キックオフミーティングは、新しいプロジェクトを始める際に最初に行われるミーティングを指します。通常のミーティングとは異なり、目標と目的を確認するために行われます。
キックオフミーティング無しでプロジェクトを進めると、明確な目標や目的が共有できず、その後の開発効率が悪くなる可能性があります。
本記事ではキックオフミーティングの概要や目的、実施方法やポイントなどをご紹介します。
キックオフミーティングとは
キックオフミーティングとは新規のプロジェクトを開始する際に最初に行うミーティングです。プロジェクトの目的などによってもキックオフミーティングの内容は異なります。
社内のメンバーのみで行われることもありますが、業務委託先、システム開発会社の人が参加するものなどさまざまです。
キックオフミーティングの必要性
キックオフミーティングは、主に共通の目標・目的を確認するために行われる会議です。具体的な目標・目的を共有することで円滑にプロジェクトを進められます。
キックオフミーティングは通常、すべての関係者の準備が終わった後に行います。これから取り組むべき作業を確認し、全員がどのように協力するかを決定し、共通のゴールを確認します。
また、今後のコミュニケーションの方法やプロジェクトの進行の障壁となる可能性となるものやそれを回避する方法について話し合うことも必要です。
キックオフミーティングの目的
キックオフミーティングにはさまざまな目的があります。目的を理解してキックオフミーティングに臨めば効率的に会議が行えるでしょう。
キックオフミーティングには主に以下の3つの目的が挙げられます。
プロジェクト概要の共有
一番の目的は、新規プロジェクトの概要をメンバー全員で共有することです。プロジェクト憲章とも呼ばれ、プロジェクトの内容やメンバー、スケジュールなどをメンバー全員でしっかりと理解しておく必要があります。
また、プロジェクトに関する疑問や不明点などもここで解決しておきましょう。
詳しくはこちらで解説しています。
プロジェクト憲章の意味と、その実践方法とは?(Vol.26)
メンバーの顔合わせ
キックオフミーティングでは、プロジェクトに関わるメンバーの顔合わせの意味も含んでいます。メンバーは社内の人だけとは限らず、社外の人も関わる可能性があります。また社内の人でも、部署などが違えばよく知らない場合もあるでしょう。
キックオフミーティングでメンバー同士の顔やその人が持つスキルなどを知れば、プロジェクトを安心して進められるようになります。
信頼関係を持つためにも最初にメンバーの顔合わせをすることは重要とされています。
モチベーション向上
キックオフミーティングはメンバーのモチベーション向上にもつながると言われています。
新しいプロジェクトを始める際に意欲的になっているメンバーも多いのではないでしょうか。キックオフミーティングをして全員が同じ目標を共有することで、モチベーションアップが期待できるでしょう。
キックオフミーティングの実施方法
キックオフミーティングは対面だけでなく、Web会議システムを使ったオンラインで行う方法もあります。ここでは対面とWeb、それぞれの実施方法についてご紹介します。
対面で行う方法
社内の会議室などで、実際に対面形式で行う方法です。
直接顔を合わせる分、メンバーの一体感やモチベーション向上につながりやすいでしょう。
ただし、メンバーの中にテレワークや遠方の人がいると招集が難しくなります。その場合はWeb会議システムの利用などを検討しましょう。
Web会議システムを使う方法
昨今ではキックオフミーティングの実施時にWeb会議システムを利用するケースも増えています。集まる必要がないため、交通費などさまざまなコストを削減できます。
また遠方のメンバー同士でも問題なく会議に参加できます。その際、できる限りカメラオンで参加することを心がけましょう。相手の顔(表情)が見える、見えないではコミュニケーションの質に大きな差が出ます。
ただし、システムによっては一度に接続できる人数が限られています。そのため、導入しているシステムの同時接続数を確認しておく必要があるでしょう。
チャットツール
キックオフミーティングは、チャットツールを利用して行うことも可能です。会議のやりとりは、テキストで情報共有を行います。プロジェクトメンバーの顔を見ることはできませんが、プロジェクトの内容確認、スケジュールの把握などは問題なく共有できます。いずれの方法も、メリットとデメリットを把握したうえで選択すると良いでしょう。
キックオフミーティングの種類
キックオフミーティングはすべてが同一の形式を取るわけではありません。レギュラーかイレギュラーか、そのときどきで判断しなければなりません。どのような種類のミーティングも共通要素はあるものの、独自の特徴を持ちます。ここでは、キックオフの種類をいくつか紹介します。
- プロジェクトチーム内部のキックオフミーティング
- 社員スポンサー向けプロジェクトキックオフミーティング
- 社外または対顧客プロジェクトキックオフミーティング
- アジャイルプロジェクトキックオフミーティング
プロジェクトチーム内部キックオフミーティング
最もシンプルなキックオフの形態です。プロジェクトチーム内部で行われるキックオフミーティングの目的は、プロジェクトを開始する前に、プロジェクトチーム全員の認識を合わせ、足並みを揃え、不明な点について質問できる機会を設けることです。他の種類のキックオフミーティングと同様に、事前の資料作成は必要ですが、フォーマルなイベントのようなレベルの準備は必要はありません。
プロジェクト例:
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製品マーケティングローンチ計画
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ウェブ制作
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ユーザビリティテスト計画
必要な資料:
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プロジェクトの主要情報 (成功指標、プロジェクトのスケジュール、関係者など) をまとめたプロジェクト計画。
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プロジェクト完了時までに達成することを文書化した、SMART に基づくプロジェクト目標。
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プロジェクトの対象範囲に含まれる仕事は何か、対象外のものは何かを明確に定義したプロジェクトスコープ。
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主要な工程がいつ完了するのかを把握できるよう、重要なプロジェクトマイルストーンをすべて視覚化したプロジェクトのタイムライン。
キックオフの際には、上記の資料を共有することに加え、プロジェクト情報を 1 つのワークマネジメントプラットフォームで保管することが推奨されます。そうすれば、チーム全員が、主要なプロジェクト文書に簡単にアクセスできます。
役員スポンサー向けプロジェクトキックオフミーティング
役員スポンサー (エグゼクティブスポンサー) が参加するプロジェクトや取り組みにおいては、全役員の認識を一致させるため、トップ上層部向けのキックオフミーティングを開催することが一般的です。このタイプのキックオフミーティングでは、プロジェクトの目的やゴールをはじめとするプロジェクトの概要に加え、プロジェクトが会社目標の達成にどのように貢献するかに主眼が置かれるので、それらについて十分説明する準備が必要です。
役員向けキックオフミーティングでは、プロジェクトの個別のマイルストーンや詳細に時間をかけすぎないよう留意しましょう。また、プロジェクトチーム向けに、プロジェクトチーム内部キックオフミーティングも別途開催することを推奨します。
プロジェクト例:
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製品ロードマップ
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マーケティングキャンペーン (代理店タイアップなし)
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ソフトウェア / システム開発
必要な資料:
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プロジェクトが事業に与えるインパクトを会社目標に関連付けて、明確に定義したプロジェクト目的。
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該当する場合は、このイニシアチブのために作成したビジネスケース
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プロジェクトの完了時点で達成予定の内容をステークホルダーに示す、簡潔なプロジェクト目標
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プロジェクトの主要情報 (成功指標、プロジェクトのスケジュール、関係者など) をまとめたプロジェクト計画
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プロジェクトの重要タスクのタイムラインを俯瞰するプロジェクトロードマップ
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これらの主要情報をすべて含むプロジェクトの要旨。キックオフミーティングでは、プロジェクトの要旨の簡易版を紹介し、詳細は各自ミーティング後に確認できるよう、関係者と文書を共有します。
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正式なプレゼンまたはパワーポイント資料。
社外または対顧客プロジェクトキックオフミーティング
顧客向けプロジェクトに取り組む場合には、自社プロジェクトチームと顧客側の主要関係者の両者がプロジェクト目標と成果物について認識を共有するためのキックオフミーティングを開催する必要があります。これは、キックオフミーティングのうち、最もフォーマルなタイプになります。
この種のプロジェクトキックオフは、期待内容を定め、プロジェクト目標について認識を一致させる機会となります。キックオフミーティングの開催時には、プロジェクトチームを紹介し、顧客とのコミュニケーションの頻度について合意し、効果的なコラボレーションの目指す姿を明確化する時間を取ります。顧客の参加が必要な評価のタイミングや、プロジェクトの進捗を伝える方法については、両者の理解が必要です。
プロジェクト例:
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マーケティングキャンペーン (代理店タイアップ)
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イベントプランニング
必要な資料:
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プロジェクトの主要情報 (成功指標、プロジェクトのスケジュール、関係者など) をまとめたプロジェクト計画。
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仕事の種類により、プロジェクトの要旨またはクリエイティブブリーフ
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プロジェクトの対象範囲に含まれる仕事は何か、対象外のものは何かを明確に定義したプロジェクトスコープ。
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プロジェクトの重要なタスクのタイムラインを俯瞰し、重要なプロジェクトマイルストーンを示したプロジェクトロードマップ。
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プロジェクトの関係者とそれぞれの役割の一覧。
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チームのコミュニケーション手段とプロジェクトステータスレポートの共有方法の提示。
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正式なプレゼンまたはパワーポイント資料。
アジャイルプロジェクトキックオフミーティング
アジャイルチームでは、2 週または 4 週ごとに繰り返される仕事のサイクルである「スプリント」に基づきプロジェクトが進んでいきます。新たなスプリントのたびに毎回キックオフを行うことは、逆にプロジェクトのスピードを落とすことになるので必要ありません。しかし、チーム全員の足並みを揃えるために、年 1 回はキックオフミーティングを計画することをおすすめします。また、チームが新しいプロジェクトを開始する場合や、新しいチームメンバーを迎える場合には、全員の認識合わせのためにキックオフミーティングを開催しましょう。
アジャイルプロジェクトキックオフミーティングは、スプリント中にチームが必要とするものをすべて準備します。そのため、スプリント計画とスプリントの振り返り会議を活用すれば、継続的改善に取り組めます。
必要な資料:
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チームにとって「完了」が意味することの定義を含む成功基準。
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各メンバーの役割を正式に定めたプロジェクト体制。特にスクラムを実行しているチームではこれが重要になります。
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チームの開催イベントとそのタイミングの一覧。
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チームがコミュニケーションを取る場とその手段を明確に定めたコミュニケーション計画。
チーム内の毎日のスタンドアップミーティングの議題。
キックオフミーティングの進め方
ここでは、キックオフミーティングの一般的な進め方についてご紹介します。
スケジュール共有とコミュニケーション
通常、プロジェクトマネージャー・リーダーがスケジュールを設定し、プロジェクトメンバーに通知してミーティングを行います。その際、プロジェクトの規模や重要度などを考慮し、会議体(対面で行うか、オンラインで行うかなど)を決定します。
キックオフの前段階からプロジェクト間のコミュニケーションは始まっています。メンバーが気持ちよくスタートを切れるように、プロジェクトマネージャー・リーダーはその配慮が必要です。
プロジェクトの共通目的(ゴール)を決める
キックオフミーティングでは、メンバー間でプロジェクトの方向性の確認を行います。プロジェクトの目標や目的について、まずシンプルに説明しましょう。メンバーがプロジェクトの方向性に悩んだ時などに、共通設定したゴールを思い出すことで方向修正がしやすくなるでしょう。
ここでは複雑な目的や方向性を提示してしまうと、メンバーから理解されづらく忘れられがちです。そのため、常に思い出しやすいシンプルなものに設定するのがおすすめです。
体制の共有
キックオフミーティングでは、円滑に作業を進めるために具体的な体制の説明も行いましょう。
「自分の役割は何か」「責任の所在は誰にあるのか」「問題がある場合は誰に相談すればいいのか」などについて共有しておきましょう。
メンバーが自分の役割を理解することで、作業を効率的に進められるようになります。
さらに他のメンバーの役割を知っておけば、迷った時に誰に相談すればいいのかが分かりやすいでしょう。
またいつでも体制について確認できるように、体制図を作っておくことをおすすめします。体制図があれば相談する相手を間違えることがなくなるでしょう。
さらに、ステークホルダーの特定を行います。ステークホルダーとは、プロジェクトの関係者のことです。関係者とは、顧客や協力会社、経営者、プロジェクトメンバーなど社内社外を問いません。プロジェクトを円滑に進めるには、こうしたステークホルダーとの関係を管理する「ステークホルダーマネジメント」も重要とされています。
ステークホルダーマネジメントについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【第15章】ステークホルダーマネジメントを意識しよう:ステークホルダマネジメントとは
現状の課題や必要事項の共有
現状で判明している課題や必要事項の共有を行いましょう。一覧で確認できる資料があればより分かりやすくなります。課題はプロジェクトの円滑な進行を妨げるものですので、早期解決が必要です。メンバー全員で共有することで、解決策が見つかりやすくなるでしょう。
また課題をメンバー全員で共有することで、リーダーには見えていなかった課題が出てくることもあります。課題の内容といつまでに解決しなければいけない課題かを共有しておけば、現場の混乱を抑えられるでしょう。
メンバー間の自己紹介
キックオフミーティングでは、プロジェクトメンバーの自己紹介も行いましょう。特に社内複数の部署からメンバーが集まっていたり、社外の人が多かったりする場合は、自己紹介を行うことでコミュニケーションを円滑にすることが期待できるでしょう。
自己紹介をすることで、話し方や表情から相手の人となりがある程度分かります。メンバー同士がお互いの人となりを知ることで親近感が湧き、プロジェクトを良い雰囲気で進められる可能性が高くなるでしょう。
ただし大人数で自己紹介をするのには時間がかかるため、人数がそこまで多くない場合のみ全員で行うことをおすすめします。大人数の場合はプロジェクトの責任者やリーダーのみが自己紹介をしましょう。
質疑応答
キックオフミーティングの最後には質疑応答の時間を設けましょう。プロジェクトの不明点や疑問点は、質疑応答でできるだけ早めに解決しておくことをおすすめします。
質疑応答によってしっかり意見を出し合うことができれば、メンバー間の雰囲気も良くなるでしょう。
キックオフミーティングのポイント
キックオフミーティングを始める前には開催のポイントについて知っておきましょう。ここではポイントを5つご紹介します。
資料など事前準備を徹底する
キックオフミーティングを行う際には、事前に資料などの準備をしっかりしておきましょう。準備が徹底されていないと、プロジェクトを実施する目的や目標が理解しにくくなります。また認識のズレがおき、円滑にプロジェクトを進められない可能性があります。
資料にはプロジェクトの目的とゴールを明確にした「プロジェクト憲章」を作成することがあります。プロジェクト憲章について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
プロジェクト憲章の意味と、その実践方法とは?(Vol.26)
開催時期を見極める
キックオフミーティングは開催時期を見極めることも大切です。キックオフミーティングは一般的にプロジェクト開始の1週間前までに実施しましょう。開催時期が決定したら、できるだけ早くメンバーに日時を通知します。
参加人数が多いと日程調整が難しく、開催時期が遅くなってしまいがちです。全員の日程調整に慎重になるあまり、キックオフミーティングの開催時期を逃すという失敗もあります。全メンバーの参加が難しい場合は、主要メンバーだけに絞る等、プロジェクトスタートのタイミングを逃さずにミーティングを設定しましょう。
プロジェクトが進んでからキックオフミーティングしても、メンバーに「今さら感」が漂い、モチベーション向上には至らないでしょう。
そのため、プロジェクトが決定したらキックオフミーティングに向けてできるだけ早く動き出す必要があります。
最適な方法で開催する
キックオフミーティングには、対面、Web会議システム、チャットツールなどの中から最適な方法を選択しましょう。メンバー全員の顔合わせのためには対面式が理想とされていますが、状況によっては難しいこともあります。
遠方のメンバーやテレワークのメンバーがいても開催しやすいように、Web会議システムやチャットツールの利用も検討しておきましょう。
会議中は議事録を取る
キックオフミーティング中は議事録を取りましょう。議事録は見るだけでミーティングの内容が理解できるようにポイントを押さえてまとめます。
主に以下の内容を記載しましょう。
・会議名
・日時/場所
・出席者
・要旨、議事内容
・決定事項
ミーティング中に議事録をまとめるのは難しいため、まずは要点を押さえたメモを取りましょう。メモは議事録の流れに沿って書きます。また誰が言ったのか分かるように発言者もしっかり記録しましょう。
議事録はミーティングに参加していない人が読むことが多いため、読み手がすぐに理解できるように適度に話し言葉や書き言葉を加えます。
ミーティング終了後にメモの情報を整理し、議事録の体裁を整えましょう。
キックオフミーティングに限った話ではないですが、参加することが目的ではなく、発言内容や決定事項をしっかりと記録しておきましょう。
キックオフミーティングにおける注意点
キックオフミーティングは、プロジェクトの目的や目標について共有し、メンバーのモチベーション向上のために必要とされる会議です。
まとめ
キックオフミーティングは、プロジェクトの目的や目標について共有し、メンバーのモチベーション向上のために必要とされる会議です。
今回はプロジェクト開始時のキックオフミーティングにフォーカスしてお話ししましたが、プロジェクト管理については詳しい資料もご用意しております。ぜひご覧ください。
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