筆者は7月中旬の梅雨明け直後に、富士山に登ってました。巷では富士登山ブームらしく、各地からの登山ガイド付きの団体ツアー客で賑わっており 、7合目以降は、まるで社寺への初詣を想像させるような混雑振りでした。登山も歴としたプロジェクトですが、今回は、特にタイム管理、リスク管理の重要性を痛感した次第です(あと体力管理もありそうですが…)。
見積方法
さて、連載第2回として、あるIT企業が旅行会社である富士山トラベル(仮称)へのERP開発案件の見積を提出するという仮事例を元にスタートしたいと思います。
営業部から、ERP案件での見積依頼を受けたPM雨宮さんは、OBPMを利用して開発側の原価見積を作成します。開発側の原価見積の方法としては、まずは機能積上などにより各工程別の見積を行い、その後に実際の開発要員を割振る、という2段階方式となります。
①機能別工程別の原価見積
ERPの開発案件の場合、要件定義、基本・詳細設計~導入後フォローといった工程別に見積を作成しますが、OBPMでは基本となる工程やWBSテンプレートが「ドメイン」と呼ばれるマスターに事前設定されています。経験がないPMでもこれらの過去の成功テンプレートを利用することにより、スキル不足を補うことができます。
図1:OBPM 原価見積/実行予算画面
上の図1でもあるように、各工程では3つの原価見積方法(手動、他工程計算、明細積上計算)が選択できます。
「手 動」
手動で工数を入力することにより、事前設定されている単価を乗じて見積する方法
「他工程 計算」
他工程の見積値の一定の割合にする方法
(例:基本設計工数は詳細設計工数の40%等)
「明細積上計算」
顧客要件を元に機能別工数を積み上げて見積する方法
②開発リソース(要員)積上による原価見積
明細積上などにより原価見積を行った後は、実際の開発要員別の原価見積を作成します。
PM雨宮さんは部署内要員の稼働状況を開発メンバアサイン状況の画面で確認後、8月から空きのある遠藤さん、小林さん、そして協力会社の知念さんに要件定義を担当してもらうことに決め、OBPMのリソースヒスト画面(図2:上)より、各々の工数入力を割振りました。
これを元に図2下の要員積上による原価見積が自動的に作成されました。
図2:リソースヒストから見積を作成
PM雨宮さんがリソースヒストを元にした原価見積を営業に提出して1週間後に、顧客から受注の連絡を受け、実行予算としてOBPMに登録をしました。以降、この実行予算を元にプロジェクト内における原価管理がスタートします。
基準原価
前回、プロジェクトにおいて管理すべき原価要素について説明いたしましたが、OBPMを利用した管理方法を説明いたします。
社員ランク別標準原価
OBPMでは、社員ランク毎に標準原価を設定する機能があり、各ランク別に労務費、固定経費、共通費配賦額、販売管理その他費用の登録が可能です。
図3:社員ランク別標準原価設定画面
先程の実行予算もこのランク別標準原価を元に実際の稼働予定工数を乗じて原価算出をしています。プロジェクトの現場メンバーからは、「どうして販管費も原価として配慮しなければいけないのか」という声も出てくるかと思いますが、連載初 回でも説明したように、最終的な損益を可視化するためには必要だと理解して下さい。但し、プロジェクトの採算画面では 、販管費分を切り出して、販管費計上前の粗利と計上後の営業利益という2つの視点での損益管理を実施しています(詳細は次回)。
委託費
今回のプロジェクトでは、協力会社の知念さんが参画しており、委託費の管理も必要となります。OBPMでは、委託管理は工数委託と一括委託の両方に対応しており、契約で定められた基準時間に不足・超過した場合の費用も自動計算され、協力会社に対する毎月の支払処理作業も軽減されることになります。今回の富士山トラベル向けの要件定義フェーズでは工数委託 の契約となり、委託先との費用条件を下画面で行います。
図4:委託先契約登録画面
経費
毎月の定期代などの固定経費は社員ランク別標準原価で入力・管理されますが、当該プロジェクトで発生する変動経費(出張のための交通費・宿泊費など)に関しては、採算画面上で入力するか、OBPM外の経費システムからのデータ連携により取得することで、原価管理を行うことができます。
さて、富士山トラベルからの正式受注を受けて、ERP導入プロジェクトが正式に開始されました。次回はプロジェクト実行フェーズでの原価管理の説明をいたします。
株式会社システムインテグレータ 多田
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