プロジェクト管理を適正に行うためには、当初の計画と現状にどのくらいの差異があるのかを把握することが重要です。その際に活用されるのがCPIやSPIという評価指標です。本記事では、これらの指標の概要や計算方法、EVMとの関係などについて解説します。
CPIとは
CPIとは、コスト効率指標(Cost Performance Index)の略であり、プロジェクト管理における主要な評価指標のひとつです。この指標は、事前に設定した予算計画と比較して、特定の時点でコストが実際にどの程度発生しているのかを評価します。
CPIを適宜測定することで、コストが予定通りの範囲に収まっているのか、そうでないのかを把握できます。必要に応じて予算の調整を効率的かつ的確に行うことが可能です。
SPIとは
SPIとはスケジュール効率指標(Schedule Performance Index)の略称です。先述のCPIは「コスト」が計画通りに消化されているかを示す指標ですが、SPIでは「スケジュール」に焦点を当てます。
つまり、SPIは計画段階で設定したスケジュール通りに案件が進捗しているか遅れているか、あるいは早いのかを把握するために活用される指標です。SPIを適宜確認することで、仕事の割り振りや人員配置などの調整を効果的に行えます。
CPI・SPIを構成する要素
CPIとSPIを測定するには、3つの要素が必要です。以下では、それぞれの概要について解説します。
PV(Planned Value=出来高計画コスト)
計画段階において、プロジェクトの遂行に必要な各作業または各フェイズに割り当てられた予算のことです。つまり、計画通りに作業が進行した場合、その段階で発生が予想されるコストを指します。
AC(Actual Cost=総コスト)
特定の時点までに現実にかかった合計コストのことです。つまり、計画の実施に伴って実際に支出された費用を意味します。事前の計画通りに予算が消化されているなら、PVとACは一致します。一致しない場合は進捗状況に問題があるため、問題を特定して解決することが必要です。
EV(Earned Value=出来高実績値)
ある時点で完了済みの作業の出来高です。これは、「予算の観点から見た作業全体の進行状況」を表すために使われます。たとえば、計画段階で設定された全体予算が100万円で、その半分の作業が完了済みなのであれば、EVは50万円です。
CPI・SPIの計算方法
CPIとSPIを測定する際には、前述の要素を基に計算します。具体的な計算方法は以下の通りです。
CPIの計算方法
CPIは、EVをACで割り算することで測定します。したがって、計算方法は以下の通りです。
CPI = EV ÷ AC
この結果が1を上回る場合、それは計画段階で想定していたよりも支出が抑えられていることを意味します。逆に、CPIが1を下回ったとしたら、それは計画していたよりも多額の支出が生じているということです。この場合は、今後の支出を意識的に抑制したり、予算計画そのものを見直したりする必要があります。
SPIの計算方法
SPIはEVをPVで割ることで計算します。つまり、計算式は以下の通りです。
SPI = EV÷PV
SPIが1を上回る場合、それは当初の計画よりも早く作業が進行していることを意味します。逆に、1を下回る場合は計画よりも遅延していることになります。したがって、SPIが1未満の場合は、計画通りの時期に作業を完了させるために、人員補充などによって作業スピードを加速させることが必要です。
CPI・SPIを理解するのに欠かせないEVMとは
CPIとSPIは、作業の進捗状況や支出状況が計画通りになっているか把握するための重要な指標です。しかし、これらの指標を個別に見るだけでは、プロジェクト全体のパフォーマンスを理解するのには限界があります。そこで重要になるのが、CPIとSPIをはじめ、多様な指標を組み込んで統合的にプロジェクト全体の評価を行うフレームワーク「EVM(Earned Value Management)」を活用することです。
EVMは、プロジェクトの予算、支出、スケジュール、進捗状況などを一元的に管理する手法を指します。これにより、プロジェクト全体のパフォーマンスを定量的に評価可能です。EVMではCPIとSPIを含む多くの指標を算出できます。これらの指標を個別に見るのではなく、互いに関連づけて全体として把握することで、より深い洞察を得ることがEVMの目的です。
たとえば、作業の進捗が予定より遅れると困る理由のひとつに、コストが当初設定した予算を超過してしまうことがあります。しかし、たとえスケジュールが遅れていても(=SPIが1未満でも)、コストが予定より少なく済んでいるのなら(=CPIが1以上であるなら)、コスト面での心配は少ないことが分かります。
このように、CPIとSPIを単独で解釈するのではなく、組みあわせて評価することで、全体の状況をより正確に把握できます。したがって、CPIとSPIだけでなく、それらを含むより広範なフレームワークであるEVMを理解することが、適切なプロジェクト管理には欠かせません。
EVMで算出できる数値
EVMでは、SPIとCPIの他にも「SV」「CV」「ETC」「EAC」「VAC」といった数値を算出できます。それぞれの特徴と計算方法は以下の通りです。
・SV(Schedule Variance)
スケジュール差異とも呼ばれ、EVからPVを引いた値です。ある時点までのスケジュールが遅れているか、早まっているかを示す指標です。SVがプラスなら進捗状況は順調、マイナスなら不調を意味します。
計算式:SV=EV-PV
・CV(Cost Variance)
コスト差異とも呼ばれ、EVからACを引いた値です。現時点でコストが予算内で収まっているか、オーバーしているかを示します。CVがマイナスになっている場合が、予算を超過している状態です。
計算式:CV=EV-AC
・ETC(Estimate To Complete)
現時点からプロジェクトの完了までに発生すると予測されるコスト残額のことです。残作業コストとも呼ばれます。計画段階で設定された予算のBAC (Budget At Completion)からEVを引いた数値を、さらにCPIで割って算出します。
計算式:ETC=(BAC-EV)÷CPI
・EAC(Estimate At Completion)
現時点のペースでコストを使い続けた場合、プロジェクト全体が完了したときに総額でどれほどコストが必要かを示すものです。日本語では完成時総コスト見積りを意味します。特定の時点までにかかった合計コストのACに、残作業コストのETCを加えて算出します。
計算式:EAC=AC+ETC
・VAC(Variance At Completion)
完了時コスト差異とも呼ばれ、BACとEACのギャップを示します。この数値が小さいほど、コスト管理が適性に行われたことを示します。
計算式:VAC=BAC-EAC
まとめ
CPIとSPIは、プロジェクトのある時点においてかかったコストと作業の進捗状況を把握するための重要な指標です。これらを理解し、適宜活用することで、プロジェクトの各段階で状況を的確に把握し、施策の調整や修正などを行いやすくなります。
プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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