工数管理はプロジェクトの所要時間を把握して進捗を管理するだけでなく、売上比のコスト最適化を促進して企業全体の利益向上するために非常に重要です。導入しやすいのがエクセルを使った工数管理です。本記事では、その手順やメリット・デメリットを紹介します。
なぜ工数管理が重要なのか
企業には、事業で利益を追求するという使命があります。その利益の算出に必要な数字が、"売上"と"コスト"です。売上は、入金された金額を足すだけで計算できますが、コストの計算は社員の人件費が関わるため厄介です。そこで、コストを正確に算出するために行うのが「工数管理」です。
工数とは、プロジェクトや作業を終えるまでにかかった所要時間のことで、次の計算式で算出します。
- 工数=プロジェクトを終えるまでにかけた社員一人あたりの時間×人数
この工数を可視化して管理することが工数管理です。
また、正確な事業コストの算出以外に、進捗状況が可視化されることによりスケジュール管理が容易になるなど、工数管理にはプロジェクト単位でも多くのメリットがあります。
エクセルを使った工数管理の作り方
工数管理の方法には大きく2パターンあります。1つ目がMicrosoftのExcel(エクセル)を使う方法、2つ目がプロジェクト管理ツールを使う方法です。
このうち、すぐに導入できるのがエクセルを使う方法ですが、エクセルでの工数管理はどのように行えばよいのでしょうか。まず、エクセルによる工数管理の作り方のポイントをまとめると次のとおりです。
すべてのタスクを出し切ること
工数管理するプロジェクトで行うタスクを洗い出します。ここで漏れてしまったタスクは、工数やコストの算出からも漏れてしまうため、タスクの大小に関わらず、漏れなく出し切ることが重要です。
タスクの洗い出しが終わったら、グルーピングしていきます。例えば、「クライアントA社Webサイト開発プロジェクト」だとしたら、ソフトウェア要件定義・開発環境構築・ソフトウェアコード作成などを大項目とします。
次に、それぞれの大項目内で中項目を作ります。例えば「ソフトウェアコード作成」であれば、プログラミング・単体テスト仕様作成・単体テストの実施と評価などが中項目になります。
大項目・中項目ができたら、それぞれのグループに該当するタスクを振り分けます。
日程を割り振りゴール設定すること
工数管理では、タスクの洗い出しと共に、タスクの完了期限の設定が重要です。エクセルの縦軸にタスクと大・中項目の一覧を列挙したとしたら、横軸に日付(カレンダー)を並べます。タスクごとに完了期限を設け、該当する日付に印を付けておきます。期限の日だけセルの色を変えたり、"◆"など目立つ記号を入力したりしてもかまいません。
このゴール設定の目的は、工数管理を閲覧する各社員がゴールはどこなのかを常に意識できることです。
全体が俯瞰できること
工数管理の作り方に決まりはありません。ただ、どのような作り方をしたとしてもひと目でプロジェクト全体が俯瞰できるものが理想です。工数管理はマネジメント層だけが参照するものではなく、プロジェクトに関わるすべての社員が一日何回も確認するものなので、複数のシートをクリックしないと情報が把握できないようでは使い物になりません。
必要に応じてテンプレートを利用する
エクセルでの工数管理用にテンプレートがたくさん出回っています。自社のプロジェクトのタスクと完了期限を入力するだけで、プロジェクトの負荷状況まで計算するように設定されているテンプレートもあります。一から工数管理表を作成するのは非効率的なので、テンプレートを使うことをおすすめします。
工数管理の活用方法
タスクとゴールを設定した工数管理表が完成したら、社員全員で運用を開始します。一般的には次のようなサイクルで運用します。
1.各社員は毎日、自分の作業時間をエクセルに記入
例えば、タスク「機能Aプログラミング」に2.5時間、タスク「機能Bプログラミング」に3.5時間のように30分単位で、各タスクに要した時間を入力します。
2.管理者が各社員のデータを集計・分析
管理者は、1ヶ月ごとなど定期的にデータを集計して、分析します。各タスクの進捗に遅延がないか、遅延しそうであればその原因は何かを特定し、チーム全体の業務改善に着手します。
工数管理の運用でポイントとなるのが、各社員が漏れなく作業時間を入力することと、工数管理の管理者を決めることです。
各社員の工数入力では、予定以上に時間を要したからといって、実際より短い時間を入力してしまうのではなく、あるがままに申告することが大切です。管理者は、データを集計・分析するだけではなく、各社員が漏れなくかつ正確に作業時間を入力できているかのフォローも行います。
エクセルを使った工数管理のメリット
プロジェクト管理ツールと比較し、エクセルでの工数管理には次のようなメリットがあります。
導入費用がかからない
キーマンズネットによる「Excelの利用状況」に関する調査は、企業の98.5%がエクセルを利用していると報告しています。エクセルでの工数管理のための初期投資はないに等しく、中小規模の企業でも取り入れやすいのが大きなメリットです。
・「参考サイト」
テンプレートもあるため導入に手間がかからない
工数管理用のエクセルのテンプレートは、簡単にダウンロードできるため導入に手間がかかりません。
各社員が入力しやすい
工数管理は各社員が毎日漏れなく入力してはじめて効果を発揮します。エクセルは社員の大多数が使い慣れているため、ソフトの操作がしにくい・分からないことによる入力漏れが発生しにくくなります。
エクセルを使った工数管理のデメリット
プロジェクト管理ツールと比較し、エクセルでの工数管理には次のようなデメリットがあります。
データ破損のリスクがある
エクセルは元々「表計算ソフト」です。使い勝手の良さから文書作成やビジュアル化などにも頻繁に利用されています。工数管理のように1つのエクセルファイルを多数の社員で入力・閲覧するという使い方は、本来のエクセルの使い方ではありません。ヒューマンエラーやWindowsアップデートなどの影響で、データが破損してしまうことが良くあります。
機能が不足することがある
勤怠管理システムを導入している企業の場合、工数管理で入力する作業時間を勤怠管理にも活かすことができれば、二重管理が防げます。
エクセルには勤怠管理システムと連携する機能がないため、社員は工数管理用と勤怠管理用とで同様の情報を2度入力しなくてはいけません。
このように、エクセルには機能的な限界があるため、企業全体の業務効率化の観点からは逆に非効率を招くことがあります。
管理内容が変わったときの対応がしにくい
工数管理の管理者は、新規プロジェクト追加や顧客の変更が発生するたびに、工数管理表を更新しなくてはいけません。エクセルでの工数管理は導入しやすいものの、運用開始後のフォーマットの更新がしにくく、手間がかかってしまいます。
本格的な工数管理にはツールの活用が最適
テンプレートもあり各社員も操作に慣れていることから初期導入がしやすいエクセルでの工数管理ですが、運用していくとデータ破損のトラブルや機能不足による新たな課題が発生します。そのような時期が、プロジェクト管理ツールの活用を検討するには最適です。例えば、190社以上で採用実績のある統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(OBPM)」の場合、エクセルでの工数管理でできる基本的な管理だけでなく、プロジェクトの総合的な管理ができます。
例えば、メンバーのスキルや評価を管理する「要因管理」、品質基準や発生した障害を管理する「品質管理」、問い合わせの一覧を管理する「コミュニケーション管理」、委託先登録や契約内容を把握する「調達管理」など、進捗管理だけではなくプロジェクトに関するあらゆる情報を管理する機能を備えています。
また、「SI Object Browser PM(OBPM)」はクラウド型で提供されるため、テレワークが急増している昨今、各社員にとっても管理者にとっても使いやすいサービスです。
まとめ
工数管理をはじめて行うときは、エクセルを使うと導入がスムーズです。ですが、運用を続けていくに従い、プロジェクト管理ツールへと移行する企業が増えてきます。
こういったケースでは、「SI Object Browser PM(OBPM)」のように、拡張性の高い統合型のツールを選ぶことで、さらなる効率化がすすみ、企業全体の収益向上につながります。
プロジェクト管理手法に関する詳しい資料もご用意しています。ぜひご活用ください。
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