組織が業務効率を改善し生産性の向上を図るためには、オペレーションマネジメントという手法が効果的です。持続的な成長に寄与するため幅広い業種から注目されていますが、適切なマネジメント(管理)には難しい部分もあります。そのため、うまくマネジメントの成果を得るにはマネジメントへの正しい理解と手順が欠かせません。
この記事では、オペレーションマネジメントに注目し、体制を構築する目的や機能、手順やポイントを解説します。
オペレーションマネジメントとは
オペレーションマネジメントとは、戦略に基づいて経営資源を最大限有効に活用し、目標達成を図るマネジメント(管理)手法のことです。なお、オペレーションには「業務の目標達成に向けた推進(運営)手順」という意味があります。
マネジメントは主にPDCAサイクル(詳細は後述)に沿って進められ、成果として業務効率の改善や生産性向上に加え、今後システムを見直す場合に改善しやすい体制を構築できます。
オペレーションマネジメントのイメージとしては、空港における航空管制官を想像してみてください。。組織内の各部署はさまざまな行き先(目的)を持つ飛行機であり、空港に離着陸する飛行機のスムーズな運航を管制しているのがオペレーションマネジメントです。
オペレーションマネジメントの目的
オペレーションマネジメントを行うことで、組織はどのようなことが得られるのでしょうか。業種によってマネジメントの目的は多少異なりますが、主な目的は以下の通りです。
・チームメンバーのモチベーション向上
オペレーションチームは、職場の整理や職場環境の改善を通じ、部署内やチームメンバーのモチベーション向上に働きかけます。風通しが良く、コミュニケーションも活発に行われるような職場環境が整えばチームメンバーに主体性が生まれ、より意欲的に仕事に取り組めるようになります。
・リソース(資源)を活用
リソースを効率良く使うための計画を立てることもオペレーションマネジメントの役割です。 組織のリソースとは、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を指します。これらのリソースには、少なからず業務効率や生産性という視点で見直せる要素があるケースも少なくありません。
「ヒト」に関してはマネジメントを行い、メンバー(ヒト)を最適な業務へ配置します。他にも、目的が定かではないミーティングなど、ボトルネックとなっているような業務を見直します。業務全体を見た場合に、特定の部門やチームのメンバーに対する負担の偏りが生じていないか確認し、負担の標準化を調整することで属人化の防止が可能です。
・コラボレーションを強化
組織が大きくなるほど部門や部署が細分化し、円滑な情報共有を行う難易度が高まります。意思決定プロセスを改善することで組織内のチームコラボレーションが強化され、チームの垣根を越えた横断的な体制を構築できます。
・業務のマニュアル化によるトラブルやリスクの低減
人が作業を行う以上、人為的なミスをゼロにすることは困難です。ミスの内容によっては組織に大きな損害を与えてしまうことや、責任問題に発展してしまうリスクがあるでしょう。マネジメントにより業務がマニュアル化されることで、ミスの低減やトラブル発生時の原因特定に役立ちます。また、トラブルの早期解決が図れるため、損害の拡大防止にもつながります。
オペレーションマネジメントはなぜ必要か
どの企業も何らかのオペレーションに沿って業務を行っているものですが、オペレーション内容を見直すと改善すべき箇所が見つかるケースは少なくありません。AIやIoTなどのデジタル技術が急速に進化していることからも、これらのオペレーションを導入することで大幅に業務効率が改善する場合があります。オペレーションマネジメントが必要な理由は、主に以下の2点です。
・競合優位性の獲得
現在のオペレーションを見直し無駄な作業を洗い出し省くことで、業務フローの最適化を図れます。製品やサービスの質を上げ、市場で生き残るためには「いかに優れた競合優位性を構築するか」が重要です。オペレーションそのものが競合優位性を持つ状態はオペレーションエクセレンスと呼ばれ、生産活動の成否を左右するとともに他社に負けない強みとなります。
・継続的な業務効率改善
限られた経営資源を最大限活用し、より効率的で優れた製品やサービスを生むことは、どの組織にも共通して求められます。業務に関連する一連の情報を継続的にマネジメント(管理)していく中で、改善を要する箇所を発見できます。改善策を検討する際も業務全体を理解していることで、効果的な改善策を導けるでしょう。
オペレーションマネジメント「7つの機能」
オペレーションマネジメントには、7つの機能があります。オペレーションマネージャー(オペレーションマネジメントの担当者)は、これらの業務に従事し各業務工程やシステムをチェック評価することで必要に応じて助言、新しいプロセスの提案や実装をサポートします。
業務計画
業務計画は、オペレーションマネジメントの内容で最も基礎的な機能となります。業務効率の維持がオペレーションマネジメントで重視されるため、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の動きを常に把握し、改善箇所を見つけ臨機応変に発展を検討する視点が重要です。
業務計画の主な内容は以下の通りです。
- 在庫やリソースの管理(※在庫管理にはパレートの法則が効果的)
- 製品の生産や、サービスの運営状況のモニタリング
- スケジュールや作業工程の立案
- 随時各メンバーのパフォーマンスやコンディションを把握
財務
財務において求められることは、売上を向上させながらコストを削減することです。財務は、オペレーションマネジメントに普遍的に必要不可欠な要素となります。漫然と業務を管理するだけではなく、常に予算の適正分配や利益向上を検討する視点が大切です。組織の財務部門は役割を分担し、オペレーションチームは生産プロセスに限定した財務業務を行います。
財務の主な内容は以下の通りです。
- 予算の配分
- 生産目標に合わせた予算設定
- 常に投資の機会を模索する
製品デザイン
製品デザインも、オペレーションチームで担当する分野です。製品やサービスを市場で効果的に販売していくためには、ビジネス的視点は欠かせません。主に、顧客ニーズや市場動向に沿ったビジネス面での製品デザインを行います。クリエイティブな要素は製品デザイナーが担当するため、明確に住み分けを行っておくことも必要です。
- 市場調査を実施し、製品デザイナーに分かりやすくまとめる
- デザイナーの製品開発のサポート
- デザインディレクション(デザイン工程の方向性)の提供や製品デザインチームとの情報共有
品質管理
製品の生産段階に入ると、製品の品質を維持・管理することが重要です。マネジメントでは製品が品質基準を満たしているかを常に確認することで製品のロスを防ぎます。また、品質を保証するためのテストも実施します。優れた製品やサービスを生むためには対立解決戦略を構築する必要があるだけでなく、以下の内容も重要です。
- 品質基準の策定
- リスク分析の実行
- 製品ロスの記録
- 品質テストの実施
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予測
これまでのデータを参考に今後の予測を立て、製品の需要を見定めることもマネジメントには大切です。事実に基づいた予測でなければ正確な予測はできません。予測は以下のような仮説的な質問に答える形で進められるのが一般的です。以下の回答から予測結果をまとめて各部門長と共有し、将来の計画に反映させるよう働きかけます。
- 今後、対象製品(サービス)の需要はどのように変化するか(見通しがあるか)
- 対象製品に関して、どのようなプロモーションやマーケティング、営業活動を計画するか
- 対象製品の在庫に必要な保管費用を見積もることはできるか
- 調達コストや原材料費はいくらになるか
戦略
戦略には業務計画、モニタリング、分析など幅広い要素が含まれます。戦略管理は、一連の生産システムに関連する意思決定と、組織が目指すビジネス目標に合致していることを確認します。主な組織のビジネス目標は、以下の通りです。
- 顧客満足度を最優先とする
- 常に生産体制を改善する視点を持つ
- 競争力を維持しつつ生産コストをコントロールする
顧客満足度を優先するためには在庫の分析を行い、常に顧客の需要に応えつづけることが重要です。また、最適な生産体制を維持するためにチーム間のコラボレーションを強化し、コミュニケーション機会の増加やミスの低減、生産体制の改善に働きかけます。さらに、環境負荷の少ない生産システムやプロセスに切り替えることで、長期的なコスト削減や顧客や投資家からのブランドに対する投資意欲の向上が図れます。
サプライチェーンマネジメント
製品やサービスの生産システムを持つ場合、「原材料」「サプライヤー」「生産(製造)」「流通業者」「小売業者」「消費者」の各過程を管理するサプライチェーンマネジメントも必要です。組織の他の部署にサプライチェーン部門が独立していたとしても、生産システムに関連したサプライチェーンの問題はオペレーションマネジメントの担当者で対応します。
組織の規模によっては、流通業者を介さず直接消費者に届ける場合があるでしょう。そのような場合においてもサプライチェーンを確保しておくことで、ボトルネックとなっている過程がないか確かめることが可能です。
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オペレーションマネジメントの基本的な手順
オペレーションマネジメントは、PDCAと呼ばれるフレームワークに沿って進めるのが基本です。ここでは、PDCAの基本的な手順を紹介します。
Plan(計画)
まずは、オペレーションにおける目的を確認し、達成するための計画を立てます。作業の工数や品質、予算やスケジュールをできるだけ具体的な内容で「誰が」「何を」「どのように」「いつまで」を決めるのが理想です。有形の「製品」だけでなく無形の「サービス」にも適応するQCD(品質、費用、納期)の観点がオペレーションには重要なのです。
Do(実行)
実行の工程は、オペレーションマネジメントで最も重要な工程となります。計画通りに業務が進行しているかどうかの確認を継続して、問題が発生した場合にはすぐに対処します。実行の特徴は、デジタルツールの導入による大幅な業務効率の改善が期待できる点です。Exelを用いた電子帳簿作成システムなど、多くの電子化ソリューションが普及しているので参考にしてみてください。
Check(評価)
計画に対する実行結果を評価し、行動により目標は達成されたのか、それとも未達成なのかそれぞれの原因を分析します。評価が主観に偏ることを避けるため、記録ベースで客観的な評価を行うことが大切です。
Action(改善)
評価をもとに次回以降に役立つ改善策を立案します。すぐ行動に着手できるよう、具体的な仕組みや改善策を決めるのがポイントです。もし業務フローや作業手順に変更を加える場合、変更後は現場で定着するまでの運用フォローの体制も必要となります。組織レベルの最終的な目標が達成されるまで、このようなPDCAのサイクルを繰り返します。
オペレーションマネジメントのポイント
オペレーションマネジメントは、うまく機能すれば業務効率や生産性が大幅に改善することがある反面、マネジメントを実際に取り組むのは難しい場合があります。そのため、マネジメントの際は以下の3つのポイントを意識すると良いでしょう。
全体の方針を明確化する
組織としての規模が大きく、部門ごとに役割が細分化されているほど異なる意見も生まれ、統一された意思決定が困難となるしょう。このことを常に意識し、オペレーションマネジメントに取り組む際は組織全体としての方針(行動指針)を明確にしておくことが大切です。
ツールを活用する
ITツールを活用することも有効です。タスク管理やフローチャートツールなどを活用することで、思考整理やデータ収集の自動化などに役立ちます。時間に余裕が生まれ、空いた時間を使ってオペレーションの見直しや改善案の作成といった、よりクリエイティブな業務に時間を充てることができるでしょう。
メンバーの特性を考慮する
メンバーの特性を考慮して、適切な仕事を割り振ることもオペレーションマネジメントのポイントの一つです。適切な仕事が割り振られているかどうかはメンバーのコンディションや進捗状況などから判断できます。適性に良しあしはないため、どのメンバーもパフォーマンスを最大限発揮できるような環境整備が欠かせません。
まとめ
今回は組織化におけるオペレーションマネジメントに注目し、マネジメントの目的や実際の手順、実行する際のポイントを中心に解説しました。DXにより業務システムやプロジェクトの内容が変化する中で、持続的な組織成長にはオペレーションマネジメントは不可欠といえます。
オペレーションマネジメントを適切な形で構築するのは容易ではありませんが、一度整備されれば、その後の業務改善も行いやすくなるだけでなく、市場において大きな優位性を持つことが可能です。
プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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