まず、工程管理ツールと、工程管理システムとの違いとは?
工程管理ツールは世の中にたくさんありますが、工程管理システムという表記もあり、「ツールとシステムはどう違うの?」と思う人は少なくないはずです。一般的なツールとシステムの違いから考えてみましょう。
「ツール」とは?
ある作業の効率を上げるためのITを駆使した道具。ツールがなくとも手作業やExcelで作業を実行することはできるが、より業務改善のスピードを上げていくために導入されることが多い。
(例:工程・プロジェクト管理ツール、CRMツールなど)
「システム」とは?
ある作業を行うにあたり、複雑な業務や部門が絡み合うために必要な社内のしくみ。そうすると組織や商品などのマスターやトランザクション(処理)が多くなるので、複数のサブシステムが存在する。
(例:基幹業務システムの販売・購買・債権・債務・会計サブシステムなど)
ツールもシステムもどちらもデータベース上に動きますし、利用しているユーザーからはあまり違いはわからないと思います。「どちらの表現でもいい」とも感じますし、「ツールの表現の方が最近多い」とも言えますね。
例えば、弊社の工程・プロジェクト管理ツール:SI Object BrowserPM:(OBPM)2009年当初は「統合型プロジェクト管理システム」と呼んでいました。OBPMはマスターやサブシステムも多く、複雑な業務に対応しているため「システム」と呼んでいたのです。
しかし「進捗遅れや赤字プロジェクトを改善する」という課題改善に対して活用するシーンが多いことや、そのころから「ツール」という呼び名が、業務改善を成功に導くイメージが強かったため、統合型プロジェクト管理ツールに変更しました。各ソフトメーカーよって、コンセプトが違いますので工程管理ツールと工程管理システムの呼び名から、選び方を変える必要はあまりないのかもしれません(以上、一般論とイメージでした)。
工程管理ツールにはどんなものがあるの?
~工程管理ツールの正しい選び方 その1~
工程管理とは「製造業の製番に対する作業や製造物(成果物)の進捗を見ていくこと」と言えます。つまり工程別の進捗管理が中心になりますが、そのやり方は様々であり、いろんなジャンルがあります。
生産スケジューラとは?
主に繰返し生産の製造業の計画生産をサポートする進捗管理システムのこと。BOM(部品表)や生産管理システムと密接に連携することがポイント。最近では生産スケジューラのことをPSIと呼び、需要計画まで範囲を広げるシステムをSCMと呼ぶ。
PDM・PLMとは?
PDMとはBOM(部品表)を中心に、設計工程や製造工程で使用するCADや、文書管理・変更構成管理と連携し、実行していくシステムのこと。PLMはその作業を工程別に管理していくためのタスクを定義するシステムを指す。
これらは工程管理ツールというよりも工程管理システムのジャンルのご紹介ですが、このような生産スケジューラやPDM・PLMが、工程管理ツールと呼ばれることは多いと感じています。このような、BOMや生産管理、CADと密接に連携させたシステムは素晴らしい取り組みだと思います。すべてが一元管理されていますし製造業の理想だと言えます。
しかし本ブログではこのようなシステムは対象にしていません。「大手企業ならできるかもしれないけど、組織や既存システムの事情があってここまでできていない」「うちは大手企業で生産スケジューラやPDM・PLMを導入したけど、失敗した・・・」「進捗管理はしたいけど、ここまでのレベルはできない」という皆様に対して、工程管理ツールの正しい選び方をご紹介します。
工程管理ツールにはどんなものがあるの?
~工程管理ツールの正しい選び方 その2~
製番別の進捗管理はしていきたいけど、BOMやCADを連携させてまでのレベルは実現できないと思っている皆様に、工程管理ツールをご紹介していきます。進捗管理や要員管理、工数管理をメインにご検討している皆様向けの選び方です。
1.工程表作成ツール 「工程‘s」
WBSやガントチャートを極めたいなら、このツールにはガントチャートに必要な要素がすべて詰まっている。製造業の工程管理だけなく、建設業のガントチャート(ビルが完成していくような上向きのチャートイメージ)にも対応している。操作は簡単!と記載されているが、Excelでガントチャートや進捗管理がしっかり根付いている熟練企業で、かつマイルストーンやクリティカルパスがしっかりできているレベルの高い企業に向いている。株式会社ウェッブアイの森川社長はWBSの第一人者である。
3.ガントチャートツール 「Microsoft Project」
MS Projectと呼ばれることが多い世界的にメジャーな工程管理ツール。マイクロソフト社の代表的な工程管理ツールで、ガントチャート・進捗管理やリソース管理が非常に細かくでき、Office365との連携も相性がよく使いやすい。多言語にも対応しており、グローバル展開をしている企業には、海外顧客との共有ツールとして使うシーンも多い。単一プロジェクトの管理に強く、ひとつひとつのプロジェクトを深く管理していけるが、複数プロジェクト管理を部門や全社で行っていくことには向いていない。現場の声を聞くと、なぜかMicrosoft Projectを好きな人と嫌いな人に、ハッキリ分かれることが多い。
https://products.office.com/ja-jp/project/project-and-portfolio-management-software
4.プロジェクト管理 「Jira Software」
Jira(ジラ)と呼ばれていて、工程管理を実現していくために、プロジェクトの課題をチケット管理し、共有や検索することで、様々なレポートで見える化ができる。ガントチャートや要員管理をメインで実行していきたい工程管理ツールとは違うニーズに向いている。製造業の海外企業によく利用されている。
https://www.ricksoft.jp/atlassian/jira/
5.プロジェクト管理ツール 「Backlog」
Jiraと似ているが、ガントチャート機能があることが大きな違い。バーンダウンチャートができることも特徴で、課題管理や障害管理、GitHubやSVNの変更構成管理ツールとも連携している。製造業の工程管理ツールというよりも、IT向けの色が強い。
6.工程・プロジェクト管理ツール 「SI Object BrowserPM:OBPMライト版製造業向け」
工数・原価管理を中心に進捗管理・要員管理・品質管理を統合的に実現できるフル機能版がIT業界のプロジェクト管理ツールのスタンダードになったツール。そのフル機能版を製造業向けにリメイクし、ライト版として展開している。フル機能版と比べ、原価管理機能をなくしていることが大きな特徴だが、労務費原価は工数入力データを生産管理の原価管理と連携できる。
工程管理のための進捗管理と要員管理を中心にしたシリーズがライト版であり、製番別にガントチャートで進捗を見ていけるだけでなく、メンバーの計画と実績の負荷状況をタスク別に把握できる。複数プロジェクトのガントチャートやリソースをみることもでき、アラート管理も実現可能。
品質管理はIT向け機能からシンプルにし、マイルストーン管理で設計書レビューや工程チェックを行うことができる。製造業:機械メーカーの個別受注後の設計・製作・据付の工程管理や、個別生産や繰返し生産を問わず、新製品の開発での導入実績があることも特徴のひとつ。
https://products.sint.co.jp/obpm/products
工程管理の正しい選び方のポイント
~戦艦大和の工程管理から~
先日、テレビで「戦艦大和の完成まで」を放映していました。戦艦大和は世界最大の戦艦を作れ!という指令だけでなく「4年で完成させろ!」という難題が待ち受けていました。そして呉の造船技術を結集し、ユニット別に同時期に生産していく効率的な手法:ブロック工法という新しい造船技術を創り出し、完成まで半年も前倒しし、3年半で戦艦大和を完成させました。品質面も高く、これはすごいプロジェクトだと言われています。
その成功の最大のカギとなったのが、日本で初めて導入された「工数管理」です。各工程や細かな作業ごとに計画工数を立案し、実績工数の高い作業や現場にはすぐに人を投入し、全体の工程が遅れないように工数管理をしていきました。これはつまり、工程管理の中で、「工数の予実管理と要員管理」をしっかり行っていたため、3年半という納期を実現したと言えます。
製造業のみなさまの工程管理を見てきて感じることがあります。それは「社員の予定工数が立てられている企業が少ない」ということです。
実績こそ工数システムや生産管理システムに入力できていますが、それは月末バッジ処理になっていることが多く、工数の予実管理とは言えません。
工程管理ツールは製番別・工程別に製造物(成果物)の進捗管理をガントチャートで見ることができます。その進捗管理の実現のためには、人別・作業別の計画工数が必要になります。工程管理とは、計画なくして、実績を捉えていくことはできません。工程管理ツールのご検討の前に、「計画工数と実績工数管理」がまずできているかどうか?をチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか?
工程管理ツールの正しい選び方のポイント2
~様々な業種で工程管理のやり方は違う:製造業~
工程管理とは製造業で使われるスケジュール管理の呼称というイメージが一般的ではないでしょうか?製造業では個別受注生産管理と繰返し生産管理のスタイルでは、工程管理のやり方も全く違います。
個別受注生産型では部品表(BOM)や図面を中心に工程管理をするPLMシステムなどがありますが、個別生産なので工程別の進捗管理を重視します。機械メーカーであれば、設計→組立→据付の工程に関するスケジュールや進捗状況を設計部と製作部とフィールドサポートチームで共有します。
繰返し生産型では、製品を繰り返し生産していくため、営業からの受注情報や販売計画から在庫推移・生産計画を立案する生産スケジューラ型であったり、生産スケジューラと連携し、市場予測を立て複数工場で生産計画をしていくSCMなどがあります。工程管理には部品や人だけでなく設備も入ってくるため、資源ガントチャートで負荷調整を行い、工程管理を実現します。製造業には工程管理の専用システムがたくさんありますので、様々な視点で検討されてみてはいかがでしょうか?
弊社のプロジェクト管理ツール:OBPMライト版製造業向けは、機械メーカーの進捗管理や人のタスク管理、山積み管理に対応しており、新製品開発のデザインレビュー管理にも対応しています。
工程管理ツールの正しい選び方のポイント3
~様々な業種で工程管理のやり方は違う:建設業・エンジニアリング業~
建設業の工程管理は主にゼネコンが元請けとして使うシーンが多いのではないでしょうか?ゼネコンの工程管理は莫大な材料費や労働者のコスト管理ができるシステムがスクラッチ開発(受託開発)されているケースがほとんどです。建設業:ゼネコンのガントチャートは従来の横に左に伸びていくタイプではありません。ビル・マンションの工程管理では「タテに上に伸びていくガントチャート」でなければなりません。まさにビル・マンションのカタチをしていて、完成までに上に伸びていくわけです。
海外の発電プラントや環境プラント建設に携わるエンジニアリング業もオーダーメイドの工程管理システムを持ち、コスト管理を中心に進捗管理も行っています。国内の水処理プラントや環境型ゴミ焼却場プラントに携わる中堅プラントエンジニアリング企業は、工程管理システムを持っていないケースがよく見受けられます。コスト管理は経理部主導の原価管理システムがありますが、プロジェクト全体を把握できる工程管理システムは存在せず、たくさんのExcelでバラバラに管理しているケースが多いと感じます。弊社のプロジェクト管理ツール:OBPMフル機能版エンジニアリング向けは、コスト管理を中心に進捗管理や要員管理が統合型で実現できる工程管理ツールです。
工程管理ツールの正しい選び方のまとめ
「計画工数と実績工数管理」のためにExcelで計画工数を立案することから始めてみましょう。製番別・工程・タスク別に計画工数を立て、実績工数が入力できるようになってから、工程管理ツールを検討していくことが、まずは正しい選び方であると言えます。できればExcelでガントチャートに近い運用もできるようになれば、なお良いですね。
ツールは効率化や業務改善のスピードアップには必ずつながりますが、その前に、手作業にしろ、Excel管理にしろ「業務が根付いていない」とツールにはつながりません。工程管理ツールを選ぶ前に「計画工数の定着」と「ガントチャートを簡単にひく」から着手し、計画に対し工数入力と進捗率を実績入力して、業務を根付かせてみてはいかがでしょうか?
「もうそれはできている!」という皆様は、工程管理ツールを積極的にご検討ください!
工程管理を含め統合的にプロジェクトを管理できるOBPM Neoにご興味をお持ちいただけましたら、わかりやすくご紹介する資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。
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