リモートワークが定着して出社する機会も減り、従来のExcelなどを使った手法では管理が難しくなったという背景から、昨今、工数管理ツールを検討されている方が増えています。
そこで今回、工数管理ツールについて詳しく解説したうえで、選び方のポイントやおすすめするツールをいくつか紹介していきます。
工数管理ツールとは
工数管理ツールとは、勤務時間に対して、どのプロジェクトのどの工程・タスクに関する作業をどれくらい実施したのか、という作業時間の内訳を入力・管理するツールです。勤怠管理ツールはあくまでも出退勤の管理になるので、実際にその勤務時間内にどんな作業をしていたかがわかりません。工数管理ツールを利用することで、その日にどのプロジェクトのどんな作業に何時間従事したかという実積を管理することができます。勤怠管理ツールを自社で開発し工数管理もできるようにしている、あるいは勤怠管理機能と工数管理機能が備わっているツールを利用しているケースもありますが、勤怠管理と工数管理はそれぞれ別々で管理している企業が多いのが実態です。
工数管理とは
そもそも工数とはどんな意味でしょうか。プロジェクトの計画段階で言うならば、工数とはプロジェクトにおける作業を完了するための仕事量・時間と担当人数と言えます。例えば、「プロジェクトにかかる作業量・時間」を「担当人数」で割ることで、個人が担当するべき工数(人月・人日・人時といった単位)で算出することができます。また、実行段階では、工数は実際に稼働した時間の実績を意味します。工数は、システム開発、製造、研究開発、建設など様々な業界のプロジェクトマネジメントで、幅広く使われています。
勤務時間に対して、その日にどのプロジェクトに何時間従事していたかの内訳時間:工数を管理することが工数管理にです。プロジェクトで予定していた工数に対して、実積工数を管理することで、計画通りに進んでいるのか、工数を使いすぎていないか、それともそもそも予定に無理があったのかなどを把握することができるので、管理・分析に利用することができます。工数管理は、メンバーの作業量・時間、負荷状況なども管理できるので、プロジェクト管理には欠かせない重要な管理項目です。
工数管理の目的
工数管理を実施することで、プロジェクトやメンバーの工数データが蓄積されます。工数管理を行う一番の目的は、作業時間を可視化して、その蓄積された情報を分析・活用することです。
・目的1:稼働状況を把握する
工数管理を実施することで、メンバーの稼働状況が把握できます。プロジェクト毎に工数計画を立てて実積を入力すれば、日単位や月単位での稼働状況を把握することができます。ある特定のメンバーに負荷がかかっていないか、他のメンバーを追加したらよいかなど、人員の最適化を図ることもできますし、今後の対応について検討することも可能です。
・目的2:見積り作成精度の向上
過去の類似案件の情報を元に作業予定工数を作成することができるので、より精度の高い計画や見積りの作成に役立てることができます。ベテランと新人による差を無くし、属人化も無くすことができます。もちろん過去の情報を元に計画を立てたものの、実積工数と比べると乖離が出てしまうこともあると思います。毎回振り返りをすることで、次の見積り作成時に活かすことができるので、さらなる精度向上につなげることができます。
・目的3:メンバーの意識向上
工数管理を実施することで、作業単位での計画工数/実積工数を把握することができるため、計画通り実行するという意識向上が期待できます。
各メンバーは計画工数と実積工数が可視化されているので、自分の作業の問題点や作業スピードを簡単に振り返ることができます。見えてくる課題に対して改善を実施していくことで、より効率的に業務に取り掛かることができるようになります。それが結果に結びつくことで、個人の成長やモチベーション向上、生産性の向上へとつながっていきます。
また、チームにとっても、工数が可視化されているので、関わるプロジェクトについての当事者意識が高まり、生産性を上げようというチームのモチベーション向上や関係性の向上、生産性向上につながります。
工数管理ツールと勤怠管理ツールの違い
工数管理ツールの話が出るときに必ず勤怠管理ツールの話が出てきます。勤怠管理ツールは、出退勤の管理をするためのツールです。例えば、9月1日は8時に出社(業務開始)して、19時に退社(業務終了)しましたといった管理をするためのツールです。出退勤時間だけではなく、有給や残業などの各種申請ができるツールもあります。
一方、工数管理ツールは、勤怠管理ツールで入力した出退勤時間の内訳を管理するためのツールです。常に1つの作業だけを実施しているわけではないので、勤務時間のうち、どの作業にどれだけ従事したかを管理します。プロジェクト単位に〇時間作業したといった管理ではなくプロジェクトの作業単位(粒度が細かい方がより分析ができる)で工数管理することが重要になります。
勤怠管理ツールの勤務時間と工数管理ツールの工数時間は一致します。勤怠管理ツールと工数管理ツールは、同じツールもしくはツールが別でも連携が取れているなど親和性の高いツールであるほうが、利用するメンバーにとって手間がなく入力しやすくなります。
工数管理ツールとプロジェクト管理ツールの違い
プロジェクト管理の重要な管理項目に工数管理があります。また、インターネットで検索しても、プロジェクト管理ツールの中の工数管理機能がヒットすることもあります。工数管理はプロジェクト管理をする上ではもちろん重要になりますが、工数管理ツールだけではすべてを網羅できません。プロジェクト管理ツールは、工数管理ツールが持っている機能はもちろん、プロジェクト管理に必要なQCD管理(品質管理、収支管理、進捗管理)を持ち合わせているツールです。昨今は、単にプロジェクトを管理するだけではなく、情報を全社や部署の切り口で分析したり、レポートを作成したりすることも重要であり、そのような機能を有したプロジェクト管理ツールも注目されています。
工数管理ツールの選び方
Excel管理をやめて工数管理ツールの導入を検討しているが、調べてもたくさんあるので、どのような基準で選んだらいいのかわからない方も多いと思います。
ここでは、工数管理ツールを選ぶ際のポイントをいくつかご紹介します。
ポイント1:コスト
一番気になるのはコストだと思います。利用人数によって料金が決まる工数管理ツールが多くありますが、同時接続人数によって料金が決まるツールや、利用機能によって料金が決まるツールもあります。
社員数の少ない企業なら、利用人数や同時接続人数で料金が変動する工数管理ツールを選択するのがいいかもしれません。
また、工数管理ツールによってはお試し期間や無料プラン(機能や利用人数を制限)にて提供しているツールもありますので、高い費用を出したけど合わなかったといったことを防ぐために、まず利用してみてみるのもいいでしょう。
ポイント2:システム導入方法 オンプレミス型 or クラウド型
システムの導入方法として、大きく分けるとオンプレミス型とクラウド型に分かれます。
オンプレミス型の工数管理ツール
ツールを買い取って自社保有の環境に構築したり、パソコンにインストールして利用したりするツールです。初期費用は大きくかかりますが、その後は保守費用のみ必要になり、自社の資産になるメリットがあります。ただし、導入後のサーバ運用や保守も自社で行わなければなりませんので、中長期的な手間やコスト負担は大きくなります。
クラウド型の工数管理ツール
インターネットのブラウザやアプリを通して使用する工数管理ツールで、インターネット環境があれば、場所にとらわれずに利用できます。リモートワークの定着で利用が急増しています。設定時に専門的な知識は必要なく、簡単に導入可能です。ライセンス数に応じた月額利用料金の設定など、比較的導入コストも低いのがメリットですが、セキュリティ面を考慮することが重要です。
◆オンプレミス型が合う企業:
初期費用がかかっても、自社で管理しているサーバがあり、技術者もいるので全て自社で対応できる企業。中長期的に利用したい。
◆クラウド型が合う企業:
まずは気軽に使ってみたい。導入費用を抑えたい。
ポイント3:機能が充実しているか
料金が安くても自分たちがやりたいことができなければ意味がありません。工数の管理粒度や検索機能、入力した工数の出力機能など、工数管理ツールによって違うので、工数管理ツールの機能を知ることが重要です。また、工数管理ツールによっては、スケジュール(ガントチャート)機能、タスク管理機能、レポート機能、要員管理機能などが備わっているので、工数管理以外も最適化したいと考えているのであれば、そのような機能も合わせて確認しましょう。また、DXにより海外とのやり取りも今後増えてくることが想定されるので、日本語以外に少なくとも英語には対応していることをおすすめします。
ポイント4:インターフェース
メンバーは毎日工数入力をするので、使い勝手が悪いとなると入力も定着せず次第に利用されなくなってしまうことも懸念されるため、導入する工数管理ツールのユーザビリティはとても重要です。利用する人によってもユーザビリティは変わってくるので、一概にどのようなインターフェースがいいとは言い切れません。例えば、工数管理の粒度が細かく入力できる場合、機能としては優れているが、毎回選択するのが大変であれば現場からの不満も出てきます。マスタから選択できたり、検索機能が充実していたり、前回値から呼び出せるなどの機能があれば、入力がとても楽になるので、重要なポイントとなります。
また、海外製品も多いですが、日本企業が作った工数管理ツールをおすすめします。外国人の社員がいる場合はメリットになりますが、日本語表示が基本になりますし、日本企業ならではの使い勝手の良さを追求している点もあるので、検討のポイントにおいてみてはいかがでしょうか。
工数管理ツールによってはお試し期間や無料プランを提供しているツールもありますので、まず利用してみてみるのもいいと思います。
工数管理ツールおすすめ11選
では、具体的に工数管理ツールをいくつかご紹介します。
OBPM Neo
工数管理以外にも収支管理、進捗管理、要員管理、品質管理機能など、プロジェクト管理に必要な機能を実装した統合型のプロジェクト管理ツールです。管理項目のテンプレート化により、属人管理・計画作成工数の削減や、プロジェクト単体だけではなく、部門や全社単位でのプロジェクトの見える化が可能です。無料トライアルも可能です。
https://products.sint.co.jp/obpm
Backlog
タスク管理を中心としたプロジェクト管理ツールです。タスクを中心に、プロジェクトの進捗をカンバンやガントチャート、バーンダウンチャートで表現できます。また、ファイル共有やバージョン管理など、メンバー間での共有を促進するための機能を幅広く備えています。無料トライアルも用意されています。
出典:https://backlog.com/ja/
CrowdLog
工数を見える化して、プロジェクトの進捗状況や収支を管理するツールです。カレンダーでのドラッグ&ドロップの直感的操作で工数入力ができますし、スマートフォンからの入力も可能です。GoogleカレンダーやOutlookカレンダーとの連携もでき、日々の入力作業がラクになります。無料トライアルも用意されています。
出典:https://www.innopm.com/
Asana
進捗状況が楽に把握できる、豊富な機能を実装したプロジェクト管理・工数管理ツールです。付箋のように移動させ、追加したアイテムをドラッグ & ドロップするだけでタスクの整理が可能です。課題管理や要員管理、GoogleやMicrosoft Outlookなどの外部ツールと連携ができるので、効率化を図りつつ生産性の向上がはかれます。無料プランも用意されています。
出典:https://asana.com/ja
TimeTracker NX
工数管理を中心にガントチャート機能も実装した、プロジェクトの見える化により業務改善を支援するツールです。また、コスト管理、EXCEL出力、ダッシュボード、APIなど、エディションによって異なる機能を備えているので、改善の目的に応じて利用することが可能です。体験版/評価版が用意されています。
出典:https://www.timetracker.jp/
Redmine
オープンソースのプロジェクト管理・課題管理ソフトウェアです。進捗管理やチケット、wiki(メモ)などの機能があります。フリーで提供される機能のほかに、有償の拡張機能が多く発売されています。
出典:https://redmine.jp/
Jooto(ジョートー)
Jootoはタスク管理に特化したインターフェースを備え、ドラック&ドロップなど直感的な操作でタスク作成と変更を行うことができます。クラウド型なので、情報はオンラインで更新され、端末やOSに左右されることなく、いつでも・どこでもツールを使用したプロジェクト管理が実現できます。無料プランも用意されています。
出典:https://www.jooto.com/
Wrike
Wrikeは、承認フローの作成や依頼フォームを作成といったプロジェクト管理の作業まで包括的にサポートするツールです。Google Driveやslackなどの外部サービスと連携が可能です。また、進捗管理をサポートするガントチャートやダッシュボードなどの機能もあります。タスク、スケジュール、チャートなどをひとつの画面にまとめて表示することができ、タスクにカスタマイズ可能なステータスを設定して管理することもできます。無料トライアルも用意されています。
出典:https://www.wrike.com/ja/
TimeCrowd(タイムクラウド)
工数・時間の管理に重点を置いた管理ツールです。タスクの時間を記録して見える化することに特化しており、操作も簡単です。メンバー間での共有やレポート機能もあるので、まず始めてみるには最適です。無料プランも用意されています。
出典:https://timecrowd.net/
OZO3工数
工数管理に特化したツールになります。スマートフォンからの入力もでき、リモートワークに適した工数管理ツールです。シリーズ製品に勤怠管理、経費管理などもあるので、工数管理から始めて、利用機能拡張による管理の一元化も実現可能です。無料トライアルも用意されています。
出典:https://manage-cloud.jp/product/kousu/
Brabio!(ブラビオ)
ガントチャート作成に特化したクラウドツールです。ガントチャートの作成編集が直感的な操作で行えるため、Excel管理をやめたい場合に最適です。担当負荷やレポート出力機能もあるので、複数の小規模プロジェクトを横断的に管理する際など、ガントチャートを軸にしたるプロジェクト管理の効率化を実現可能です。無料プランも用意されています。
出典:http://brabio.jp/
単なる工数管理ツールでは解決できないこと
工数管理ツールだけでプロジェクト管理が強化できるわけではありません。上記でおすすめとしてあげた工数管理ツールには、工数管理だけできるツールもありますが、ほとんどが工数管理以外の機能も持ち合わせています。多くは工数管理と親和性の高い進捗管理やタスク管理、勤怠管理ができる機能があるツールが多いように思われます。工数を元にした収支管理や工数計画と比較した要員管理、障害や課題と紐づいた品質管理などを実施したい場合は、工数管理ツールだけでは解決できないので、他のツールを検討する必要があります。
統合的なプロジェクト管理を実現するOBPM Neo
おすすめツールとして前述したプロジェクト管理ツールOBPM Neoは、組織のプロジェクト管理能力を高めるための統合型プロジェクト管理ツールです。日本で初めてPMBOK(※)に準拠し、品質・収支・進捗のQCD要素に加えて、工数管理、要員管理・リスクマネジメント・コミュニケーションなどさまざまなプロセスの統合管理を実現します。クラウドサービスのため、海外拠点と連携するDXプロジェクトやテレワークでもリアルタイムでの情報共有が可能です。200社以上の導入実績で培ったノウハウが標準機能として組み込まれています。また、OBPM Neoをより活用・浸透できるように、専門コンサルタントによる実効性の高い導入サポートも提供します。いくつかエディションを用意していますので、お客様の利用ニーズに合わせた最適なご提案が可能です。
工数管理ツールとしての導入はもちろんですが、それだけではなく、プロジェクト管理全体の最適化を検討する際にはとても有効なツールになります。
※関連ブログ:【第1章】PMBOKを理解しよう:PMBOK とは
まとめ
いかがでしたでしょうか?
工数管理はとても重要な管理項目です。まずは、工数管理について理解し、工数情報を単純に集めるだけではなく、「工数情報を把握したうえで何をしたいのか」をしっかりと明確化することがポイントになります。そのポイントをおさえておかないと、工数管理ツールを導入したものの、必要性がわからず現場のメンバーが入力しなくなってしまう可能性もあります。目的を明確化したうえで、自社に最適な工数管理ツールを探せばよいのです。工数管理からスタートすることも大事ですが、工数管理もやるなら進捗も収支も管理したいということであれば、プロジェクト管理全体の課題を解決できる統合的なプロジェクト管理ツールがおすすめです。ツールがバラバラにならず1つのツールで完結するので、二重管理もなくなります。もしご興味があれば、OBPM Neoをわかりやすくご紹介する資料も用意していますので、こちらもぜひご覧ください。
工数管理について、本記事が今後の検討の参考になりましたら幸いです。
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