プロジェクト収支管理の精度をあげる ~ERPだけでは実現できない収支管理の精度向上~(Vol.61)

 2019.08.26  株式会社システムインテグレータ

当社は2月期決算のため、このブログが掲載される8月は中間決算となります。上場企業では、主に四半期決算が導入されており定期的に業績発表が行われておりますが、中間決算は1年の折り返し地点となりますので、当期予算を達成するために上期の実績を振り返る時期でもあります。

プロジェクト収支管理 はじめに

当社のコア業務はソフトウェア開発、システム構築であり、支出の多くが「人件費」となります。当期予算を達成するためには、売上目標が計画を上回ることはもちろんですが、各プロジェクトの実績工数が受注時の計画工数を超過すると利益目標の達成が難しくなりますので、プロジェクト管理がとても重要です。当社と同じく工数の予実管理がプロジェクトの損益を左右する業種は数多くあります。例えば・・・

  • 少量・多品種を扱う製造業(機械メーカーなど)
  • 個別受注生産型の設備メーカー
  • 広告やデザインの制作会社
  • エンジニアリング会社(機械エンジニアリングや建設エンジニアリングなど)

本稿では、工数の予実管理が重要なプロジェクト収支管理について紹介します。

プロジェクト収支管理とは

プロジェクト収支管理は、期初に設定した予算を達成するため、プロジェクトごとの原価を適切なタイミングで把握することが重要です。例えば、仕掛中のプロジェクトの収支が完了時まで把握できないような状態だとプロジェクト収支管理の精度はあがりません。プロジェクト収支管理を行うためには、予算、売上、原価の3つの要素をしっかりと把握する必要があります。

予算

企業では、期初に当期予算(売上・利益目標)が設定されます。予算を設定する段階では年度内に始まる全てのプロジェクトが把握できないため、過去の売上実績や仕入実績、当期の要員計画から人件費を予測して予算が組まれます。

売上

新しい期がスタートすると営業部門を中心に、売上目標達成に向けて受注活動が行われます。新規商談が発生すると、顧客要件に合わせて、外注費、材料費、経費、計画工数を積算した見積書が作成され、見積条件に合意し受注するとプロジェクトが始まります。この受注件数が当初目標を上回れば、売上予算を達成する可能性が高くなります。

原価

プロジェクトでは、外注費、材料費、経費など労務費以外にも様々な原価が発生しますが、労務費以外の費用は見積段階である程度正確に把握することができます。しかし労務費は可視化が難しく、過去に経験のないプロジェクトや、仕様変更などによって大きく変動する可能性があります。ここをしっかり押さえておかなければ利益予算の達成ができません。

ポイント

弊社が提案させていただくお客様には、FP法(ファンクションポイント法)を用いて難易度や顧客要件を係数化し見積積算を行っている会社もあれば、過去の類似プロジェクトを参考に見積が作られているケースもあります。後者のように、勘と経験によって計画が立てられていると計画時のリードタイムが最適であるか判断が難しくなります。計画時のプロセスを標準化し可視化することが重要です。

プロジェクト管理手法入門ガイド
プロジェクト管理ツール 比較ガイド

プロジェクト収支管理の精度が上がらない要因

プロジェクト収支の予測精度が悪い企業には共通の課題があります。

  • 売上、仕入、経費などプロジェクト収支に関する情報が複数システムに分散している。
  • プロジェクトごとに管理用Excelシートが多数存在する。
  • システムがたくさんあるため、実績入力の鮮度が悪い。

収支に関する情報が分散していると、各システムから情報を集めてこなければプロジェクト収支を把握することができません。リアルタイムにプロジェクトの状況が把握できなければ、異常プロジェクトが発生していても検知が遅れ、時には大きな赤字プロジェクトになる事があります。他にも、管理職が収支を把握するための集計業務に多くの時間を費やしていたり、システムが沢山あるため、現場が毎日実績を登録できないといった弊害もあります。

プロジェクトの計画と実績が別々に管理されている企業も少なくありません。各プロジェクトでは、要員計画や進捗管理のための個別Excelが存在しています。計画段階では勘と経験により予定工数が積算されていることも多く、受注時の積算工数と完了時の実績工数に隔たりがあるプロジェクトも多いようです。また、プロジェクトごとにExcelで管理していると、例えば、あるプロジェクトの計画を変更した時、影響を受けるプロジェクトの計画変更が漏れてしまうなど、後に進捗遅れの要因となってしまいます。

ITシステムによりプロジェクト収支管理の精度を上げる

プロジェクト収支の精度を上げるには、分散管理されているプロジェクト情報の統合管理が必要です。Googleで、プロジェクト(スペース)収支管理と検索すると、上位にはERPパッケージが数多く表示されます。実際、個別原価管理機能を持ったERPパッケージには、見積から、受注、購買、売上、債権・債務管理まで、会計以外のプロジェクト収支管理に必要なほとんどの機能が提供されておりますので、分散しているプロジェクト情報を一元管理するにはとても適しています。

ERPの導入だけでは損益予測の精度向上は不十分

当社では、プロジェクト収支管理ができる、統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM」(以下、OBPM)を販売しています。OBPMは業務パッケージではないため、顧客向けの見積を作成したり、検収後の請求処理、債権・債務を管理する機能はありません。
前章で紹介したとおり、ERPパッケージは商談時から債権の回収まで、ほとんどの業務がひとつのパッケージで完結しますが、ERPパッケージを導入済のお客様からも、プロジェクトの損益予測の精度を上げたいので提案してほしいといった依頼を多くいただいております。

何故、統合管理ができるプロジェクト管理ツールが求められるのでしょうか?

統合型プロジェクト管理ツールによるプロジェクト収支管理

ERPパッケージを導入する事で、プロジェクトごとの原価の内訳まで把握する事はできますが、あくまでも実績ベースの管理となります。 損益予測の精度をあげるには、実績だけではなく計画の精度も上げる必要があります。プロジェクトは、様々な要因で計画変更が発生します。計画の変更によって影響を受けるプロジェクトを俯瞰的に把握し計画を見直さなければリードタイムを最適化することはできません。この問題を解決できるシステムが、統合型プロジェクト管理「SI Object Browser PM」なのです。

最後に収支管理に関連するOBPMの代表的な機能を紹介します。

ドメインマスタ

ドメインマスタでは、業務種別ごとに、工程・タスク、工程別進捗率、機能別の標準工数設定などプロジェクトの17項目のプロセスをテンプレート化することができます。
新規プロジェクトの登録時に、テンプレートを指定することで17項目のプロセスが計画にセットされますので、各プロジェクトに合わせて計画を調整することで、ヌケモレない計画を短時間で作成できます。
例えば、機能別の標準工数を標準化しておき、定期的にリードタイムを見直すことで見積の精度をあげることができます。

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プロジェクト別収支管理機能

プロジェクト採算管理画面では、契約金額に対して実績原価と当月以降の予定原価を積み上げてプロジェクト収支予測を確認することができます。
プロジェクトは、見積段階、受注段階、プロジェクトが開始されてからも仕様変更などによって計画が変更されますが、OBPMでは計画変更時に実行予算を差し替えることで、常に最新の計画に対してプロジェクト収支を把握することができます。
原価の内訳も、労務費、外注費、材料費、経費、販管費、共通費別に管理することができて、変動費や材料費の原価の内訳まで把握できます。また、当月の月中参考原価や月末時点の原価予測を表示することも可能です。

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プロジェクト一覧機能

OBPMでは、全社、部門別にプロジェクト一覧で表示することができます。コスト超過や進捗遅延の閾値を登録しておくと、この値を超過したプロジェクトは黄色や赤色でアラートを表示することができます。経営層や部門長は、数多くのプロジェクトから異常の予兆を見つけて早期に改善することにより、採算の悪化を未然に防ぐことが可能です。

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部門別プロジェクト収支一覧機能

OBPMでは、経営層や部門長が組織別にプロジェクト収支を確認する機能も用意されております。この画面では、プロジェクト別、月別にプロジェクトの売上、原価、利益を把握することができます。また、受注済のプロジェクトだけではなく、これから受注を予定しているプロジェクトも見込登録しておけば、期末の着地予測も可能です。

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本稿では、OBPMの収支管理機能を中心に紹介しましたが、他にも精度の高いプロジェクト計画を短時間で作成したり、計画変更時も柔軟に対応できる機能が提供されております。また、工数や経費実績を簡単に登録する画面や、外部システムとデータ連携が可能なインターフェースも用意しております。
すでにERPを導入済のお客様に対する導入事例も多数ございますので、プロジェクト収支管理の強化にご興味のあるお客様は、ホームページで詳細機能をご確認ください。

製品紹介ページ:https://products.sint.co.jp/obpm/

また、原価管理のポイントをまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。

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