今回は、プログラムマネジメントの概要とその役割や効果的な管理方法、プロジェクトマネジメントとの違いについて解説します。
プログラムマネジメントとは
プログラムマネジメントとは「複数のプロジェクトを統合管理すること」を意味しています。「プロジェクト」は特定の目標が設定された活動であり、決められた期限までに作業を完了させることを主な目的としています。つまり、プログラムマネジメントは複数のプロジェクトを連携させ、効率的に管理することを指す管理形態です。
プログラムマネジメントが広まった理由として、PMBOKに代表されるプロジェクトマネジメントが国内企業に広く普及したことが挙げられます。また、プロジェクト管理の技術が普及したことにより、さらに複雑な概念であるプログラムマネジメントに注目する企業が増加しているとする見方もあります。
基本的な考え方として、プログラムの目的達成に必要なプロジェクトの定義、進行管理などを行うことがプログラムマネジメントの概要です。例えば、経費削減を目標として活動を実施する場合、経費削減を行うこと自体がプログラムに該当し、目標達成に向けた節電や交通費削減などの対策がプロジェクトに該当します。
PMBOKの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
【第1章】PMBOKを理解しよう:PMBOK とは
プログラムとは
システム開発においてプログラムというと、システムを動作させるためのコードを連想しますが、プログラムマネジメントにおける「プログラム」は、一定の目的達成を目標として複数のプロジェクトを統合したものです。一般的にはプロジェクトの組み合わせをプログラムと解釈しますが、大規模なプロジェクトを分割したものをプログラムとして定義する場合もあります。
プログラムのパターンは主に2つです。
ひとつは過去の経験や知識によって対応できるパターンで、納期や予算の設定、スケジュール管理などが行いやすいという特徴を持っています。多くの場合は長期的なものである関係上、必要に応じて担当部署や期限などの基準に沿ってプロジェクトの切り出しを行います。
もうひとつは、事前知識がない状況で開始されるパターンで、新規事業の開始や事業拡大などを図る際に用いられやすい手法です。短期的な見通しが立っていない状況で管理運営を行うので、基本的には修正対応を前提として仕事を進める形になります。
注意点として、プログラム自体に共通した定義はありません。単純にプロジェクトの集合体をプログラムとする考え方もありますが、企業価値の創造を目的としてプロジェクトや日常業務などを統合したものをプログラムと定義する考え方もあるようです。
参考として、日本プロジェクトマネジメント協会の「PM用語・研鑽資料ガイド」におけるプログラムの定義を一部引用して紹介します。
『プログラムはプロジェクトの集合体で、各プロジェクトを個別に管理するよりも集合体として管理することにより全体として大きな効果を引き出すことを意図したものである。』
引用:日本プロジェクトマネジメント協会「PM用語・研鑽資料ガイド」
もう少し簡略的な表現を用いると、シナジー効果の形成を意図して複数のプロジェクトを組み合わせたものがプログラムということです。
プログラムマネジメントとプロジェクトマネジメント
プログラムマネジメントは、組織単位での事業戦略達成を目的として設定されたプログラムを運用管理するプロセスです。プログラムは長期的なビジネス戦略に関連づけて構成され、組織の継続的な成長に寄与するプロセスとして実施されます。
プログラムマネジメントを行う目的は、対象のプログラムに関連するプロジェクトを定義し、プロジェクトの完了を通して事業戦略の達成に寄与することです。関連性がある複数のプロジェクトを組み合わせてシナジーを形成し、プログラムの価値を向上させることがプログラムマネジメントを行うメリットであり、主な目的になっています。
一方、プロジェクトマネジメントは、特定の目標を一定期限内に達成することを目的として実施されるプロジェクトの運用管理を行うプロセスです。各プロジェクトは期限や成果物などの目標が明確な形で設定されており、基本的には完了まで一定の目標に向けて実行されます。
プロジェクトは特定の成果を得ることを目標とした業務であり、プログラムの進捗を進める効果が見込まれるプロセスです。達成までに、必要な人員の手配や予算管理、リスク管理などをプロジェクトマネージャーが実施する必要があります。
プロジェクトマネジメントはプロフィットを重視する考え方であり、コスト削減や品質向上などを重視して適正な利益確保を図ることが主な目的です。これに対して、プログラムマネジメントではベネフィットを重視することが主な目的になります。業務領域の拡大やシェア拡大など事業目標の達成を重視する考え方で、直接的な利益になる業務と実質的な利益増加につながる業務が混在することがプログラムマネジメントの特徴です。
プログラムマネージャーの役割
プログラムマネージャーはプログラムを円滑に進行させるための進捗管理、リスク対応、計画設計などを総合的に担当するポジションです。担当するプログラムに含まれるプロジェクトの相互依存関係を管理し、プロジェクトマネージャーの担当領域を超えた問題の処理が主な役割になっています。
具体的にいえば、事業戦略の達成に影響を与える問題を解決または軽減するために必要となるのがプログラムマネージャーです。プログラム達成を目的とした目標設定および情報共有、各プロジェクトのステークホルダーとの連携、予算・リソース管理であるなど、プログラムマネージャーの役割は多岐にわたります。
大規模なプログラムを実施する過程では人員や予算、進捗状況などの不確定要素が含まれます。プログラムマネージャーは不確定要素への対応または予防を行うポジションであり、関連するプロジェクトに対して俯瞰的な視点から対応策を立案、実践する役割を担います。
PMOとの役割を混同される方もいらっしゃるのではないでしょうか。複数プロジェクトを組織するプロフラムマネージャーに対し、一プロジェクトの進捗・課題管理等を行う組織がPMOです。
PMOについてはこちらの記事で詳しく解説しておりますので合わせてご確認ください。
PMOとは?その意味と具体的な業務、PMとの違いについて解説
プロジェクトマネージャーとの役割の違い
プロジェクトマネージャーの役割は、プログラムの方針に沿って納期、予算、人員などの管理を行い、決められた期間内に成果物を完成させることです。進捗に影響する障害への対応、成果物の品質管理などもプロジェクトマネージャーが行うべき業務に含まれます。
プロジェクト作業の目標と方針を共有し、作業の進行によって得られる成果もしくは成果物の品質・信頼性を確認することが、プロジェクトマネージャーの主な業務内容です。各プロジェクトの完了条件や予算はプログラムマネージャーによって個別に定義されるのが一般的で、作業完了に向けた進捗確認や方針の共有、予算管理はプロジェクトマネージャーの業務内容に含まれます。プロジェクトの予算管理や進捗確認を行うにあたって、プログラムマネージャーはプロジェクトチームとの情報共有、アドバイスなどを行います。
目標達成に向けてチームメンバーやクライアントなどのステークホルダーと連携し、予算や人員および進捗管理を行うポジションである点は、プログラムマネージャーと共通です。プログラムマネージャーは関係するクライアント、プロジェクトチームの数などが複数あることから、品質管理や方向性の策定などを対応プロジェクトごとに実施する必要性が生じる点に留意しましょう。
また、プロジェクトマネージャーは製品またはサービスの完成といった短期目標の達成に関わりますが、プログラムマネージャーは長期的な事業戦略の達成を目標としているのが異なる点です。
プロジェクトは期限や達成条件などのタスクが明確に定義されているケースが一般的ですが、プログラムは期限や達成の定義が流動的で、実施途中で定義の修正、変更が行われる場合もあります。長期的なプログラムでは、市場動向の変化や人事異動など不確定要素の増加が考えられるので、長期的な視点を持ってプロジェクトの策定、管理運営を行えるスキルがプログラムマネージャーには必要とされるのです。
なお、プロジェクトマネジメントスキルを評価する際には、CMMIという指標が活用されます。CMMIの詳細についてはこちらで解説しているので、併せてご覧ください。
プログラムマネジメント・プロジェクトマネジメントに共通する課題と対策
管理対応を行う範囲は異なりますが、目標達成に向けて進捗管理や情報共有などを行うことはプログラムマネジメント、プロジェクトマネジメントに共通する業務内容です。日常業務において課題になり得る要素も類似していることから、対応策として用いられる手法も共通する部分があります。
プロジェクトの進捗管理を行う過程では、参加メンバーの担当業務と進捗状況を視覚的に把握できるツールが役立つでしょう。一般的なプロジェクト管理ツールを用いる場合、ダッシュボードを活用すると進捗状況をグラフやチャートで把握できます。進捗状況を数値として確認することに加えて、遅延や停止などの理由を掘り下げて確認できる仕様になっていると、効率的な対応を行えるのです。
タスク管理の効率化を図りたい場合、タスクテンプレートが充実した管理ツールの導入をおすすめします。タスク設定に係る手間を軽減し、プロジェクトの品質を底上げする効果が見込める機能です。
チームメンバーの担当業務を確認する方法としては、かんばん方式やガントチャートなどによるタスク管理を行える管理ツールを導入することが有効でしょう。各メンバーが担当しているタスクの内容、期限、進捗などを一画面でまとめて確認できるツールを用いることで、進捗管理や問題対応を効率的に実施できます。
業務連絡の効率化を図る工夫として、業務連絡に用いる手段を管理ツールに一本化することで、進捗管理・情報共有などの効率化が見込めるでしょう。スプレッドシートやチャットツールなど多数のシステムを兼用していると、連絡対応に要する手間が積み重なってきます。チャット機能を実装している管理ツールを用いれば、業務進行を効率化できます。
近年ではタスク管理、スケジュール管理などを一元的に行えるプロジェクト管理ツールが主流になっており、簡易的な無料プランを利用できる管理ツールも存在します。
効果的なプログラム管理のポイント
プログラムの管理運用を効率的に行うには、関連するプロジェクトの目標設定、進捗管理および問題対応をスムーズに行える管理体制の構築が必要になります。
プログラムの目標達成に影響する問題が見つかった際に、問題解決を目的としたアクションプランの作成や、対応を行うことはプログラムマネージャーに要求される業務の一つです。プログラムに関連するプロジェクトの納期や予算、方向性などを適切な形で調整するには、チームメンバーや経営層、クライアントといったステークホルダーの適切な管理が欠かせません。プログラムマネージャーは複数部門のプロジェクトチームやクライアントとコミュニケーションを取る機会があり、達成目標や進捗状況などの必要に応じた共有が要求されます。
プログラムマネージャーは、複数のプロジェクトを統括管理する立場として、各プロジェクトのガバナンス構造を定義・共有する権限を持ちます。長期的な事業戦略の達成のために継続的な進捗管理や問題対応などを行うには、プログラムのガバナンス構造が明確に定義されていることが不可欠です。業務進行に影響するリスクが発見された場合、状況の特定および追跡、対応を行うことがプログラムマネージャーには要求されます。全体的な進捗状況を常に確認し、リスクへの早期対応を行うことこそ効果的なプログラム管理を行うポイントです。
複雑な構造を持つプログラムを適切に管理するには、一貫したガバナンスに沿って管理運営を行えるスキルが必要になります。事業戦略の達成に向けた継続的なプログラム管理を通して、コスト削減、業務効率化などのベネフィットを追求することが、効果的なプログラム管理につながります。
まとめ
この記事では、プログラムマネジメントの概要やプロジェクトマネジメントとの違いについて解説しました。
プロジェクト管理の技術が定義されたPMBOKが普及したことによって、複数プロジェクトを統括管理するプログラムマネジメントの重要性も注目されています。
プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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