原価率の計算方法と目安まとめ、原価率が高い原因と対策方法とは

 2023.09.15  株式会社システムインテグレータ

長きにわたり会社を経営するには、利益を生み出し続ける必要があります。効率的に利益を上げていくには、売上だけでなく、原価率を抑えることも重要です。しかし、原価率は会社の規模や業界ごとに目安が異なるため、どの程度を目標にすればいいのか悩む方もいるでしょう。

この記事では、「原価率の計算方法」や「企業規模・業界別の原価率の目安」、そして「原価率が高い場合の原因と対策」について解説します。

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原価率とは

原価率とは、「売上高(商品やサービスの提供により得られた売上金額の合計)」に対する「原価(売上に直接かかった費用)」の割合のことです。

例えば、製造業の場合、「材料費」「製造部門の人件費」「経費(水道光熱費など)」「外注費」など、商品の製造時にかかった費用が原価に該当します。この原価を分析し、適切に管理することで、原料のロス削減とコストの抑制につながり、利益向上が見込めるのです。

原価率は、売上に対しコストがどの程度かかっているかを示すため、原価の効率化を図る際に重要な経営指標といえます。

原価率の計算方法

原価率は、以下の計算式で求められます。

原価率(%) = 売上原価 ÷ 売上高 × 100

売上原価については、製造業などの場合は材料費といった項目を詳細に集計し、製造している製品の価値を把握することが重要です。一方、小売業や販売業などの場合は、仕入高を基準に在庫を考慮したうえで計算します。売上原価の計算方法は次の通りです。

売上原価 = 仕入高 + 期首商品棚卸高 - 期末商品棚卸高

この他、棚卸減耗(棚卸で差異が出ること)や商品評価損(在庫として残った商品の価値が下がること)も考慮する必要があります。棚卸減耗分は、原価の範囲内であれば「売上原価の内訳に含める」もしくは「販売費及び一般管理費として計上する」のが一般的です。一方、商品評価損については、災害などに起因する特別な損失でない場合は「売上原価の内訳に含める」のが原則になります。棚卸減耗損や商品評価損を原価に含める場合は、その額を売上原価の計算に加えたうえで算出します。

原価率の計算事例を紹介します。あるレストランにおいて、当期の売上高や仕入・在庫状況は以下の通りでした。

  • 当期の売上高:1,000万円
  • 当期の食材の仕入高:600万円
  • 期首の食材の棚卸高:20万円
  • 期末の食材の棚卸高:30万円

この場合の売上原価は、

600万円 + 20万円 - 30万円 = 590万円

になります。つまり、原価率は、

590万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 59%

となります。

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原価率の目安

原価率の目安は、企業の規模や業界により異なります。例えば、建設業と飲食業では原価率は大きく変わります。ここでは、中小企業庁が実施した「中小企業実態基本調査」に基づき、原価率の目安を解説します。

企業規模別

まずは、企業規模ごとの原価率をまとめました。

企業規模(人数)

原価率(%)

個人企業

41.9%

5人以下

67.0%

5~20人

72.2%

21~50人

74.4%

50人以上

77.8%

参考:中小企業実態基本調査

従業員数が多く規模の大きい企業の方が、原価率は高い傾向にあることが分かります。

業界別

中小企業庁の調査結果では、国内の企業における原価率は平均73.1%となっています。続いて、業界別の原価率の平均値は以下の通りです。

業界

原価率(%)

宿泊業、飲食サービス業

37.3%

情報通信業

53.2%

不動産、物品賃貸業

56.0%

小売業

69.6%

建設業

76.5%

製造業

78.9%

卸売業

83.9%

参考:中小企業実態基本調査

製造業では人件費が売上原価に含まれるため、原価率は高くなる傾向があります。一方、販売業やサービス業の場合、売上原価は仕入費用のみのため原価率が低くなる傾向があります。

飲食業においては、原価率の目安はおよそ30%が一般的です。飲食業の原価の大部分は材料費であるため、値段を食材コストの3倍以上に設定しないと、人件費や家賃を補えず利益が十分に出ないとされています。しかし、飲食業の中には意図的に原価率を40%程度にし、質の高い食材で差別化を図る飲食店もあるようです。

なお、原価率の業界別平均値はあくまで目安であり、自社の経営方針や事業戦略、扱っている製品やサービスに応じた適切な原価率を考えることが重要です。

原価率が高くなる原因

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原価率が高ければ、十分な利益は得られません。そのため、原価率が高い場合は、その原因を把握することが大切です。原価率は、「売上原価 ÷ 売上高 × 100」という計算式で算出されるため、原価率が高い場合は「売上原価が高すぎる」または「売上高が低すぎる」の2つの原因が考えられます。

しかし、原価率が昨年と比較して高かったとしても、原価率は景気といった外部環境の影響を大きく受けるため、必ずしも悪いとは言い切れません。原価率が同じ時期の同業他社と比べ高かったり、業界平均と比べて悪かったりする場合は原因を分析する必要があります。

ここでは、原価率が高くなる原因を3つ解説します。

仕入価格が高い

仕入価格が高すぎると、原価率が高くなります。例えば、仕入先が1社だけの場合、その仕入先への依存度が高いことを相手は理解しているため、価格交渉をしても強気に出てくるでしょう。そうなると仕入価格は高くなり、場合によっては売上高がある割には利益を伴わないというケースも出てくるのです。

一般的には、取引先の多い方が価格決定力は高まりやすいとされています。ただし、仕入先を分散しすぎると仕入規模が小さくなるため、取引量を盾とした価格交渉ができなくなり、仕入価格が高くなります。結果、原価率も高くなります。

販売価格が低すぎる

販売価格が低すぎると同じ数の商品を売り上げた際の売上高は低くなるため、原価率は高くなります。例えば、ある商品の売上を増やすために値引き販売を行うと、その分売上高は低くなるため原価率も高くなってしまうでしょう。

値引販売は、顧客の購買意欲を高める手段の一つですが、一旦値引きすると元の価格に戻しにくく、場合によっては価格競争に巻き込まれてしまう恐れがあります。

ロス率が高い

ロス率が高いことも、原価率が高くなる原因です。ロス率が高くなる原因としては、以下のような事例があります。

  • 製造業:
    食品工場で使用している機械が老朽化したり故障したりすると、本来の性能を発揮できず食材のロス率は高まるでしょう。

  • 飲食業:
    調理をする従業員への教育を十分に実施しないと、スキルが不足し調理中に余分に食材を廃棄してしまい、ロス率が高まる恐れがあります。

  • 販売業:
    在庫管理を不適切に行うと、在庫が長期滞留し不良品化します。その結果、ロス率が高まり原価率が悪化してしまいます。

また、製造業や飲食業では機械の老朽化や従業員のスキル不足により、ロスを見越して材料を本来よりも多めに仕入れることがあります。その結果、ロス率は継続的に高くなり、さらに原価率が悪化します。

原価率を下げる方法

原価率が高い原因の分析が終わったら、次は原価率を下げる具体的な施策に移ります。その際、原価率を下げる方法にはいくつかあるため、原因ごとに適切な対策を選ぶようにしましょう。ここでは、原価率を下げる具体的な方法を解説します。

売上構成を見直す

一般的に企業は、複数の商品を販売していますが、類似品でない限り商品ごとに原価率は異なります。そのため、まずは商品の原価を比較し、原価率の低い商品を主力商品とするなど、売上構成を見直して原価率の改善を図ります。また、原価率の低い商品をおすすめ商品として、POPやチラシなどで訴求する方法なども有効です。他にも、原価率の高い商品と低い商品を抱き合わせにするなど、セット販売する方法もあります。

仕入先・仕入量を見直す

仕入先や仕入量を見直すことで、原価率を改善できる可能性があります。具体的な施策は以下の通りです。

仕入先の見直し:
新規で仕入先を開拓し、より仕入価格の安い業者を見つけられれば、売上原価を下げられます。ただし、いくら安いからといって製品のクオリティを落としてしまえば、顧客が離れ売上が落ちてしまうでしょう。そのため、仕入先を選定する際は、価格と品質のバランスをよく考慮したうえで検討することが大切です。
また、仕入先を集中させることでロットの大きい取引をし、その分仕入単価を下げてもらえるケースもあります。反対に、仕入先を複数社に分散することでリスクを軽減しながら価格面で比較を行うことで、優位な交渉が可能となり仕入価格を下げてもらえるでしょう。

仕入量の見直し:
余分に仕入れを行うと、ロスが発生したり、長期保管に伴う商品価値の劣化につながったりする恐れがあります。この際、年間を通して売れるような商品の場合は影響が少ないものの、時期によって売上が大きく左右されるような商品の場合は、過剰な仕入は大きく利益を損ないます。そのため、原価率が高い場合は、仕入量が適切かの分析も行いましょう。
なお、仕入量を適切に管理するには、仕入の予算を立てる際に前年の売上データなどを参考にするのが有効です。また、大ロットではなく小ロットで仕入れを行えば、仕入量をコントロールしやすくなります。

在庫管理の方法を見直す

在庫管理が適切にできていないことも、原価率を悪化させる要因となります。在庫管理が適切にできていない企業では、商品がいつまでも倉庫に保管されることになり、市場のニーズの低下により商品価値が下がってしまうでしょう。また、商品が適切に管理されない在庫ロスにつながる恐れもあるため、結果的に原価率が悪化してしまいます。

原価率が高い場合は、在庫管理の方法の見直しが重要です。例えば、棚卸を年度末の1回しか実施していない状況であれば、毎月実施することで在庫状況を把握できる体制にするなどの対策を行いましょう。在庫ロスをできるだけ発生させないために、以下の点についても見直すと効果的です。

  • 「先入れ先出し」を徹底し、古いものから順に販売されているか
  • 保管場所が適切であるか
  • 製造業の場合は、不良率(生産量に占める不良品の割合)が高くないか

在庫管理においては、人的なミスによるロスが発生しないよう、必要に応じて手順書なども必要になります。

販売価格を見直す

事業を行っていると、原材料価格が高騰することもあるでしょう。その際、販売価格を据え置きのままにしていると原価率は上がってしまいます。そのため、販売価格が原材料価格に見合わない場合は、必要に応じて販売価格の見直しも必要です。なお、販売価格を決める際は以下のような方法があります。

マークアップ法:
仕入原価に利益を上乗せして価格を設定する方法です。マークアップ価格設定とも呼ばれ、主に卸売業者や小売業者による売価決定方式です。売り手市場、もしくは競争が激しくない市場に有効です。

プライスリーダー追随法:
市場におけるシェア率が高く、価格影響力の高い企業に追随して価格を決定する方法です。業界において強い存在感を持ち、顧客からの信頼も厚いリーダー企業の価格設定を倣う手法といえます。

名声価格法:
品質の違いや希少性などでプレミアを付ける価格決定方法で、価格が高いほど価値があるものと判断する消費者心理から考えられた手法です。商品やサービスに高い価格が付いていると該当品の魅力をさらに高めるために、名声価格法が用いられることがあります。なお、プレミアム価格法や威光価格法とも呼ばれます。

販売価格を見直す際は、顧客のニーズや市場価格などを考慮したうえで価格決定を行うことが大切です。

歩留まりを改善する

歩留まりとは、「投入した材料に対して実際に得られた良品の割合」のことです。特に製造業では生産能力を測るうえで重要な指標となります。歩留まりを改善すれば、材料費を削減したり、製造時に発生する労務費や電力費などを削減したりできるため、原価率の改善につながります。歩留まりを改善するには、以下のような取り組みが有効です。

  • 製造現場における設備や機器の改善
  • 従業員の技術向上
  • 製造条件の見直し
  • 原材料の品質の見直し

まとめ

会社経営において、原価率は重要な要素です。原価率が低いほど収益性が高いことを示すため、適切な原価率を目指すことは利益につながります。しかし、原価率の目安は企業規模や業界によって異なるため、自社が所属する業界の目安を参考にするとよいでしょう。また、原価率が高い場合は仕入価格が高いなどいくつかの原因が考えられます。将来にわたって事業を存続させるためにも、原価率を分析し適切な対策を講じることが大切です。

原価管理のポイントをまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。

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