需要予測の基礎や精度を向上させる3つの方法を紹介

 2022.10.20  株式会社システムインテグレータ

需要予測について「改めて基本を押さえたい」「自社の手法を根本から見直したい」と考えている製造企業の担当者は少なくありません。本記事では、需要予測の概要や代表的な手法、精度を向上させるポイント、役立つツールの種類などを紹介します。

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需要予測とは?販売数や使用量を予測する上で必要な手法

需要予測の基礎や精度を向上させる3つの方法を紹介

需要予測とは、市場における自社の提供する商品やサービスの需要量を予測することを指します。多くの企業は、この需要予測に基づいて、仕入れ数や生産数、人員計画、設備計画、価格帯などを決めています。

例えば、製造業界では仕入れの材料数や製造数など、小売業界では商品棚の割り当てや価格など、イベント業界では開催場所や臨時スタッフの採用数などです。

企業において、需要予測はとても重要な業務のひとつです。予測値が実績値より下回ると、販売機会の損失や顧客離れ、スタッフの過重労働などに陥るリスクがあります。逆に、予測値が実績値より上回ると、在庫コスト・廃棄量の増大、資金繰りの悪化などになりかねません。

企業としての利益を最大化させるためには、なるべく精度の高い需要予測を実施する必要があり、多くの企業がこの課題に取り組んでいます。

需要予測の手法には、大きく分けて「統計的な予測」と「人的な予測」の2種類があります。統計的な予測は過去の実績やデータなどをもとに、人的な予測は営業担当者や販売担当者、経営者などの経験や勘をもとに、需要量を予測する手法です。

従来、人的な予測が広く用いられていましたが、「属人的になりやすく、社内にノウハウが蓄積されない」「人間が判断しているため、著しく外れてしまうおそれがある」などのデメリットが指摘されていました。現在はデータ活用による需要予測が一般的であり、統計的な予測が主流となりつつある状況です。

以下、統計的な予測について解説します。

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需要予測の5つの手法

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さまざまな手法がある需要予測から、代表的な手法を5つ紹介します。

需要予測の手法1「算術平均法」

今後もばらつきのある変動が継続されると仮説し、過去のデータの平均を算出した数値を予測値とします。5つのなかで一番わかりやすい手法です。

需要予測の手法2「移動平均法」

その名のとおり、時系列上で計算の対象となる期間を少しずつ移動させながら平均を求める手法です。例えば、「直近の3ヶ月」など、直近の一定期間におけるデータの平均を算出し、その数値を予測値とします。

需要予測の手法3「指数平滑法」

過去の予測値と実績値を用いて、予測値を算出します。計算式は次のとおりです。

予測値=α×前期実績値+(1-α)×前期予測値

αは「平滑化指数(平滑化定数)」と呼ばれる任意の指数で、0~1の間で設定します。一般的には、αが1に近いほど直前の実績を、0に近いほど過去の推移を重視した予測になります。

需要予測の手法4「回帰分析法」

因果関係のある変数同士の関係性をもとに予測値を算出する方法です。たとえば「y=ax+b」というグラフ数式では、変数xの変動をもとに変数yの変動を予測しています。

原因となる変数がひとつの場合は「単回帰分析法」、複数の場合は「重回帰分析法」と呼びます。回帰分析法は、概念や計算方法がやや難解であるため、エクセルの専用機能などの活用が望ましいでしょう。

需要予測の手法5「加重移動平均法」

過去の一定期間におけるデータから、直近のデータほど影響が大きくなるように重み付けをしたうえで平均を算出し、その数値を予測値とします。場合によっては、移動平均法より正確な数値を割り出せるとされています。

精度を向上させる需要予測の3つの方法

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需要予測は、企業経営にも大きく影響する業務であり、常に重要視されているものが「精度」です。ここからは需要予測の精度を向上させるポイントを3つ紹介します。

1. 質の高いデータを活用する

データの品質に気を配るためには、まず正確なデータが必要です。以下のデータが含まれてしまうと、需要予測の精度は下がってしまうでしょう。

  • 事実と異なるデータ
  • 関連データと同期されていないデータ
  • 誤った計算式から算出されたデータ など

また、なるべく新しいデータに更新することが望ましいです。5年前のデータと1年前のデータを比べれば、当然後者の方が需要予測の精度が高くなります。

正確なデータや新しいデータの活用は一見、言うまでもないほど当たり前のことですが、意外と実施できていないケースが少なくありません。

2.異常値を考慮する

以下の状況下では、通常とは異なる傾向が出やすくなります。

  • 販促キャンペーンを行った
  • 有名メディアに取り上げられた
  • 競合他社が新製品をリリースした
  • 何らかの事情により、競合他社の信用度が下がった
  • 災害が起きた
  • 消費税が増税された など

一時的かつ急激な需要の増減があった場合は、異常値として扱いましょう。具体的には除外するか、補正などの処理を実施します。

3.継続的に改善する

需要予測は、各手法を試しながら継続的に改善していく必要があります。

質の高いデータを用いて、異常値を考慮したうえで需要予測を実施しても、予測値と実績値が大きくかけ離れてしまうことが多々あるかもしれません。その際は、ただの失敗に終わらせるのではなく、しっかりと要因を検証しましょう。

「需要に影響しているのに、考慮できていない要素があるのではないか」「より適した計算方法があるのではないか」など、予測値と実績値がかけ離れる要因を突き止め、次につなげることが重要なポイントです。

すぐに目立った成果は得られないかもしれませんが、PDCAサイクルを回し続けることで、精度は高まっていきます。

需要予測のツールの種類

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需要予測の実施に役立つツールを3つ紹介します。ツールの活用には「効率的に行える」「ヒューマンエラーが少ない」「精度が高い」などのメリットがあるので、参考にしてみてください。

1.在庫管理システム

その名のとおり、企業における在庫管理業務をサポートするシステムです。在庫データや入出庫データなど、在庫管理業務に関するデータの一元管理を基盤として、売上集計や帳票出力、自動発注などの機能を備えています。

在庫管理と需要予測は連動しているため、在庫管理システムのなかには、需要予測の機能が実装されているものも多いです。これから導入する場合は、需要予測も機能しているシステムを活用した方がよいかもしれません。

また、需要予測や在庫管理との連動が多い業務のひとつとして、 生産管理におけるすべての計画を指す、「生産計画」が挙げられます。

生産スケジューラを導入することで、スムーズに進められるでしょう。精度の高い需要予測を実施したうえで、最適な生産計画を立てることは大きなメリットです。この機会に検討してみることをおすすめします。

2.エクセル(Excel)

エクセルの関数を使用した需要予測も可能です。例えば、回帰直線を使う「FORECAST関数」や指数平滑法を使う「FORECAST.ETS関数」、重回帰分析を使う「TREND関数」などが役立ちます。

エクセルはビジネス用のPCであれば他の用途ですでに入っていることが多いので、追加の導入・運用コストがかからない点がメリットです。

3.AI(人工知能)

現在、需要予測の世界で多くの人に注目されているのがAIです。「○○業界向けAI需要予測ソリューション」といった形で提供されているプロダクト・サービスは年々増えています。

AIは、自社に蓄積されたデータに加え、マスメディア情報や政府機関が発表する統計資料、検索エンジンの検索結果なども対象に、さまざまな角度から自律的に分析作業を行います。

人間には気付けない関係性や規則性などを見出したり、ビジネス環境やトレンドの小さな変化をいち早く察知したりするため、その結果、極めて精度の高い予測値を導き出せるでしょう。

まとめ

需要予測の精度を高めるには、高品質データの活用や異常値の考慮、継続的な改善が欠かせません。需要予測に伴い、スムーズで綿密な生産計画を実現したい場合は、生産スケジューラ「Asprova」の導入をぜひご検討ください。

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