【第13章】ステークホルダーマネジメントを意識しよう:ステークホルダマネジメントとは

 2017.04.27  株式会社システムインテグレータ

【第13章】ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーマネジメントとは

2012年12月に発表されたPMBOKの最新版(第5版)で、既存の9つの知識エリアのうちの「コミュニケーションマネージメント」から「ステークホルダーマネジメント」が独立した10個目の知識エリアとして新設されました。

ステークホルダーという言葉は少々なじみが薄いですが、一般に「利害関係者」と訳されます。もともとは株主を示す経営用語なのですが、現代では企業をとりまくあらゆる人(従業員から、取引先、地域住民まで)のことを指します。

プロジェクト管理においては「プロジェクトをとりまく関係者」がステークホルダーといえます。ここでいう関係者とは、顧客や協力会社だけでなく、経営者や部門長、PMやPL、プロジェクトメンバーなど社外社内を問いません。また、例えば顧客にしても、情報システム部門やエンドユーザー部門、経営層などプロジェクトにかかわる役割によって異なります。こうした幅広いプロジェクト関係者と良好な関係を築きプロジェクトを円滑に進めていくことがプロジェクト管理には求められます。そのためにステークホルダーとの関係を計画的に管理していく、それが「ステークホルダーマネジメント」です。

ステークホルダーマネジメントの実施

PMBOKにおけるステークホルダーマネジメントは下記のプロセスに従って実施することとされています。

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①ステークホルダーの特定

最初の作業は、プロジェクト関係者の洗い出しです。自社および顧客、さらにプロジェクトに関連する企業の体制図を描き、そこにできるだけバイネームで登場人物を記します。このとき大切なのが、単なる参加者の羅列ではなく、役割も記載してプロジェクト関係者全員で共有することです。

例えば、個々のサブシステムの仕様は誰と打ち合わせるか、それらの仕様決定権は誰が責任をもっているのか、プロジェクト全体に関わる重要な問題は誰が方針決定するのか、など必要な役割がすべて洗い出されていないと、後で“影のボス”に決めた内容をひっくり返されたりします。

②ステークホルダーのマネジメント計画

ステークホルダーの役割が決まりましたら、どのようなプロセスで物事を決めてゆくか計画します。例えば、仕様の確認・承認は、仕様書を提出して1週間以内に顧客でレビューして承認印を返却してもらう、打ち合わせの後は翌営業日までに議事録を提出し、3日以内に承認印をもらう、1か月に1回ステアリングコミッティ(プロジェクトの運営委員会)を開催し、こういうメンバーが参加してこんな内容を討議する、などの計画を立てるわけです。

③適切なコミュニケーション

ステークホルダーマネジメントの難しいところは、相手が感情を持った人間であるところといえます。例えばステークホルダーA部長はよき理解者である、B課長は仕様の承認を得ないといけないが新しいシステムに前向きではない、Cさんは業務に精通しているがプロジェクトへの影響力が弱い、など一人ひとり特徴があります。なかなか教科書通りに進まないのが世の常だとぼやきたくなってしまいますが、これが現実です。一人ひとりの特徴や癖をできるだけ早く理解・分析した上で、自分の持つコミュニケーション力の限りを尽くしてプロジェクトが円滑に進むように頑張る必要があります。

場合によっては理論武装による攻め方より、人間関係を深めていく方が効果あります。こういうコミュニケーション力は、なかなか教科書で学べるものではなく、経験を積むことによって育まれます。好きな人を攻略するのだって、恋愛マニュアルに従って計画してもなかなかうまくいきません。

しかし、だからといってすべてを経験にゆだねているようではいけません。マネジメント計画を作成してからそれを実践する。そういう経験を繰り返す方が、計画も立てずにただ経験してゆくより効果が大きいのです。

④計画の実施状況を監視

ステークホルダーのマネジメント計画は、往々にしてきちんと実施されません。相手があることなので、ステアリングコミッティは最初の2回しか開かれなかった、仕様変更が書面でなく口頭で来るようになった、打ち合わせ議事録をきちんと書かなくなった、など形骸化やなし崩しによって、いつの間にか絵に描いた餅になってしまうのです。

そうならないようにするのが、監視・トラッキングです。最初に取り決めた計画やルールが守られているかをチェックし、守られていない場合は責任者に報告して改善を依頼します。

PMBOKでは、このようなプロセスそれぞれに、「インプット」「ツールと実践技法」「アウトプット」という3つのパートが定義されています。つまり、前のプロセスのアウトプットをベースに、何をインプットとして、ツールや手法を使って何を行い、何をアウトプットするかを例示しているのです。ただし、定義だけであって具体的なツールや実践技法については、利用者に任せていますので、ここで当社の行っているステークホルダーマネジメントを紹介します。

プロジェクト管理に関するお役立ち資料

SI社のステークホルダーマネジメント

①「キックオフセット」テンプレートを用いる

昔から「結婚生活は始めが肝心」と言います。二人の新しい生活を始めるにあたり、掃除や洗濯、食器洗いなどの役割分担、遅く帰るときの連絡報、将来の夢や生活設計などを話し合い、二人の共同作業が結婚式のケーキカットだけでないことをお互いに認識し合うのです。

最近は、結婚前に一緒に暮らすことも多いため、この言葉はあまり使われなくなりましたが、プロジェクトに関しては、今でも「始めが肝心」という言葉は重みをもって生きています。プロジェクトをスタートする際に、ステークホルダー(関係する人たち)に対してこのプロジェクトはどのような目的で立ち上げられ、システムの概要、体制図を説明し、主なタスク(作業)を示した上で、お互いの役割分担を確認します。そして課題の管理方法や進捗の共有方法などのプロジェクト運用ルールの合意を得るのです。

このような双方の確認を行うのがキックオフミーティングです。なので、当社ではキックオフミーティングを非常に重要視していて、打ち合わせすべき内容をテンプレートにまとめて「キックオフセット」と呼んで活用しています。
プロジェクトリーダーが一から取り決め内容を考えるのではなく、過去の経験からプロジェクト開始時にステークホルダーに合意をとっておくべきことを標準化しているのです。キックオフはお互い(ステークホルダー)の顔合わせという側面も強いのですが、単なる飲み会にしてはもったいないです。結婚初日と同じく、顔ではニコニコ笑いながらも、相手に役割を認識させて覚悟を持ってもらう真剣勝負の場と心しましょう。

②「コミュニケーションツール」を適切に用いる

プロジェクトが失敗した理由をヒアリングすると、1番多いのが「コミュニケーション不足でした」というものです。確かに、うまくまわっていないプロジェクトをみて思うのは、プロジェクトを他人事のように捉えているメンバーが多いように思います。人数が多くなると自分は一担当者であるという意識がでて、このプロジェクトがどのような状態にあるかをあまり考えない、考えたとしても自分には意見を述べる資格や権限がないと思ってしまいがちです。

情報というのは、隠れたところにあると自分には関係ないと思って放っておかれるようになり、時には疎外感を受けることもあります。そこでプロジェクトリーダーは、プロジェクトの置かれている状況や他のメンバーの課題を共有する機会を持つように工夫します。状況や課題を共有することで、メンバーそれぞれにプロジェクトに関心を持ってもらうのです。

例えば進捗報告や課題、質問といった共有事項を特定の人たち同士のファイルのやり取りで済まさず、必ずプロジェクトメンバーと共有します。リスクについても現プロジェクトにはどのようなリスクがあり、それぞれのリスクの影響度をメンバーに共有しましょう。家庭の抱える問題を子供たちには内緒にするって夫婦は多いですが、プロジェクトに関してはオープンにして“みんなの問題”と意識してもらうことが肝要なのです。

このようなコミュニケーションを取るツールはたくさんありますが、当社ではOBPMを利用して課題や質問・回答、リスク、進捗といった情報をメンバーがいつでも確認できるようにしています。課題や質問・回答は顧客とも共有しています。とはいえ、顧客に全てを見せるわけにはいきませんので、見せる情報、見せない情報の区分けを行って同じコミュニケーションツールで情報共有できるようにしています。手前味噌ですがOBPMはプロジェクト管理におけるステークホルダーごとの役割がしっかり落とし込める仕組みとなっております。よろしければこちらもご覧ください。
http://www.sint.co.jp/products/obpm/service/system5.html

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ステークホルダーとの関わり方

ステークホルダーとのコミュニケーションは人それぞれだと思います。こう書いている私自身、コミュニケーションがかなり苦手で、まだまだステークホルダーとの関係作りは苦戦を強いられています。

時にはステークホルダーを怒らせてしまうことがあるかもしれません。しかし何事も誠実に真摯な対応をとることを心がけていれば、その原因が誤解であったり考えが足りなかったりといった結論に至り、努力することで信頼関係が取り戻せるのではないでしょうか。

「システム化に協力的でないお客様でスケジュールが遅れた」「顧客の要望通りにいかず、クレームを受けた」等、ステークホルダーとの間での問題やトラブルは避けられません。こういうトラブルに対しても、戦略をたてるというよりは、ステークホルダーとの日頃からの関係作りや顧客の業務を理解しようとする姿勢が鍵をにぎるのではないでしょうか。日本人的なやり方とは思いますがステークホルダーとの関係がうまくいっているリーダーを見ているとそう思います。

また、どうしても関係がうまくいかない場合は、上司を巻き込んで対応すべきです。ステークホルダーマネジメントにしてもリスクマネジメントにしても、どれだけ管理しても最後には「このままでは危ない」と気づく能力、アンテナがなければ悪い方向にいってしまいます。

PMBOKのステークホルダーマネジメント自体は、プロジェクト管理において重要な考え方です。ただし、マネジメント計画を立てたり監視したりすることに依存し過ぎて、「うまくいっているように思う」で済ませてしまわないように気を付けましょう。相手がどのような考えをもっているかを察し、方向性が同じかを常に心がけることでプロジェクト成功へと導きたいものです。

(株式会社システムインテグレータ 羽佐田奈津美)

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