プロジェクトライフサイクルとは?3つの種類と5つのフェーズ、ポイントを解説

 2023.05.11  株式会社システムインテグレータ

どのような組織にも何らかのプロジェクトが存在し、少ないリソースで大きな収益を残すことを目指しています。プロジェクトではいくつかのフェーズを段階的に進めますが、最適な時期に最適な結果を得るには関係する要素やリスクを網羅的に把握しておくことが必要です。

今回はプロジェクトライフサイクルに注目し、種類やフェーズごとのポイント、実践に向けたポイントを解説します。

プロジェクトライフサイクルとは

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プロジェクトマネジメントにおいては、国際標準であるISO 21500と国際的に有名なガイドラインであるPMBOKがあります。まずはプロジェクトライフサイクルの定義、全容やメリットを紹介します。

PMBOKにおける定義

PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメント協会(PMI)

が策定している、プロジェクトマネジメントのガイドラインを指します。PMBOKでは、プロジェクトマネジメントに必要とされる知識が体系化されており、さまざまなプロジェクトに役立てられるのが特徴です。

PMBOKにおけるプロジェクトライフサイクルの定義は、「プロジェクトが開始されてから完了に至るまでに、プロジェクトが経由する一連の段階」とされています。

PMBOKについてはこちらの記事で詳しく解説しております。

ISO21500における定義

ISO21500(プロジェクトマネジメント国際標準)は、2012年9月1日 に発行されたプロジェクトマネジメントのガイダンス規格としての国際基準です。世界的に対応するマネジメント方法や原則、グッドプラクティスが紹介されています。

ISO21500におけるプロジェクトライフサイクルは、「プロジェクトが開始してから終了するまでが定義されたフェーズの集合」と定義されています。

プロジェクトライフサイクルのメリット

プロジェクトライフサイクルに従って進めることで、最適な時期に最適なソリューション(課題解決)を行えます。最小のリソースで、最良の利益や結果を生む可能性を上げられることがメリットです。生産性の高いプロジェクト実施に役立つ他、それぞれの視点で以下のようなメリットが得られます。

・組織(経営者)側視点
プロジェクトの効率化による利益向上、遅延リスクやコスト削減
計画の精度が向上し、限られたリソースで早急な対応や判断が可能

・プロジェクトマネージャー(PM)視点
プロジェクトの一貫性を図りやすい
問題の早期発見や早期対応が可能
体系的なプロジェクトマネジメントスキルの向上

プロジェクトライフサイクルの種類

プロジェクトライフサイクルにはいくつかの種類があり、プロジェクトを進める際は適切な型を選ぶのが原則です。ここでは、それぞれのサイクルの特徴を紹介します。

予測型ライフサイクル

プロジェクトの初期段階で予算やスコープを決定するのが「予測型ライフサイクル」です。一連のプロジェクトに要する予算や情報、時間を明確に区分けしてから進めます。初期の情報収集がきちんとできていないとリスクをカバーしきれず、余分なコストや遅延を起こしてしまいます。予測型の場合、フェーズごとに必要な情報を細かく分類し、タスクや目標を明確にしておくのがポイントです。

反復型・漸進型サイクル

参加するメンバーのプロジェクトへの理解とプロジェクトそのものの進行を並行するのが「反復型・漸進型サイクル」です。反復型は一連の作業を繰り返し行うもので、漸進型は新しい機能や要素を加えつつプロジェクトを進めます。どちらも複雑で関連要素の多いプロジェクトに向いており、予測型の弱点でもある終盤の修正に柔軟に対応できるサイクルです。サイクルを進めながら必要な情報や機能を加えていくため、スタート時にすべての基本条件が明確である必要はありません。

適応型ライフサイクル

2週間〜4週間というスパンで一連の作業を繰り返し進めるのが「適応型ライフサイクル」です。一連の作業を繰り返す流れは反復型・漸進型と同じですが、より短い期間で繰り返します。プロジェクトの難易度が高い場合や進行過程で環境変化が見込まれやすい場合、初期段階での見通しを立てにくい場合に便利です。

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プロジェクトライフサイクルのフェーズ

プロジェクトライフサイクルは主に4つのフェーズ(段階)を順に進めていきます。以下の手順に沿って効果的に行うことで、プロジェクトの失敗を防げます。

開始

プロジェクト開始(立ち上げ)の段階では、プロジェクトの目的や目標、要件、成果物を定義していきます。一連のプロジェクト遂行する上で必要なリソース(時間、資金、人員)を特定し、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャー(PM)を任命します。この際、プロジェクトに関わる利害関係者の承認を得て、ビジネスでの正統性を明確にすることが大切です。予算執行の権限を持つ方から承認が得られたら、プロジェクトマネージャーに運営の権限が与えられ、プロジェクトがスタートします。

計画

計画は、プロジェクトに関係するすべての要素を洗い出し、一連の作業の詳細を示すアウトラインを定義する段階です。リーダー(PL)やマネージャー(PM)が先導し、プロジェクト計画書を作成していきます。この時、責任者であるリーダーやマネージャーは、プロジェクト管理ツールを使いこなせるスキルが必要です。

なお、プロジェクト計画書には、主に以下の項目を含めます。

  • 成果物や戦略的目標の範囲
  • リスク評価に基づくリスクの軽減計画
  • リソースの特定や割り振り
  • 作業評価指標である主要業績評価指標 (KPI)の設定
  • マイルストーン(遅延が許されない工程)を特定し、プロジェクトスケジュールの作成
  • プロジェクトで用いるコミュニケーションツールの定義

これらの手法を交えながら、参加メンバーがタスクの意義を理解しながら進められるような準備を進めます。

実行

実行(作業)は、プロジェクトの大半の時間を費やす段階であり、本質的な位置づけです。まずはキックオフミーティングを行い、プロジェクトの概要を共有し各メンバーの役割や目標、スケジュールや管理ツールを確認します。メンバー同士は頻繁に進捗状況を報告し合い、タスクにどのように対処しているか説明します。報告によりメンバーに自信をつけ、社会的な意義や自己有用感を確かめつつ、お互いの信頼関係の醸成を図ることが目的です。

管理

実行と並行して重要なのが管理(マネジメント)です。具体的には「主要業績評価指標 (KPI)の測定」「リソースやリスクの管理」の他、「メンバーのパフォーマンスの監視」や「必要に応じてプロジェクト計画の変更」をプロジェクト完了までフォローします。また、プロジェクトを円滑、効率的に進めるためにメンバーからの定期的なヒアリングの機会を設けます。

管理ではプロジェクトマネージャーによる進捗状況のモニタリングが大切です。ミーティングや各種ツールを利用し、意見や悩みを共有できる場を用意しておくと良いでしょう。

完了

最後はプロジェクトの完了(終結)です。プロジェクトクローズとも呼ばれ、プロジェクトの成果物を関係者に引き渡し、メンバーはポストモーテム(一連のプロジェクトの振り返り)を行います。当初想定した成果物で未完のものがあれば関係者を含めて話し合い、解決計画を立てます。具体的には、支出をまとめたプロジェクト予算レポートを作成し、参照できるようにプロジェクトドキュメントとしてまとめましょう。評価できる点や改善点をまとめ、得られた教訓や知見を次回のプロジェクトに反映させることが大切です。 

プロジェクトライフサイクルの特徴

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プロジェクトライフサイクルには以下のような特徴が挙げられます。サイクルに沿って進める場合、特徴や仕組みを把握しておくと期待通りに進めやすく、トラブルを防ぎやすくなるでしょう。

初期ほど不確実性が高い

一連のライフサイクルの中で、不確実性が最も高いのは開始段階です。プロジェクトは段階的詳細化という性質があり、進むにつれて内容が細かく明らかになっていきます。初期は情報が少なく、詳細まで全体像を把握することは困難です。また、終盤に向かうにつれ不確実な要素は減り、プロジェクトに悪影響をもたらすリスクも低下します。そのため、初期段階のうちに必要な情報を網羅的に収集することで効果的にプロジェクトを進められるでしょう。

初期ほどステークホルダーの影響を受けやすい

ステークホルダーとは、プロジェクトに関して直接的、積極的な関与があったり、プロジェクトの結果次第でプラスもしくはマイナスの影響を受けたりする組織や個人を指します。フェーズによってステークホルダーの与える影響度合いは変化し、初期段階ほどその影響が強く表れる傾向です。そのため、プロジェクトとステークホルダーの位置関係を常に意識することがプロジェクト成功の秘訣となります。スケジュールに遅延を起こさないためにも、あらかじめステークホルダーの影響を受けやすいことを理解しておくのが大切です。

中盤にかけてリソースが増える

プロジェクトに必要とされるリソース(資源)は、プロジェクトの段階で変化します。プロジェクトのリソースは主に、「人的リソース」「設備や原材料」「資金やコスト」「時間」「情報」の5つです。変化のパターンは2種類あり、プロジェクトが「成功するか」や「失敗するか」が分かります。

成功する場合は中盤にかけてリソースが増え、終盤にかけて減ります。失敗する場合は中盤にかけて増えたリソースがその後も減らず、終盤までさまざまなリソースを必要とします。それぞれのリソースに適切なマネジメントが求められるため、適宜リソースは平準化しましょう。

終盤ほど修正・変更が難しくなる

プロジェクトの段階的詳細化という性質上、終盤に近づくほどプロジェクトの修正や変更は難しくなることも理解しておきましょう。プロジェクトが開始されてからも、状況に応じて仕様の変更などが議題となるケースがあります。すでに決まった仕様や予算が割り振られているため、変更要求に対応する資金面などの影響はライフサイクルが進むにつれて大きくなる仕組みです。あらかじめ詳細な計画を立てるだけでなく、イレギュラーの発生にも柔軟に対応できる対策を検討しておきましょう。

プロジェクトライフサイクルのポイント

プロジェクトライフサイクルに沿って進める場合、スムーズかつ想定通りの結果を得るにはポイントがあります。ポイントを意識し、イレギュラー対応に強いサイクルを進めましょう。

目的を明確にする

プロジェクトは4つの段階を踏んで進めていきます。初期段階では目的を明確にする必要があるため、フレームワークを用いて判断するのがポイントです。フレームワークには、マインドマップやSWOT分析などが挙げられます。マインドマップは目的を視覚化して整理するため、ステークホルダーにプレゼンを行う際に役立ちます。SWOT分析はプロジェクトの強みや弱み、機会や脅威を分析できるため、メンバーの意見をまとめるのに便利な分析方法です。

ガントチャートを活用する

プロジェクト計画書作成と共に、ガントチャートと呼ばれるスケジュール管理のグラフを作成する場合があります。進捗状況を棒グラフ化したもので、縦軸に作業内容や担当者や開始(終了)日、横軸に日付(期間)を置き、全体の作業の流れや進捗状況を表します。サイクルの過程で何かタスクや割り振りの変更、遅延があっても情報共有しやすいのが特徴です。

ガントチャートに関してはこちらの記事で詳しく解説しております。
ガントチャートとは?WBSとの違いやメリット・デメリットを解説

情報共有を行う

遅延なく計画通りにプロジェクトを進めるには、メンバーごとに求められるタスクや成果物をチーム全体で共有しておくことが大切です。円滑に情報が共有されていれば、どこかのタスクや担当者に問題が起こっても早期発見や大きなトラブル防止につながります。また、目的達成に向けて最適化が容易になり、フォローアップもスムーズです。

評価し改善点を考える

プロジェクトのフィニッシュ、完了段階ではプロジェクトを評価し、次回に活かせる改善点を明確にするのが重要です。評価にはマインドマップやガントチャート、フローチャートで用いた視覚データが役立ちます。また、プロジェクトの完了報告会の場を設けることも有効です。一連のプロジェクトを通じて得られた知見やノウハウを報告会で発表し、内容や改善点を議論した上で評価する流れには、大きな意義があるのです。

まとめ

どのような組織も適切にプロジェクト管理を行えば、あらゆるビジネスの側面をスムーズに進められます。プロジェクトを成功に導くには適切な管理ツールの導入が効果的ですが、PM、PL(プロジェクト管理者)には、プロジェクト管理ツールを使いこなせるようになることが求められます。

プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。

プロジェクト管理ツール:OBPMイラスト図解でよくわかるガイド

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