かんばん方式のプロジェクト管理とは?

 2017.07.24  株式会社システムインテグレータ

トヨタ生産方式の基本、ジャスト・イン・タイムとかんばん方式

かんばん方式がもともと、トヨタ生産方式から生まれたものだということは、あまりにも有名です。情報を整理することも兼ねてここで少し説明します。

そもそもかんばん方式のベースとなっているのはジャスト・イン・タイムという考え方です。これは「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という意味があり、効率よい生産を目指すための基本概念でもあります。

自動車のように3万点以上の部品から成る製品の場合、大量にかつ効率よく生産していくためには精微な生産計画が必要です。一部品でも在庫の過不足が起きてしまえば、生産の遅れや無駄なコストを発生させてしまいます。

つまり、精微な生産計画に対して「必要なもの(部品)を、必要なときに、必要なだけ」供給することで、「ムリ、ムダ、ムラ」のない製造が実現します。この概念を実現したのがかんばん方式です。

かんばん方式では前工程と後工程のコミュニケーションが何よりも大切で、後工程が必要な部品を必要な数だけ発注し、前工程はそれを供給します。これにより部品の無駄な投下と不足を防ぎ、かつスムーズな生産を行えるのです。

こうしたプロセスを実行するために重要なのが「かんばん」です。かんばんとは、部品名、品番、必要工程、必要数が書かれた、いわば発注書のようなものです。後工程は適当なタイミングでかんばんを前工程に渡すことで、スムーズな部品供給を行うことができます。

かんばん方式を考案したトヨタの元副社長・大野耐一氏は、スーパーマーケットの商品管理からヒントを得たと言います。

では、本来製造業において活用されるかんばん方式は、プロジェクト管理にどのようにして絡んでいくのでしょうか

参考資料トヨタホームページ「ジャスト・イン・タイムについて

プロジェクト管理のカンバン方式

トヨタ生産方式におけるかんばん方式を理解しただけでは、プロジェクト管理におけるカンバン方式のイメージがまだ湧きづらいかと思います。ですので、分かりやすく個人のタスク管理を例に、プロジェクト管理のカンバン方式について解説していきます。

ある一つの、小規模なプロジェクトを個人で完了させる場合、まずホワイトボードを容易に縦に分割します。左が「ToDo」、真ん中が「Doing」、右が「Done」とそれぞれに役割を付けましょう。

次に付箋を用意して、プロジェクト完了に必要なタスクを書き出していきます。ここでは10のタスクがあると仮定します。タスクを書いた付箋はまず、すべて「ToDo(未完のタスク)」に貼り付けます。そしてその中から優先度の高いタスクを選び、「Doing(作業中のタスク)」へ移動させ貼り付けます。最後にそのタスクが完了すれば、「Done(完了したタスク)」に貼り付けましょう。

こうして全てのタスクが「Done」に移動すれば、プロジェクトは完了となります。この方法でプロジェクト管理を行うと、現在何を行っていて、何が残っているか、そして何が完了しているかを直感で判断できます。現状のタスクを整理して、その後の計画を立て直せるという効果もありますね。

プロジェクト管理におけるカンバン方式の基本は、この「見える化」にあります。

カンバン方式にジャスト・イン・タイムを取り入れる

プロジェクト管理におけるカンバン方式について説明しましたが、これだけではまだ完璧なカンバン方式とは言えません。「見える化」を行えたのはいいものの、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」というジャスト・イン・タイムの考えありません。

ちなみにプロジェクト管理におけるジャスト・イン・タイムとは、「必要なタスクを、必要なタイミング、必要なだけ処理する」ということです。

先ほど紹介した例で言えばプロジェクトのリソースは自分一人です。そう頑張っても、最高で2つまでのタスクを同時に処理するのが限界でしょう。にも関わらず、「ToDo」からいくつものタスクを「Doing」に移動させてしまうと、リソースが不足しかつプロジェクト管理が複雑になってしまい、円滑な進行ができません。

反対に、「Doing」にあるタスクが少ないと、プロジェクトに後れを出してしまいます。

そこで「Doing」の上限と下限をタスク2つと定め、「ToDo」からタスクを引っ張ってきましょう。こうすれば、自分というリソースを最大限に生かしつつ、無理のないプロジェクト進行が行えます。

このように、プロジェクト管理においてもジャスト・イン・タイムの考えを取り入れることで、初めてカンバン方式が実現します。すでに気付いた方もいるでしょうが、カンバン方式を行うことでリソース管理も行え、チームメンバーの負荷状況を平均化することもできるのです。

カンバン方式を実現するためのプロジェクト管理ツール

今回はカンバン方式についてできる限り分かりやすく解説したので、「ToDo」「Doing」「Done」というシンプルな3構成にしました。しかし本格的なカンバン方式では、次のように複雑なカラム構成になっています。

  • Goals(ゴール)
  • Story Queue(ストーリーキュー)
  • Elaboration & Acceptance(推敲承認)
  • Development(開発)
  • Test(テスト)
  • Deployment(展開)
  • Done(完了)

上記はソフトウェア開発プロジェクトにおけるカンバン方式をイメージしたもので、このように実際のカンバン方式は複雑です。というのも、一つのタスクを処理するのに、意外と多くのプロセスが必要になるためです。

こうした複雑なカンバン方式をホワイトボードで管理することはもちろん、Excelですら限界があります。プロジェクトの規模が大きくなるほどその傾向は顕著になる、カンバン方式によるプロジェクト管理が難しくなっていくでしょう。

そこで、カンバン方式を実現するためのプロジェクト管理ツールを導入します。プロジェクト管理ツールとは、プロジェクト管理を正しく行うための機能を多数備えたITシステムで、複雑なプロジェクト管理を容易にしたり、効率よく行うことができます。

複雑なカラム構成もプロジェクトの性質と合わせて変更が可能であり、プロジェクトに応じた最適な管理関係を整えることが可能です。

また、プロジェクト管理ツールではシステム上で関係者間=ステークホルダーとのコミュニケーションが実現します。経営層、部門長、プロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダー、メンバー、外注、顧客とあらゆるステークホルダーと連携するためのソフトウェアが増えていきます。ベンダー側の責任者と顧客側の責任者が、フェーズ毎に確認を取り合うステアリングコミッティにもソフトウェアは必要になってきます。このようにプロジェクトにおけるコミュニケーションは、そこに関わるソフトウェアの数だけ複雑になってしまうので、プロジェクト管理ツールでコミュニケーションを統合することで円滑なやり取りが行えるのです。

まとめ

トヨタから生まれ、製造業を中心に浸透したかんばん方式。プロジェクト管理の現場でも、このカンバン方式を取り入れることで、プロジェクトの円滑な進行を実現することができます。ただし、カンバン方式を取り入れただけで上手くいくわけではないので、プロジェクトマネージャー並びにチームメンバー全員が、カンバン方式について深く理解していることが大切です。

プロジェクト管理ツールを導入すると同時にカンバン方式への理解を深め、組織全体での最適なプロジェクト管理を目指しましょう。

プロジェクト管理全般について詳しくまとめた資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。


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