バーンダウンチャートとは、プロジェクトの進捗状況を可視化したもので、残りの作業量を直感的に把握することができます。さらにバーンダウンチャートを分析することで、チームの活動内容や改善方法などの指針を明らかにできます。
本記事ではバーンダウンチャートの概要やメリット、作成方法、導入時の注意点などをご紹介します。
バーンダウンチャートとは
バーンダウンチャートとは、プロジェクトの進捗状況を可視化し分かりやすくしたグラフです。縦軸にタスク量、横軸に時間、残りのタスク量を線グラフで表します。
チャートは「実績線」「計画線」「理想線」の3つの線で表されます。3つの線の位置関係から、進捗状況や課題の有無などを読み解きます。
図:バーンダウンチャートのサンプル
実績線
実績線とは、プロジェクトの進捗具合を残っている仕事量で表す線です。すべての仕事量から終了した仕事量を引くことで導き出します。進捗具合を残りの仕事が完了するまでの時間として表されます。
計画線
計画線は、プロジェクト開始前に設定したタスクが計画通りに進んだケースを表す線です。この線と実績線がどれだけ乖離しているかを確認することで、計画と進捗状況のズレを確認できます。
実績線が計画線の右上になるほど進捗が停滞しているとされています。反対に2本の線が近いほど、計画通りに進んでいるといえます。
理想線
理想線は、すべての仕事量をプロジェクトで設定された時間で平均したものです。理想線と計画線を比較することで、計画の妥当性を確認できます。理想線は進捗具合の平均を表すもののため、実際の仕事を理想線に合わせる必要はありません。
その他の要素
そのほかの要素としては「ストーリーポイント」や「スプリント目標」が挙げられます。
残りの作業量と納期までの日数を可視化したものがストーリーポイントです。ストーリーポイントは、2つの軸で表されます。縦軸には工数を表す0~100のポイントを、横軸にはプロジェクトの期日までの残り日数を表す1~30のポイントで表現します。
スプリント目標は、全体的な目標です。実際の仕事は目標通りに正確に進むわけではありませんが、具体的な目標を設定することで、タスクを効率的に進めることが期待できます。
バーンダウンチャートを使用するシーン
バーンダウンチャートは、残りの作業量と必要な時間が一目で分かるチャートです。
チームが作業を完了させるのに充分な時間があるかどうかを視覚的に表現できます。
一般的に、バーンダウンチャートは短い反復作業を行うアジャイル開発で活用されます。作成することで、プロジェクトの完了日を決定したり、チームの動き方などを把握できたりします。
バーンダウンチャートは、アジャイルとスプリントの2種類に分けられます。
アジャイルバーンダウンチャートは、アジャイルチームがタスクを迅速に進行できる際に使用します。アジャイル開発には、いくつかの流派があります。代表的なものが開発生産性重視の「エクストリーム・プログラミング」とマネジメント重視の「スクラム」です。
アジャイル開発について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
アジャイル開発とは?特徴やウォーターフォールとの違いなど徹底解説
スプリントバーンダウンチャートは、開発チームが短期間のスプリント作業を行う際に利用されます。
バーンダウンチャートを使うメリット
バーンダウンチャートは作業と作業にかかる時間を可視化できる便利な手法です。特にスプリントで作業を行う際に適しているとされています。また以下のようなメリットが挙げられます。
スプリントについてはこちらで詳しく解説しております
スプリントとは?アジャイル開発やスクラムとの関係性、メリットを解説
プロジェクトの状況を可視化できる
バーンダウンチャートは、完了までに必要な作業と、スプリントを完了させるために必要な工数を比較できます。表によって分かりやすく比較されるため、チームはスプリントの目標に合わせて作業を進めやすくなります。実績線、計画線、理想線でプロジェクトの進捗状況が一目でわかります。
チームが共通認識を持てる
バーンダウンチャートによって毎日の工数ログと作業を視覚化できると、メンバーは自分のタスクが分かりやすくなります。またバーンダウンチャートのみで必要な作業とそれにかかる時間が分かるため、ひとつの情報源を見るだけで済みます。
チームの生産性向上につながる
バーンダウンチャートは作業の視覚化だけでなく、チームの生産性や作業スピードの向上にもつながります。実際の作業量が理想的な作業量と大きく異なる場合は、チーム全体の生産性を高める取り組みも必要でしょう。
バーンダウンチャートの作り方
バーンダウンチャートを作成する際には仕事の細分化を行いましょう。細分化した後、それぞれの仕事量や所要時間などを導き出します。ここではバーンダウンチャートの一般的な作り方をご紹介します。
工数の推定
まず対象の作業を完了させるのに必要な工数を推定しましょう。
たとえば、5日間で80時間の作業が理想的なベースラインであるとします。これには1日16時間の作業が必要です。そこで工数の基準値を「80」に設定し、残りの日の工数を追跡しましょう。各日の工数は以下のように設定できます。
・1日目 64時間
・2日目 48時間
・3日目 32時間
・4日目 16時間
・5日目 0時間
工数の推定を行ったら日々の進捗の追跡を行い、バーンダウン線を記入します。
進捗状況を追跡
次に日々の作業の進捗状況を追跡しましょう。Excelなどで記録したり、タイムラインツールを使用したりします。進捗は、各タスクにかかっている時間と進み具合を追跡することをおすすめします。
実際にかかった工数を計算
計画工数を算出したら、各タスクに必要な実績値を計算しましょう。推定時間と同じになるかもしれませんし、多くなるかもしれません。スプリントの複雑さから遅延を生じさせる課題が出てきた場合、変化する可能性が高いとされています。
特に実作業の線をバーンダウンチャートに記入すると、ほとんどのケースで直線にはなりません。プロジェクトには不測の事態が起こることが多く、起伏があるのは普通のことなので心配しすぎないようにしましょう。
最終データ(実績値)を収集
次に最終データの収集を行います。当初推定した工数と、進捗状況の追跡から得た実作業ログから収集しましょう。推定した工数を集めたら、記録された時間と照らし合わせます。
記録した時間は、チームメンバーがいつでも確認できる共有スペースなどに保管しておくことをおすすめします。
最終データの収集が終わったら、バーンダウンチャートで視覚化する作業に取り組みます。
バーンダウンチャートに書き込む
集めたデータをバーンダウンチャートに書き込みます。推定した工数は縦軸に入力します。
5日間で80時間分の作業を行う場合、80時間から始まって最終日の5日目には16時間に減ります。横軸には1~5日目を記入します。
縦軸と横軸を記入したら、理想的な残り時間と実際の時間を入力します。
実作業の線と理想の線は異なって表示されることがほとんどです。最終的に目指した結果が得られれば問題ないというわけではなく、計画通りに線が推移するようにしっかりとマネジメントを行いましょう。
バーンダウンチャートの読み方
バーンダウンチャートは、作業の進捗状況や残り作業量を視覚化するのに役立ちます。またプロジェクト終了後、そのプロジェクトの課題を見つける際にも有用とされています。
ここではバーンダウンチャートの読み方についてご紹介します。
1.計画通りに進行
プロジェクトが計画通りに進行しているかどうかは実績線と計画線を確認します。実績線が計画線にほぼ沿っている場合、プロジェクトが計画通りに進行したことを表しています。
プロジェクトが予想以上に効率的に進んだ場合、実績線が理想線を下回る可能性もあります。
ただし「計画通りに進めることが目的になってしまい、成果物が仕様通りではなくなっている」というケースでも、実績線が計画線に沿っている可能性があります。見かけの進捗が計画通りに推移しているからといって、プロジェクトそのものがうまくいっているとは限りません。
バーンダウンチャートは計画通りでないことを反映することも大切ですが、計画通りにならないことを恐れるあまり成果物に影響が出るケースもあります。
実績線の確認のほか、成果物についても確認しておきましょう。
2.中間~後期学習者
バーンダウンチャートがプロジェクトの中間から後期にかけて右上に膨らんでいるケースです。この場合、チームメンバーがあまり積極的ではなく、受動的に取り組んでいるケースや、課題を後回しにしているケースが考えられます。
具体的な問題としては、「不明瞭なタスクの詳細化ができなかった」「技術的な問題があった」「リソースが慢性的に不足していた」などが挙げられます。
また、最終的に期日に間に合っている場合は、最後の「追い込み」部分もチェックしましょう。追い込みをかけた期間は、成果物に対するチェックが十分でない場合や、成果物の一部が未完成のままの可能性があります。
過去のプロジェクトでこうした傾向が見られた場合、早期に解決しなくてはいけない課題が後回しになった可能性が考えられます。そのため、具体的な対策を検討しましょう。
3.中間学習者
プロジェクトの中間に膨らみがあるケースです。2のケースと比較すると、早期に課題を発見し、解決している傾向にあります。
4.早期学習者
早期学習者は、膨らみが早期にあり、その後緩やかにバーンダウンするケースです。この場合チームは早期に課題を発見し解決することで、ゴールを達成するために効果的な動きができていると考えられるでしょう。
チームメンバーが成熟しており、プロジェクトに対して積極的に取り組んでいるといえます。
5.高原状態
最初の進捗は問題ないものの、後半で失速し平坦な「高原状態」をなってしまったパターンです。早期に原因を究明し解決策を練る必要があるでしょう。
6.学習遅延の状態
グラフ終盤に突然実績線が上昇し、バーンダウンしないパターンです。失敗パターンの1つとしてあげられます。プロジェクトの進め方に問題があり、課題が終盤に発生し、解決に多大な工数がかかっていることが想定されます。
仮にグラフの上昇が起きたとしても、序盤に発生し、解決を図るべきです。
7.作業の増大
グラフの途中でいきなり実績線が増大するパターンです。計画途中でいきなり新しいタスクが追加された場合などに表れます。これはチームがあらかじめプロジェクトのタスクについて理解しきれてなかったサインといえます。
バーンダウンチャートを利用する注意点
バーンダウンチャートはメリットの多いグラフですが、使い方を間違うとマネジメントが失敗する可能性があります。
ここではバーンダウンチャートを利用する際の注意点をご紹介します。
チャートだけで進捗を把握してはいけない
バーンダウンチャートだけを見て進捗を把握しないようにしましょう。実際の作業には数値だけでは表現できない情報が多くあります。
たとえば、チームの雰囲気やメンバーの体調などの情報はプロジェクトリーダーが管理・把握すべきです。また、途中途中の成果物の品質や、課題を置き去りにしていないかなど、表を見るだけではわからないことをきちんとヒアリングして把握する必要があります。
バーンダウンチャートだけを見るのではなく、さまざまな情報を総合して判断しましょう。
計画段階で作業完了の定義を決める
計画段階で作業完了の定義をスプリント(各工程)ごとに決めるようにしましょう。「作業を完了した」と判断する基準はメンバーごとに異なります。そのため、作業完了の定義を決めていなければ、タスクの見積もりが不正確になる可能性があります。
責任者がきちんと作業完了を確認し、終了とすることをおすすめします。
まとめ
バーンダウンチャートはプロジェクトの進捗状況を可視化するのに適したグラフです。プロジェクトの進行中だけでなく、プロジェクトの計画時にも役立てられます。
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