製造業において生産計画はとても大切なものです。たとえば、常に在庫に過不足がある、現場の作業員と仕入れ担当者の連携が取れない、納期に間に合わないといった問題で悩んでいる企業があるとすれば、それは適切な生産計画が立てられていないためだと考えられます。
生産計画には「どの製品を、いつ、どれだけ、いつまでに生産するのか」を計画することで、生産業務を効率化する意味があります。精度の高い生産計画であればあるほど、業務は効率化し、高品質・低コスト・短納期=QCDを実現することが可能です。
もちろん、それだけ重要な意味を持つからこそ、生産計画には難しさがあり、多くの担当者を悩ませているのも事実です。
今回は、製造業における生産管理の必要性と難しさ、期間別生産計画の種類や計画の立て方、より高精度で時間がかからない生産計画を立てるシステムについて解説していきます。
生産管理業務全体についてはこちらの記事で解説しています。
製造現場を支える生産管理とは?業務内容や効率化手法を解説
生産計画とは?
生産計画とは、販売計画や受注状況などをもとに立案される「どの製品をどのくらい、いつ生産するか」という計画です。製造業ではいかに生産計画を最適化してQCDを維持するかが課題となります。
生産計画の定義
日本工業規格(JIS)は、生産計画を「生産量と生産時期に関する計画」と定義しています。具体的には以下の3つを計画することです。
- 生産すべき製品の種類・数量・時期の計画
- 製品の生産に必要な原材料・部品についての計画
- 製造から出荷までの日程についての計画
簡単にまとめると生産計画とは企業の利益目的を達成するために必要な「どの製品を、いつ、どれだけ、いつまでに生産するのか」を計画することになります。
生産計画の必要性と難しさ
製造業において生産計画はとても重要な役割を持ちます。たとえば、無計画に各部門で勝手に製品を生産したり原材料を調達したり販売したりすれば、在庫を抱えたり原材料不足で生産が止まったりします。そのようなことが続けば赤字が続き企業は窮地に陥ることでしょう。
企業としてQCD(品質・コスト・納期)を維持し利益の最大化を実現するためには、生産計画に沿って各部門が連携して過不足なく業務を進めることが大切です。そういった意味で、生産計画は製造業務を進めるための設計図や道標のようなものであるといえます。
このようにとても大切な生産計画ですが、実際に計画を立てるのは簡単なことではありません。
- 市場動向を分析しどう計画に取り入れるべきか
- 資材調達先の選定やコストの見直し
- 販売計画を達成することができるのか
- 人員計画や原価計画を連動させることができるのか
- 生産現場の負荷をどのように軽減、調節するのか
- 不良品発生時の対応や防止策
など、他にも製造業務に関するさまざまなことを考慮したうえで生産計画を立てなくてはいけません。これらの問題や課題を解決して効率よく業務を行うためには、過去の実績等のデータを参照して計画を立てる必要があります。
ただ、参照すべきデータ量は膨大ですし、それらを分析して計画に盛り込むためには相応の経験やスキル、そして時間が必要です。また、データそのものが誤っていたり、人的ミスにより分析不十分になったりするリスクもあります。
このようなことから、生産計画は重要なものでありつつも大変難しい業務となっています。
生産計画の2つの手法
生産計画を立てるには「引っ張り方式」と「押し出し方式」の2つの方法があります。それぞれどのような手法なのか解説していきます。
引っ張り方式
引っ張り方式はPULL型ともいわれる手法です。製品の製造量や納期を工程の下流側から上流側に指示する方法です。たとえば顧客から受注した量や納期に合わせて生産計画を立てるやり方で、過剰在庫が出にくいというメリットがあります。
押し出し方式
押し出し方式はPUSH型ともいわれる手法です。引っ張り方式は引き取り生産という方法ですが、こちらは押し込み生産のために生産計画を作っていきます。
押し込み生産とは、まず生産計画を立ててそれをもとに作業計画を立てて生産を進めていく方式です。工程の下流側のニーズに関係なく、生産計画通りに淡々と生産していくことから押し出し方式と呼ばれています。
引っ張り方式と違って、事前に決めた生産計画通りに業務を進められる点が大きなメリットです。その代わり過剰在庫が出やすく、コントロールしないと無駄なコストがかかるのが欠点です。しかしこの欠点については、生産スケジューラを導入することで解決可能です。
ステップ別に解説!生産計画の立て方
製造業において生産計画はとても大切なもので、時間をかけてでも適切なものを作成しなくてはいけません。生産計画をよりスムーズかつ誰でもわかりやすく確認できるようにするためには、期間別に計画を立てる必要があります。
実際に生産計画は「大日程計画」「中日程計画」「小日程計画」に分けることができます。ここではそれぞれの生産計画の立て方とその目的についてご紹介していきます。
期間別生産計画とは
生産計画と一口にいっても実は「大日程計画」「中日程計画」「小日程計画」の3つがあります。「期間別生産計画」とはこれらの総称です。
生産計画を立てるためには、まず企業のビジョンや利益目標などを決定しなければいけません。そして企業の目的を達成するために、過去の実績等の参照や顧客ニーズの把握によって需要の予測を行い、根幹となる生産計画を立てていきます。
そもそも生産計画というのは製造を行ううえでの予定表であり、それに従って資材を調達し、製品を製造し、需要を見て販売が行われていきます。
各担当者は生産計画に従って、期間ごとに予定が達成できているかをチェックし過不足があればそれに対応していく必要があります。期間ごとの予定やその進捗具合を明確にするために、期間別生産計画では「大日程計画」「中日程計画」「小日程計画」をそれぞれ考えなくてはいけません。
大日程計画の立て方
大日程計画は一般的に3ヶ月~1年間の生産計画の根っことなる基本方針を計画するものです。過去の実績をもとにして時期による受注量や可能な納品量を予測したうえで計画を立てていきます。
- 予測した生産量を達成するために必要な設備投資計画
- 売上向上のための新製品の開発や現行製品の改良計画
- 上記を達成するために予測される長期の人員計画
このように大日程計画では生産計画のおおまかな枠や方向性を計画します。予測と大きく外れたり状況が変化したりすれば見直しを行います。
中日程計画の立て方
中日程計画は一般的に1~3ヶ月程度の生産計画です。顧客から受注した内容によって製造量やペースを決定し、毎週~毎月見直しが行われます。
- 現場の生産能力計画
- シフトを含む人員計画
- 月別の生産計画
- 原材料や部品の調達計画
これらは受注した内容をもとに計画した製造量を達成するために立てられる計画です。
小日程計画の立て方
小日程計画はその名の通り1週間~1ヶ月間という短期の生産計画です。毎日~毎週確認し、都度見直しされます。
小日程計画が大中と大きく異なるのは、これをもとに作業を進めていかなければならないという点です。そのため、具体的な作業内容や完了日まで細かく決定される必要があり、設計も複雑化します。
- 現場の設備や人員といった生産能力
- 現実的な生産性
- 使える治工具
- 稼働できる生産ライン
- ロットの分割と統合
- ロット番号について
- 製造条件
など、小日程計画ではより細かなところを考慮して計画を立てるため、高度な知識や経験が求められます。
生産計画の作成時に注意すべきこと
生産計画は企業の利益を達成するために作成されなければなりません。しかし、理想だけの机上の空論では、計画通りに進めたとしてもいずれつまずいてしまうことでしょう。
実は生産計画を作成するうえではいくつかの注意点や知っておくべき課題があります。
そもそも、生産計画を「大日程計画」「中日程計画」「小日程計画」と分けるのには理由があります。実は生産業務を進めるうえではさまざまな課題があり、効率化を図るためには生産計画を期間別に分けなくてはいけないのです。
具体的な生産業務における課題には以下のようなものがあります。
- 各生産現場の負荷を調整し改善しなければいけない
- 納期変更に柔軟に対応しなければいけない
- 販売計画、在庫計画、購買計画、人員計画、原価計画などと連携し合い調整しなければいけない
- 不良発生など品質に問題が起きた際の対応や改善をしなければいけない
生産計画を立てるうえではこのような課題を考慮する必要があります。他にもさまざまなトラブルや課題をどのように対処すべきか考慮しなくてはいけません。
このようなことから、生産計画を立てるうえでは計画を3つの期間に細分化し、過去のデータを参照しながら、それぞれのタイミングで起こりうる課題への対処・対策を立てていくことになります。
生産計画の運用精度を上げ、効率化するには?
生産計画は企業の目的を達成するために過去の実績の参照や、将来の予測などを通して計画された、製造業務に必要な予定表です。
実際に運用してみると上記で説明したようなさまざまな課題に直面してしまうものです。過去の実績通りに必ずしも進むわけではありませんし、将来のことは誰にもわかりません。だからこそ、その都度、見直しを行い微調整する必要があります。
しかし、生産計画の立案には過去データの参照に時間がかかり、分析し計画に織り込むには担当者に経験やスキルが必要です。人力で何度も細かく見直すのは現実的ではありませんし、見直し回数が増えるほど人的ミスが生じやすくなります。
そこでおすすめなのが生産スケジューラの導入です。生産現場における工程計画を立案し、調整できるシステムで、近年では多くの企業で導入が進められています。
生産スケジューラの活用が有効
生産計画は製品の製造を進めるうえで大切な予定表ですから、より的確で達成できるものであるとともに、発生した課題への対処ができるものである必要があります。そのため、過去の実績や現場生産リソースを分析し、有効に活用できる経験やスキルがないと生産計画を立案するのは難しいのが現状です。
そうした経緯から、近年ではより適切に生産計画を立てて運用するための手段として、生産スケジューラを導入する企業が増加しています。
生産スケジューラとは生産現場における工程計画を立案し調整できるシステムです。生産管理システムも同様のことが可能ですが、生産スケジューラはより精度の高い生産計画が可能です。分単位はもちろん秒単位での工程管理を行うことができ、個々の設備・工具・人員などを指定して自動的に立案可能です。
実際に、生産スケジューラでは用意した計画を実行しつつ、課題が発生すれば手動で調整が可能です。短いサイクルでの効率的な計画の見直しによってアジャストできることから、より現場向きのシステムであるといえます。
大日程計画・中日程計画・小日程計画といった期間別生産計画はその期間や内容こそ違うもののそれぞれが影響を与えあうものです。そのため、人の手によって作成され万が一ミスがあった場合は、全てのバランスが崩れて生産計画そのものを見直さなければならなくなります。そうなれば、製造業務は生産計画の大々的な見直しが完了するまで一時的に止まることになり、企業の利益を損なうことになるでしょう。
そういったリスクを最小限に抑え、生産計画をよどみなく進めるためにも生産スケジューラの導入を検討すべきではないでしょうか。
まとめ
生産計画は、製造業にとって製品の生産を効率的に行うためにも必ず必要なものです。適切な生産計画を立案できれば、QCD(品質・コスト・納期)を最適化させることができ利益も出しやすくなります。
とはいえ、実際に生産計画を立てるためには3種類の期間別生産計画を立てなくてはいけません。それぞれの整合性や連携の取れた計画を立案するには、担当者の経験やスキル、そして多くの時間が必要です。さらに、人的ミスなどのリスクもあります。
そうした属人型の生産計画における課題やリスクを軽減し、効率的な生産業務を進めるうえで役に立つのが、生産スケジューラです。
生産スケジューラは実態にあった生産計画を立てて、SCMを効率化し、生産現場の実態を反映させることのできるツールです。総合的な生産管理システムよりも細かく精度の高い計画をリアルタイムに立てることができ、現場向きのシステムといえます。
Asprovaの生産スケジューラならば製造業のQCDを維持・向上させ、利益を最大化させることが可能です。興味がありましたら、ぜひダウンロードしてみてください。
- カテゴリ:
- キーワード: