アローダイアグラムとは、「新QC7つ道具」と呼ばれる、製品開発のための品質管理(QC:Quality Control)に用いられる手法の一種です。
アローダイアグラムを利用することで、プロジェクト内作業の実施予定を整理し、作業効率の改善に役立てることが可能です。
本記事では、アローダイアグラムの目的やガントチャートとの違い、読み方、作成方法などを解説します。
アローダイアグラム(PERT図)とは?
アローダイアグラムは、各作業の所要時間などの情報を組み合わせて、プロジェクト全体の流れを図表化したものです。プロジェクト内の特定の作業を表す矢印(→)と、作業間の結合点(○)が主な構成要素で、流れともに所要時間を表現しています。別名PERT図(PERT:Program Evaluation and Review Technique)とも言います。
アロー ダイアグラムの解説にあたって、以下のサンプルをご覧ください。
上記のサンプルは、カツサンドを作成する場合の作業の流れを図表化したアロー ダイアグラムです。
このアロー ダイアグラムからは、大きく以下のような内容が読み取れます。
- 「A:豚肉の準備」作業が完了してからでないと、「B:カツを揚げる」作業に着手できない。
- 「B:カツを揚げる」、「C:キャベツを千切りにする」、「D:パンをスライスする」工程が完了してからでないと「E:具材をサンドする」工程に入れない。
- 「E:具材をサンドする」作業が完了してからでないと、「F:仕上げのカット」作業に着手できない。
- 作業A~Bが進行中の間、作業C、作業Dはそれぞれ別途並行作業が可能。
アローダイアグラムでは、このような形で作業間の前後関係や、各作業の所要時間などを管理します。また、上記の1〜4から読み取れる作業上のボトルネックとなる工程や、平行実施可能な作業の管理にも役立ちます。
ガントチャートとの違い
アローダイアグラムとガントチャートは、両方ともプロジェクト内の作業を管理するための図表ですが、管理する情報や作業管理の粒度に差があります。
先ほどのサンプルで確認したように、アローダイアグラムではプロジェクト内の各作業の実行順序を管理しますが、ガントチャートでは各作業間の実施順序や優先作業などは明示的に管理しない点が差異となります。
また、ガントチャート側では各工程内の作業内容をブレークダウンして明細化して管理しますが、アローダイアグラムは作業の開始から終了までの各工程が直線で繋がるフローチャートとなり、作業のブレークダウンや階層管理は行いません。
構造が単純になる分、各作業の順序等の情報を視覚的に管理可能な点がメリットとなります。
PERT図 | ガントチャート | |
表現図式 | フローチャート | バーチャート |
対象範囲 | 小規模のプロジェクト向き | 大規模のプロジェクト/複雑なプロジェクト向き |
内容 | プロジェクトの各タスクの流れ、完了時間、クリティカルパス | プロジェクトのタスク、各タスクの開始〜終了時間、進捗状況 |
特徴 | タスク間の関係性が一目でわかる、進捗状況はわからない | プロジェクトの進捗状況がひと目でわかる、タスク間の関係性は見えない |
アローダイアグラムを導入するメリット
アローダイアグラムの導入には、大きく以下のようなメリットがあります
- プロジェクト内の作業間の連続性を把握することができる
- プロジェクトの着手前に、日程上の問題点を把握することができる
- 作業を一連のフローチャートとして書き出すことで、改善案が作成できる
先のカツサンド作りに関するサンプル図のように、作業内容をアローダイアグラムとして出力することで、作業全体の構造が把握しやすくなり、改善提案などを行いやすくなります。(より良い作業の進行方針がないかを検討できる。) - 作業の進捗状況のチェックを容易に行う事ができる
- 関係者のコミュニケーション、意思疎通が容易になる
各作業の実施順序や、優先作業を明示化することにより、遅延が発生した場合の関係者間の調整などが容易となります。(作業の進行状態については、別途の管理が必要です)
アローダイアグラムの読み方
アローダイアグラムの読み方には、以下のようなポイントがあります。
-
最早結合点時刻
プロジェクトが予定通りに進行した場合に、各結合点の次作業を開始できる最速の時刻です。サンプル図でいうところの各結合点の上部に表示されている2つの時刻情報のうち、上側の時刻です。
例)サンプルでは、結合点3の最速結合点時刻は「40分」となっていますが、これは結合点3から作業Eを開始するためには、先行作業B、C、Dの完了を待つ必要があり、この中で一番時間のかかる作業A→Bの完了に40分かかるという意味合いです。 -
最遅結合点時刻
プロジェクトが予定通りに進行した場合に、各結合点の次作業を遅延なく開始できる最遅の時刻です。各結合点の上部に表示されている2つの時刻情報のうち、下側の時刻です。
例)サンプルでは、結合点4の最遅結合点時刻は「30分」となっていますが、これは所要時間10分の作業Cは、30分時点で開始すれば結合点3の最速結合点時刻に対して遅延を生じさせないという意味合いです。 -
余裕日数
余裕日数とは、最遅結合点時刻と最早結合点時刻の差し引きから求められる、作業遅延に対する余裕の日数です。最早結合点時刻からこの日数の期間であれば、作業に遅延が発生しても全体の完了予定には影響がありません。 -
クリティカルパス
クリティカルパスとは、各作業を順番に結んでいった場合に作業期間が最長となる経路となります。(サンプルでは、作業A→B→E→Fがクリティカルパスとなります。)
クリティカルパス上の作業に遅延が発生した場合、プロジェクト全体の遅れに直結するため、作業管理上の重要な要素となります。
関連記事:大型プロジェクトにはCCPMを取り入れよう:CCPM とは
アローダイアグラムの書き方
先程のカツサンド作りのアローダイアグラムを例に、アローダイアグラムの書き方を解説します。サンプルのアローダイアグラムは、以下の手順で作成されました。
-
作業工程洗い出しと整理
アローダイアグラムの作成のために、まずは必要とされる作業工程の洗い出しと整理が必要です。サンプルのアローダイアグラムの作成では、カツサンドの作成に必要な手順の整理のために、以下のような表を作成しました。 -
アローダイアグラムの作成
手順1で洗い出した作業内容を書き出し、前後関係を元に並べて、アローダイアグラムを図示していきます。
まずは、作業A~Bまでの作業を、結合点を交えて図示します。
作業Bは作業Aを先行作業とする作業のため、作業Aから繋げる形で図示します。
続けて作業C、Dを図示します。
このとき、作業C、Dは、作業A→Bと平行可能な作業のため、ダミーの結合点とダミーの作業を交えて図示します。
(結合点1-4、1-5間の矢印は、実際には存在しない作業時間0分のダミーの作業のため、点線で図示します。)
最後に、作業E~Fを追記して、アローダイアグラムの完成となります。 -
最早結合点時刻/最遅結合点時刻の記入
手順2で作成したアローダイアグラムに対して、まずは最早結合点時刻の割り出しを行っていきます。
アローダイアグラムの始点(結合点1)から順番に、各結合点での次の作業を開始できる最速の時間を求めていきます。
続けて、最遅結合点時刻の割り出しを行います。
先程とは逆の手順で、アロー ダイアグラムの終点(結合点7)から作業順をさかのぼる形で、各結合点の最早結合点時刻と各作業の所要時間の差し引きで、最遅結合点時刻を求めていきます。
まとめ
アローダイアグラムは、プロジェクトにおける作業工程の設計図であり、作業順序を明確化するフローチャート図でもあります。事前の作業設計にはじまり、プロジェクト開始後もアローダイアグラムから得られる情報をもとにした軌道修正を行うなど、効率よく最短で目標を達成できるようなマネジメントが実現できます。
アローダイアグラムではプロジェクトの進行状況までは把握できないため、大規模・複雑なプロジェクトではガントチャートが有効です。ガントチャートについては以下にて詳しく記載しておりますのでこちらもご参考にしてください。
ガントチャートとは?WBSとの違いやメリット・デメリットを解説
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