MPSとMRPの違いとは?計画の立て方、生産スケジューラの活用方法を解説

 2023.01.19  株式会社システムインテグレータ

MPSとは、「Master Production Schedule」の略称で、「基準日程生産計画」のことです。
MPSは生産現場でMRP(資材所要計画)の元となる計画で、MRPの精度を上げるにはこのMPSの精度向上が欠かせません。

グローバル化・ボーダレス化した経済環境では、目まぐるしく変わる市場動向を考慮した生産計画を立案することが非常に困難な状況になっております。このような状況下で市場動向を読み間違えると、在庫不足による販売機会損失や過剰在庫の状態を招くため、計画立案される部署・担当者の方々は日々頭を悩まされておられるのではないでしょうか。
便利で有益なシステムが数多くリリースされてますが、なかなか痒い所まで手が届くようなシステムがないのが実情のようです。

本記事ではMPSの精度を上げる具体的な方法について解説していきます。

生産管理業務については以下の記事でも詳しく解説しています。
製造現場を支える生産管理とは?業務内容や効率化手法を解説

※本ブログではモノづくり業界でよく耳にする専門用語(アルファベット3文字略語)を多数使用しています。専門用語に関する詳しい説明はこちらをご覧ください。

SCPにおけるAsprova活用

MPS(基準日程生産計画)とは

MPS(基準日程生産計画)とは、その製品がいつまでにどれくらい必要なのかを決める生産計画のことです。計画需要量と、手元の引き当て可能な在庫ならびに安全在庫量から照らし合わせて、計画上の必要生産量を定めます。

お客様からの受注を制限なくすべて納期通りに納品できるのであれば、手元の在庫や安全在庫を考慮するMPSは必要ないのですが、実際には生産能力には限界がありますので、MPSはどんな場合でも必要と言えます。

MPSを立てておくことで、生産負荷を平準化したり、受注数に対応できないという事態を回避したり、先行生産をするなど効率的な生産を実現することができます。

MPSの立案には、

  1. 品目ごとの生産能力
  2. 品目ごとの需要予測
  3. 品目ごとの在庫
  4. 品目ごとの受注残
  5. 品目ごとの確定している生産数

などが利用されます。

MPSとMRP(資材所要計画)との違い

MRPは、「Material Requirement Planning」の略称で、資材所要計画のことです。MRPとは、製造に「必要なもの」を「必要なとき」に「必要なだけ」調達する手法です。MRPを導入することで、適切に資材を調達できるようになります。その結果、在庫管理コストを削減したりキャッシュフローを改善したりすることが可能となり、生産性を向上させることができます。

さきほどご紹介した通り、MPSは計画需要量と、手元の引き当て可能な在庫ならびに安全在庫量から照らし合わせて、計画上の必要生産量を定めます。この在庫引当ての際に、生産するタイミングや量、生産に必要な資材がいつどのくらい必要かを計算するのがMRPなのです。

ですので、

  • MRP(資材所要計画)は、最終的に購買計画につながる
  • MPS(基準日程生産計画)は、最終的に製造指図につながる

ということができます。

MRPについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
MRPとは?生産管理の肝となる資材調達を効率化する

MPSとMRP2との違い

MRPの発展型とされるのがMRP2です。Manufacturing Resource Planningの略で、「生産資材計画」と訳されます。MRPで管理する資材に加えてコストや人員や設備まで含めて管理する手法です。生産から物流までの全工程を含めて調達・生産・出荷の計画を立てることができます。1980年代のアメリカで、在庫管理の概念を在庫以外のヒト・モノ・カネのすべてに適用して管理するために考案されました。

製品の完成日を基準に生産計画を立てるMPSは、生産に必要になる資材の調達を計画するMRPを計算する際に必要になりますが、MRPから算出された資材の所要量から購買計画を立案するまでを含むのがMRP2です。

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生産計画の立て方と流れ

生産計画は「大日程計画」「中日程計画」「小日程計画」の3つに分けられます。ここではそれぞれの計画作成についてご説明します。

ステップ①大日程計画の作成

大日程計画は、3カ月から1年ほどの長い期間を対象に立てられる計画です。過去の受注実績などをもとに長期的な需要を予測して立案されます。

具体的には、予測した需要量を達成するために必要な設備投資を計画する生産能力計画、新製品の開発計画、既存製品の改良計画、長期的な人員計画などが含まれます。これらをもとに中日程計画と小日程計画を立てていきます。

ステップ②中日程計画の作成

中日程計画は1カ月から3カ月ほどの期間を対象に立てられる計画です。実際の受注実績をもとに生産する製品とその生産量、日程を計画し、日々の受注状況に応じて週次や月次で見直しが行われます。

具体的には、月間の生産計画やシフトなどの人員計画、資材の調達計画、生産能力計画などが含まれます。

ステップ③小日程計画の作成

小日程計画は、1週間から1カ月ほどの短い期間を対象に立てられる具体的な作業計画です。大日程計画や中日程計画を達成するためにいつまでにどの作業を完了するかを詳細に計画します。

設備や人員の生産能力、生産ラインの稼働率、必要なロットなど現場のあらゆる条件を考慮しながら計画を作成し、現場の状況に応じて日次・週次で頻繁に見直しが行われます。計画立案のなかでも詳細で複雑なものになるため、小日程計画の立案には高度な知識が必要になります。

生産計画における課題

生産計画を立てても、状況は変わるため計画通りに作業が進むとは限りません。作業が遅れて納期に間に合わない、需要予測が外れて在庫過多・在庫不足が発生するなど、さまざまな課題が発生します。

そのほか、市場の動向や顧客の要望による納期変更などを生産計画にどう反映するかも考えなくてはなりません。状況に応じて計画を立て、柔軟に対応していくためには常に最新かつ正確なデータが必要です。

そこで、過去データに基づいた需要予測や生産能力を把握して生産計画の最適化を実現するためにMPSが重要になります。

ERPや生産管理パッケージの課題

ERPや生産管理パッケージに搭載されているMPS(基準生産計画)はMRP(所要量計算)を回すための計画という意味合いが強く、また画一的なBOM(部品表)に基づく計算を行うため、現場の実態が考慮されません(ここでいうBOMは、生産数やロットサイズを考慮したリードタイム計算をせず、また生産資源の情報がありません)。つまりMPS自体を正しく入力するための判断機能がないということになります。

不足している情報でMRPを回しても生産数に基づいたリードタイム計算がされず、負荷山積された生産計画を調整(山崩し)する手間が発生します。
正確なMPSを実現するために、内示情報や販売計画が共有されて、個別品目レベルまで落とし込まれた情報をExcel等で作成・管理し、確定内容をERPや生産管理にアップロードするなどして運用回避されているのではないでしょうか。
このような二重管理を解消するために需給計画や在庫計画を考慮し、MPSの「いつ、何を、どれだけ作るのか」を策定するために、生産スケジューラの活用が有効な手段となります。

需給/在庫計画に基づくMPS

MPSの対象品目をエンドアイテムやMPS対象品といいます。通常は最終製品ですが、中間品でもキーパーツやサービスパーツの場合があります。
実務的には製品別の大日程計画、中日程計画、小日程計画にあたりますが、ERPや生産管理パッケージでは、このMPSを基準としてMRPを展開することが多いため、システム的な要求としては、製造と原材料のリードタイムを合わせて最長の期間分のMPSが必要となります。
実務上の大日程、中日程計画については、製販会議で月単位の需要数、生産計画数を決める運用を行われているお客様が多いと思います。これをMPSとして登録する際に、それぞれのお客様によってポリシーがあるようです。例えば、7月の生産計画数に対しては下記のようなパターンを多く目にします。

  1. そもそも製販会議等が無く、受注予定をそのまま生産する
  2. 7月末までに生産できればよく、順番は工場に任せる
  3. 6月末には7月の生産計画数分の在庫を持つように、6月中に生産する

①は受注=MPSとすればよいケースであり、在庫を持たなくて良い受注生産や納期に余裕があるケースが該当しますが、代わりにキーとなる中間品がMPS対象になる場合があります。

②は需要の変動が小さいか、長納期で受注生産の色合いが濃く比較的高価なモノが多いケースです。

③は派生型も含めるとこのケースが一番多いと思います。短納期で需要の変動が大きく、特急飛び込みが発生し、扱っている品目数も多いイメージです。この場合によく耳にするのは、「需要予測が当たらないため在庫を持たざるを得ない」という工場側の愚痴であったりします。

海外製のERPにはMPSの機能としてタイムフェンスやATP、RCCP(ラフカットキャパシティプランニング:能力・負荷検証)等を備えているものもあるようですが、あまり有効に活用できているケースを耳にしたことがありません。

そもそも最初に製品の生産計画を立てるタイミングでは、上記の③のケースのように、引当元の需要と紐付いているわけではなく、月単位で目標とする在庫レベルを目指しつつ、直近では日々変わりゆく需要の変動に柔軟な対応が求められるため、なかなかパッケージの機能で対応できないのかもしれません。また、製品の計画タイミングで能力・負荷を検証するためには、一度MRPを回して各製造工程の生産計画まで落とし込まないと詳細の検証はできないにもかかわらず、ラフに検証するために詳細なマスタ設定が必要になるという矛盾もあります。

製販で合意したはずの月次生産計画ですが、工場側では実態として前月末に在庫を準備したり、経験則や統計値から独自の掛け率を持って安全在庫として余分に作り置きしたりするケースが多いと思います。このような状況への対応策としては、販売予測を単なる営業部門の目標も混ざった見込値ではなく、マーケティング部門やSCM部門といった関連する部門を横断することです。これにより正確な需要予測を行うことができます。

昨今のグローバル化や消費行動の多様化した社会において、特に工場側としては、需要の変動に強い仕組み作りが必要であることに異論がある方はほとんどおられないと思います。先に述べたとおり、変化に強くなるためにはすでに多くのお客様が行っているような、在庫で変動を吸収することが有効ではありますが、これも在庫が増えることによる外部倉庫費用の増加や置き場の問題、陳腐化のリスクが伴います。何より財務的に不健全な状態ですから、

在庫が少ないに越したことはありません。なるべく少ない在庫で、変化に強く、ということが求められるわけですが、業種や業界のポジションにより事情は様々で、どこのお客様でもベテランの生産計画担当者がこうした複雑な方程式に日々取り組んでいるのではないでしょうか。弊社でも今まで多くのお客様に生産スケジューラを導入してきましたが、実はこうした「一般的にはMPSを立案する部分での生産スケジューラ活用例」が非常に多いです。

生産スケジューラを活用した攻めの計画立案

生産計画業務は、需給調整、在庫計画や一部の物流在庫も含んだ広い範囲の業務知識が必要です。生産計画に使用する機能も、ERPや生産管理システムが持つ標準機能ではとても太刀打ちできません。そこで様々な要件にも対応可能で、汎用性も高く、プロトタイプを操作しながら業務要件を作りこめる生産スケジューラを導入することをお勧めします。

生産スケジューラと言うと、工程の日程計画のためのツールというイメージが強いかもしれません。実際、従来の生産スケジューラは、CRP(能力所要量計画)を行い、資源(設備や工員)の負荷調整・平準化を行う目的で利用されるケースが多く見られました。

しかしその汎用性の高さから、これまで述べたような様々な需給調整・在庫計画の実現や、複数拠点・物流拠点も含めたSCP(サプライチェーン・プランニング)が行える攻めの計画立案ツールです。クローバル化・ボーダレス化された事業環境にも対応していくためにも生産スケジューラを活用して、内示情報や販売計画をもとに、需給計画・在庫計画→MPS(基準生産計画)→MRP(所要量計算)→CRP(能力所要量計画)の流れで、より緻密な計画を立案する必要があります。

まとめ

弊社は、製造予算計画・需給計画・PSIなど、生産計画システム導入に関するノウハウを多数保有しております。生産スケジューラの導入・システム化をご検討される際には、ぜひシステムインテグレータにお問い合わせ下さい。

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