パレート図とは?基礎知識や具体的な活用方法、作り方を徹底解説

 2022.09.07  株式会社システムインテグレータ

「パレート図」は、製造業であれば品質保証、システム開発であればプロジェクトマネージャーやPMOにとって理解しておかなければならない用語です。QC7つ道具のひとつでもあるパレート図は、棒グラフと線グラフによって構成されている複合グラフのことを指します。商品の品質などの「改善」に役立つ分析方法なので、業種問わず、さまざまなシーンで役に立ちます。

この記事では、パレート図の概要や名前の由来となっている「パレートの法則」について説明した上で、作成方法などをご紹介します。

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パレート図とは

パレート図とは「棒グラフ」と「線グラフ」を組み合わせた複合グラフのことです。主に、発生している問題の中で大きな割合を占めているものを特定するための方法のことを指します。

品質管理、つまりQC(Quality Control)に使われることの多いグラフですが、改善活動ならどんな場面でも活用可能です。一般的には、問題発見が大切な「製造業」や業務の改善が重要な「コールセンター業務」などで使われています。

【パレート図のイメージ】

右軸:累積比率、左軸:不良品数、横軸:不良品の原因別

パレート図とは?基礎知識や具体的な活用方法、作り方を徹底解説 2

引用元:https://kaizen-base.com/column/31918/

パレート図はQC7つ道具のひとつ

QC(Quality Control)は品質管理の略称です。品質改善のための活動をQC活動といい、この際によく使われている図などを集めたものが「QC7つ道具」といわれています。

QC7つ道具とは、品質管理(QC)のためにデータを整理したり分析したりするための代表的な方法のことです。その中でもパレート図は、複数ある項目から影響の大きいものがどれか明確化する役割を持っています。

1954年に来日したジョセフ・M・ジュラン氏と石川馨博士によって品質保証の分野で広められたこの方法は、低品質だった日本のさまざまな製品の品質向上に役立ちました。「7つ道具」というだけあり、パレート図の他にも以下のような分析方法があります。

・特性要因図

「フィッシュボーン図」とも呼ばれる特性要因図は、特性がどのような要因によって形成されているかを可視化するものです。このグラフは、主軸であり解決したいテーマである「背骨」と、背骨の原因として考えられる「大骨」、大骨を形成する「小骨」に加え、小骨に隠れた要素である「孫骨」で形成されており、まるで魚の骨のような形をしています。

解決したいテーマと、その要因について知りたい場合に活用するのが一般的です。

製造業において、大骨には人(Man)・機械(Machine)・方法(Method)・材料(Material)といった「品質管理の4M」を置きます。他にも「検査・測定(Measurement)」や「マネジメント(Management)」を加えた「5M」や「6M」を使う場合もあります。

・グラフ

傾向や変化、大小関係を可視化するものです。円グラフや折れ線グラフなど種類が豊富なので、目的にあったグラフを使うと良いでしょう。

円グラフや帯グラフは、ある量における内訳などを表す際に使います。例えば、ある商品の販売数を都道府県ごとの割合で表現するといった用途です。

他にも、棒グラフは数量を比較する場合に、折れ線グラフは時間ごとに変化する数値について表す場合などに使えます。

・ヒストグラム

連続しているデータの分布や平均、ばらつきなどを可視化するものです。また、度数分布図とも呼ばれます。例えば、とある製品の購入者向けアンケートの結果をまとめる際に利用すると仮定して、横軸(階級)を「年齢層」縦軸(度数)を「購入された個数」として表現します。

グラフの形によって「一般型」や「二山型」「高原型」などがあり、分布の形によって数値が安定しているか判断できるのです。

・散布図

対となる2つのデータを比較して、特性や要因などの関係性を可視化するものです。身長と体重の関係の場合、「身長が大きくなる」と「体重も大きくなる」といったように表せます。これを「正の相関」という一方で、「日中の気温が下がる」ほど「防寒具の売り上げが増える」といった関係を「負の相関」と表すことも可能です。

・管理図

管理図は、工場における不良品の判定など「工程管理」に使われるのが一般的です。

図には上方管理限界と下方管理限界という線があり、その中で平均値を表すグラフが展開されています。異常値が出た場合は、上方管理限界や下方管理限界の線を越えてしまうため、一目見て分かるようになっています。どの条件で数値に異常が発生するのか、といった課題を見極める際に利用可能です。

・チェックシート

点検や調査、確認などを行いやすくするために、あらかじめデータを記入する項目を分類し、チェックをするだけでデータを取る方法です。工場などの現場においてよく活用されていて、多くの方が「チェックリスト」として普段から活用しているものでもあります。

主に「調査用チェックシート」と「点検用チェックシート」という2種類が使われており、「旅行のしおり」でいうところの「持ち物チェック」「日常的な点検」に使うのは、点検用チェックシートです。

パレートの法則とは

「20:80の法則」や「2:8の法則」とも呼ばれるこの法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって1986年に論文で提唱されたものです。元々は「上位2割の富裕層が社会全体の富の8割を有し、残りの8割で2割の富を分け合っている」という考え方で、今ではマーケティングなどにも活用されています。

例えば、多数のゲームを販売している企業が今後の方針を決めるために販売本数など売上げに関するデータをまとめた場合、「売上げの8割」は「2割の人気ゲーム」が占めている、という結果になります。この結果を踏まえると、売上を伸ばしている「2割の人気ゲーム」に注力する方針に切り替えることが可能です。

また、Webサイトなどにおける「利用者の8割」は「全ページのうち2割」だけを見ている、あるいは「成果の8割」は「時間全体の2割」で生み出されているなど、さまざまな状況において応用できます。どんな使い方においても「優秀な2割」を見極めて対策していくことが重要です。

パレート図の活用目的

パレート図とは?基礎知識や具体的な活用方法、作り方を徹底解説 3パレート図は主に、問題箇所の特定や影響の度合いを可視化するために活用されます。また、改善する前後の比較などにも利用可能です。品質改善などに利用されることが多い図ですが、「改善活動」ならどんな分野でも活用可能という魅力があります。

パレート図を使うべき状況とは

パレート図は「改善点や問題点を見つけたい場合」や「改善の前後を比較したい場合」などに活用するのが一般的です。

クレーム処理を例に挙げてみましょう。この業務を効率的に進めるには、「改善点の発見」「分析」「改善する前後の比較」がカギです。このときパレート図を作成することで、多く発生している問題点を抽出できるため「どんなクレームが多いのか」「どの点を改善すべきなのか」といった分析がスムーズにできます。

また、改善後にもパレート図を作成することで、改善する前後を比較可能です。

このようにパレート図は、不良発生件数や金額、クレームの件数などに利用されることが多い傾向にありますが、研修やタスク管理などのさまざまな用途で活用できます。

特に、品質が重要視されている「製造業」や、問題点の抽出が大切な「コールセンター業務」などの業界においては、大いに役立つ手法といえるでしょう。

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パレート図を使うメリット

パレート図は項目と数量などを表にするため、どの数値がどれくらい影響を与えているのかといった要素を明確化できるのがメリットといえます。問題点が多く、改善点が見つからずに困っている場合や改善の前後の結果を比較したい場合におすすめです。

自社製品の不良品における原因を分析する場合、キズや欠け、汚れなど考えられる原因はいくつもあります。どの問題から着手すれば良いのか分からなくなってしまう前に、パレート図を利用して原因別の件数を把握すれば、「件数の多い原因から解決していく」といったように具体的な対策を考えられるのです。

また、改善後にもパレート図を作成すれば効果が出たのか視覚的に判断できるのも、この図ならではの魅力でしょう。

パレート図の作り方

パレート図の作り方は、大きく「期間を決めてデータの収集をする」「分類項目を決める」「表やグラフに落とし込む」という3段階に分けられます。解決したい問題や目的を明確化しておくことで、これらの段階をスムーズに進めることが可能です。

データの収集

パレート図を作成するには、数字で表せるデータを用意する必要があります。具体的には、製品の不良発生件数やクレームの発生件数などのデータです。

集めるデータを決めたら、期間を決めて実際にデータを集めます。この際、データ収集の期間が長期になると適切に分析できなくなってしまうケースがありますので、最長でも1年程度の情報で作成するのがおすすめです。

データの分類

データの収集後は、数字の大きい順に項目を並びかえます。

この時、項目を細分化しすぎると本来の目的である「問題の特定」というテーマから逸れてしまうため「本当に解決すべき問題」が分からなくなってしまいます。どうしても分類項目が多くなってしまう場合は、小さい項目をまとめて「その他」として最後に置きましょう。

Excelの場合、「範囲を選択」から「データ」「並べ替え」「大きい順」で簡単に並べ替えができます。

表の作成

縦列に分類項目とその他、一番下に合計を記入します。横の行に「件数」「その分類項目が全体に占める割合」「累計件数」「累計のパーセント割合(累積比率)」を記入しましょう。

注意したい点は「累積比率の合計は100%になる」ということです。もし、合計数が100以外の数値になる場合は、計算が間違っている可能性が高いので再度確認しましょう。

グラフの作成

表ができたら、そのデータを元にパレート図を構成している折れ線グラフや棒グラフを作成します。

Excelの場合「項目」と「件数」「累計比率」を選択し「挿入」「おすすめグラフ」と進めれば、簡単にパレート図が作成可能です。正確に表示されない場合は、「グラフの挿入」から「すべてのグラフ」「組み合わせ」「集合縦棒ー第2軸の折れ線」を選択すると修正されます。

続いて、グラフの「累積比率」をクリックして折れ線グラフを選択し、リストから「第2軸 縦(値)軸」を選択して「8割のライン」を明確化しましょう。それらが完了した後、タイトルや単位を記載し、グラフを整えれば完成です。

パレート図の活用方法

パレート図を作成した後は「どの項目が一番影響を与えているのか」といった視点でグラフを見ます。こういった状況で活用する有名な分析方法が「ABC分析」です。全体から見て最も割合が大きい項目を「A」、中程度の項目を「B」、少ない項目は「C」と分類し、割合の大きい「A」から対処していく方法となります。

例えば、自社製品の品質改善を目的としている場合に、「原因別」でパレート図を作成すると仮定します。その際に、一番件数の多い原因が傷だった場合、この項目を「A」として、どの工程でキズが発生しているのか調査し、改善に役立てられるのです。

このように活用するのが一般的なので、パレート図の作成時には「解決したい問題の明確化」と、それに「関連するデータ」を項目として設定することがとても重要となります。

まとめ

パレート図とは、不良品の発生件数などの項目をグラフを用いて明確化したものです。一般的には、改善点や問題点が多すぎて困っている場合などに活用します。Excelを使用すれば簡単に作成でき、客観的に問題や改善点を見つけられるというメリットも得られるでしょう。

パレート図のみならず、これ以外のQC7つ道具は日々実施するプロジェクトを管理し改善するために使われています。活用方法に困っている方のためにプロジェクト管理手法についてまとめた資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。

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