プロジェクトマネジメントの基礎についてまとめた本連載、第十回目のテーマは「EVM」です。
なんだか難しく思われそうですが、使いこなせば大変に役立つものがEVMです。
具体的にはEVMを活用すると、プロジェクトのコスト超過のリスクを早期発見することにつながるなど、利益に直結する管理が可能となります。
本記事ではEVMの基本から活用方法まで解説いたします。
EVMとは
EVMとは、Earned Value Managementの略で、プロジェクトが計画した通りに進んでいるかを、期間ごとの計画値(PV)、出来高(EV)、実績値(AC)の積み上げ折れ線グラフ表示によって管理する手法です。計画値と、出来高や実績値を比較することによりスケジュール差異やコスト差異を一目で把握することができます。
プロジェクト開始時点では見積をもとに計画値であるPV(Planned Value)をプロットし、プロジェクトが経過するとその時点の見積に対する出来高をEV(Earnd Value)、実績をAC(Actual Cost)としてプロットしていきます。
EVMグラフの例
プロジェクトマネジメントにEVMが導入されるようになったのは、1967年に米国防総省の調達規則の一部として制定されたものがきっかけと言われています。
その後、国家的プロジェクトのパフォーマンス改善を目的に何度か見直され、EVMは発展してきました。
そして最終的にEVMは、国家的なプロジェクトのパフォーマンス測定のメジャメント(評価方法)になりました。
EVMを導入するメリット
プロジェクト・マネジャーやチームリーダーの経験がある方は、メンバーから、
「来週までに終えるつもりです」
「少し遅れ気味になってきました」
「予定していた作業量が想定より多そうです」
のような報告を受けたことがありませんか。
このような主観的な報告では、進捗管理ができません。
また、このようなことを続けていると、最終的には現場から進捗報告が上がって来なくなってしまいます。この問題の根底にあるのは進捗管理を測る客観的な単位が存在しないからです。
では、単位をコストにすることで、どのようなメリットがあるでしょうか。
WBS(Work Breakdown Structure)をベースにした進捗管理を例に説明します。
WBSで進捗管理を行う場合、計画時に予定開始日と予定完了日を定めてWBSを作成します。
実際にプロジェクトがスタートすると、タスクは実行され実施開始日と完了日といった実績が記録されます。
WBSではこの時点で、「このタスクは予定通り終了した」と判断します。
しかし、WBSでは実際のこのタスクに掛ったコストは管理していないため、「予定した日に終わった」以上のことを把握することができません。
例えば、このタスクが、人月単価100万円(5万円/人日)の人が5日間要するタスクだったとしましょう。
見積としては、5人日で25万円かかる予定のタスクです。
ですが、5日間という期間の内、別のタスクと掛け持ちで、該当のタスクは3人日、(他のタスクを2人日で終了していれば)、期間は5日間ですが、そのタスクは15万円で完了したと計算すべきです。
プロジェクトのコストは実際に働いた人の人月当たりの単価から計算しなければなりません。
そこまで、WBSで管理することは困難です。
しかし、プロジェクトで最終的に求められるのは、コストです。
EVMをプロジェクトマネジメントに活用するメリットは、計画通りのコストで進捗しているかどうかを把握することができることなのです。
EVMの基本となる4つの指標
一見難しそうに見えるEVMですが、基本となる4つの指標を押さえておけば十分に活用することができます。
4つの指標とは、
- PV(Planned Value)
- AC(Actual Cost)
- EV(Earned Value)
- BAC(Budget At Completion)
の4つです。
PV(Planned Value)
PV(Planned Value)とは、計画上の出来高のことです。
これを基準に遅延(コストオーバー)などを判断します。
ベースラインと呼ぶこともあります。
AC(Actual Cost)
AC(Actual Cost) は、実際に掛った実績値のことで、その時点までに開発したコストそのものです。
計画通り開発が進んでいれば、PVとACは同じ値になります。
ACがPVを上回っていたら計画よりも前倒しでコストが消化されている、ACがPVを下回っていたら計画よりもコストが発生していないということになります。
EV(Earned Value)
EV(Earned Value)とは、実際に完成している実績値です。
まさにEVMのEVなので記憶しやすいですね。
EVがPVを上回り(計画よりも実績が上)、同じくACを上回っている(出来高がかかったコストよりも上)、計画よりも低コストかつ前倒しで仕事が進んでいることになります。
EVがPVを上回り(計画よりも実績が上)、ACがEVを上回っている(かかったコストが出来高を上回る)場合、前半に生産性が落ちるなにかのトラブルが起きていることが推測されます。
原因を突き止め、早期にリカバリするように動く必要があります。
この場合スケジュール上は順調なので、WBS上では一見問題なく進んでいるように見えてしまうのがポイントです。
EVMでマネジメントする大きなメリットのひとつです。
EVがPVを下回り(計画より実績が下)、ACを上回っている(出来高がかかったコストよりも上)場合、一見生産性は高そうですが、スケジュールが予定通り進んでいない理由を明らかにし対応する必要があります。
EVがPV・ACを下回っている場合は、計画よりも遅く、計画よりもお金がかかってしまっている状態ですので、問題です。
プロジェクトにはトラブルがつきものですが、深刻なトラブルになる前に、EVと他の指標を比較することが重要です。
BAC(Budget At Completion)
BAC(Budget At Completion)は、完成時総予算のことで、プロジェクトが完了するまでに必要となる全体のコストです。
EVMは、これらの指標をグラフ化することで、計画と比べた作業の遅れやコストの超過などを視覚的に把握することができます。
EV、PV、ACの各指標は、コストを縦軸、経過期間を横軸とするグラフで、3本の曲線として表すことができます。
EVMグラフの作り方
4つの指標でご説明したとおり、計画時点のコスト(PV)、かかったコスト(AC)、出来高(EV)、総予算(BAC)を時間軸で比較することで、状況を視覚的に把握するグラフを作成することができます。
しかしかかったコストや出来高をリアルタイムで把握することは容易ではありません。
WBSでの進捗管理だけであれば、エクセルでも十分可能ですが、人別の単価の管理やタスク別の工数実績を記録する仕組みが必要となり、結果現場の管理が煩雑になってしまうことがあります。
EVMでの管理を行うには、進捗管理、工数管理、リソース管理が必要となるので、まとめて管理することのできる専用のプロジェクト管理ツールを使うことが理想的です。
OBPM Neoであれば、複数プロジェクトの原価・進捗・リソースなどを効率的に管理することが可能です。
EVMグラフの作り方については以下の記事でも詳しく解説していきます。
EVMグラフはプロジェクトの健康診断書
まとめ
いかがでしたでしょうか?
プロジェクトを成功させるには、できるだけリアルタイムにプロジェクトの状況を把握する必要はありますが、一筋縄にいかないのが現実です。
ですが、もっとも避けたいのはプロジェクトの遅延と赤字です。
WBSでの進捗管理だけではなく、EVMも活用することで赤字プロジェクトのリスクを抑えることができます。
EVMの詳しい解説をまとめた無料の資料をご用意しておりますので、ぜひ御社のプロジェクト管理にお役立てください。
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