、全体での要員負荷調整なども行いやすくなることです。
下表は、PMBOKの知識エリアに分けて、プロジェクト化して管理するメリットを説明したものです。すべての作業をここにあげた6つの管理要素で管理するわけではなく、作業内容に応じて、管理する要素を決めていきましょう。

【第3章】EPMの考え方を導入しよう:EPM とは 3表:EPMとして作業を管理することにより得られるメリット

EPMの課題

EPMのポイントは2つあります。1つは、まんべんなくやっている作業をプロジェクトとして管理することによって効率化が進むこと、もう1つは個人や各部門で行っている作業(タスク)を見える化して、コストやスケジュールなどの情報共有が図れることです。
一方でEPMを実現するにはシステム(ツール)が必要です。管理のための負担が増えたり、見える化するために余計な作業が増えたりするようでは、効率化と情報共有というメリット以上に管理コスト増となりやる意味が薄れます。
EPMを実践するには、効率的にプロジェクトとして管理できる仕組みに加えて、余計な手間をかけずに自動的に情報が組織で共有される仕組みが必要です。そんな仕組みを用意せずに、Excelなどを駆使してEPMを実現しようというのは、メリットよりもデメリットの方が大きくなってしまうのです。

ERP、BIとの違い

EPMと似た概念にERPやBIがあります。これらの用語はそれぞれどう違うのでしょうか。

ERP:EPMを運用するために必要なツール

ERPは「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語に訳すと「企業資源計画」となります。企業の基幹業務に必要な機能を網羅的に備えたITツールのことです。具体的には、財務会計や販売管理、在庫管理などのさまざまな機能が備わっています。
ERPはEPMを実現するために使われます。EPMが「業務をプロジェクトとして管理する」という概念を指すのに対し、ERPはそれを実現するツールを指すという関係性です。ERPを活用すれば、業務に必要なデータをEPM上で一元管理できます。業務ごとに個別のツールを使うよりも、はるかにEPMを実現しやすいと言えます。

BI:定義は違うが境界線はほとんどない

BIとは「Business Intelligence」の略で、企業が持つデータを収集・分析し、それをビジネスに活かす手法やツールのことです。BIツールはレポーティングやモニタリングなどの機能を備えています。
BIとEPMの間に明確な境界線はありません。どちらも「データを活用して業務を最適化する」ことを指しています。両者の違いは、BIが「データをうまく活用する」こと、EPMが「業務を最適化する」ことに着眼しているという点だけです。

EPMとどう向き合うか

EPMは企業を合理的体質に変貌させてくれますので、企業競争力を高めてゆくために積極的に取り組むべきです。しかしながら、これまでプロジェクトという考え方に慣れていなかった管理部門や営業部門の人たちをも対象にするため、かなり抵抗があることを覚悟しなければなりません。最初からパーフェクトを目指した場合に、このような部門から強い抵抗を受けて頓挫する恐れがあることを認識しておきましょう。
もし、全社一斉導入が難しいと思われる場合は、まず特定部門の業務に絞ってプロジェクト化してマネジメントしていき、その成果を持って対象部門を広げてゆくというアプローチも有効です。いずれにしても、現場にそっぽを向かれないで効率的に管理ができるシステム(ツール)も必ず提供しなければなりません。

EPMとOBPM 

OBPMはEPMを実現するために必要な機能を完備しているツールです。プロジェクト型業務だけでなく、非プロジェクト型業務(定型業務)もプロジェクトとして登録でき、コストやWBS、ガントチャート、課題・障害管理などニーズに応じた管理を自在にできます。また、個別プロジェクトの状況は組織全体で情報共有されるため、「見える化」も手間ひまかけずに行うことができます。
このような特徴を持ったシステムなので、当社ならびに導入企業の多くで既にEPMを実現して大きな成果を上げています。たとえば、OBPMでは画面3のように部門別・人別に稼働率の月次変移をグラフ表示できます。当社は稼働率80%を目標として、残り20%は教育や自己啓発などに使う方針なのですが、ほぼ目標通りの数値で推移していることがパッと確認できます。これも全プロジェクトがOBPMで一元管理できる仕組があるから、次のような式で求めることができているのです。

稼働率(%)=稼働とみなすプロジェクト/全プロジェクト×100
(稼働率の計算としては、販売管理費プロジェクトなどは稼働とみなさない)

【第3章】EPMの考え方を導入しよう:EPM とは 4画面3:部門別稼働率の月別推移グラフ

(株式会社システムインテグレータ代表取締役社長梅田弘之)


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