「ステークホルダーからの要望が増え、コストやスケジュールが大きく狂ってしまった」 「プロジェクトの当初の目的が忘れられている」このような状況になったことはないでしょうか?プロジェクト憲章は、プロジェクトを成功に導くための要素がたくさん詰まっています。プロジェクト憲章の意味と、その実践方法について解説していきたいと思います。
プロジェクト憲章とは?
プロジェクトを成功に導くためのやり方や手法はいくつかありますが、最も基本的な手法にプロジェクト憲章があります。プロジェクト憲章とはプロジェクトの目的とゴールを明確に示すものであり、主要なプロセスの指針となります。
<プロジェクト憲章と主要なプロセス>
プロジェクト憲章
- スコープマネジメント計画書
- 要求事項の収集
- スケジュール・マネジメント計画
- コスト・マネジメント計画
- リスク・マネジメント計画
- ステークホルダーの特定
プロジェクト憲章とは、プロジェクト全体を俯瞰し、正しい方向に導くための実行計画を作るということです。数十人、数百人が関与していくプロジェクトでは、たくさんのメンバーがついていくための「旗」が必要であり、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーはその「旗」を立てなければならないのです。
プロジェクト憲章はどのように作成すればよいか?
プロジェクト憲章の作成方法は専門の書籍がたくさんありますので、詳しい記載方法は書籍を参考していただきたいのですが、簡単に説明をしますとこのようなポイントを中心にまとめていきます。
<プロジェクト憲章の概要>
- プロジェクトの目的
- プロジェクト概要、作業範囲、前提条件・制約要件
- ハイレベル要求事項
- 予算(概算から本予算へ)
- ハイレベル・リスク
- 要約マイルストーン
- プロジェクトすべてのステークホルダー(利害関係者)をリスト化する。
特に顧客とベンダーの責任者と、顧客キーマンを詳細に書き出す。 - 本プロジェクト憲章を承認する人は誰なのか?
- プロジェクトのゴール(測定可能な成功基準)
プロジェクトの計画・スケジュール・コスト・リスク・人については、もっと細かく記載が必要です。しかし大事なポイントとしてプロジェクト憲章は、これらのプロジェクト計画がうまくいかなかった時に威力を発揮しなければならないことです。つまりプロジェクトのQCD(品質・コスト・進捗)が悪化してきた時でも、プロジェクトのスタート地点に戻って、もう一度、本プロジェクトの正しい方向性を示せるものでないとダメなのです。
プロジェクト憲章がないと、プロジェクトはなぜうまくいかないのか??
プロジェクト憲章を書いていないプロジェクトや、あってもカタチだけのプロジェクトは意外にたくさんあるのではないかと感じています。プロジェクト憲章が存在しない、又は機能しないと、どのようにうまくいかなくなるのでしょう。
<プロジェクト憲章がうまく機能しない場合>
・計画が緻密でないので、組織がうまく動かない
・結局、丸投げマネジメントになっていて、計画が形骸化してしまっている。
・目的とリンクした大工程表がないため、本プロジェクトの目的が薄まっていく。
・目的と要件が一致しなくなり、現場主体の要件が膨れ上がり、QCDに大きく影響してくる。
・顧客とベンダー側のメンバー全員でプロジェクトを作り上げていく意識がなくなっていく。
どうしてもプロジェクトはだんだん悪くなっていくものです。悪くなった時に大事な事は何でしょう。本プロジェクトがなぜ始まったのか?それはどんな目的で、どのようなビジネス側の要件を満たすものだったのか?という基本に立ち戻ることなのです。プロジェクト憲章にはそのようなプロジェクトの目的とゴールという「正義」が詰まっているのです。
プロジェクト憲章こそ、プロジェクトの正義
プロジェクトはみんなで作り上げていくものです。顧客もベンダー側も気持ちよい関係でいられて、すべてが順調に進んでいくことが理想です。しかしなかなか計画通りに進まず、プロジェクトが進行している時にはいろんな力が働いてしまいます。その時に顧客の責任者やベンダー側の責任や、つまり本プロジェクトを承認した人に持っていくものはなんでしょう? 顧客の現場担当者や、ベンダー側の現場プロジェクトリーダーに見せるものは何でしょう?
そんな時には、プロジェクトマネージャーには武器が必要になります。
武器というと「権限や権力が欲しい」とおっしゃるかもしれませんが、権限や権力は全員に平等に存在するものではなく。顧客とベンダー共に組織の中にピラミッド型で存在します。
しかし、プロジェクトの目的やゴールは、顧客もベンダー共に平等に存在します。そして全員が共有して、その目的に向かって進んでいかなかればならない大切なもの、それがプロジェクト憲章なのです。
それがプロジェクト憲章なのです。プロジェクト憲章は時には、権限や権力のある人との交渉に使うこともできますし、メンバーとの信頼関係を築くためにも使用できます。プロジェクト憲章がプロジェクトの正義であれば、どんなにうまくいかなくなったとしても、これが正しいものである以上、プロジェクトリーダーの武器として使うべきです。ですからプロジェクト憲章をしっかり作成し、顧客やプロジェクトメンバーに浸透させていくことが大事なのです。
プロジェクト憲章の実践方法
ではどのようにしてプロジェクト憲章を実践していけばよいでしょうか。実践とは実際に作成し、プロジェクトメンバーに浸透させていくことです。
<プロジェクト憲章の概要> ※おさらい
・プロジェクトの目的
・プロジェクト概要、作業範囲、前提条件・制約要件
・ハイレベル要求事項
・予算(概算から本予算へ)
・ハイレベル・リスク
・要約マイルストーン
・プロジェクトすべてのステークホルダー(利害関係者を)リスト化
・本プロジェクト憲章を承認する人、責任者を記載する
・プロジェクトのゴール(測定可能な成功基準)
先ほど述べた通り、これらを作り上げていくには、PowerPointやExcelで作成していき、顧客とプロジェクトメンバーで共有するやり方が一番のセオリーでしょう。
パソコンの画面上だけで見るのではなく、貼りだせるものは、メンバーがよく見えるところに出しておくのもよいかもしれません。壁や入口など人通りの多いところに貼りだすのは、最高の見える化ですよね。またプロジェクト憲章という小冊子で携帯できるサイズにして、常に持参しておくのもよいでしょう。
プロジェクト憲章ではプロジェクトの計画・スケジュール・コスト・リスク・人の記載や管理が中心になってきますから、入力や見え方も複雑になってきます。弊社のプロジェクト管理ツール:OBPMを使えば、統合型されたツールで作成でき同じフォーマットで見える化を実現し、データの一元化が実現できます。
<プロジェクト管理ツール OBPMのメニュー画面>
<プロジェクト憲章をOBPMで実践した場合> ※ →〇〇〇がOBPMの機能名
・プロジェクトの目的 → プロジェクト登録
・プロジェクト概要、作業範囲、前提条件・制約要件 → プロジェクト登録、明細登録
・ハイレベル要求事項 → 明細登録、ドメイン・工程タスク成果物
・予算(概算から本予算へ) → 実行予算管理
・ハイレベル・リスク → リスク管理
・要約マイルストーン → マイルストーン管理
・プロジェクトすべてのステークホルダー(利害関係者を)リスト化 → ステークホルダー機能はないので、コミュニケーション管理機能を使用するか、リストを添付ファイルする。
・本プロジェクト憲章を承認する人、責任者を記載する → プロジェクト登録、又は承認ワークフロー
・プロジェクトのゴール(測定可能な成功基準) →実行予算管理、進捗管理、プロジェクト登録の項目追加
ツールを使うといいところは、同じ道具で入力し、同じ場所にデータを集め、メンバー全員が同じフォーマットで見れることです。見るフォーマットがそれぞれ違うと、傾斜者、承認者、責任者は見ることに疲れ、組織にも伝わりづらくなります。ツールを使うという選択も一度、ご検討されてはいかがでしょうか?(プロジェクト管理ツール:OBPM基本ガイドというわかりやすい資料が資料ダウンロードページにありますので、活用ください)
プロジェクト憲章の意味について、ご理解いただけましたでしょうか。
プロジェクト憲章の実現手段はツールでなくても、何でもいいと思います。ただし、大事な事はプロジェクト憲章をちゃんと作成し、顧客とプロジェクトメンバーで共有して、同じ方向へ向っていくための旗にならないといけないということです。時には武器となり、時には正義となるものなのです。もう一度、現在進行しているプロジェクトにプロジェクト憲章は存在しているか、しっかり共有できているかを振り返ってみて欲しいと願います。
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