製造業やソフトウェア開発において、製品の品質を評価し、出荷できるかどうかの判断を下す「出荷判定」は重要な工程です。本記事では、製品の安全性や有用性を担保する上で欠かせない出荷判定について、その概要や委託する際の注意点などについて詳しく解説します。
出荷判定とは
出荷判定とは、製品を市場に出荷する際、出荷の可否を見極める作業のことです。その製品が作業指示書どおりに作られているかどうかを示す製造記録や品質試験の記録などを、品質保証部門のような第三者が調査します。
出荷判定は、製造業者が製造販売業者に製品を出荷する段階と、製造販売業者が市場に製品を出荷する段階の二段階で行われるのが通例です。判定を担当する品質管理部門が製造方法や品質に問題があると判断した場合、その製品を製造所から出荷することはできません。製造上の欠陥による事故を未然に防ぎ、安心・安全な製品を消費者に届ける上で欠かせないプロセスです。
製品の種類によって出荷判定の基準や手順は異なりますが、医薬品や医療機器、化粧品、食品など、人命に関わるものづくりにおいては、厚生労働省の「GMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)」によって製造管理や品質管理の基準が定められています。
工場における出荷判定
GMP省令第12条では、製造業者が手順書等に基づいて出荷管理を行わなければならないことを規定しています。
(参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416M60000100179_20210801_503M60000100090)
通常、製造業の工場においては以下の手順で出荷判定が実施されます。最初の手順は出荷判定を行う人物を任命することです。この人物は品質部門に所属している必要があり、製品の製造に関する十分な実務経験も求められます。出荷判定者は、製造部門から提出された製造管理や品質管理についての記録を詳細に確認し、出荷できると判定された製品だけが工場から出荷されます。
医療機器の出荷判定
医療機器には、治療用の心臓ペースメーカーやCT、レントゲン装置といった大型の機器から、コンタクトレンズ、体温計、血圧計といった小型のものまで、さまざまなものが該当します。医療機器の出荷判定においては、「製品が作業指示書どおりに製造されているかどうか」「製造管理および品質管理の結果が適正・不適か」といった検査項目を製造業者の責任技術者が確認し、出荷の可否を判断します。
責任技術者とは工場を実質的に管理する人物のことで、学歴や業務への従事経験、講習会の受講経験といった要件を満たしていることが必要です。責任技術者は工場での出荷判定の結果を製造指示書に記録し、製造販売業者に提出しなければなりません。
そして製造販売業者にて最終的な出荷判定が行われ、そこで出荷できると判断されて初めて市場に出荷することが可能です。なお、外国の工場から輸入した医療機器は、直接日本の市場に出荷できません。一度日本の工場で包装・保管されたのち、製造販売業者で市場出荷判定を受ける必要があります。ただし、輸入品については全ての製品に対して検査や試験を実施できないため、製造元から発行される適合証明書(Certificate of Compliance)などを確認する必要があります。
化粧品の出荷判定
化粧品に該当する製品には、口紅やファンデーションといったメイク用品のほか、せっけんやシャンプー、入浴剤、化粧水、歯磨き粉などが該当します。化粧品における出荷判定の流れも医療機器の場合と同様、その化粧品が作業指示書通りに作られているかや安全性について調査し、工場ごとに設置された責任技術者が出荷の可否を判定します。
化粧品を輸入する場合の手順も、国内の工場で一度保管し、必要な検査を行う必要があります。化粧品の製造販売に関しては、「GQP省令」(医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令)によって製造管理や品質管理についての規定が設けられており、製造業者や製造販売業者には品質管理業務手順書の作成が求められています。
(参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416M60000100136_20210801_503M60000100015)
市場における出荷判定
製造業者による出荷判定の後は製造販売業者による市場出荷判定が実施されますが、その段階においては品質業務責任者が出荷判定を担います。品質業務責任者は、製造所から送付された出荷可否の決定に関する記録や、品質や有用性、安全性を証明する資料などを基に出荷の可否を判定します。調査の結果、出荷できると判断されれば、製造業者に出荷判定の結果を文書で報告し、実際に製品を出荷する流れです。
また市場出荷判定は、製造業者と製造販売業者との取り決めに基づいて、製造業者に委託することも可能です。その場合の出荷判定者は、品質業務責任者と同等の要件を満たし、当該業務を適切に遂行できる能力を持った人物でなければなりません。
ソフトウェア開発における出荷判定
出荷判定はソフトウェアの開発時においても行われています。ソフトウェアにおける出荷基準については法令などの規定があるわけではなく、開発企業とクライアントなどの関係者との間で取り決める場合がほとんどです。
主な基準としては、障害対応への完了率や同時アクセス可能数、レスポンスタイム、実際にソフトウェアを活用する人に向けたマニュアルの作成などが挙げられます。なお、開発企業が出荷判定時に参考となる指標としては、一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)が策定したチェックリストがソフトウェアのセキュリティ品質向上に向けて策定した「ソフトウェア出荷判定セキュリティ基準チェックリスト」があります。このチェックリストでは開発プロセスに応じた113項目のセキュリティ要件が示されており、出荷テストの際の評価項目としての活用が可能です。SAJのWebサイトからダウンロードして誰でも利用できます。
(出典:https://www.saj.or.jp/NEWS/pr/201201_sec-release-decision.html)
出荷判定の委託は手間がかかることに注意する
製造販売業者が出荷判定を製造業者に委託する場合、いくつか注意すべき点があります。委託する際に製造業者から市場出荷判定の記録が送付されます。製造販売業者はその記録を基に品質標準書どおりに出荷が行われているかを確認すればよく、品質保証責任者の作業を大きく軽減することが可能です。ただし、そのためには出荷管理に関する手順や出荷可否を判定する人物の選出、逸脱時の報告などについて取り決めておく必要があります。
また、品質業務責任者は業務がきちんと実施されているかどうかを定期的に確認しなければなりません。工程が複雑な製品は委託がしにくい場合があるほか、委託先企業と品質基準に関する認識が一致しないこともあります。このように、市場出荷判定を委託するとしても、一定の作業コストがかかる上、品質保証やコンプライアンス遵守に関するリスクに対する懸念も考慮に入れなければなりません。
OBPM Neoの統合型管理ツールを使って出荷判定を効率よく行おう
出荷判定業務には膨大な事務作業が付随し、それらを手作業で行うとなると非効率であることに加えてミスが発生しやすくなります。そのような場合には、プロジェクト管理ツールの活用が有効です。
「OBPM Neo」は、製造業やIT事業者向けに特化したツールで、業務プロセスを可視化することによって品質および生産性の向上に貢献します。例えば、ガントチャートを活用して品質基準と工程をひもづけられるため、テストの最終チェック時に出荷判定基準を満たしているかどうかを確認することが可能です。
まとめ
出荷判定とは、製品の品質を確認する上で欠かせない作業です。特に医療分野の製品においては、省令によって出荷判定のあり方が規定されています。出荷判定業務を効率化したい場合は、プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」の導入が有効です。出荷判定のプロセスと進行状況を可視化して、業務の負担軽減に役立ててください。
プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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