一般消費者や顧客企業のニーズが多様化し、複雑化していることは多くの企業や組織が肌で感じていることです。それに伴い、製品展開やサービス内容も多様化するだけでなく市場への展開を迅速に行う必要性が増しています。このような状況では従業員一人一人の業務負担が増すのは必然な時代と言えます。
このような影響を受けて現代の企業は、プロジェクトを多く抱えるようになりましたし、複数のプロジェクトをまたいで業務を遂行している方は多くなったのではないでしょうか。そして、プロジェクト管理が複雑になり、人件費や原価を正確に把握することもできず、最終的にはプロジェクト破綻してしまう経験を持っている方もいるのではないでしょうか。
つまり、多様化・複雑化する一般消費者や顧客企業のニーズは、今や組織内のプロジェクト管理にまで影響を及ぼしているのです。そのような中でも正しい管理を行い、プロジェクトを成功へと導いて企業成長に貢献していく必要があります。
そこで役に立ってくるプロジェクト管理手法の一つが “工数管理”です。プロジェクト管理の現場ではよく耳にする言葉でしょう。この工数管理とは、結局のところどういった管理手法なのか?失敗しないためのポイントとは?今回は、この工数管理の気になる疑問を解消していきます。
工数管理とは
まず“工数”という言葉をわかりやすく説明すると、「作業時間」に非常に近い意味だと言えます。主にソフトウェア開発や製造業において使用されていた言葉で、現在では幅広い分野で使用されています。
ちなみに工数の単位には「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」や「人月(にんげつ)」を使用します。これは、一人あたりの作業目標を達成するのに対し、どれくらいの時間がかかるかを表しています。「1人月」ならば、1人で作業して1ヵ月かかるほどの作業量ということです。
この工数という概念にしたがって、作業時間や業務負荷を管理するのが“工数管理”です。その目的は、労働者一人一人の生産力を高め、作業を効率良く行い、改善を加えていくことでプロジェクトを成功に導いていくことです。
失敗しない工数管理のポイント
工数管理は、ただ作業時間を管理するだけではありません。それならばタイムカードなりを導入すればいい話です。わざわざ工数管理を行うのは、やはりプロジェクトを成功に導くためなので、そのための管理手法を取らなければならないのです。
ポイント1.責任の所在をハッキリさせる
工数管理を実施したい企業がまず行うべきことは責任の所在をハッキリさせること、すなわち責任者を決めることです。責任の所在をハッキリさせないまま工数管理に踏み出す企業は多いですが、それでは正しい工数管理を実施することはできません。
後述しますが、工数管理は日々、ツールやエクセルに細かく入力することが前提となります。責任者不在のままでは強制力が生まれないので、曖昧な作業が横行した工数管理事態を行う意義が無くなってしまうのです。
工数管理の責任者はやはりプロジェクトリーダーや統括マネージャーなどに任命するのが通常ですが、ケースバイケースで一社員に任せることもあります。
ポイント2.必要に応じて管理する単位を分ける
工数管理ではチームメンバーの作業時間を管理することになるので、管理するための単位が必要です。通常は15分や30分単位で管理します。たまに10分単位で工数管理を行っている企業を見かけますが、これは避けるのが得策でしょう。
なぜなら、10分単位で管理すると微小ながら管理者の負担を増やすことになります。10分とは時間にすると0.167時間と実に切れの悪い数字です。これが15分なら0.25時間で1/4時間として計算できますし、30分なら0.5時間で1/2時間として計算することができます。
かなり細かいことではありますが、工数管理ではこうした細かいポイントを押さえることで、より良い管理環境が整うのです。
ポイント3.日々に入力を徹底する
工数管理はチームメンバー1人1人が、ツールやエクセルに自身の工数を入力することで、プロジェクトリーダーや管理者が全体の工数を把握できるようにします。つまり毎日の入力が必須条件なのですが、メンバーによっては数日分の工数を後日まとめて入力したり、月末にまとめて入力したり、そもそも入力することを忘れてしまう場合もあります。
正しい工数管理を行うためには、すべてのメンバーが正確な工数情報を入力しなければなりません。覚えているからといって後日入力しても、必ずどこかで誤差が生じます。だからこそ、責任者が日々の入力を徹底させることが大切です。
ポイント4.工数管理データをチームメンバーとも共有する
毎日の工数入力によって、チームメンバーの負担が増すことは確かです。その負担が微々たるものですが、人間誰もが少しの労力を惜しみたいものなので、ときにメンバーから不満が漏れることもあります。
不満が募り募って、最後には正しい工数管理が行えなくなる、といったケースは意外にも多いのです。
ただしこの問題の解決方法は簡単です。工数管理によって蓄積されたデータを、チームメンバー全員と共有すればいいのです。そうすれば、各メンバーは自分や他人の工数情報を見て、現状としての課題に気付くことができます。
自ら気付かなくとも、プロジェクトリーダーが情報提示しながら説得力のある課題解説を行えます。そうすることで、チームメンバーは工数管理が「意味のあるものだ」と認識してくれるので、その後の情報入力が苦ではなくなるのです。
最初のうちはただ共有するのではなく、共有した上でプロジェクトリーダーが課題を気付かせるということが大切です。
ポイント5.計画と実績の差異分析を行う
差異分析とは計画と実績を照らし合わせその差異から、課題や成功要因を把握するための分析です。工数管理においても課題点や成功要因を見つけ、各作業の方法や体制を改善していくために必要な分析となっています。
差異分析を行う上で何よりも大切なのは、計画と実績の2つが揃っていることです。日別、週別、月別に工数予実の履歴が残っていなければならないのです。計画がなく実績情報だけがあっても、比較する対象がないのが分析しようがありません。従って、工数管理を行う際は必ず作業ごとに計画を立ててください。また、計画だけでなく目標値も設定すると、より精度の高い差異分析が行えます。
ポイント6.多数の軸で管理できるよう整える
また、プロジェクト全体の差異分析が行えるように、分析軸は多数あること望ましいでしょう。チーム単位、部門単位、プロジェクト単位、進捗や期間単位など複数の分析軸を用意して、全体の課題や成功要因を発見するのです。しかし、それらはバラバラになっていては発見することもできません。ひとつの工数情報にできるようシステム化する必要がある企業が、ほとんどではないでしょうか?
ポイント7.継続する
最後のポイントは単純かつ最も難しい“継続”です。工数管理を取り入れたからといって、すぐにその効果を実感できるわけではありません。エクセルで管理するのであれば最低でも半年以上、ツールなら3ヵ月程度はかかります。
最もやってはならないのが、効果が実感できないといって途中で投げ出すことです。管理部が求める原価に関する工数管理と、現場がプロジェクトのために必要な工数管理をバラバラで行っている企業は多いと感じます。本来はひとつであるべきなのにバラバラになっている現状をひとつにすることが正しい工数管理ではないでしょうか?正しい工数管理を行いつつ、プロジェクト1つ1つの作業や管理体制を改善していくことはもちろん、工数管理自体を見直すことも行っていけば、必ず効果が現れます。
根気のいる作業ではありますが、継続することが工数管理で最も大切なポイントなのです。
まとめ
皆さんもこれを機に工数管理を取り入れてみてください。正しく管理すれば、今まで難しかったプロジェクト推進もスムーズになり、収益拡大を図ることができます。今回紹介したポイントを押さえて、正しい工数管理を実施していきましょう。
プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意しています。ぜひご活用ください。
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