ITプロジェクトの原価管理とは?原価の意味を正確に把握する

 2020.02.21  株式会社システムインテグレータ

「製造業のように原材料や部品を調達するわけではないから原価が把握しづらいし、ITプロジェクトの原価管理って一体どうやったらいいの?!」

本記事では、そんな悩みを抱えているプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーに向けてITプロジェクトにおける原価管理について解説します。プロジェクトにおける利益率向上のために原価管理は欠かせない業務のため、まずは原価の意味を正確に把握するところから始めましょう。

「原価」とは?

製造業における「原価」とは、製品価格を構成する仕入・製造・販売にかかった費用を総合した価格です。原価が低いほど営業利益は上がりますし、原価が高いほどそれが下がります。だからこそ、すべての製造業では日夜、原価低減活動に取り組んでいます。ちなみに原価計算基準では「経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値であり、その給付にかかわらせて、把握されたものである」と少し難しく定義されています。

ここで、一般的な「原価」についてその種類を整理しましょう。

固定費

製品の販売やサービスの提供にかかった費用のうち、売上の増減にかかわらず発生する費用のことです。製造業では作業員の人件費や光熱費などが主に該当します。

変動費

固定費とは逆に、売上の増減に応じて変動する費用のことです。たとえば製品製造に必要な原材料や部品の仕入価格などが該当します。

材料費

製品の販売やサービスの提供にかかった費用のうち、原材料・部品・その他物品にかかった費用を材料費と呼びます。このうち固定的に発生するものが「固定材料費」、変動的に発生するものが「変動材料費」です。

労務費

従業員の給与や福利厚生、製造やサービス提供にかかる人件費などが該当します。このうち、社員に関係する費用を「固定労務費」、パート・アルバイトなど臨時的に雇用する人材にかかわる費用を「変動労務費」と呼びます。

諸経費

材料費と労務費以外の費用はすべて諸経費です。主に、設備等にかかった費用を指します。このうち固定的に発生するのが「固定経費」、変動的に発生するものが「変動経費」です。

ITプロジェクトにおける原価構成

もう1つ、原価を理解するのに欠かせない分類があります。それが「直接費」と「間接費」です。直接費とは事業運営に直接かかわる費用のことで、製造業なら材料費が該当します。間接費とは事業運営に間接的にかかわる費用のことであり、同じく製造業なら労務費などが該当します。では、ITプロジェクトにおける直接費と間接費とは何でしょうか?

ITプロジェクトの直接費

労務費

プロジェクトに直接参画するメンバーの人件費が大半を占めています。メンバーの基本給、割増賃金、賞与手当、退職金、福利厚生費用などが該当します。

外注費

プロジェクトの中で協力会社に委託する際の外注費用のことです。

諸経費

プロジェクトに直接参画しているメンバーの交通費や通信費などが該当します。

ITプロジェクトの間接費

間接労務費

労務費の中でも、開発部門要員の研修時間、部門会議時間など、プロジェクトには直接関係はないものの、間接的に計上される人件費や間接部門の人件費です。

共通

各部門で共通に発生する家賃や水道光熱費が該当します。

ITプロジェクトにおいても材料費はありますが、原価に占める割合が非常に少ないことからほとんど気にすることはありません。また、ITプロジェクト単体ではなく会社として販売管理費が発生します。

プロジェクト管理手法入門ガイド
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プロジェクト原価を計算するには?

ITプロジェクトにおける原価管理では、上記の原価要素を集計して原価計算を行い、プロジェクトごとの収支を明確にすることが大切です。原価管理は、正しく原価計算できているからこそ正確な原価を把握でき、原価低減活動に取り組めます。では、プロジェクト原価は具体的にどのように計算されるものなのでしょうか?

個別原価計算・総合原価計算

個々の製品やプロジェクトごとに原価を計算する方法を個別原価計算といいます。一方、一定期間にかかった費用にもとづき、製造された製品や達成したプロジェクトの数量で割って計算する方法が総合原価計算です。

実際原価計算・標準原価計算

実際に発生した費用にもとづいて計算する方法を実際原価計算といいます。会計基準上はこの方法しか認められていません。対して標準原価計算とは、社内管理目的で使用される計算方法であり、1つの製品を製造したり、1つのプロジェクトを達成したりするのに要する原価の目安を設定しておくことで粗利計算など用います。

部分原価計算・全部原価計算

社内管理目的として製造やプロジェクトにかかった費用の一部だけを計算する方法を部分原価計算といいます。一方、製造やプロジェクトにかかった費用のすべてを原価として計算する方法が部分原価計算です。会計上認められているのが後者であり、部分原価計算は事業業績管理などの評価目的で使用されています。

大半のシステム会社で用いられているのが「個別・実際原価管理」です。プロジェクト別の収支を明確にして、プロジェクト単位での原価を計算し利益率向上や原価低減活動に役立てます。

ITプロジェクトにおける原価計算ステップ

ITプロジェクトにおける原価計算を進めるためには、3つのステップを踏む必要があります。それが「費目別計算」⇒「部門別計算」⇒「プロジェクト別計算」という流れです。それぞれのステップを解説します。

ステップ1. 費目別計算

一定期間中に各部門で発生した原価要素を、労務費・外注費・経費などの費目別に分類いた上で原価を計算します。また、各プロジェクトにおいて直接原価か否かにより、直接費または間接費に分類しましょう。

ステップ2. 部門別計算

原価の構成要素を、原価部門別に分類して計算します。費目別計算で間接費と分類された原価は、統合の原価部門に固有の費用(部門個別費)なのか、あるいはすべての原価部門に共通する費用(部門共通費)なのかを分類しましょう。部門個別費はそのまま当該部門で集計し、部門共通費は一定の基準ルールにもとづいて各部門に配賦します。

ステップ3. プロジェクト別計算

費目別計算と部門別計算を経て、最終的にプロジェクトごとに原価を集計します。プロジェクトに直接かかわる原価はそのまま集計し、間接費に関しては一定の基準に従って各プロジェクトに配賦しましょう。

以上がITプロジェクトにおける原価計算ステップです。言葉で説明すると簡単なように思えますが、組織全体の費用情報を集計して、これらの計算作業を実施しなければいけないため手間と時間がかかります。これを効率良く行うためには、システム化によるプロジェクト管理の徹底が必要です。

各部門からの費用を自動的に集計して、一定のルールにもとづいて間接費を配賦し、プロジェクトごとに正確な原価情報を把握しなければいけません。この機会にぜひ、ITプロジェクトの原価管理について検討してみましょう。

また、原価管理のポイントをまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。

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