SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?仕組みを基礎からわかりやすく解説

 2023.02.16  株式会社システムインテグレータ

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは供給連鎖管理のことで、組織や企業をまたいでサプライチェーン(供給連鎖)を管理し、生産や販売の効率化を図る経営手法です。
ビジネスを取り巻く環境変化のスピードが加速し、予測が難しくなってきている今、デジタル技術を活用したサプライチェーンマネジメントによる効率化に注目が集まっています。

SCMという言葉自体は古くからあるのですが、実際にデジタル化を進めるにあたっての全体像がよくわからないという方は少なくありません。

そこで本記事では、SCMの基本的な概念からそのデジタル化を実現するにあたって必要となるシステムやその構成要素について詳しく解説していきます。

SCM(サプライチェーンマネジメント)の意味

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?基礎やポイントをわかりやすく解説

SCMとはサプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management)の略称です。直訳すると、「供給連鎖の管理」となり、「モノを顧客に届けるための流れ(サプライチェーン)の管理を行う手法」のことです。
ここでいう管理とは、サプライチェーンの流れを総合的に見直して、最適化・効率化することを意味します。

今は作れば作るだけ売れる時代ではありません。多くのモノがあふれる時代になったため、「必要なものは必要なときに必要な分だけ作り」、「必要な場所に必要なときに届ける」ことが重要となりました。
単に「必要な場所に必要なときに届ける」だけであれば、それは「効率的な補充」です。しかし、その効率的な補充とサプライヤー側の過剰在庫を避けるためには、「必要なときに必要な分だけ作る」というコントロールも欠かせません。

SCMは、供給連載の全体最適を目指すため、必要なときに必要な分だけ作るという「ジャスト・イン・タイム」の思想に基づいています。
ジャスト・イン・タイムとは、原材料・生産・流通・販売・消費者という一連の供給プロセスがある場合、過去のデータから需要を予測し、必要な量の原材料を仕入れて、必要な量のみ生産し、売り出すという方法です。この考え方によって、過剰な在庫や無駄な工程が発生するのを防ぎ、総合的な最適化・効率化が図れます。

ただし、この考え方を実践するには、サプライチェーンすべてのプロセスを一つとして捉え、組織や企業の壁を越えた情報共有が必要になります。

サプライチェーンについては以下の記事で解説しています。
関連記事:サプライ チェーンとは?マネジメントの重要性や近年の動向について解説

SCMの歴史

サプライチェーンそのものは史上最初の製品が生産・販売されたときから存在しますが、それを管理・最適化するSCMの概念が生まれたのは1980年のアメリカです。

「作れば売れる」高度経済成長期が終わると消費は飽和状態に陥り、過剰在庫が発生して企業への投資が減ったなかで各社は資金繰りに苦心しました。そこで、消費行動の変化に伴って「必要なものを必要な数量、必要な時・場所に届ける」ことが求められるようになりました。SCMはこれを実現するための手段です。

日本では2000年代に企業経営へのIT活用が進むなかでSCMの推進が始まりました。その後グローバル化の進展やビジネス環境の変化、テクノロジーの進歩、さらにコロナウイルス感染拡大の影響もあり、近年改めて注目を集めています。

従来のSCMはサプライチェーンの担当者によって属人的に行われるものでしたが、現在はプロセスやテクノロジー、人員のすべてを統合して迅速かつ正確な商品・サービスの提供を実現する仕組みの重要性が高まっています。

SCMの強化が必要とされる背景

ここでは、SCMが重要視される理由について大きく4つに分けて解説します。

グローバル化による不確実性の増大

企業のグローバル化の進展に伴い、生産や物流、販売をつなぐネットワークは世界中に広がっています。
新型コロナウイルスの流行によるサプライチェーンの混乱や需要の大きな変動は、世界中のビジネスに大きな影響を与えました。グローバル化するビジネスはいつ何が起こるか予測が難しい、不確実なものになってきています。

このサプライチェーンの広範化・複雑化により、各プロセスの情報を一元管理し、いろいろな企業資材を有効活用することで最適化・効率化を図るSCMが求められているのです。

グローバルサプライチェーンについては以下の記事で解説しています。
グローバルサプライチェーンマネジメント(SCM)とは?必要性やコロナ禍における課題まで解説

競争の激化

市場のグローバル化が進んだことで、原材料や部品の調達においても、競争は激化しています。
競合他社に買い負けすることを避けるには、これまで以上にサプライヤーと緊密な関係を築く必要があります。

また安定的な調達をするには、複数のサプライヤーからの供給を確保する必要があります。先述したグローバル化による不確実性の増大によって、供給を1社に依存するリスクが高まってきているからです。

複数のサプライヤーと緊密な関係を築き、自社のサプライチェーンのレジリエンスを強化する必要があるのです。

ビジネスモデルの変化

インターネットが普及し、スマートフォンで簡単に注文できる通信販売ビジネスは急成長しています。そのため、多くの企業がインターネットを利用した通信販売を導入し、家具家電やアパレルブランド、日用品などの定期購入まで、簡単にできるようになりました。

また、デリバリーを行っていなかった飲食店のメニューを専門の配達員が届けるタイプのフードデリバリーも登場し、「販売」と「配達」が切り離せない時代になっています。したがって、多くの組織や企業に、SCMによる管理体制の構築が求められているのです。

労働環境の変化

計画通りにモノが作れても、届かなければ意味がありません。モノを届ける物流の世界では人材不足が深刻な問題になっています。

少子高齢化などの理由から、現在は多くの業界で人材・人手不足が進んでいますます。また、労働条件の問題が影響して、トラックのドライバーなど物流配達員も足りていません。そうしたなかで、企業はより新しく、より効率的な物流の形を探り続けなくてはなりません。

現在のSCMのニーズ

従来、SCMは「必要なものは必要なときに必要な分だけ作り」、「必要な場所に必要なときに届ける」ことでコストの削減や業務の効率化、リソースの最適化を図るために行われてきました。

しかし近年はSCMを実施するにあたって焦点が企業から顧客に移っています。企業が利益を生むためには顧客のニーズに迅速かつ正確に対応して顧客ロイヤリティを高める必要があるからです。

SCMを徹底することで調達から販売までのスピードや正確性、効率性を高めるという目的は変わりませんが、納期を守るだけでなく、配送の前から完了後までを含めてサプライチェーンにおけるすべての工程を、顧客視点に立って最適なタイミングで行うことがより重要になっています。

SCMの目的

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?基礎やポイントをわかりやすく解説-1

SCMは供給連鎖の全体最適を目的に行われます。この「全体」は自社だけでなく、調達元から供給先を含みます。

最適化は、無駄を省き、売上を最大化させるために行います。
ですが、自社だけが売上と利益を伸ばしていても、パートナーである調達元や供給先のビジネスが上手く行っていなければ、自社の成功も長続きしません。
なので、自社だけでなく「全体」をSCMのスコープとする必要があるのです。

このことからSCMは売上と利益を最大化させ、その状態を永続的にすることを目的に行うものと言えます。

もし、「自社の成長」にだけスコープを絞ったとしても、サプライチェーンの効率化には結局サプライヤーとの緊密な連携は欠かせません。
そしてサプライヤーとの連携を強化するには、双方にとってメリットがなければ実現できないため、事実上自社の都合だけでビジネスを展開することができない今、「全体」を意識して進めるのは当たり前と言えるかもしれません。

SCMの業務

SCMで行う業務は大きく以下の4つに分けることができます。

計画業務

事業計画にもとづき、販売計画、生産計画、調達計画を行います。
それぞれの業務プロセスごとの計画を立案するのですが、それの最上位の計画が事業計画です。

計画を実現性の高いものとするには、需要予測が必要となるのですが、需要予測の精度を上げるには、自社内の情報はもちろん、取引先の各種データが必要となります。

実行業務

ここでいう実行とは、実際にモノを運んだり、作ったりすることを意味します。

具体的には、

  • 販売物流
  • 製造
  • 調達
  • 補充物流・貿易

などです。

これらの業務を実行、効率化することでQCDを改善し、利益の最大化を目指します。

評価業務

計画し、実行したら、それが計画通りだったのか、問題はなかったのかを評価を行います。PDCAでいうところのCの部分です。

評価手法はさまざまなものがありますが、一般的にはKPIを用いて、目的達成に影響を与える指標の計画との差異を確認していきます。

例えば、利益がKGIだとすると、売上とコストがKPIとなります。
さらにコストを抑えるには在庫を減らし、生産効率を上げる必要があるので、それぞれがサブKPIとなります。

このようなKPIマネジメントは、リアルタイムに状況を把握できる必要があります。最後の最後に集計してまとめないとわからないようであれば、早期の改善を行うことができないからです。

評価は改善のために行うものです。ですので、どのタイミングで、どのように評価を行うかの設計を行うことが重要です。

ネットワークデザイン

モノを届けたり、原材料や部品を調達したり、倉庫に保管したりする、外部パートナーとのネットワークの最適化は、SCMに大きな影響を与えます。

ビジネスの初期のサプライチェーンは、自然発生的に構築されます。
知り合いの紹介であったり、近くの業者だったり、そうしたつながりで構築されていきます。

ですが、ビジネスの拡大や環境の変化に応じて、そうしたパートナーとのネットワークを都度最適化していく必要があります。

「SCMの強化が必要とされる背景」でご説明した通り、特に調達や物流は大きな制約条件になりつつあります。ですので、安定的な調達とすばやい物流ネットワークの構築は、競争優位性を高めます。

SCMの導入メリット

コストの削減

SCMを導入することで商品の在庫・販売状況などをリアルタイムで把握できるようになります。製造者から販売店舗まで迅速かつ正確に情報が共有されることで「必要なものを必要な数量だけ必要な時・場所に届ける」ことができるようになるため、在庫管理や運送にかかるコストの無駄を削減できます。

在庫の最適化

製造現場では製品の生産に必要な資材が計画通りに調達できないと、納期遅れが発生する恐れがあります。また、店舗における欠品や納期遅れによる在庫不足は販売機会の損失につながり、逆に在庫が余れば無駄なコストが発生します。

そこでSCMを導入することで常に在庫状況を正確に把握できるため、需要と供給のズレを最少化し、適正在庫を維持することができます。

リソースの最適化

SCMを導入することでサプライチェーン全体の情報を一元管理でき、関連する業務の状況を把握できるようになります。そのため各工程におけるリソースの過不足といった課題やボトルネックとなっている工程などを発見しやすくなり、迅速に改善に取り組むことができます。

特に人手不足が深刻化する今日の製造現場においては人的リソースの最適化は重要課題です。SCMで合理的に人員配置を決めてリソースの最適化を図ることができます。

SCMの導入デメリット

導入コストがかかる

サプライチェーン全体を管理するSCMを導入する際には、自社だけでなく関連する各社が対象となります。そのため複雑で大規模なシステムを構築する必要があり、さらに導入後の運用・保守費なども発生するため、高額な導入費用がかかります。

機会損失の恐れがある

サプライチェーン全体の情報を一元管理することで業務の効率化を図れる一方で、一部の業務を効率化することに集中してしまうと俯瞰的な視点を失って市場の変化を見逃しかねません。業務の効率化や最適化を促進しながらも大局的に市場や事業を把握し、変化に柔軟に対応していく必要があります。

インダストリー4.0とSCMの関係性

インダストリー4.0とは2011年にドイツ政府が発表した産業政策で、「第4次産業革命」とも呼ばれます。

これまで水力・蒸気機関で軽工業を機械化した第1次産業革命、石油・電力による大量生産が始まった第2次産業革命、そしてITの活用が拡大し「デジタル革命」とも呼ばれる第3次産業革命がありました。

これに続く第4次産業革命は、スマートファクトリーに主眼を置き、AIやIoT、オートメーションなど最新のテクノロジーを活用して製造プロセスを最適化し、新しいエコシステムの構築を目指すものです。

インダストリー4.0のSCMの特徴・メリット

インダストリー4.0では、どの製品をどれだけ製造して、いつどこに納品するのか、工場を中心としてサプライチェーンに関わるあらゆる情報をリアルタイムで連携させることで製造プロセスの最適化を図ります。したがって、インダストリー4.0はサプライチェーンのスマート化の上に成り立つものと言えるでしょう。

インダストリー4.0におけるSCMは、従来に比べてより正確な予測に基づいて立案した計画に沿って製造プロセスを実行することで、リソースの最適化や大幅なコスト削減を実現します。

こうしたプロセス最適化の仕組みが整えば、現在のものづくり現場で発生している過剰在庫や納期遅れといったさまざまな課題が解決され、さらにオーダーメイドの高付加価値製品を大量生産する新たなビジネスモデル「マス・カスタマイゼーション」が可能になります。インダストリー4.0のSCMは、顧客ロイヤリティと自社の利益の両方を向上させ、製造業にとって大きなメリットをもたらすでしょう。

SCMシステムとは?

ここまで、マネジメント手法としてのSCMの話をしてきましたが、ここからはシステムとしてのSCMについて解説します。SCMシステムは、サプライチェーンの流れを見直し、最適化・効率化を図るためのシステムです。複数のシステムが組み合わさっているもので、これを導入することによりサプライチェーンの最適化・効率化が図れるだけでなく、自社業務の最適化・効率化が可能です。

SCMのデジタル化・システム化のポイントは、アナログな業務のデジタル化と社内および社外のシステムとの連携にあります。サプライチェーンはその名の通り、社内外の各種業務プロセスを横断した供給の連鎖のため、データの連携が欠かせません。
サプライチェーンマネジメントの基本的な考え方は個別最適ではなく全体最適です。これまでのシステム導入は現場の課題解決を優先し、現場ごとに個別最適されてしまい、サイロ化してしまっていることがほとんどでした。
そして今このサイロ化したシステムがSCMの最適化の足かせになってしまっているという現状があります。

自社内のプロセスすらシステム連携ができていない状態では、サプライヤーとの高度な連携もなかなか進みません。自社内でどれだけコストを最適化しても、ほかの企業で無駄が生まれてしまうと、最終的な利益が減少してしまうこともあるでしょう。そうした予測可能な無駄を省くためには、SCMを導入し、各企業や組織が統制をとって最適化・効率化の努力をしていくことが必要なのです。

SCMシステムを構成する要素

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?基礎やポイントをわかりやすく解説-2

便宜上「SCMシステム」という表現を使用していますが、実際には単独の一つのシステムで実現するというよりは各種業務システムの連携によって、サプライチェーンマネジメントのシステム化は実現します。

そのため、SCMシステムの範囲はケースバイケースになりますが、一般的に「工場」「物流センター」「営業所」など、それぞれの在庫状況や能力を把握し、「生産計画」「輸配送計画」「在庫計画」「出荷計画」を管理し、収益の最大化を目指します。

SCMを構成するシステムは大きく、

などに分類することができます。

では、構成要素ごとに詳しく 見ていきましょう。

業務統合 - ERP

ERPは「Enterprise Resource Planning」の略称で、企業資源を一か所に集めて管理するシステムのことです。あらゆる業務データを集め、企業経営のカギとなる「人」「物」「金」といった資源を有効活用するために計画を立てるもので、業務効率化に役立ちます。ERPでは複数の要素を一元管理できるため、一つの要素を更新すると他領域の情報にも連動して反映されます。

例えば、商品の発注に 伴って仕入れ在庫数が減少すると、売上システムに計上されます。計上された数値は請求書データベースに連携され、売上管理機能や損益管理機能に記録されるのです。このように一要素の変更に 伴い、ほかの情報もリアルタイムで変化していくため、個別に情報を変更したり管理したりする手間が減り、業務効率化を図れます。

SCMとERPとの違い

ここまでご紹介してきた通り、SCMは自社内の生産に関わるあらゆる業務プロセス、および調達先や納品先とも連携して実現するサプライチェーンの全体最適を実現するための取り組みです。

ERPは自社内の業務プロセスやデータを統合するためのシステムですが、生産現場の各種計画や実績の細かい管理まではERPでカバーしていないことがほとんどです。

ERPと各種の生産に関するシステムと連携して構成されるのがSCMシステムと理解するとよいでしょう。

計画系(計画層)- SCP

計画系とはSCMシステムの中の「SCP(Supply Chain Planning)ソフト」のことを指します。これには「需要予測」や「生産計画」「在庫計画」「物流計画」「資材計画」「納期回答」「需給調整」といった機能があります。


■ SFA(Sales Force Automation)

SFAとは「Sales Force Automation」の略称で「営業支援システム」のことです。主な機能としては、顧客管理機能・活動記録機能・日報管理機能・データ分析レポート機能・ToDoリストや通知機能などが挙げられます。

SFAの登場により、これまでは受注数など数字でしか評価できなかったものが、商談内容や進捗など、営業活動のプロセスから管理・指導できるようになりました。特に昨今はテレワークが普及したこともあり、営業活動の可視化や営業メンバーの行動管理の目的で、広く活用されています。SCPの文脈では需要予測にこのSFAの案件状況が活用されます。

SFAは便利なシステムですが、導入するにあたって注意すべき点もあります。まず、導入する目的や課題を明確にし、要件を満たしているのかを考えたり、必要な機能が使いやすいか比較・検討したりすることは必要不可欠です。また、仮に導入したとしても現場での運用が浸透しなければ、意味を成さないでしょう。

こうした業務システムの多くは、あくまで導入ではなく運用を通じて効果を発揮するものです。実際に導入すると想定より効果が低いこともあるため、セミナーや展示会などで実際に操作性を確認したり活用事例などの情報を収集することも重要だといえるでしょう。


■ SCP(Supply Chain Planning)

SCPとは「Supply Chain Planning」の略語で、サプライチェーンの計画を行うCMの中心となるソフトウェアのことです。主に「商品の需要予測」「生産計画」「在庫計画」「物流計画」などの機能があります。特に「需要予測」は在庫や生産する量を決めるための基礎となる重要な要素で、小売店や卸店、メーカーなどの利益を大きく左右します。SCPはこれを過去の販売実績や前年度のデータと比較して導きます。


■ MPS(Master Production Schedule)

MPSとは「Master Production Schedule」の略称で「基準日程生産計画」ともいいます。製品がいつ、いくつ必要なのかを決める、生産計画のことを指す言葉です。突然大量の受注が入っても対応できるように、安全在庫の確保や負担の均一化など、さまざまな問題解決のために必要とされています。

MPSについては以下の記事で詳しく解説しています。
MPS(基準日程生産計画)とは?精度が上がらない理由と生産スケジューラの活用について解説


■ MRP(Material Requirement Planning)

MRPとは「Material Requirement Planning」の略称で「資材所要量計画」ともいいます。必要な資材の数を「部品表」で管理する方法のことです。製品に必要となる資材の量や納期を把握し、計画を立てることで最適化・効率化を図ります。

MRPについては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:MRPとは?生産管理の肝となる資材調達を効率化する


■ 生産スケジューラ

生産スケジューラとは、人や設備などのリソースを生産量とを照らし合わせ、必要な場所に必要な分のリソースを割り当てるシステムのことを指します。

計画を立てるだけであれば生産管理システムでも可能ですが、生産管理システムは在庫や工程、品質の管理などの多くの機能を搭載しており、生産計画の立案には特化していません。一方、生産スケジューラは「生産スケジュール作成専用計算ツール」であるため、時間配分や作業員の配置を分や秒単位で管理するなど、より細かい計画を作成することができます。

生産スケジューラについては以下の記事で詳しく解説しています。
生産スケジューラの製造現場における活用と導入の現状について解説

実行系(実行層) - SCE

実行系とは、SCMの中の「SCE(Supply Chain Execution)ソフト」のことを指します。これには大きく分けて「物流センター管理」「輸配送管理」があり、「ロジスティック実務」を情報面からサポートします。具体的には、現在の在庫を確認したり、特定の荷物が今どこにあるかを特定したりする機能があります。ほかにも出荷や返品などの物流の関する全ての動きがSCEを通して管理されており、現場をサポートする「ロジスティック実務」を情報面で支える役割をもっています。

SCEソフトは、インターネットや電子データ交換などを介して、リアルタイムでSCPソフトやERPなどと連携し、需要や計画の変更に素早く対応できるようになっているのです。


■ MES(Manufacturing Execution System)

MESとは「Manufacturing Execution System」の略称で「製造実行システム」ともいいます。機能としては「生産資源の配分と監視」や「仕様・文書管理」「保守・保全管理」「品質管理」「作業のスケジューリング」「差立(作業手配)・製造指示」「作業者管理」「データ収集」「工程(プロセス)管理」「製品の追跡と体系管理」「実績分析」が挙げられます。これらの機能で各工程と連携し、生産性の向上を実現することが目的です。

MESについてはこちらの記事で解説しています。
関連記事:MES(製造実行システム)とは?生産管理に取り入れるメリット


■ SCADA(Supercisory Control And Data Acquisition)

SCADAとは「Supercisory Control And Data Acquisition」の略称です。これは、装置の作動状況や部品の数量、不具合や進捗状況などの情報をネットワークを通して1か所に集めて監視、コントロールをすることができる機能で、ひと目で施設内のあらゆる機器の情報を確認したり、必要に応じて装置のスピードを上げたり止めたり、パラメータの変更をしたりすることができます。

これまで国内事業の多くでは、メモ書きで対応していたことや、ほかに自動化する方法が存在していたこともあり、あまり普及していませんでした。しかし、近年はネットワーク関連の技術が進化したことで、こうしたシステムのオープンソース化やパッケージ化が進みました。その結果、メモなどのアナログなやり方や、DCS・PLCといった今まで使っていたシステムよりも汎用性が高く、情報を1か所に集める、すなわち一元管理に特化した「SCADA」が、安価に実装できるようになったのです。

SCADAについては以下の記事で解説しています。
関連記事:SCADAとは?仕組みからさまざまな業界で注目される理由を解説

■ WMS(Warehouse Managemenet System)

WMSとは「Warehouse Managemenet System」の略称で「在庫管理システム」や「倉庫管理システム」ともいいます。これは、その名の通り、倉庫の資材や商品、貨物の入出荷や保管などの管理を細かく行うシステムのことを指します。

ERPや基幹システムだけでは、在庫の数量の把握することしかできません。しかし、WMSは入出庫やピッキングなど、物流作業のサポートも可能です。そのため入出庫がよりスムーズになり、またバーコードを使用したデジタルチェックも行うため、誤出荷の防止にも繋がります。

■ TMS(Transport Management System)

TMSとは「Transport Management System」の略称で「輸配送管理システム」のことです。

物流センター全体を管理するシステムはWMSですが、こちらは商品が物流センターから出荷された後、届け先までの輸配送をトータルに管理できるシステムのことを指します。一般的に、「配車計画」と「運行管理」というシステムを中心に構成されています。

「配車計画」は毎日の運行スケジュールを管理し、トラックやドライバーの手配や割り振りをすることです。これにはデジタル地図で走行ルートのシミュレーションをしたり所要時間の計測ができたりするものもあります。「運行管理」はトラックに搭載した端末や携帯電話などで、全車両の状況を把握することができます。また、GPSでリアルタイムに、車両が今どこにいるのかを知ることも可能です。

制御系(制御層)

制御系は、実際の装置を動かし、データを蓄積するシステムです。実行系から渡された情報を元に装置を制御するための仕組みといえます。

■ PLC(Programmable Logic Controller)

PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、専用のコンピュータによってシーケンス制御を行うための装置です。

PLCは自動車や電気機器など製造ラインのFA(ファクトリーオートメーション)システムをはじめ、半導体製造から金属加工機械まで、さまざまな工場設備に用いられるほか、エレベーターなど身近な機械設備の制御にも利用されています。電磁リレーを利用した制御回路から発展したPLCは、プログラムによってシーケンス制御の変更と改良を可能にしました。

PLCについては以下の記事で解説しています。
関連記事:PLCとは?製造現場の機械制御の仕組みや必要な言語(プログラム)をご紹介

■ DCS(Distributed Control System)

DCSとはDistributed Control Systemの略称で、分散制御システムのことです。大規模なプロセス制御対象に対し、複数のコントローラで協調・統合した制御をするための装置です。

それぞれの制御装置はネットワークで接続され、お互いに通信を行って監視します。コントローラにはマイクロプロセッサ(MPU)が使用され、1台あたり1~数百ループの制御が可能です。

DCSの制御対象は主に流体で、その圧力・流量・温度などを制御します。

このコントローラ同士を制御ネットワークで接続し、化学系プラントや製薬会社のポンプなどで使用されており、大規模なプラントの操業を実現しています。

分析系 - BI

企業の情報システムなどで蓄積される膨大なデータを、必要に応じて分析・加工することで、業務や経営の意思決定に活かす仕組みを「BI(Business Intelligence)」と呼び、そのためのソフトや情報システムのこと「BIツール」「BIシステム」といいます。

従来の情報システムでは、蓄積されたデータは活用されることなく記録のために保管されるか、情報システム部門の人が専門的な技術や技能、システムなどを使ってマニュアル的に報告するのが一般的でした。しかし、BIの登場によって意思決定者や現場のスタッフが、自らソフトを操作してデータを抽出・分析することが可能になり、業務や意思決定にとって有用な情報にできるようになったのです。

データ管理系

ここでは、データ管理系と呼ばれる「PLM」や「PDM」「MDM」について解説します。

■ PLM(Product Lifecycle Management)

PLMとは「Product Lifecycle Management」の略称で「製品ライフサイクル管理」ともいいます。これは製品の企画から生産・販売・廃棄までの製品のライフサイクル全体を通し、関連付けながら管理する、業務効率化の取り組みのことを指します。

製品ライフサイクルを管理するためには、設計・開発部門や製造部門などの各部署が連携をとる必要があります。そのために開発されたのが「PLMシステム」です。

これは、ポートフォリオや要件管理、設計などのデータ管理、取引先情報管理、製品データやサービス部品の管理などの製品ライフサイクル全体を管理する機能が搭載されています。開発から廃棄までの業務を3段階に分けて、それぞれの段階で製品の市場を見極めるのです。

PLMについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:PLMとは?基本からIoT時代に必要とされる理由まで解説

■ PDM(Product Data Management)

PDMとは「Product Data Management」の略称で「製品情報管理システム」と呼ばれます。

CADや部品表などのデータを管理するもので、仕様書や設計データ、日程などの作成アプリが異なるデータを、製品ごとに一元化管理することが可能です。ファイルや図面のデータをキーワードで検索することが可能なほか、部品表のデータの把握・管理ができるため、変更前後の違いを確認できます。また、業務の流れに沿ったワークフローを設定することもできるため、ワークフローを可視化して進行状況を確認することも可能です。セキュリティ面も、データ共有したいメンバーのみで行えるようにユーザーやチームごとにアクセス権限を設定したり、担当以外のデータは更新できないようにしたりするなど、柔軟に制御することもできます。

PDMについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:PDMとは?搭載機能や導入メリット、PLMとの違いまで徹底解説

■ MDM(Master Data Management)

MDMとは「Master Data Management」の略称で、デバイスにおけるシステム設定の管理法のことです。また、それを実現するソフトや情報システムのことも、MDMと呼びます。自社の方針に沿ったセキュリティの設定、ソフトウェアの種類やバージョンの統一、アプリのインストールなどの機能制限といった機能が搭載されています。

そのほかにも、遠隔操作によるロックやデータの消去、GPSで使用者の居場所を把握することが可能な製品もあります。こうしたMDMの活用において「紛失時などの情報漏えい対策」「不正利用の防止」「端末情報の収集などの管理の効率化」などが重要視されています。

MDMを導入することで、その後の設定変更やアプリの追加も遠隔操作できるようになり、管理を劇的に改善できるでしょう。

SCMの将来性

今後の製造業においては、高度なSCMによって迅速かつ柔軟に顧客のニーズに応え、トラブルを予測・防止してサプライチェーン全体を最適化する必要性がさらに高まっていきます。ネットワークの透明性と可視性、接続性などを向上させ、現場の適応力を上げることがカスタマーエクスペリエンスと顧客ロイヤリティの改善に直結するからです。従来の線形モデルではなく、サプライチェーンに関わるあらゆる情報を把握・管理し、調達や受発注、輸送など高速化かつ複雑化する工程にも対応できる仕組み作りは、市場競争での生き残りに必須ともいえます。

これからのSCMは、計画と実行の連携をさらに強化させ、スピードと正確性をより高めていくことが求められるでしょう。現在それを実現している事例はありませんが、近年スマートファクトリーへの注目度が高まるなかSCMのスマート化を図るためにも、サプライチェーンの最適化を実現できるシステムを導入し、計画機能の改善を図ることをおすすめします。

生産性の向上とリソースの最適化を実現するSCM

在庫の最適化は製造業にとって利益の向上に直結する重要課題です。過剰在庫はキャッシュフローを悪化させ、欠品は販売機会や信頼の損失につながります。

SCMを徹底することで、在庫の状況を可視化し、需要の変動に応じて柔軟かつ迅速に、必要な数量だけ製品を生産でき、在庫の最適化が実現します。これによって市場のニーズに応えながら自社にとっての機会を最大化できるだけでなく、作業員の稼働などを需給の変化に合わせて見直すことで無駄な工数やコストを削減し、自社のリソースを最適化することもできます。

関連記事:SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較

SCMの導入による成功事例

SCMシステムは、サプライチェーンにおける情報をリアルタイムに把握し、正確な需要予測や短期の需要変動の補正、チェーン横断での可視化や在庫最適化などを可能にします。

コンビニエンスストアの国内大手であるA社は、次世代コンビニエンスストアの実現に向けて現場の見える化や業務効率化に積極的に取り組んでいました。

同社が抱えていた課題のひとつが、機械ロスと廃棄ロスの削減です。そこで在庫リスクを減らして利益を向上させるためにSCMシステムを導入しました。

A社は導入から実可動までを8カ月という短期間で実現し、新たなサプライチェーンの仕組みを確立しました。これにより工程のムダを削減し、サプライチェーン全体の食品材料の廃棄量を56%減らすことに成功しました。

SCMをシステム化し、全体最適を

今回はSCMの概略と、システムの構成要素について解説してきました。発注・生産・物流・在庫など、複数のシステムが互いの情報をやりとりすることで、SC全体の細やかなサポートが可能になります。

大量生産・大量消費の時代が終わり、品質向上やコスト削減を強いられるなか、複数の企業が一丸となって無駄をなくす「SCM」の概念は、非常に合理的だといえるでしょう。

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