PMBOKの限界
PMBOKはあくまでもプロジェクトマネジメントのBody of Knowledge(知識集)です。プロジェクトマネジメントを学び、理解するためのバイブルではありますが、過大評価してはなりません。PMBOKの限界をきちんと理解した上で、あくまでもプロジェクトマネジメントの基礎知識を整理するという目的で活用しましょう。
PMBOKの限界は、主に2つあります。1つは、あくまでも知識集なのでそのまま現場では使えないということです。現場で使うにはツールが必要です。PMBOKを理解した上で効率的なプロジェクトマネジメントツールを活用するというアプローチが求められるのです。
勘違いし易いのですが、ここで言うツールとは書かれていることを忠実に実行するツールではありません。知識集をそのままExcelなどで実施できるようにしても、現場で使うツールとしては非効率過ぎてそっぽを向かれます。PMBOKを把握した上で、もっと実践的・効率的なツールが必要とされるのです。
2つ目は、PMBOKはあくまでも1つのプロジェクトをマネジメントすることに焦点を絞っていることです。企業では通常複数のプロジェクトが平行して走っており、それらを串刺しにチェックしたり、束ねて集計してみたりすることが必要になります。企業におけるプロジェクト管理力向上という点に関しては、PMBOKでは触れていないのです。
その代わりにPMIは2006年に「The Standard for Program Management」を発表し、プログラムマネジメントという考え方で複数プロジェクトの管理方法を提供しています。
PMBOKの活用方法
PMBOKは実践的な手段ではありませんし、具体的な方法を示してくれるわけでもありません。組織のプロジェクトマネジメントを強化してゆくためには、PMBOKとは別に実践的かつ具体的な手法やツールを独自で用意する必要があるのです。では、PMBOKはどのように活用すればいいのでしょうか。それとも役に立たないものなのでしょうか。
PMBOKの整理されたノウハウ、知識は、世界レベルの生きたノウハウです。プロジェクトマネジメントの学び、理解する上で、それを使わない手はありません。プロジェクトマネジメントの教育カリキュラムを制定する際、またはプロジェクトマネジメントを強化するための具体的手段を考える際には、PMBOKの体系を意識してみてください。
なお、PMBOK自体を理解するには原本である「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」は私はあまりお勧めしません。バイブル的なものに付きがちな無味乾燥で面白くない記述内容になっているからです。自分たちの組織に活かそうという目的であれば、基本を抑えれば十分ですので、市販の本で読みやすそうな解説書を買って読んだ方が良いと思います。
PMBOKとOBPM
OBPMは、PMBOKの10の知識エリアを統合して全てカバーした世界初のプロジェクトマネジメントシステムです。画面1のように品質管理、原価管理、スケジュール管理、スコープ管理などの関連性をデータ中心に統合し、これらをフルサポートしていることにより「プロジェクトマネジメントのERP」とも呼ばれています。
OBPMはアジャイル開発でも広く活用されています。アジャイル開発においても標準化やアジャイル用WBSの設定、進捗管理、原価管理、品質管理、コミュニケーション管理などPMBOKで取り上げている管理エリアの必要性は同じです。OBPMは特に変更管理(変更しやすく、変更履歴を管理し、変更による影響を即時把握できる)に強みがあり、PMBOK第7版で強化したアジャイル対応に早くから対応しています。 |
プロジェクト管理ツールの選び方
プロジェクト管理ツールは、利用可能な機能がツールやプランによって異なります。そのため、自社のプロジェクト管理に最適なツールを比較・検討する際には、事前に自社ニーズを把握しておくことが重要です。
プロジェクト管理ツールを選ぶ際に重要な主なポイントは以下です。
- クラウド型か、オンプレミス型か
- 必要な機能は揃っているか
- プロジェクトの目的に沿ったツールか
- 利用人数は何人程度を想定しているか
- セキュリティ対策は強固であるか
- 導入費用はどの程度か
- 対応言語は目的に沿っているか
- インターフェースは目的に沿っているか
こちらの記事も併せてご覧ください。
プロジェクト管理ツール19選!おすすめ製品を目的・価格から解説 【2023年度最新】
まとめ
PMBOKでプロジェクトを成功に導くためには、10の知識エリアと5つのプロセスを体系的に理解したうえで、実践に活かしていく工夫が必要となります。そのため、プロジェクトに参加するメンバーの状態や組織の状況に合わせて、柔軟に改善を続けていく姿勢が大切となります。PMBOKのメリットをうまく活かしながら、効率的なプロジェクトの遂行に努めましょう。
この記事の著者
株式会社システムインテグレータ 代表取締役会長
梅田 弘之
1995年に株式会社システムインテグレータを設立。2006年東証マザーズ、2014年東証第1部、2021年東証スタンダード上場。ECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」、統合型プロジェクト管理システム「OBPM Neo」など独創的なアイデアの製品を次々とリリース。また、ERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発。2019年に著書「AIのキホン」を出版し、現在はThinkITで「エンジニアならしっておきたいGPTのキホン」を連載中。