【第12章】EVMはプロジェクト状況の健康診断書:EVMとは

 2017.04.27  株式会社システムインテグレータ

EVMとは

Earned Value Management(アーンド・バリュー・マネージメント)を略してEVMといいます。プロジェクトが計画した通りに進んでいるかを、期間ごとの計画値(PV)、出来高(EV)、実績値(AC)の積み上げ折れ線グラフ表示によって管理する手法です。計画値と、出来高や実績値を比較することによりスケジュール差異やコスト差異が一目で把握できます(例:図1)。
プロジェクト開始時点では見積をもとに計画値であるPV(Planned Value)をプロットし、プロジェクトが経過するとその時点の見積に対する出来高をEV(Earnd Value)、実績をAC(Actual Cost)としてプロットしていきます。

と説明したところで、出来高(EV)と実績(PV)って日本語だと同じようですが、どう違うのでしょうか。実は出来高は“進捗度合”で実績は実際にかかったコスト(原価)を表します。例えばチーズケーキを120個焼いて夜のパーティに間に合わすことになったとしましょう。1時間当たり10個焼けると見積もって、朝6時から焼き始めて、夕方6時までに焼き終わる計画を立てました。時給1,000円のバイト君が予定通り作り終われば12,000円バイト代で済みますね。

2時に進捗状況をチェックしたところ、スタート時の要領が悪かったこともあって40個しか焼けていません。この場合、出来高(EV)は40個(33.3%)、実績(AC)は1,000円×8時間の8,000円(66.7%)となります。もともとの計画(PV)は2時時点で8,000円かかっていて、80個できている予定だったので、「AC(原価)は計画通りなのに出来高が半分」ということになります。

PVは出来高(EV)に対する計画値であるとともに、コスト(AC)に対する計画値でもあります。EVMグラフで3つの値の大小関係を見ると、進捗とコストの両面でプロジェクト状況を一瞬で把握することができるのです。

01-6.png図1:EVMグラフ

経済産業省が「EVM活用型プロジェクトマネジメント導入ガイドライン」を公開したのが2003年のことです。そこからプロジェクト管理においてもEVMを取り入れる企業が増えています。プロジェクト管理を組織で体系化している企業においては必ずといっていいほどEVMを取り入れています。

思わず、プロジェクト管理においてEVMがどんなに有効な管理法かと期待してしまうのですが、実際はプロジェクト全体を俯瞰するには最適な手段といった感じでしょうか。いわばプロジェクト状況の健康診断書なのです。健康診断書があれば、知らない人の身体でも一目で良い状態なのか、健康に注意した方が良いのか健康状態が把握できます。このように客観的にプロジェクト状況を一目で把握できるのが、EVMが脚光を浴びている理由なのです。不健全な身体の人の健康診断書のあちこちに*マークが付くように、うまく行っていないプロジェクトは大抵EVMに兆候があらわれてきます。

一般にプロジェクトへの関わりが少ないと、問題をキャッチしづらくなります。部門長やPMOといった立場の人は、このEVMを監視することによって個々のプロジェクトが健全な状態であるかを瞬時に判断することができます。
母親(父親)が家族全員の健康を管理するように、組織において各々のプロジェクトが健康かをチェックするのです。病気と同じく早期発見早期治療が大切です。病みかけた時点で適切な対処をすることで健全な状態を保てるのです。

EVMの作成方法

では実際にEVMを作成してみます。EVMの基本は金額で換算してPV(Planned Value)、EV(Earnd Value)、AC(Actual Cost)を算出するとされていますが、システムにおける金額とはどのように計算すればよいのでしょうか。

金額に換算するのに1つのシステムを開発するのに細かに見積をしていき、ここまでできたら100万円相当と基準を設ける必要があります。人によって単価も異なりますので結構大変な作業です。

そこで簡単な例でEVMの書き方を説明します。ある楽観的な若手社員Rさんが、分析好きのB課長に「業務効率化のためのツールを作ってほしい。言語はJavaで…。仕様は…。ついては進捗をEVMで管理するように。私の管理工数は除いてよい。」といわれたとします。
そこでRさんは計画を立てます。Rさん1人で開発します。単価は450,000円/150時間(3,000円/1時間)。設計、コーディング、テスト工程にわけ、1週間ごとの計画を立てます。

PV:計画値

図2のように5週間かけて完成させる計画を立てます。工程別に1週間でどれくらいの作業を実施するかを見積もっていく作業です。例えば設計工程は20時間かかると見積りし、1週目で全て仕上げる計画とします。Rさんの時間単価は3,000円ですので、1週目のPVは60,000円となります。コーディングやテスト工程についても同様に計画します。1週間ずつの計画金額の積み上げが計画値PV(Planned Value)となります。そして最終的な金額がプロジェクトの実行予算(見積原価)となるわけです。

前述のとおり、PVは金額(AC)の計画であると同時に進捗(EV)の計画でもあります(最終的な進捗が100%)。そのため本来ならば各地点において金額と同時に進捗の計画値も持つ必要があるのですが、一般的には“原価比例”の考え方で原価が30%かかったら進捗も30%あるはずという計画に基づいて原価計画(実行予算)のみをプロットしています。

02-7.png図2:PV

ここでは、工程や時間を見積の基準としました。システム開発では成果物が測りづらくなります。タスクが完了した、成果物が完成したら幾らといった基準を決めておきます。

EV:出来高

実際に作業に入って、1週間ごとの進捗を管理していきましょう。図3の例では、設計60,000円、コーディング300,000円、テスト90,000円の3つのタスクの進捗を元にEV管理しています。
1週目設計はできたがレビュー後の見直しができておらず、進捗90%としています。設計の計画値60,000円に対して90%の進捗であれば、金額にして54,000円分できあがったものと換算できます。プロジェクト全体の金額が450,000円なので、1週目の進捗(EV)は12%となります。
タスクの進捗は個人によってバラつきがでますので基準を設けるのも良い方法です。設計書ができた時点で60%、レビューが完了したら80%、レビュー指摘事項を反映し完了したら100%といった基準を設けると誰でも同じ評価軸となり精度が高まります。プロジェクトの人数が多くなるほどこういった基準やタスクの管理が重要になります。

最終的にRさんは計画より1週間遅れてしまいましたが、ツールを完成することができました。各タスクの出来高換算値(タスク全体にかかる金額×進捗率)を、1週間ずつ積み上げていくとプロジェクト全体の出来高EV(Earnd Value)が算出されます。

03-6.png図3:EV

[RELATED_POSTS]

AC:実績

では実際にどれだけの作業時間がかかっているでしょうか。1週目は作業時間20時間を費やしました。作業単価3,000円×20時間=60,000円となります。Rさんの週ごとの作業時間をもとに作業コストを求めます。この実際のコストを1週間ずつ積み上げていくとAC(Actual Cost)が求まります。

04-4.png図4:AC

EVMグラフ

最後にPV、EV、ACをグラフにします。図5がPV、EV、ACを実際にプロットしたグラフです。これがEVMグラフの作成方法です。この例では1週間ずつ計画をたてていますので本来グラフも1週間単位で実績を反映していくことになります。2週目くらいにはまあ確実に遅れるだろうと判断がつくのがEVMのわかりやすいところです。
横軸ではPVとEVの差によりスケジュール差異が測れます。PVでは5週目に終わる予定なのにEVは6週目まで伸びていますのでスケジュール遅延です。また縦軸ではEVとACの差によりコスト差異が測れます。EVでは450,000円の出来高に対し、ACは570,000円となりコスト超過となっています。

05-3.png図5:EVMグラフ

実際のプロジェクトでは「見積が甘かったです。」といった楽観的すぎるリーダーではプロジェクトはうまくいきませんし、「EVMでしっかり管理して予定通り行うようにいいましたけどね…」といって具体的な指示や対処をしない課長もどうかと思います。EVM管理に限った話ではありませんが、しっかり計画(見積)し実行、必要に応じて計画を見直す、問題に対処するといった基本的なプロジェクト管理が必要になります。

プロジェクト管理に関するお役立ち資料

SI社でのEVM管理

当社ではOBPMでプロジェクト管理を行っています。EVMもOBPMで管理しています。上の例のような金額計算は自動で実施しますので、ガントチャートにスケジュールを登録したり、見積を作成しリソース計画をたてたりするだけです。

実は私はEVM管理をする前は「EVMグラフが計画通りに進むなんて稀じゃないの?」なんて思っていました。情報処理試験でも「どれが順調なプロジェクトのEVMか?」といった問がありますし、プロジェクトのスケジュール遅延はよくある話ですので、同じように思われる方も多いのではないでしょうか。

でも、実際、当社では、図6(工数ベースのEVM)や図7(金額ベースのEVM)のように「PV、EV、AC」がほぼ同じ線でプロットされていくといったEVMがほとんどです。なぜ、このようになっていくかと考えますと、スコープに対する見積、リソースをふまえたリソースヒストグラムを作成し、それらを上司に厳しくチェックされることがあげられます。またプロジェクト途中において、スケジュール遅延やコスト超過(金額や率が決められた閾値を超える)するとOBPMからアラートがあがりますので、適宜対応を迫られるからだと思います。
アラートの見極めも大切です。少々の遅れが発生していても、取り戻せると判断できるのであれば計画変更にまでは及びません。例えば全体に対する進捗遅れが数%以内といった状況です。これ以上の差異が発生したら、努力だけでカバーできないので計画見直しをする。当社ではそのような基準も持っています。
リカバーは大変な作業となりますが、そこで頑張ってプロジェクトが健全に戻るのなら苦ではありません。EVMではSPI(スケジュール効率指標:EV/PV)、CPI(コスト効率指標:EV/AC)といった指標もありEVMを作成すると簡単に算出できます。このような指標に基準を設け、組織としてプロジェクト管理を客観的に監視・運用するのも良い方法です。

06-3.png図6:EVMグラフ(工数ベースのEVM)

07-1.png図7:EVMグラフ(コストベースのEVM)

EVMはプロジェクトの重要な要素であるコストとスケジュールの実態と予測を端的にあらわせます。こんなにプロジェクトを簡単に見える化できるツール(手法)は他にはないでしょう。まさにプロジェクト状況の健康診断書です。
システム開発におけるプロジェクトでは首を突っ込んでみないとなかなか問題点がわからない場合もあります。しかし、もっと効率よく、うまくいかないプロジェクトを撲滅していくにはEVMは優れたツールだといえます。プロジェクトを遂行する立場としては、EVMをうまく使って組織全体で個々のプロジェクトをチェック、支える仕組みがあってほしいと願います。

(株式会社システムインテグレータ 羽佐田奈津美)

recruit

ranking

プロジェクト管理ツール:プロジェクト管理ツール 比較ガイド ~全7製品を10項目で徹底調査~

RELATED POST関連記事


RECENT POST「プロジェクトマネジメント講座」の最新記事


この記事が気に入ったらいいねしよう!
プロジェクト管理ツール比較ガイド:全7製品を10項目で徹底調査
ブログ購読のお申込み

RANKING人気資料ランキング

RECENT POST 最新記事

RANKING人気記事ランキング