納期の遵守を目的に用いられる「工程表」。作成することで、進捗状況や人員体制、作業工数なども正確に把握できます。
しかし、重要性や必要性は理解しているものの、作り方がわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事ではその種類や特徴、作り方をご紹介します。
工程表とは
工程表とはプロジェクトにおける計画表のことをさし、作業開始日から完了日までの実施事項や期日などをまとめた表です。いつまでに、誰が、何をすべきなのかが見える化できるので、納期に遅れることなく作業を進められます。
まとめ方は、工程全体をまとめたものから、月間や週間にまとめたものまでさまざまあります。現場の管理方法によって、まとめ方を変えると使いやすいです。
作り方が難しいと思われがちですが、コツを押さえることで効率よく作成できます。質の高い工程表を作成・活用できれば、現場の管理がしやすくなるのでおすすめです。そのためには、用途に合わせた工程表の種類を選び、正しい手順で作成しましょう。
また、工程表をもとに人員体制や作業時間を把握することで、進捗状況に合わせてリソースの管理も可能になります。工数の短縮など、作業効率の向上にも役立つのでおすすめです。
行程表との違い
管理に使われる表として、工程表のほかに「行程表」があります。発音は同じ「こうていひょう」で、字も似ているので同じ意味だと思われがちですが、内容や目的は異なります。
行程表は、期日までに設定したいくつかのマイルストーンに対して、「〇日までにこれをやる」というざっくりとした目標をまとめたもので、広範囲かつ漠然としています。一方前述した工程表は、具体的な手順などをより明確に計画したもので、管理者は主にこちらを使用して管理を行うのが一般的です。
どのような管理をしたいかによって、工程表と行程表を使い分けるようにしましょう。
工程表の役割
最も大切な役割が、納期の管理です。設定されている納期に少しでも遅れてしまうと、後工程や顧客などの関係者へ迷惑が掛かります。納品が遅れてしまえば、遅れた期間分の売上損失につながるなど、会社への影響も大きいです。工程表があれば、進捗を視覚的に把握できるので、遅れそうな場合は人員配置を調整するなど、最終的な遅れを未然に防ぐことができます。
次に、イレギュラーへの対応です。作業現場では、機械の故障や材料の遅れなど、トラブルはつきものです。過去のトラブルから起きそうな事態を想定して、バッファを持たせたスケジュールを組んでおきましょう。余裕があればイレギュラー時でも調整しやすく、期日に遅れることなく対応できます。もしもトラブルが発生しなければ、その分前倒して完了することも可能です。
最後に、作業効率の向上です。全体像を把握できれば、人員や機材・材料などのリソース手配も効率よく行えて、工期短縮や人件費の削減につながります。さらに、作業内の無駄を発見でき、見つかった無駄を省くことでさらなる効率化も期待できます。
工程表の種類
作業内容や目的によって適切な種類を選ぶと、管理の精度が高まります。種類は多岐にわたるので、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、現場に合った適切なものを選びましょう。
代表的な5種類を紹介するので、自社の作業内容と管理体制に照らし合わせながら、どれが適しているかチェックしてみてください。
ガントチャート
ガントチャートは、作業ごとの進捗が何パーセントまで進んでいるのかをパッと見てすぐにわかるのが特徴です。全体像を容易に把握できるので、現場の全体管理におすすめです。
Excelファイルなどのテンプレートが多くあります。テンプレートを活用すれば、時間や手間を掛けずすぐに作成できるのがメリットで、初心者でも作成しやすいのが特徴です。
ガントチャートについての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
ガントチャートとは?WBSとの違いやメリット・デメリットを解説
また、以下の記事では、エクセル形式のガントチャートを5つご紹介しています。
エクセルで作るガントチャート(サンプル集)
バーチャート
バーチャートは、多くの現場で活用されている主要な工程表のひとつです。日付単位で細かく進捗を管理できるのが特徴。作業ごとに細かな管理が必要な時におすすめです。
左側の縦軸に「作業内容」、その右隣に「各作業の担当者」、横軸には「日付」を入れて、作業期間を塗りつぶすことで、作業開始日と完了日(期日)を明確にできます。
作業に必要な日数もわかるので、作業にかかる日数や全体のスケジュールを把握しやすい点がメリットです。また、WordやExcelなどのテンプレートを活用すれば簡単に作成できます。工程表を初めて作成する方は、用途や目的に応じて、まずはガントチャートかバーチャートの作成から始めてみると良いでしょう。
グラフ式工程表
ガントチャートとバーチャートを組み合わせたようなイメージで、各作業に掛かる日数と進み具合の両方を管理できるのが特徴です。
縦軸に「パーセンテージ」、横軸に「日付」を設定し、曲線で進捗状況を入れていきます。どの作業が関連しているかもわかりやすいので、遅れや、遅れによる影響を把握しやすいのがメリットです。
しかし、他の種類と比べると作成方法が複雑なので、最初は作成に苦戦する可能性があります。初めて作る時には、「開始までに作成が間に合わない」とならないよう、時間に余裕を持たせることをおすすめします。慣れると徐々にスムーズに作れるようになるので、心配いりません。
工程管理曲線
出来高累計曲線とも呼ばれ、現場全体の進み具合を視覚的に把握できます。時間の経過とともに、工程がどのくらい進んでいるかを確認できるのが特徴です。
縦軸に「パーセンテージ(進捗率)」、横軸に「日数」を設定して、日数ごとの進み具合を曲線で結び、どのくらい作業が進んでいるかを把握します。通常、日数が経過するにつれて進捗率が上がるので、表全体がS字曲線を描くことから名前が付けられています。
現場全体の進み具合を把握するのには向いていますが、各作業がどのくらい進んでいるかを見るのには向きません。管理したい要素が特徴に適しているかを明確にしたうえで、選択するようにしましょう。
ネットワーク工程表
作業ごとの工数や手順、作業間のつながりを把握できるのが特徴です。タスクが細かい現場や、長期間にわたっての作業が必要な大きな現場での管理に向いています。
円「〇」と矢印「→」を使って順序や必要な作業期間をまとめます。矢印上には「作業内容」、矢印下には「作業日数」を記載。左から作業手順に沿って実施事項を書いていくので、全体の流れを把握しやすい点がメリットです。
作業手順や必要日数の理解などの専門知識や全体把握能力が欠かせないので、作成は容易ではありません。また、各作業がどこまで進んでいるかが見えにくいので、活用時には注意が必要です。
ネットワーク工程表で表した経路のうち、最も重要な経路のことを「クリティカルパス」といいます。クリティカルパスについては以下の記事も参考にしてください。
なぜ現場はクリティカルパスを使ってプロジェクト管理していないのか?(Vol.59)
工程表の作り方
誰でも見やすく理解しやすい工程表を作成することが、正確な管理につながります。作成しただけで、実際の現場管理で活かせなければ意味がありません。
活用しやすくするためには、手順やコツを押さえた作成が重要です。以下の作成手順を参考にして、実際の作成や活用をイメージしながらチェックしてみてください。
施行手順の決定
始めに、施工範囲と施工手順を決定します。明確にした作業内容を工程表に組み込む必要があるので、必ず最初に行いましょう。
ポイントは、具体的な作業まで細分化して書き出すことです。たとえば、「構想設計」や「図面作成」などざっくりした項目ではなく、「構想設計」までにどんなステップでどのような作業が必要かを考え、できるだけ細かいプロセスに分解して書き出しましょう。
日常作業で考えるとイメージしやすいです。たとえば「写真を撮る」であれば、「被写体を決める」「ロケーションを考える」「カット内容を決める」「撮影交渉をする」「日時と場所を決める」「スケジュールを共有する」「カメラのメンテナンスをする」「撮影する」といったプロセスに分解できます。
細分化しないと、「思っていたより作業ボリュームが多くて納期までに間に合わない」という事態を招きかねません。より細かく設定することで納期を正しく管理でき、イレギュラーにもスムーズに対応できるので、ぜひ実践してみてください。
施行期間の設定
次に、作業開始から完了までに必要な期間を設定します。このとき、早く終わるよう計画すれば良いというわけではないので注意してください。無理のある期間設定を行うと、工程が予定通りに進まなかった場合、期日を守ることが難しくなってしまう可能性もあります。
設定のポイントは、リソースやトラブルも考慮することです。現場や作業の難易度、作業員の人数や経験値、不測の事態なども想定して設定すると、精度が高まります。
管理者がひとりで考えてもなかなか進まないこともあります。わからない部分は、関わる人員へヒアリングをしたり、管理経験の多い人にアドバイスをもらったり、適宜コミュニケーションを取りながら進めるとスムーズです。
工事の配分調整
施工手順と期間を設定したら、作業単位で配分や調整を行います。
複数の作業を同時に進める場合、配分調整を行っておくと、機械や設備などの重複使用を防げるメリットがあります。被りそうな場合は、あらかじめ作業日をずらすなどの工夫をしておきましょう。
配分調整のポイントは、トラブルが発生しても納期を遵守できるよう、余裕を持って計画を立てることです。前述の期間設定と同様に、無理な計画は納期の遅れにつながりかねません。ひとつひとつの作業を理解したうえで、現実的な配分調整を行いましょう。
工程表の設定
ここまで完了したら、いよいよ作成段階に入ります。前述した種類や特徴を参考に、現場や内容に適したものを選びましょう。
工程全体を管理したいならガントチャート、作業単位でスケジュールを管理したいならバーチャートのように、目的に合わせた工程表選びが重要です。
工程表は、一般的にはエクセルなどの表作成ソフトで作成します。ほかにも、管理システムを利用する方法があり、業務効率化を考えている企業におすすめです。顧客・案件・見積など、プロジェクトに関するさまざまな情報を一元管理できるのがメリットです。
以下の記事で様々な工程管理ツールを紹介しています。 ぜひチェックしてみてください。
工程管理ツールの正しい選び方(工程管理表作成など)(Vol.50)
無料プロジェクト管理ツール比較16選 【2022年最新版】
まとめ
工程表の作成は、作業を計画通りに進めるために欠かせない作業です。また、人員や機械・材料などのリソースを管理できるので、コスト削減や作業の効率化にもつながります。また、正確な進捗管理を行うためには、用途や目的に合わせた工程表を選ぶことが重要です。
効率的に工程表の作成・管理をしたい場合や、簡単に情報共有をしたい場合には、プロジェクト管理ツールの導入もおすすめです。プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」なら、煩雑な工程管理を効率化できます。以下の記事では、OBPMの工程管理機能を画像付きで詳しく紹介していますのでご覧ください。
工程管理システムを導入して成功プロジェクを増やす(Vol.48)
ぜひ今回紹介した作成のコツを参考に、現場管理に役立つ工程表を作成してみてください。
また、プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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