転ばぬ先の杖!予実管理をしっかりやる!ための5つのポイント【プロジェクトは現場で起きているんだ!第93章】

 2020.11.11  株式会社システムインテグレータ

突然ですが、現在みなさんが管理されているプロジェクトはきちんと利益が出ていますか?
また、採算の予実管理はプロジェクトレベルで実施していますか?

予定は管理しているが、実績は会計システムで管理しているためプロジェクトレベルの実績集計までは行っておらずプロジェクト単位の採算の予実管理までは実施していないとか、工数の予実管理は行っているが採算管理までは行っていないなど、プロジェクトレベルでの利益・採算管理までは実施していないという声を聞きます。
にも拘らず、最終的にプロジェクトを締めてみたら赤字だったと、何故かそこだけはフォーカスされているとも聞きます。

では、何が原因でどのような予実差異が発生したためにプロジェクトが赤字に転じたのか、PLであれば知りたい筈です。
炎上したプロジェクトであれば、原因は幾らか明らかなのでしょうが、予実差異が発生したタイミングやその後の乖離状況ついては知っておくべきです。

仮に赤字にならなかったとしても、予実の乖離が大きくその原因が不明確な状態だと、PLは次のプロジェクトにおけるコスト見積にその反省を活かすことができません。

予実差異を確認する目的は、プロジェクトの健康状態(当初予定との乖離・赤字傾向)を把握することであれば、会計システムで管理している会計上の実際原価でなくて、プロジェクトの予算作成で利用した管理会計上の標準原価を使って実績計算しても良い筈です。

一部の現場ではExcelなどを駆使して、実績工数をもとに現在のプロジェクトがどのような状態であるか把握しているとも聞きます。

今回は、そんな現場のプロジェクト管理改善のために、採算の予実管理の工夫(ポイント)とツール(SI Object Browser PM(OBPM))の活用を合わせて紹介していきたいと思います。


 

■予実管理の5つのポイントとは

プロジェクト管理のプロセスは、立上げ→計画→実行→監視・コントロール→終結へと進んでいきます。
採算の予実管理を行う上では、特に「計画」と「監視・コントロール」のプロセス管理が重要となります。プロジェクトの予算を策定したら、プロジェクトは実行、監視・コントロールプロセスへと進んでいきます。プロジェクトの実行中においては、予算と実績の乖離が発生しますが、これは仕方のないことだと私は思います。

ただ、状況が把握できていない状態で乖離が発生してそれが拡がっていくのは、プロジェクト管理、特に監視・コントロールができていないと思っています。

そのような事態が発生しないよう、これから予実管理をしっかりやる!ための5つのポイントを紹介します。

1.予算計画の根拠(見積根拠)を明確にする

多くのプロジェクト(特に請負開発)においては、要員など資源獲得計画をもとに最終的なプロジェクト予算(原価見積の作成)を作成・決定していると思います。
プロジェクト予算の策定は一番重要なプロセスであり、プロジェクト全体の採算計画を作り、今後プロジェクトの健康状態を計るためのベースラインとなります。
このプロセスを怠ると今後の予実管理で痛い目にあうことになります。

先々何があるかわからないから予算上の粒度はある程度粗くしている(精度は高くない)、理解はできますが、先々何があるかわからないではなく、きちんとリスクとして洗い出して発生時の対処コストとして見込んでおくことや、プロジェクト全体に影響を及ぼす不測の事態に備えたバッファとして明確にコストとして見込むなど工夫が必要です。
この時、間違っても要員や外部資源(外注費、材料費など)にバッファを積まないようにするのがポイントです。
理由は、要員にバッファを積んでしまうと、アサインされたメンバーは自身が利用可能な工数・原価の上限値と認識し、外部資源についても同様に上限値として交渉・調達してしまう恐れがあるためです。

外部資源については、一括外注費や材料費など直接経費がありますが、予算策定時にはそのコストがいつ発生する想定か、年月レベルで構いませんので見込んでおきましょう。
また、要員についてもいつ・誰が・どんな役割で、月にどのくらいの割合でプロジェクトに関与する予定なのか明確にしておきましょう。
これらが、プロジェクトの全体の採算計画となり、今後の予実管理の指標となります。

転ばぬ先の杖!予実管理をしっかりやる!ための5つのポイント(Vol.93) 1

2.予実の差異チェックを定期的に実施する

プロジェクトの予算を策定したら、次に実行プロセスで発生した現場の作業実績(工数)や発生経費を確認して、月中でどのくらいのコストが発生しているか、計画や進捗実績と照らし合せながら、生産性や予実の差異を確認します。
この時、コスト計算(労務費計算)については、原価見積を作成した時の標準原価を利用します。
計画と実績の予実確認を行うだけでなく、進捗報告と合わせて数字報告を行うと良いでしょう。

定期的に進捗報告(可能であれば週次)を行うタイミングで、予実の差異をチェックして予定と実績の乖離が続いていないか定点チェックすることがポイントとなります。
そのために、EVMを活用するなどして、ある時点までの完了すべき計画(PV)と完了数(EV)、そこに費やした実績(AC)をグラフ表示することで分かりやすくすることもポイントとなります。

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3.差異分析と課題への対処をきちんと行う

前述の進捗報告を定期的に実施することで、予実差異がどのような傾向にあるのか把握することができます。
予定と実績の乖離が続くようであれば差異分析を行い、何が原因となっているのかその発生源を突き止めていきます。
差異の原因が、実は当初見積の精度が荒く当てにならないものであったとするならば、現状の生産性を鑑みて、予算の見直し(原価見積の再作成)をすみやかに実施すべきです。
メンバースキルが足りていないとか、当初スコープから拡張している、外注のパフォーマンスや品質が悪いなど、原因が複数あればそれぞれ課題として管理し、予実差異の発生理由とその対処をすみやかに実施していくことがポイントとなります。
また、この時PLは、上長であるPMや部門長に対しても同じ時間軸で報告とその内容の確認・承認を得ることも重要なポイントとなります。
今後計画外のコストが発生することで、予算を見直す可能性もあるため、事前の交渉準備として捉えてください。

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4.採算状況を主要なステークホルダーへ見える化・共有する

進捗報告を行い、PMや部門長に対して報告することは重要なプロセスのひとつですが、これら状況については、プロジェクトメンバーを含めた主要なステークホルダーに対しても情報共有すべきです。

プロジェクトメンバーにはプロジェクト予算の策定時から情報共有しておくことで、コスト意識につながりますし、仮に利益や期間的に厳しいプロジェクトであれば、最初にPMが背景や目的を説明し、メンバーと情報共有しておかないとモチベーションが低くなり、生産性や品質に影響をきたすことがあります。

主要なステークホルダーに対しては、プロジェクト予算を目標値として公開することで、目標達成させようという意識とモチベーションが高まり、PLも何とか成功させようと作業の効率化や環境改善など生産性向上に取り組む意識が働きます。

また、できるだけ週次の実績値をプロジェクトの採算へ反映させて、予実差異がどのくらいのものなのか、目標値の前後で収まりそうかそうでないのか、メンバー自身が実施した作業実績(工数)や進捗実績(ガント進捗)がプロジェクトにどのような影響を与えているのかなど、見える化を行うことで、メンバー自身がプロジェクトへの貢献を実感し、より高い精度で作業実績や進捗実績を入力するためのきっかけにつながります。

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5.今後のコスト発生予測をもとに着地点を見極める

冒頭で、「最終的にプロジェクトを締めてみたら赤字だった」と説明しましたが、予実差異を分析して課題対処を行った結果、最終的なコストがどのくらいになりそうなのか?できるだけ早くに算出して、全体の状況把握と原価流出を最小限に抑えるための工夫を進めていきましょう。

また、今後のコスト発生予測を行ったうえで、当初の予算との乖離が大きいようであれば、自社のプロジェクト管理規定に則って予算の見直しを実施しましょう。そして、主要なステークホルダーに対して情報共有しておきましょう。
プロジェクト管理の教科書であるPMBOKにおいては、今後の発生コストやプロジェクト完了時における総コストの算出については、以下のように求められるとしています。

  • プロジェクト完了時における総コスト(EAC
    =実績コスト(AC)+(プロジェクト予算(BAC)ー進捗実績(EV))÷(コスト生産性(CPI)×スケジュール生産性(SPI))

  • 今後の発生コスト(ETC
    =プロジェクト完了時における総コスト(EAC)ー実績コスト(AC

PLは、Excelなど駆使してこれらを算出し、資源の再割り当てと予算見直しの根拠とすることで、プロジェクトの立て直しと採算の予実精度を上げて管理していくことがポイントとなります。

Excelを使わなくとも、プロジェクト管理ツールを活用することでもっと効率よく管理することもできます。
数値の集計や計算することはプロジェクト管理ツールを活用することで、自動化されPLは本来のチームマネジメントやパフォーマンス管理に注力することができます。

転ばぬ先の杖!予実管理をしっかりやる!ための5つのポイント(Vol.93) 5

■まとめ

プロジェクト採算における予実管理をしっかりやるためのポイントを紹介してきましたが、PLにとってどんなメリットや成長が見込めるのでしょうか?
以下に纏めてみました。

①精度の高いコスト予測ができるようになる


予実管理の経験を積み重ねることで、できるだけ曖昧を排除した見積りができるようになります。
また、生産性を意識した今後の発生コスト見積り(再見積り)ができるようになります。


②大きなプロジェクトを任されるようになる


成功プロジェクトを積上げて、周りからの信頼を勝ち得たらならば、自然と大きなプロジェクトを任せられるようになります。


プロジェクトで大けがをするリスクが低減する


リスクを曖昧な状態で放置するのではなく、きちんと対処していけるようになります。
そうすることで、赤字プロジェクトは減り、大けがをする確率はぐんっと低くなります。


会計知識が深まり、コスト管理・手法についてメンバーへトレーニングができるようになる


どんぶり勘定の見積を排除し、しっかりとした計画を作成し予実管理ができるようになると、結果的に会計知識が深まるようになります。
また、その経験・知識が後ろ盾となり、新任PLやメンバーへのコスト管理(見積作成手法など)における教育・トレーニングができるようになります。


成功プロジェクトが増え、部門や事業部に対する利益貢献度が大きくなる


自身のプロジェクトの成功が波及して、それに倣ったプロジェクトも成功することで、部門や事業部に対して良い影響を与え、利益貢献につながります。


何だか良いこと尽くめでこれを読むともっと早くにやっておけばよかったと思うかもしれません。そうです、できるだけ早くからコスト管理については鼻が利くようにならないとPLは務まりません。
今後、みなさんがプロジェクトを任されるようになったとしたら、この5つのポイントをもう一度思い出してみてください。
そして、プロジェクト管理がうまくいくようコミュニケーション良く進めていってください。
予実管理の精度を高めていき、プロジェクト管理を成功に導いていきましょう!

なお、原価管理のポイントをまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。


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