プロジェクト管理の登竜門、ガントを使いこなすためには?【プロジェクトは現場で起きているんだ!第79章】

 2020.03.30  株式会社システムインテグレータ

突然ですが、日々の業務においてスケジュール管理は何を使われておりますか?

  • 手帳
  • Excel
  • スケジュール管理ソフトウェア
  • 頭の中 など

いずれにしても、直近1~2週間くらいのイベントや業務、それに関わる作業リストや提出物、必要となる作業量から算出した期間などが書かれていると思います。
それら各個人で管理しているスケジュールを全部吐き出して、関係者みんなで共有したものがガントチャートにあたります。

プロジェクト管理における言葉で言い直すならば、
プロジェクトにおける直近1~2週間のマイルストーンに向けた準備タスクや成果物の作業タスク、それに必要となる数量や期間をバーチャートとして表現し、プロジェクトメンバー全員で共有したものがガントチャートです。

また、プロジェクトメンバー全員のスケジュールを合わせたものがプロジェクト管理におけるガントチャートなのでバーチャートにはきちんとプロジェクトメンバーを割り当てておく必要があります。

プロジェクト管理には大きくQCD(品質・コスト・納期)という3つの評価指標があります。
プロジェクトメンバーは、自身のスケジュールが遅れないよう「D」(納期)を管理することから始めます。

「D」は、前述のように納期・スケジュール管理を示します。
そうなんです、ガントチャートはプロジェクト管理の登竜門だったのです。
(以下、ガントと表記します)

プロジェクト管理:ガントを使いこなすためには?

ガントの利用目的

ガントを作成する目的は、これからプロジェクト管理を始める計画段階においてそのスケジュールの妥当性を判断するためのツールとして利用することにあります。
スケジュールの妥当性の判断基準は、以下の通りです。

  • 作業に抜け漏れや誤りがないか
  • 作業順序に誤りがないか
  • 作業量に対する作業期間が十分なものか
  • 大日程レベルでオーバーラップ(期間重複)していないか
  • 受入・検品を意識したスケジュールになっているか

ガントで管理する項目

ガントで管理するための基礎項目は以下の通りです。

WBS(Work Breakdown Structure)

プロジェクト・スコープ(契約条件、成果物など)を明確にしたら、開発・作業プロセスに合わせて、必要なタスクを洗い出し、展開・詳細化します。
展開・詳細化していくタスクは、それほど細かくなくて構いません。
スコープとそれを構成するためのタスク、その1階層下までのタスクの3階層を目途にして、誰が見てもわかるようなタスク構成にすることがポイントになります。

開始日

タスクを開始するための開始日(開始予定日)となります。

終了日

タスクの終了期日(終了予定日)となります。

作業担当者

タスクを実行する作業担当者となります。複数名いる場合は、主たる作業担当者(責任者)を登録するか、タスクを並列してそれぞれ作業担当者を割り当てるかして管理します。
1タスクで管理するか、複数タスクとして管理するかについては、タスクレベルで状況把握ができれば良いのであれば1タスクで管理する、担当者ごとの作業状況を把握したい場合は複数タスクで管理することとなります。

作業の終了-開始関係

各作業の依存関係となります。
一般的には、FS(終了-開始)、SS(開始-開始)、FF(終了-終了)、SF(開始-終了)があります。

進捗実績(作業進捗) また、計画に対する作業状況を明らかにするために、以下の情報を管理します。

開始実績日

開始日(開始予定日)に対応する実績日となります。
開始実績日が明確になることで予実管理ができるようになり、後の評価が可能となります。

終了実績日

終了日(終了予定日)に対応する実績日となります。
終了実績日が明確になることで予実管理ができるようになり、後の評価が可能となります。

進捗実績(作業進捗)

作業の出来高を示す%や度合いとなります。
進捗実績の管理方法は、プロジェクトで運用ルールを策定します。
例えば、完了を100%とした時、着手10%・中間受入50%・最終受入80%…として管理します。

その他に、現在において進捗しておかなければならない予定の進捗に対して、各タスクの遅れ・進みがどのような状況か、タスク間の進捗実績を線で結ぶ「イナズマ線」を管理することで、進捗状況を見える化することができます。

プロジェクト管理の登竜門、ガントを使いこなすためには?(Vol.79) 1

プロジェクト管理:ガントのメリットとは?

プロジェクト管理においてガントを使うメリットを3つ纏めてみました。

①プロジェクトの提案や計画段階でスケジュールの妥当性がわかる

最初から残業や休日出勤が前提のスケジュールになっていないか?メンバスキルを考慮したタスクの割当てや作業期間が設けられているか?なども視覚的にわかります。

②計画(予定日)と実績(実績日、進捗実績)を可視化できる

例えば、作業遅れが発生した時の原因究明に役立ちます。
また、イナズマ線を活用することで、作業遅れのタスク一覧を可視化することに役立ちます。

③スケジュールや進捗状況をメンバと共有できる

メンバ全員でガントを共有することで、プロジェクト全体の状況を全員で把握できるだけでなく、自身のタスクが進捗遅延することによる他のタスクへの影響がわかり、納期意識が高まるきっかけになります。

プロジェクト管理:ガントを作成する上で工夫することは?

ガントを見れば、プロジェクト管理の難易度や管理手法、作業の進め方や山場がどの辺りになりそうかわかります。
それらをしっかりとメンバ全員で共有するためにも、ガントを作成する上で工夫する4つのポイントがあります。

① WBSは全て洗い出しておくこと

開発プロセスに従って、いきなり大日程表を作ってガントを線引きしても全くの根拠がありません。
プロジェクト管理を成功に導くためには、先ずはきちんとプロジェクトで求められているスコープを明確にしましょう。
WBSを洗い出すときのコツは、自分たちのタスクだけでなくお客様のタスクも洗い出しておくことです。
契約プロセス1つをとってもお客様と合意しながら進めるべきタスクがありますし、製造・納品プロセスにおいてもお客様にて受入・検査するタスクを経て、納品へつながるわけですからWBSとしては必要となります。

②タスク管理は細かくし過ぎない

ガントに落とし込む際、各タスクには担当者をアサインします。
そのため担当者へ作業内容を詳細に伝えたり、進捗を細かく管理したいがために管理するためのタスクレベルを細かくしがちですが、そこまで階層を深くしてガント管理する必要はないと考えます。

ガントを構成するタスク管理の階層・レベルとしては、求められる成果物に対して最大でも3階層までの管理を前提としてタスク構成するよう工夫します。
それより細かなタスクについては、現場担当者のTODOリストとして管理するようルール化するのも良いでしょう。

③複数タスクを同一担当者で重複させない

当たり前の事なのですが、意外に担当者で並び替え表示すると重複する期間が計画段階で散見されることがあります。
PLにヒアリングすると、メンバスキルを考え余裕をもってタスク線を引っ張っているためです、と回答を受けたことがあります。
確かにメンバスキルを考慮してタスク線を引っ張ることは重要ですが、もしそうであるならば重複しないよう他メンバをアサインするか、タスク分割するなど工夫して、重複が発生しないようすべきです。

また、メンバは、PLが余裕をもった期間で線描したとしてもそこが期日としてスケジュールを組み立てます。
バッファ(予備期間)を持ちたいのであれば、先ずはバッファなしでスケジュールを組立て、進捗状況を見ながらPLが都度バッファの範囲内でスケジュール調整することを考えたほうが良いでしょう。

④ 作業管理者を明確にする

タスクに対して割り当てたメンバが作業実行者となりますが、実際は、そのタスクの目的や期待されるアウトプットを説明するメンバがいます。そのメンバはPLかもしれませんが、明確にしておくべきです。
プロジェクト・コミュニケーション管理においては、RACI(レイシー)という考え方があります。
「A:Accountable」説明責任者が、タスクや目的、期待されるアウトプットを説明し、「R:Responsible」実行責任者がタスクを実行・進捗報告を行う。タスクを完成させていくために必要な情報は「I:Inform」情報提供者が提供し、進め方における相談は、「C:Consult」相談対応者が実施する

これらを意識してガントを作成することがポイントとなります。

まとめ

プロジェクト管理の登竜門、ガントを使いこなすためには?
これまでのことを纏めると以下の通りとなります。

ガント:定量的な効果

計画時の作業量・計画工数と進捗実績・進捗率を正確に入力することで、3つの効果が現れます。

①期日までの残作業が数量でわかる

(例)3/16時点、期日までの残タスク:40(完了タスク:60)

②計画に対する評価が数値で判断できる

(例)開始予定日:3/14開始実績日:3/16

③トラブル・遅延に対して、対策が数量でわかる

(例)3/16時点、進捗率:10%、3日遅れ

ガント:定性的な効果

ガントをメンバ全員で情報共有することで、4つの効果が現れます。

① メンバ全員がプロジェクトの全体スケジュールを把握しやすい

自分たちのプロジェクトがどのような状況にあるか、いつくらいに山場を迎えそうか、
乗り越えられそうか把握しやすい

② メンバがスケジュールを遵守する意識が高まる

自タスクの前後関係により、進捗遅延などの影響範囲や重要度がわかる

③スケジュール管理を経験値として残せる

PL:スケジュール管理のコツがわかってくる
メンバ:期日に対するスケジュールの組立てがわかってくる

④完成・ゴールまでの道筋がわかる

PL:完成・ゴールに向け、次に何に対して注力を注ぐべきかわかる
メンバ:完成までのプロセスを可視化できる

ガントを使いこなすためのコツとは?

どんなプロジェクトでも課題・問題が発生し、解決に向け多少なりのスケジュールへの影響を出してしまうのはよくあることです。
重要なのは、解決に向けた対策の妥当性は勿論のこと、タスクの精査ができており、かつ関係者(RACI)が明確であることです。それらをガントでしっかりと共有することが重要と考えます。

また、失敗経験から学ぶことがあると思います。
次回プロジェクト管理を始める時にはしっかりとフィードバックした形でのガントの作成がポイントになるのではないかと考えます。

あとはガントをメンバ全員で共有しながら、常に実態に合わせて最新化することがコツと考えます。
プロジェクト計画段階で作成したスケジュール表のままではなく、プロジェクト管理をうまく進めるための最新のスケジュールやメンバごとのタスク管理表に更新していきます。

ガントを使いこなしてメンバを成長させながら、プロジェクト管理を成功に導いていきましょう!

進捗管理のポイントをまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。


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