カンバンボードとは、作業を可視化し、効率を高めるために設計された、プロジェクト管理ツールのことです。
「やらなくてはいけないタスクが溜まっており、どこから手を付けるべきか把握したい」「どのメンバーがどんなタスクを行っているかすぐに分かればいいのに」といったニーズに応えてくれるツールです。
本記事ではカンバンボードの概要や利用シーン、作り方や運用のポイントについてご紹介します。
カンバンボードとは
カンバンボードは、タスクを可視化し、進行をコントロールするタスク管理手法です。おもにアジャイル開発の管理によく使われます。
カンバンボードでは、チームが完了させなければならない仕事の一覧と、チームメンバーの作業量が適切かどうかを視覚的に把握することができます。これを活かして、メンバーのキャパシティの超過やアイドルタイムの発生を予見・防止でき、チーム全体の開発効率の向上を実現します。
カンバンボードの利用シーン
カンバンボードは元々、1940年代にトヨタ自動車で開発された手法とされています。自動車工場の現場で、生産チームや倉庫チームが意思疎通を図るために稼働状況を看板に書いて受け渡したのが発祥といわれています。
アナログな手法から始まったカンバンボードですが、現在でも盛んに使われている手法です。
特に、大人数が関わり状況がリアルタイムに変化していくソフトウェア開発の現場やアジャイル開発の現場などで使われています。こうした開発の現場で使われるようになったのは2000年代の初めとされており、まだ歴史は浅いといえるでしょう。
アジャイル開発について詳しく知りたい場合はこちらの記事をご覧ください。
アジャイル開発とは?特徴やウォーターフォールとの違いなど徹底解説
スクラムボードとの違い
スクラムボードはカンバンボードと同様に、アジャイル開発の現場で使われることの多いプロジェクト管理ツールです。この2つのツールの主な違いはゴールの設定です。
スクラムボードはスプリントと呼ばれるあらかじめ決められた期間を設定し、そのスプリントのゴールに向かってタスクを進行します。一方、カンバンボードは特定のゴール期間は設定せずにタスクを順次進行していきます。
また、スクラムボードの場合はスプリント期間中に作業を追加することはありません。一方カンバンボードの運用は柔軟で、どのタイミングでも作業を追加したり変更したりできます。
どちらのツールもステージを用意し、それぞれのステージにタスクを動かす点は一緒です。ツールの挙動は似ていますが、期間設定や運用の柔軟性が大きな違いといえるでしょう。
カンバンボードの目的
カンバンボードは、おもに以下のような目的で導入されています。
進捗状況をメンバー間で共有するため
カンバンボードがあればメンバー間で進捗状況をすぐに共有できます。さらにどのタスクを誰が行っているのかが一目で分かります。
「あなたのタスクは今こうした状態にあるためこう進めてほしい」などの指示も、カンバンボードを見ながら行えば分かりやすいでしょう。
スケジュール調整を円滑にするため
カンバンボードでタスク状態を可視化できれば、スケジュールの無駄や無理などに気づきやすくなります。遅れが発生している場所があればその原因を突き止め、早期に解決できます。
また未完のタスクが多い人がいれば、その人にはタスクを上乗せしないなどの対応が取れるようになるでしょう。
カンバンボードを利用するメリット
カンバンボードを開発の現場で利用するメリットには以下が挙げられます。
作業やタスクを可視化できる
カンバンボードの大きなメリットは、作業やタスクを可視化できる点です。
チームのメンバーや管理者等に確認することなく、ツールを開くだけで誰でも簡単に状況が把握できます。
情報交換ツールとして優秀である
カンバンボードはメンバー間の情報交換ツールとしても優秀とされています。
タスクの進捗を報告する場合、メールやExcelなどバラバラの方法で報告していては管理が煩雑になります。
カンバンボードはシンプルで理解しやすい構成となっているため、誰でも理解しやすいのが特徴です。また、データの添付機能やチャット機能も備わっている場合が多いです。そのため、メンバー間での情報交換ツールとして使いやすいでしょう。
チームに一体感が生まれる
カンバンボードを利用すれば、チームメンバー全員がプロジェクト全体を理解しやすくなります。メンバーがそれぞれ「自分が今何をするべきなのか」「今困っているのは誰か」を理解することで、チームの一員として自覚しやすくなるでしょう。
その結果、チームに一体感が生まれることが期待できます。
カンバンボードを構成する要素
カンバンボードは主に以下の要素から構成されます。
視覚的なシグナル
カンバンボードでもっとも特徴的とされているのが、視覚的なシグナルです。カンバンボードでは、プロジェクトの作業項目を1項目ごとに書き出します。
シグナルが視覚化されることで、チームメンバーや関係者は、取り組んでいる内容をすぐに理解できます。
ステージ
ステージは、そのステージ内にある各タスクの状態を表します。一般的なステージの種類としては「To Do」「進捗中」「完了」などが挙げられます。
To Do
「To Do」欄にはタスクが具体化した時点でカードを移動させます。「To Do」欄にカードが移動することで仕事を始める準備ができたことが分かります。この時点でチームメンバーにそれぞれタスクを割り振り、期間を設定します。
進行中
メンバーが自分のタスクに取り掛かったら「進行中」にカードを移動させます。進捗中の欄にカードが移動することで、誰がどのタスクに取り組んでいるのかが把握できます。
完了
タスクが完了したら、完了欄にカードを移動させます。
進行中作業の上限
進行中作業の上限とは、ひとつのステージに同時に配置できるカードの最大数のことです。たとえば、「進行中」ステージの上限が3の場合、そこには4枚以上のカードを配置できません。
ステージが上限に達した場合、チームは既存のカードを移動させることに注力しなければなりません。
進行中作業の上限を設定することは、ステージのボトルネックを明確にすることにつながります。また、チームが抱えるタスク数が過剰であることを示す役割も持っています。
ワークフローの終了地点(ステージ)
カンバンボードには、ワークフローの終了地点があります。ほとんどの場合は製品やサービスがクライアントに引き渡される瞬間が終了地点となるでしょう。
チームは終了地点までできるだけ早くカードを移動させることを目標にします。To Do化してから終了地点に移動するまでの時間を「リードタイム」と呼び、チームはできるだけリードタイムを短くするべく、改善に努めます。
カンバンボードの作り方
カンバンボードの作り方は現場によって異なりますが、ここでは一般的な作成方法をご紹介します。
ステージを作成
カンバンボードを移動するためのステージを作ります。たとえば、「To Do」「進行中」「テスト」「完了」などのステージを用意します。
「To Do」タスクに手を付けていない状態
「進行中」タスクに取り掛かっている状態
「テスト」完了したタスクをテストしている状態
「完了」タスクのテストが終わった状態
作成したステージは左から順番に配置します。カンバンボードのタスク移動は基本的に、ステージ間を1つずつ移動します。そのため、ステージは必ずつながりのある並びにする必要があります。
タスクの可視化
次にタスクを作成し可視化します。タスク作成にはあらかじめルールを設定しておきましょう。一人ひとりが自身の感覚でタスクを作成してしまうと、タスクの粒度がばらついてしまうためです。
できるだけ最小単位でタスクを作成できるようにルールを設けておきましょう。
タスクをステージに配置
作成したタスクをステージ上に配置することで、カンバンボードの管理が開始します。
最初はすべてのタスクを左端のステージに配置しましょう。今回の例で示すと、すべて「To Do」欄に配置します。そこからメンバーがタスクに取り掛かったら、右の「進行中」の欄に移動させます。さらにタスクが完了したら「テスト」の欄に移動させましょう。
カンバンボードの利用をさらに効率化させるためにはルールの設置を行うことをおすすめします。それが上記でご紹介した進行中作業の上限です。上限を設けることで、各ステージに留まっておけるタスクの数を制限できます。
たとえば、「進行中」の欄の上限を3つに制限したとします。この場合、進行中の欄には3つまでしかタスクを置けないということになります。すでに3つのタスクが置かれている場合、メンバーは「早く次にタスクを移動させなくてはならない」という危機意識を持つことになり、作業効率を上げるよう努めるでしょう。
また上限を設定することで、作業工程の中でどこが一番処理能力が低いのかも可視化できます。そのため、その部分の問題の早期解決につながるでしょう。
必ずしも上限設定が必要というわけではありませんが、状況に合わせて設定してください。
カンバンボードを適切に運用するポイント
ここではカンバンボードを適切に運用するために知っておきたいポイントをご紹介します。
カンバンのルールを周知する
カンバンボードのルールをチームメンバーに周知しましょう。ルールはチームがカンバンボードをどのように活用するかの指針になります。ルール周知は運用開始前に必ず行うようにしましょう。
フィードバックを収集する
カンバンボードはただ実行するだけでなく、フィードバックの収集も行いましょう。たとえば、クライアントとチームという異なるグループからフィードバックを収集することをおすすめします。
・クライアント
クライアントからはチームが作成した成果物の品質や効果についてのフィードバックを収集しましょう。制作したものはどのように役に立っているのか、問題なかったかなどを確認します。
もしコードのバグや欠陥などの問題があった場合は、カンバンボードのフローを見直す必要があります。フローにレビューや審査、評価などの項目を増やすか、時間を増やしましょう。
・チーム
カンバンボードの原則を適用するプロセスについてフィードバックを収集します。チームメンバーはアウトプットについてどう考えているのかなどを確認しましょう。
現場の意見に耳を傾ける
カンバンボードはメリットが多く便利な手法ですが、カンバンボードにも機能としての限界があることを理解しておきましょう。
特に現場の意見に耳を傾けることは重要です。カンバンボードからはタスクの状態や進捗状況などを汲み取ることはできますが、メンバーの意思は汲み取れません。
メンバーに大きな負担や無理な納期を課していないかなど、しっかりコミュニケーションを取りましょう。
さらにカンバンボードだけでは分からない、潜在的なタスクが発生している可能性も考慮しておきましょう。潜在的なタスクを早めに発見するためにも、こまめなコミュニケーションを心がける必要があります。
まとめ
カンバンボードは、タスクの管理やスケジュール管理に役立つ手法・ツールです。特に開発の現場で多く使われています。カンバンボードのメリットや目的、注意点などを理解して活用しましょう。
弊社が過去に実施した「アジャイル開発のプロジェクト管理手法」セミナー(講師:弊社会長梅田)のアーカイブ動画を公開中ですので、講演資料と合わせてぜひご覧ください。
「アジャイル開発のプロジェクト管理手法」講演動画・講演資料はこちら
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