サプライチェーンとは?用語の意味や具体例、重要性をわかりやすく解説

 2023.02.16  株式会社システムインテグレータ

「製品を作って、それを売る」というのはビジネスの基礎中の基礎です。しかし、それだけでは利益の確保にはつながりません。どんなに良い製品を作っていても、在庫が余ってしまう(余剰在庫)トラブルが起きてしまっては、利益を得ることは叶いません。

そこで重要になるのがサプライチェーン、およびサプライチェーン・マネジメントの概念です。

この記事ではサプライチェーンと、そのマネジメントの重要性や近年の動向などについて解説します。

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サプライチェーンとは?

サプライチェーンとは?意味や重要性をわかりやすく解説

サプライチェーンとは、製品の原材料や、部品の調達から販売に至るまでの一連の流れを指します。日本語では、「供給連鎖」と呼ばれています。

サプライチェーンの特徴は、自社だけでなく、協力会社など他社をまたいでモノの流れをとらえることです。例えば、自社が自動車製造業である場合、部品の原料の製造・販売をする企業から始まり、次は部品を加工する企業へと流れていきます。完成した部品は、メーカー企業に直接流通する、もしくはもう一度別の企業で加工された後、メーカー企業へと流通していきます。そして集められた部品は、メーカーで組み立てられ、商品として出荷されたあと店頭に届きます。

このように、サプライチェーンでは自社の業務のみならず、モノが製造され、販売されるまでのフロー全体を捉えます。

このサプライチェーンを管理して、製品の開発や製造・販売を最適化する方法のことをサプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)と呼び、SCMによる全体最適を実現するシステムを導入している企業が増えています。SCMを利用する目的には、部品・材料メーカーや販売店、卸売業者などを含めて在庫情報を共有し、在庫の適正化を図れることなどが挙げられます。
SCMを強化し最適するシステムを構築することで、売上を最大化し、コストを削減することが期待できます。

サプライチェーンの具体例

では、サプライチェーンの具体例を、自動車製造で考えてみましょう。

  1. 二次原料業者がプラスチックの原料であるナフサや、鉄の原料となる石炭、鉄鉱石などを1次原料業者に供給する
  2. 一次原料業者は、供給された原料から違った特性を持つ多種多様な種類の鉄やプラスチックへの加工を行い、加工業者へと供給する
  3. 加工業者(ティア1やティア2)は供給された加工製品から生産活動を行い、1点の部品を作り出し、製造業者に供給する
  4. いくつかの加工業者からたくさんの部品を仕入れた製造業者は、それらを組み立てる、部品生産を自ら行うなどして1台の自動車を完成させて販売店舗(ディーラー)に供給する
  5. ディーラーでは、訪れたお客さまと連絡を取り合いながら、最終的に自動車を購入してもらう

自動車製造では上記のようにモノが流れていきます。あくまでサプライチェーンは一本の本流だけではないことに注意しましょう。自動車製造業者はいくつかの加工業者から部品を仕入れることが普通で、その加工業者もいくつかの原料業者から仕入れを行っています。部品の種類によっては、製造業者自身が加工を行う場合もあり、サプライチェーンごとに流れは変わります。

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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?

サプライチェーンとは?意味や重要性をわかりやすく解説-1

ご説明した自動車製造のサプライチェーンの例からもわかる通り、サプライチェーンは多くのプレーヤーによって構成されています。消費者に商品や製品を適切に届けるために、企業間の取引だけでなく、企業内(生産部門と販売部門の間など)でのやり取りも最適化させなくてはなりません。

このように、サプライチェーンの全体を通して供給を最適化させる取り組みのことを、「サプライチェーンマネジメント(SCM)」といいます。サプライチェーンの全体において最適な意思決定が行われることによって、供給の速度や在庫管理が適切に行われ、収益やキャッシュフローの向上が期待できます。

関連記事:SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?仕組みを基礎からわかりやすく解説

サプライチェーンマネジメント(SCM)が注目されている背景

近年、業界全体でSCM強化の重要性が注目されています。ここではその背景についてご紹介します。

IT技術・デジタル化の発展

SCMが注目を集める背景にある要因の1つが、IT技術の発展です。

サプライチェーンマネジメントという言葉が使われ始めた当時はSCMを実現するための環境が整っていませんでした。近年はIT技術が飛躍的に進歩して各業界でデジタル化が広がり、SCMに特化したソリューションも増えています。

従来は環境によって情報が分断されることが当たり前でしたが、クラウドサービスやデバイスの普及によって自社内だけでなく原材料や部品などの各メーカーや卸業者・販売店など、サプライチェーン全体におよぶ情報の共有・連携がリアルタイムで可能になりました。

これにより在庫やリソースの最適化など競争力の強化につながるさまざまなメリットが得られるため、SCMの強化を図る企業が増えています。

需要変動の加速

SCMの注目が高まっているもう1つの要因が、市場ニーズの多様化です。

スマートフォンの普及で、情報拡散や需要変動のスピードが大幅に加速しました。従来はTVCMや紙面広告など、製品情報の拡散は企業側がある程度コントロールしていましたが、現在はインターネットで消費者が自ら情報を探しに行くようになり、SNSなどで拡散のスピードも範囲も大きく変わりました。これによってニーズの変動が加速し、需要予測が難しくなっています。

そこで市場のニーズに的確に応え、需要の変動に柔軟かつ迅速に対応する重要性が高まったことで、SCM強化の必要性が叫ばれるようになりました。

サプライチェーンマネジメント(SCM)の必要性とメリット

サプライチェーンマネジメント(SCM)はなぜ必要とされるのでしょうか。

まずは、SCMにはどのようなメリットがあるか、具体的な利点を3つご紹介します。

サプライチェーン要素の最適化

一つ目のメリットは、「サプライチェーン要素を最適化できること」です。SCMを実施することによって、仕入れから在庫管理、製造から販売、出荷から物流といった、業務プロセスの全体最適化ができます。これら全体を一連のプロセスとして捉えることによって、それぞれのプロセスにおける課題を明確化し、効果的な解決策を打てるようになるのです。

なかでも、在庫の最適化は特に大きなメリットがあります。仕入れや販売などの在庫以外の情報を在庫管理と結びつけることによって、常に最適な在庫数を把握しながら管理することが可能です。こうした体制が確立されることでキャッシュフローの改善が見込まれ、出荷までのリードタイムも短くなるため、最終的には顧客満足度の向上にも寄与してくれます。

需要変動への対応

需要変動に対応できることも、SCMのメリットです。導入するSCMシステムにもよりますが、なかにはそれぞれの業務プロセスから集めた情報をベースに、分析が行える機能が搭載されているものもあります。この機能を活用することによって、専門的な知識を持っていなくてもサプライチェーン全体の状況や、現在解決しなくてはならない課題を可視化することができるのです。常に在庫を最適化することにより、需要の大幅な増加や減少などの環境変化が起こったとしても、すみやかに対応できるようになるでしょう。

また、近年は製品の陳腐化も早くなっていることから、製品のライフサイクルが短くなっています。しかし、SCMを導入することで需要変化まで予測できるため、ビジネスを最適化して迅速な経営を実現することが可能です。

コスト削減

サプライチェーン全体の情報を見ることができれば、仕入れの適正数量や、小売店舗へのベストな配送タイミングなど、多種多様な情報を知ることができます。それにより、無駄なコストを発生させることなく、仕入れから出荷までの全体業務の最適化を図り、物流プロセスのコストを大きく減らすことが可能です。また、SCM導入によって商品の販売情報をリアルタイムで把握できるようになると、配送業者が小売店舗の在庫状況に応じて、ベストなタイミングで必要な数量を配送できるようになります。

また、一元管理は人的リソースの最適配置にも効果的です。全体が見渡せるようになると、どのプロセスにどれだけの工数がかかっていて、どれだけの人員が必要になるかも分かります。そのため、無駄な人件費がかからない体制をつくれるのです。

ちなみに、近年は「サードパーティロジスティクス企業」も増えています。これは第三者企業として、物流フロー全体を最適化して物流コストを減らすことを目的とする、サプライチェーンに関連する物流企業のことです。

サプライチェーンマネジメント(SCM)の実現ポイント

SCMに取り組み、実現させるうえで最も重要なことは何でしょうか。それは「SCMを実現するための環境」です。これは「システム化による組織全体の効率化」とも言い換えることができるでしょう。

SCMに取り組むための管理手法は多岐にわたります。管理計画を一元化することなども管理手法の一つですが、それを実現するための「環境」がなくてはSCMにはなりません。SCMとは「組織全体を連携させ、最適化するための取り組み」なのです。IT環境においても当然、組織全体で連携し、最適化できる環境が必要になります。

サプライチェーン全体を管理するには自社内の製造や流通に関わる全ての業務プロセスと、調達先や販売先との連携が重要となります。
これらすべてを単一のシステムで統合管理することは困難ため、各種システムとの連携により実現することが求められます。

サプライチェーンマネジメントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?仕組みを基礎からわかりやすく解説

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バリューチェーンとの違い

バリューチェーン(Value Chain)とは、原材料や部品の調達、製品の加工や組み立て、出荷配送、マーケティング活動、顧客への販売、アフターサービスなど、各プロセスが生み出す価値に着眼した思想です。

また、自社と競合他社が行っている多様な活動を機能別にカテゴライズし、分類ごとの強み・弱みを把握、見つかった課題を洗い出して重要度の高い順に改善に取り組み、競合優位性を高める方法を「バリューチェーン分析」と呼びます。

サプライチェーンとバリューチェーンは似ているようで異なりますが、無関係ではありません。サプライチェーンが発生させる供給連鎖はバリューチェーンに大きな影響を与えるため、バリューチェーン分析を行うときにはサプライチェーンも視野に入れつつ分析をする必要があるのです。

バリューチェーンについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご参照ください。
関連記事:バリューチェーンとは?サプライチェーンとの違いからバリューチェーン分析のメリットや方法まで解説

エンジニアリングチェーンとの違い

エンジニアリングチェーン(Engineering Chain)とは、製造過程における設計部門を中心とした業務で、企画の構想から製品設計、工程や設備の設計、生産準備、アフターサービスまでの一連の業務の過程のことです。商品企画または受注から始まって、設計・生産準備・製造・調達という一連の業務を技術や情報といった観点から結びつけます。エンジニアリングチェーンには多くの部門が携わり、このエンジニアリングチェーンをどのようにつなげるかによって、モノの製造を行う企業の価値が大きく左右されます。

エンジニアリングチェーンとは商品情報とその技術のつながりのことを指します。一方でサプライチェーンとは、材料の供給から顧客や消費者への出荷に至る業務過程における一連のモノの流れのことを指します。エンジニアリングチェーンで決められた商品仕様や生産体制に沿った形で、サプライチェーンによってモノが製造され、出荷されていきます。

エンジニアリングチェーンについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご参照ください。
関連記事:エンジニアリングチェーンとは?DXが与える影響や懸念される課題の解決策について

ロジスティクスとの違い

ロジスティクスとは、原材料の調達から生産、物流、販売、回収までの供給プロセスを指す言葉です。

サプライチェーンマネジメントとロジスティクスの主な違いは、その対象範囲にあります。

サプライチェーンマネジメントはサプライチェーン上の関連企業の活動を対象としていますが、ロジスティクスは1企業の供給プロセスを一元管理する仕組みを指します。したがって、サプライチェーンマネジメントの一部としてロジスティクスが存在する、と考えることができます。

サプライチェーンマネジメント(SCM)と物流の関係性

日本物流学会は物流の主要機能を、輸送・保管・流通加工・包装・荷役・情報と定義しています。これらはサプライチェーンにおいて重要な役割を担う機能です。

機能

役割

輸送

トラックや鉄道、船舶、航空機など貨物に適した手段を用いて、モノを物理的に移動させる。

保管

製品や原材料/部品などのモノを一定期間にわたり倉庫や物流センターで備蓄する。

包装

輸送時にモノが破損しないよう梱包する。モノの状態を保つ工業包装と、商品の付加価値を高める商業包装がある。

荷役

輸送手段として使わるトラックや列車への貨物の積み込み・荷下ろし、検品や仕分けを行う。

流通加工

商品を輸送・保管するためのラベル貼りや食品の小分けパック詰め、付加価値をつけるためのプレスや詰め合わせなどを行う。

情報

数量・品質・位置に関するデータを管理し、物流のコントロールや効率化を図る。

サプライチェーンには各プロセスでさまざまな企業や部門が関わりますが、物流はその間で発生する「モノの流れ」を指し、モノの取り引きを支える役割を担っています。

近年注目される「グローバルサプライチェーン」とは?

グローバルサプライチェーンとは、サプライチェーンの仕組みを国内だけでなく海外にある拠点をも選択肢に含めて実施することを指します。つまり、サプライチェーンが国内で完結させることなく、国外へと展開できることを示しています。

生産拠点や市場のグローバル化に伴い、サプライチェーンを最適化するためには海外企業を含めてSCMを行う必要が出てきました。それぞれの工程を依頼できる企業の選択肢が世界中に広がったことで、サプライチェーンは国内完結型から完全現地型までの間で、パターンの多い複雑なシステムとなっています。

2020年からの新型コロナウイルス感染症の大流行は、グローバルサプライチェーンの領域に深刻なダメージを負わせました。最大の問題となったのはサプライチェーンそのものが分断されてしまったことで、特定の国やサプライヤーに供給を依存しすぎていることのリスクが改めて表面化したのです。コロナ禍によって表面化したサプライチェーンのリスクについては、次章で詳しく解説します。

コロナ禍で顕在化する「サプライチェーンリスク」とは?

2020年の新型コロナウイルスの大流行によって、企業向け・消費者向けなどジャンルを問わず、さまざまな物資が供給不足に陥りました。世界的な供給網が遮断され、それによって需要を満たす供給ができない「サプライチェーンリスク」が顕在化したのです。

企業向けITの分野でも、テレワーク需要が急速に高まったことによって、VPN装置(離れた拠点の間を仮想の回線でつないで通信できるようにするための装置)などのネットワーク機器の供給不足が大きな話題となりました。

特に近年はサイバーセキュリティの方面においてもサプライチェーンリスクが深刻化しています。

2011年に発生した米国防衛産業に対するサイバー攻撃を皮切りに、年を増すごとにサイバー攻撃の手口や影響も甚大化しています。2013年に起きた、米国大手小売業を狙ったサイバー攻撃は、クレジットカードの情報流出をはじめ、小売りの生命線でもあるPOSシステムに重大な被害を与えました。

サプライチェーンリスクとは、一般的に組織の内外で発生する事象が原因で、計画通りに需要を満たせる供給ができなくなるリスクのことを指します。サプライチェーンとひと口にいっても、業務委託先やグループ企業、製品・部品の供給元、仲介業者、メーカー、サービス事業者などさまざまなものがあり、どこでどのようなリスクが発生しうるのかを知っておくことが重要です。 

サプライチェーンリスクについて、詳しくは以下の記事で解説しています。併せてご参照ください。
関連記事:サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)とは?セキュリティ分野やコロナ禍におけるリスクについて

まとめ

今回はサプライチェーンをテーマに、マネジメントの重要性と近年の動向についてご紹介しました。

SCMを導入することで、いろいろなメリットを享受できることは間違いありません。しかし、そこで課題になるのは、導入ハードルをできるだけ低くしつつ、SCMの運用を最適化することです。具体的には、クラウド型のSCMシステムなどの導入が挙げられるでしょう。SCMシステムにもさまざまありますが、導入する際は自社に最適なものを選べるよう、意思決定の過程や、情報伝達の過程も見直すようにしましょう。

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