開発現場でプロジェクト管理を行うにあたり、よく利用されるツールのひとつがガントチャートです。名前は非常によく知られていますが、詳しい作成の仕方までは知らないという方は意外と多いのではないでしょうか?
本記事では、いまさら聞けないガントチャートの概要と、メリット・デメリットについて改めて解説します。
ガントチャートとは?
ガントチャートとは、プロジェクト管理や開発現場においてスケジュールや作業進捗の共有・可視化を目的として使われる工程管理表のことです。多くの方が一度は目にしたことがあるでしょう。
縦軸にタスク・作業内容、横軸に日時を配置した棒グラフで表します。ガントチャートを活用することで、プロジェクトの全体像や作業の繁閑が一目でわかります。
WBSとの違い
似た手法にWBS(Work Breakdown Structure)があります。セットで使われることも多いため混同されがちですが、性質が異なるものです。WBSは作業分解構成図とも呼ばれ、プロジェクトを構成する作業を階層ごとに洗い出し、担当者や作業時間の見積もりを行った上で一覧化した表を指します。
どちらも作業内容を把握・共有する用途では共通していますが、WBSは主に作業の抜け漏れ防止を目的に作成し、ガントチャートはチーム間で作業内容や進捗を共有する目的で作成します。
簡単に説明すると、プロジェクトの作業内容を細分化して一覧化した表がWBSで、それをグラフ化したものがガントチャートだと理解するとわかりやすいでしょう。
ガントチャートのメリット
ガントチャートは以下の3つのメリットがあり、広く開発現場で使われています。
プロジェクト全体の「見える化」
ガントチャートを利用するもっとも大きなメリットが、プロジェクトの工程全体を見える化できることです。
作業ごとのスケジュールを棒グラフで表すため、「このプロジェクトはいつ開始(終了)予定なのか」「どの時期の作業が立て込んでいるのか」「自分が関わる作業はどのくらいの日数が必要か」がビジュアルでわかります。
チーム内で共有できる
また、チーム内でメンバーの担当状況を共有できることもメリットのひとつです。全体のスケジュールが把握できるので、自分以外のメンバーがどの作業を担当しているかもわかり、チーム内での負荷が明確になります。
さらにクラウド型の作成ツールであれば、作業進捗もリアルタイムで反映されるため、テレワークなどで自宅作業をしているメンバーでも最新の状況が把握できるようになります。
誰でも扱いやすい
さらに、ガントチャートは構造がシンプルで視覚的に理解しやすいグラフのため、開発に関する専門知識がないメンバーでも扱いやすいことも大きなメリットです。
ガントチャートのデメリット
多くのメリットがある一方で、運用におけるデメリットと呼べる点がいくつかあります。
工数が把握しづらい
ガントチャートは進捗管理表として優秀な反面、工数が把握しにくいデメリットがあります。
「この作業は3日必要」という情報はガントチャート上からは読み取れないため、スケジュールが適切に設定されず結果的に予定通りに作業が進まない、といったトラブルも起きがちです。
よくある失敗のひとつとして、「3か月でWebアプリをリリースしたい」といったプロジェクトがあった場合に、手間がかかるWBSを省いてガントチャートを作成してしまうパターンがあります。
本来であればWBSで作業内容や工数見積を行ってからガントチャートを作成しますが、リリース日から逆算したスケジュールのみでガントチャートを作成してしまうと工数を把握できていないまま予定を立てることになり、無理なスケジュールになりがちです。しかも無理なスケジュールだということに気づくのは、実際に予定が滞ってからがほとんどです。
タスクの相互関係が見えない
ガントチャートは作業スケジュールを共有する目的の表であり、タスクと開始日時、終了日時というシンプルな構造です。
そのため、単純にメンバーそれぞれのスケジュールを把握するには便利ですが、タスク同士の相互関係が見えにくくなりがちになります。
大規模なプロジェクトになればなるほど、タスク同士の関係が複雑になります。Bの作業を開始するためにはAの作業が終了している必要がある、といった相互関係を把握するためにはPERT図と呼ばれる別の表を利用したほうが良い場合もあります。
開発手法の変化
もうひとつ、開発手法が変化してきていることもガントチャートを利用するデメリットに繋がります。
かつてはウォーターフォール型と呼ばれる、上流工程から順番に開発を行う手法が主流でした。ウォーターフォール型はガントチャートと相性がよく、工程管理の手法として広く利用されていました。
しかし最近では短期間で小さくプロジェクトを回すアジャイル型と呼ばれる手法が一般的になっています。アジャイル型は詳細に仕様を決めずに小規模な単位で開発を行い、実装とテストを繰り返しで徐々に開発を進めていきます。そのためプロジェクト全体のスケジュールやタスクを事前に把握することは難しく、ガントチャートで管理するのに向いていません。
ガントチャートにはこのようなデメリットもあると踏まえた上で、必要であれば回避策も考えておくと安心です。
WBSのメリット
WBSを作成すると、次のようなメリットがあります。
- 最終目標が明確になる
- 最終目標に到達するまでに必要なタスクが明確になり、タスクを洗い出すときに抜け漏れが起きにくくなる
- タスクの割り振りがしやすくなる
- 必要なリソースが明確になる
- 必要な作業工数や時間を見積もりしやすくなる
- 必要なリソースが明確になることで、コストや期限をクライアントに説明しやすくなる
- 進捗管理がしやすくなる
WBSのデメリット
最終目標に近い作業は見極めづらい
WBSを作成するのはプロジェクト開始前です。そのため、プロジェクト後半など先のことについては情報が不足しており、そのままではWBSを作成しにくい状態になっています。
プロジェクト後半については、進捗状況を見ながら段階的に詳細を決めたり、修正したりすることが必要です。
毎回新規作成する手間がかかる
WBSはプロジェクトごとに作成するものです。しかし、毎回新しいものを作っていては、作業に大変な手間がかかるうえ、WBSのフォーマット自体に抜けや漏れが発生するリスクがあります。毎回新しいものを0から作るのではなく、プロジェクトの内容に合わせたテンプレートを数種類準備しておけば、容易に作成できます。
WBSとガントチャートの使い分け
WBSとガントチャートは似ているようで異なります。WBSはタスクを細分化したリストで、ガントチャートはそれらタスクのスケジュールを可視化することを目的に作られるグラフです。
つまり、WBSで洗い出したタスクは、ガントチャートを作成するためのベースとなるもので、どちらか1つを使えば良いというものではありません。
WBSで、タスク同士の関係やタスク処理に必要なリソースなどを細かく管理しつつ、ガントチャートでタスク全体のスケジュール管理を行っていきます。
そのため、プロジェクト管理をスムーズに行うために、WBSとガントチャートの両方を併用することがおすすめです。
SI Object Browser PM(OBPM)でプロジェクト管理を見える化
手近なアプリケーションとしてガントチャートをExcelで運用・管理するケースも多く見られますが、今は複数の企業から専門のプロジェクト管理・ガントチャート作成サービスが提供されているので、作成の手間軽減や円滑な管理を考えるのであればそれらを利用するのもおすすめです。
例えば統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(OBPM)」であれば、工数や見積、スタッフの勤務実績などと連携することができ、プロジェクト全体を効率的に管理することが可能です。稼働率や分析レポートなどの機能も充実しているので、管理の手間を軽減したい企業には非常に便利です。
まとめ
ガントチャートはプロジェクト管理においてメジャーな管理手法です。シンプルな構造なので誰でも利用しやすい反面、工数が把握しにくい等のデメリットもありますが、メンバー間のスケジュール共有ツールとしては非常に便利です。
WBSについて詳しく解説する資料もご用意していますので、こちらもぜひご覧ください。
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