プロジェクトにおけるコストコントロールの標準技法として、アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)が良く知られており、SI Object Browser PMでもEVMを容易に実現できる機能を標準で備えています。
アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)とは?
元々、EVMとは90年代の米国で財政赤字改善のため、その支出面で大きなウェイトを占めていた米国国防総省がコストコントロールの技法として編み出し、改訂していった概念です。日本のソフトウェア業界においても2009年4月に「進行基準」売上が原則適用されたのに伴い、その根底となる技法として、広く利用されています。 基本的には、
・計画値(PV: Planned Value)
所定の期間内に投入される計画コストであり、承認されたプロジェクト実行予算のこと。
・実コスト(AC: Actual Cost)
与えられた期間内で作業完了までに実際にかかったコスト。
・出来高(EV: Earned Value)
その時点で実際に完了した作業の見なし価値で、[計画コスト×作業進捗率]で計算される。
の3つの数値指標を元に、プロジェクトのコスト差異、スケジュール差異を分析して、プロジェクトをマネジメントする技法です。
SI Object Browser PMを利用したEVM
それでは、SI Object Browser PMを利用して、実際に3指標の関係を見て行きましょう。
上画面は、「富士山トラベル向けERP導入案件」の設計以降のコスト実績(5月まで)ならびに予定(6月以降)をSI Object Browser PM上で自動算出した画面です。画面上では、PV、EV、ACが月毎に計算されていますが、作業完了済みで実績になっている5月までは実線で、6月以降の予定に関してはEV、ACは点線で表現されています。
ここでは、まず、4月の実績を例として説明いたします。
・PV = 11,729,789円
コストベースラインとなる実行予算の2~4月までの労務費や各種経費を集計した計画コストを表示しています。
・AC = 18,882,492円
2~4月までに実際に発生した労務費や各種経費の合計。
OBPMで稼働時間と時間単価を掛けて、プロジェクト毎の労務費を計算し、経費等と合わせて自動集計しています。
・EV = 9,274,259円
2~4月までに実際に完成した分量を金額で表しています。
計算式としては、「実行予算×進捗率」となっており、計画(実行予算)に対して、どの位の進捗率を入れるのが妥当か?という点が、計算のカギとなります。
進捗率の求め方
SI Object Browser PMでは、WBSを工程-タスク-明細 という名称で階層化していますが、各担当毎に進捗率の基準が異ならないように、ガントチャート上で事前にテンプレート化された基準進捗率の考え方を「ものさし」として画面に(右クリックで)表示させ、そこから進捗率を簡単に選択できるような仕組みにしています(下記画面例)。
当然、この「ものさし」は任意に設定できますので、例えば、その作業種別毎に下記画面例とは別に
【着手:0% 完了:100% or 着手:50% 完了100%】
等の任意の設定を各工程別にテンプレート化することができます。
図:OBPM 工程 - タスク別進捗登録
EVMを用いた分析
先程のPV、AC、EVを用いてプロジェクトマネジャが行わなければならない主要な分析として以下の3つが挙げられます。
①コスト差異(CV : Cost Variance)
・CV(コスト差異) = EV (出来高)-AC(実コスト)
CV>0の時は、実コスト以上に作業が進んでいることを示しており、逆にCV<0の時は、予定以上にコストがかかっており、何らかの対策が必要なことを示しています。
②スケジュール差異(SV : Schedule Variance)
・SV (スケジュール差異) = EV(出来高)-PV(計画コスト)
SV>0の時は、計画以上のスケジュールが進捗していることをコスト視点で示しており、逆にSV<0の時は、スケジュール遅延が発生していることを示しており、何らかの対策が必要となります。
③残作業コスト見積(ETC : Estimate To Complete)
・ETC(残作業コスト見積) = (完成時計画コスト - EV)/ コスト効率
(※完成時計画コスト=BAC, コスト効率=CPI=EV/AC)
プロジェクトマネジャなら誰でも必ず聞かれる質問があります。「あと、いくら費用がかかるのか?」 ETC(残作業コスト見積)は、こういった質問に回答するために必要な計算式です。
まず、「完成時計画コスト(BAC)- EV 」で現時点で、あとどの位、計画(見積)コストが残っているかを算出しますが、これには今までの作業生産性が考慮されていませんので、生産性を「EV/AC」というコスト効率であるCPI(コスト効率)で割ることにより、過去実績に基づく残作業コストが算出されることになります。
SI Object Browser PMでは、日々のプロジェクト進行状況をこのようなEVMを利用して、容易にチェックする機能を豊富に備えておりますので、まずはお試しを頂ければと思います。次回は今回のEVMを利用した進行基準の考え方をご説明する予定です。
株式会社システムインテグレータ 多田
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