生産管理では、生産業務全体を円滑に行うために適切な生産計画が立案されなくてはいけません。QCD(品質・コスト・納期)を維持するためには、生産計画に沿って原材料の調達を行い適切な設備や人員を手配し、工程管理・品質管理などさまざまな管理業務をこなす必要があります。
中小規模の製造業の場合、生産管理をエクセルにて管理しているケースが珍しくありません。エクセルはほぼどの企業でも導入されていて、社会人であればほぼ誰もが使ったことのあるソフトのため利用しやすいものです。実際に、エクセル管理にはさまざまなメリットがあります。しかし、本当にエクセルで生産管理業務をこなすことができるのでしょうか。
今回は生産管理業務のうち、生産計画をエクセルで行うメリットやデメリットを徹底的に洗い出していきます。また、専用ツールならではの優位性についても解説していきます。
生産管理業務全般についてはこちらの記事で解説しています。
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生産計画全般についてはこちらの記事で解説しています。
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生産管理における生産計画とは
生産管理とは需要の予想や資材の調達、現場リソースの把握、品質管理、在庫管理、工程管理など製造業務に関するさまざまな管理を行うものです。
生産計画とはこうした生産管理のなかのひとつであり、管理を進めるうえではじめに立てられるべき計画で、製造業の生産の根幹・設計図となるものです。「どの製品を、いつ、どれだけ、いつまでに生産するのか」を明確にすることで、原材料の仕入れや製造ライン・人員の確保などをコントロールしていきます。
生産計画を立てる重要性
生産計画は生産管理をするうえで確実に必要となる計画です。極端な話をすると、生産計画がまったくなされなかった場合、製造部門は勝手に製品を作りますし、調達部門は必要以上に資材を仕入れてしまうかもしれません。生産計画という製造業務に関する設計図がなければ、無駄な生産や浪費を繰り返してしまい経営は成りたたなくなってしまうことでしょう。
そういった各部署間でのズレを防ぎ、無駄を省くために生産計画は必要とされています。適切に資材を調達し、確実に生産を行い、在庫に過不足のない状態を生み出し、販売までスムーズに進めていくという、当たり前でありながら利益をあげるために必要な役割を、生産計画は担っています。
生産計画をエクセルで管理するメリット・デメリット
生産業務をスムーズに行うために重要な役割を持つ生産管理は、エクセルで行うこともできます。実際に、小規模の製造業ではエクセル管理が主流ですし中規模であっても利用しているところは少なくありません。
エクセルによる生産計画の管理には、どのようなメリットやデメリットが存在するのかご紹介します。
エクセル管理のメリット
まずは生産管理でエクセルを利用するメリットについて簡単に説明していきます。
慣れていて使いやすい
エクセルはビジネスパーソンであれば誰でも日常的に使うものであり、慣れていて使いやすいという点が最大のメリットです。新入社員でもGoogleスプレッドシートの使用経験がある人も多く、完全な未経験でも簡単な操作方法であれば業務の合間に教えることは難しくありません。
このようなことから、専用の生産管理システムと比べてエクセル管理は「教育が不要」または「学習負担が少ない」ために教育コストを大幅に削減できるメリットがあります。
安価もしくは追加費用が不要
エクセル管理はローコストであることもメリットのひとつです。
というのも、Officeソフトはいまやほとんどの企業で導入されているため、追加費用がかかりません。未導入であったとしても、たとえばMicrosoft 365 Business Standardであれば、2021年現在、1ユーザーあたり月額1,360円で導入可能です。
いずれにせよ専用の生産管理システムを導入するよりはコストを抑えることができます。
マクロで高度な自動化も可能
エクセルはVBAマクロによって自動化を行うことができます。
たとえば、業務でよく行われる操作を自動化することで業務を簡略化することができます。VBA自体は専門的にプログラムを学んだ人だけでなく、独学による学習でも身につくものです。スキルによってはさらに高度な自動化を行うことができ、エクセルによる生産管理を効率化可能です。
他ツールと連携しやすい
エクセルは他のツールと連携しやすい点もメリットです。
エクセルはインターフェースが多数あり、他ツールとの連携がしやすい特長を持ちます。たとえば他のツールやシステム上のデータを取り込んで処理し、表にしてまとめることができます。逆にエクセルファイルを出力して他のツール上でデータを利用するといった連携・相互利用もスムーズに行いやすいのです。
エクセル管理のデメリット
エクセルによる生産管理には多数のメリットがありました。もはやエクセルだけで十分なのではと思うかもしれません。しかし、エクセル管理にはメリットと同じだけデメリットも存在しています。
エクセル管理のデメリットや問題点をまとめていきます。
同時に編集しづらい
ローカル環境に保存されているエクセルファイルでは同時編集ができません。この特徴は生産管理をするうえでひとつのデメリットとなります。
現場において社員の誰かがエクセルファイルを開いてスケジュールの確認を行っている場合、他の社員は編集を行うことができません。万が一ファイルを開いたままパソコンの前から離席してしまうと、生産管理が一定時間滞ってしまいます。
Microsoft365を導入し、ファイル管理をクラウド上で行う運用を徹底できれば同時編集は可能になりますが、そうでない場合複数人での作成、メンテナンスが非効率となります。
バージョン管理がしづらい
履歴管理がしにくい点もエクセル管理のデメリットです。
ファイルをクラウド上や社内インフラ内にて複数ユーザーで共有している場合、最新のファイルが見つからなくなるといった問題が発生することがあります。
たとえば、社員ごとに異なるファイル名で保存してしまったり、更新を反映しなかったりする場合です。このようなケースでは管理用のエクセルファイルが乱立してしまい、どれが最新かつ正しい情報なのかわからなくなります。
履歴も追いにくくなることから、生産管理を滞らせる要因となるでしょう。
データが大きくなると処理が重くなる
生産管理データが蓄積するにつれて処理速度が重くなる点も、エクセル管理のデメリットです。
エクセルはクライアントPC上で動作するソフトであり、その操作性はPCスペックに依存します。作成当初は処理が軽かったファイルも、管理期間が長くなりデータが蓄積されるとファイルを開くのにさえ時間がかかるという事態が発生することがあるのです。
また、同様に効率化を目指してマクロを多用した影響で処理が重くなる場合もあります。
この問題を解決するためにはハイスペックPCの導入しかなく、余計なコストをかけることにつながる可能性があります。
属人化するおそれ
マクロによって自動化できることはエクセルの強みですが、その一方で属人化によるデメリットも潜んでいます。
VBAマクロによって作られたプログラムの設計図は多くの場合、アウトプットされることはなく、作成した社員の頭の中にのみあります。製造現場での管理用マクロはパソコンが得意な人物が個人的に作る場合も少なくなく、設計図を残さないことは珍しくありません。
作成者のみしかプログラム内容を知らないということは、管理用マクロの修正やアップデートはその本人以外行えないということです。万が一作成者が退職または長期休暇をとってしまった場合、プログラムに問題があっても対処できず、生産管理を行えない事態が発生してしまうのです。
属人化はエクセル管理における大きなデメリットであり、生産管理を破綻させかねないリスクでもあります。
生産計画はエクセルよりも専用ツールが便利!
エクセルによる生産管理はメリットも多く、たとえば町工場のような規模の小さい製造業であれば十分に機能することでしょう。管理する項目が少ないためデータ蓄積による処理低下は感じにくいですし、従業員数が少なければ同時にファイルを開くこともあまりないためです。むしろ規模が小さい場合はエクセル管理の方が良いとすらいえます。
しかし中規模以上の生産現場では、エクセル管理によるメリットよりもデメリットの方が強調されやすくなります。管理項目が多く処理が重くなったり、部署間で同時にファイルを開いてしまったり、ファイルが乱立してしまったりとさまざまな問題が発生しやすくなります。
このようにエクセルによる管理が難しい中規模以上の生産現場では、専用の生産スケジューラや生産管理システムの導入をおすすめします。
エクセル管理にあるデメリットの回避だけでなく、専用ツールならではの特徴やメリットで生産業務を効率化することができます。適切な生産管理を行うことで、QCD(品質・コスト・納期)の維持・向上を図りつつ企業の利益目的の達成が実現可能です。
生産スケジューラによる管理
生産スケジューラは、生産現場における工程計画を細部にこだわって適切な立案を行うシステムです。
生産スケジューラは最小で秒単位での工程管理を行うことができ、細やかな管理を実現します。多くの現場で多品種少量生産が増え生産計画が複雑になってきた昨今、細やかな管理を行える生産スケジューラは現場向けのシステムとして有効です。
生産管理スケジューラにはさまざまなメリットがあります。細かく管理することができるため、余剰在庫を極限まで減らすことができ、キャッシュフローを改善できます。さらに秒単位で作業管理できることから短納期も実現可能となり、競争優位性を保つことができます。
スケジュール管理が容易であることも生産スケジューラのメリットです。現場関係者は誰でも簡単に生産スケジュールを確認でき、納期変更などによるリスケジュール・再計画も対応可能です。さらに細やかなシミュレーションが可能であり、信頼性の高い納期を顧客に提示できる点もメリットといえます。
生産現場をリアルタイムに可視化できるのもメリットといえるでしょう。現場の進捗と予定しているスケジュールの状況を可視化することができ、管理者はもちろん作業員たちも的確に業務を遂行できます。
このように生産スケジューラには専用ツールならではのさまざまな特徴とメリットがあります。エクセルによる管理では物足りないと感じる中規模以上の製造業であれば、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
生産管理システムによる管理
生産管理システムは生産スケジューラよりも多機能で、生産計画や工程管理、原価管理や需要予想、在庫管理などさまざまな生産管理業務を幅広く行えます。
生産管理の専用ツールであり、人的ミスがなくなり適切で確実な管理を行いやすい特長を持ちます。将来的な事業拡大を目指していたり、QCDの維持向上を達成したいと考えている企業にとって、生産管理システムは大きな力を発揮することでしょう。
生産管理システムも多くのメリットがあります。たとえば、原材料の調達タイミングを最適化することができ、納期を結果的に短縮することが可能です。資材の手配漏れ・誤発注といった人の手では発生しやすかったミスも、生産管理システムであればまず起きません。
規模の大きい生産現場では、生産工程の数が増えることで工程ごとに発生している負荷を把握できないことがあります。しかし生産管理システムを導入すれば、生産拠点間でリアルタイムに情報共有できるため、負荷の偏りをなくすことが可能です。
また、生産工程全体を管理し可視化できることから、生産現場で発生していた問題の早期発見やその改善ができる点も生産管理システムのメリットです。
他にも不良が発生しやすい工程を明確にすることができ、不良率の改善や防止策を速やかに進めることもできます。在庫も可視化できるので、余剰生産をなくすとともに生産不足を防ぐことも可能です。これらのメリットは製造する製品の高品質化・低コスト化・短納期化を助け、企業が目標とする利益達成を実現することにつながることでしょう。
このように生産管理システムにも管理専用ツールとしての特徴とさまざまなメリットがあります。QCDを最適化し利益を高めるためにも、ぜひ導入を検討してみてください。
まとめ
エクセルによる生産管理は低コストで手間がかかりにくく、さらに必要な部分を自動化できるなどさまざまなメリットがあります。しかしその一方で同時編集ができず、扱うデータ量が増えるほどに処理が低下し、属人化によるリスクなどもデメリットとして存在しています。
小規模な製造現場であればエクセル管理はメリットを享受しやすいかもしれません。しかし中規模以上かつ将来的に利益を高めていきたいと考えている企業であれば、エクセル管理はデメリットが強調され、使い物になりません。
中規模以上でQCDの維持・向上を図り、利益追求を実現したいとお考えであれば現場向きの生産スケジューラや総合的な管理を行える生産管理システムなどの専用ツール導入をおすすめします。
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