生産管理は製造の現場で活躍する重要な仕事です。生産管理の仕事が行われているからこそ、世の中にさまざまな製品が出回っているといってもいいでしょう。
しかし、生産管理がどのような内容の仕事なのか、イメージしにくい人も多いかもしれません。ここでは、工場の生産管理という仕事について、具体的にどのようなことを行うのか紹介していきます。
生産管理業務全般についてはこちらの記事で解説しています。
製造現場を支える生産管理とは?業務内容や効率化手法を解説
生産管理とは?
生産管理とは、工場全体の生産活動を管理し、必要な数の製品が正常に生産されるようにするための仕事です。工場では、得意先企業からの発注に基づいて生産活動を行なっています。得意先企業から受注する際には納期が決められ、その納期に間に合うようにしなければなりません。
1日あたりどのくらいの数の製品を作ればいいのか、そのためには何時間機械を稼働させればいいのか割り出します。それに合わせて人員配置なども考えなければなりません。
きちんと納期までに、製品を納品できれば、生産管理の仕事が問題なく行われているということになります。
工場によって生産方式が異なる
工場と一口でいっても、さまざまな生産方式があります。生産方式が異なれば、生産管理の業務内容も違ってくるでしょう。
では、主な生産方式について説明していきます。
セル生産方式
セル生産方式は、少人数でチームを組んで、そのチーム内で1つの製品を作るという生産方式です。1つの製品を作るのに必要な作業を、完成までチーム内で一から行います。チーム内で全て完結するため、融通が利きやすいのが特長です。
途中で生産数を増減したり原材料を変更したりするようなことが比較的容易に行えます。また、チーム内のメンバーは自分の作業が役に立っていることを実感しやすく、モチベーションも保ちやすいでしょう。
ただし、大量生産にはあまり向きません。どちらかといえば多品種少量生産に向いているでしょう。
各メンバーのスキルや得意不得意などを見極めたうえで人員配置を行うのがポイントです。
ライン生産方式
ライン生産方式は、ベルトコンベアーで製品を移動させながら、流れ作業で製造する方法です。移動途中でパーツを取り付ける工程や組み立てる工程など、複数の工程があり、製造を行う作業員は、同じ工程の作業のみを行います。
同じ形の製品を作る場合によく採用されており、大量生産に向いているのが特長です。
ライン生産方式では、現状でどの程度の生産能力があるのか把握したうえで、生産計画を立てるのが管理のポイントです。生産計画への対応が難しくなった場合には、必要な人員の手配なども行わなければなりません。
ロット生産方式
ロット生産方式は、一度に製造可能なまとまった数をあらかじめ定めておきます。その数を1つの単位として、まとめて製造する方法です。そして、受注した分だけ製造するのではなく、受注前から製造しておき在庫として保管しておきます。
十分な在庫がある製品に関しては、いったん製造を中止して別の製品を製造するということも可能です。主に少ない生産能力で大量生産をする場合に行われます。
ロット生産方式では、製造する製品の切り替えのタイミングや、設備の使い方などが管理のポイントです。
個別生産方式
個別生産方式は、受注してから生産を始めるやり方のことです。オーダーメイド製作などが代表的な例で、同じ形の製品ではなく顧客ごとに異なる製品を作る場合もあります。
また、職人が手作業で行う部分が多いのが特徴です。価格の高い製品でよく採用されています。
個別生産方式では、迅速に原材料を調達して生産手配を行うことが管理するうえでのポイントです。
工場の生産管理における具体的な業務内容は?
工場の生産管理では、具体的にどのような業務を行うのか見ていきましょう。
需要を予測し供給量を調整
工場で生産活動をすることで、市場に製品が供給されます。しかし、供給された製品のうち全てが売れるわけではありません。多く生産しすぎると売れ残る可能性があります。そうなるとせっかく生産しても売上や利益にはつながりません。
逆に生産量が少ないと、売れるチャンスを逃してしまうことになるでしょう。そのため、自社で製造している製品の需要がどのくらいあるのか予測する必要があります。
需要を予測する際には、過去のデータや季節的要因などを分析します。例えば、冷たいドリンクなら夏場に需要が増えて、冬場に減るという具合です。例年と比べて暑いか涼しいかということなども考慮します。
また、競合他社の動向や景気なども重要です。競合他社で似たような製品を製造している場合には、その分も考慮する必要があります。景気に需要が左右されやすい製品もあるでしょう。
こうした需要の予測から、最適な供給量を割り出して調整します。
利益を上げるための生産計画をつくる
最適な供給量がわかったら、その分の製品を製造できるように生産計画を作ります。
そのために最初に行うのは、自社の現在の生産能力を把握することです。人員や設備などから、どのくらいの期間で製品をどのくらい製造できるのか割り出します。それをもとにして、いつまでにいくつの製品を製造するのか決めましょう。
原材料の調達や人員の配置なども必要です。原材料の調達が遅れると、生産活動がストップしてしまうため、無理がないように手配しておかなければなりません。
そして、最終的に利益を出せるかどうかという点が重要です。
製造を管理する
生産計画を立てたら、実際に生産活動を行います。生産計画通りに生産活動が進められるように管理するのが生産計画の役割です。
もし、生産計画と照らし合わせて遅れが生じているようであれば、その原因を探り解決方法を模索します。生産計画に無理があるような場合には、その見直しも必要でしょう。
また、製造を開始してから需要の予測が誤っていたことに気づくこともあります。そのようなときにも生産計画の変更が必要です。
製品の品質を管理・改善する
生産計画通りに生産活動が行われていても、不良品などができてしまう場合があります。不良品がそのまま出荷されてしまい、クレームがきてしまうこともあるでしょう。そのような場合には、不良品ができてしまった原因を探り、再発防止策を考える必要があります。
また、検品などにより不良品の発生を出荷前の段階で発見することも重要です。そうすれば、不良品が出荷されることがなくなるため、クレームの可能性を減らせることや、信用を高めることにもつながるでしょう。
工場の生産管理におけるポイントとは?
工場の生産管理を行ううえで、次のような点が重要なポイントになります。
生産方式に合わせて最適な管理を行う
工場によって生産方式はさまざまです。ライン生産方式で生産活動を行なっている工場もあれば、セル生産方式の工場もあるでしょう。生産方式が異なれば、最適な生産管理の方法も違ってきます。
例えばライン生産方式なら工場全体の動きを見ることが重要です。これに対して、セル生産方式では、少人数であるため従業員が1人減っただけでも進捗状況に大きく影響します。そのため、人員の確保や労働時間の調整などを重視しなければなりません。
手入力などミスが起こりやすい部分の排除
生産管理の仕事では、原材料の発注や在庫管理などを行う際に、データの入力を行うことがあります。入力されたデータに誤りがあると、生産量の調整や原材料の発注も誤った数値に基づいて行われてしまうでしょう。これにより生産量が多くなりすぎたり、逆に少なくなりすぎたりすることもあります。
こうしたミスをなくすことも生産管理の重要な仕事です。しかし、人為的なミスはどうしても起こってしまいます。複数の人が確認するなどの対策もよく行われていますが、それでもミスを完全に防止するのは難しいです。確認作業を増やせば時間もかかります。
そのため、手入力そのものを極力行わないようにするのがポイントです。例えば、バーコードやICタグなどを利用することなどが挙げられます。ミスが減るのに加えて、入力作業の負担も減り、時間短縮にもつながるでしょう。
トレーサビリティの確保
トレーサビリティというのは、製造の各工程から出荷されるまでについて記録しておくことです。何か問題が起こったときには、どの製造工程を誰が担当したのか追跡できるようにしておきます。そうすることで、問題発生の原因究明や再発防止に役立てることができるのです。
また、トレーサビリティを確保することで、問題発生時の被害拡大を抑えられる場合もあります。例えば、原材料に問題があった場合には、その原材料を使用して製造した製品を回収するという具合です。他の製品には問題がないことがわかれば、回収する範囲も最小限に抑えられるでしょう。
部門間での連携を円滑に
生産活動は1つの部門のみで行うわけではありません。実際に製造作業を行なっているのは、製造部門でも、営業部門や技術部門などが関わる面も多いです。そのため、部門間の連携が重要になります。
しかし、企業によっては部門間の連携が上手くいっていないところも少なくありません。部門間で対立しているような場合もあるでしょう。
そのような部門間の対立を緩和し、連携を取りやすくすることも生産管理の大事な仕事です。例えば、コミュニケーションを取るための環境を整備することなどが挙げられます。
部門間で協力し合って円滑にコミュニケーションが取れるようになれば、生産活動がスムーズにいくでしょう。
イレギュラーな事象への対処
製造の現場ではイレギュラーな事象が発生することも珍しくありません。例えば、注文の変更や取消などがあります。原材料の調達が計画通りにいかないこともあるでしょう。
そのような場合の対処法を考えるのも生産管理の役割です。会社の損失をできるだけ抑えるような対処が求められます。
生産管理の効率化にはシステムの活用が重要
生産管理の仕事は効率が求められる面も多いです。しかし、これまで通りのやり方で効率化を図るには限界があります。そこで、生産管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
生産管理システムとは
生産管理システムというのは、ITを活用して生産管理の仕事を行えるツールのことを指します。
生産管理の仕事では、幅広い情報を扱うでしょう。製造だけでなく検品や出荷、配送、原価、販売などに関することも行わなければなりません。在庫の管理や需要の予測など、非常に多岐にわたります。
一方で製造業では、情報の管理が業務プロセスごとに行われていることが多いです。情報を一元化することができず、それが原因で業務効率を改善できない面が見られます。QCD(品質・予算・納期)への影響も良くありません。
生産管理システムを活用することで、情報を一元的に管理することができます。これにより業務の効率化を図ることができて、QCDも改善できるでしょう。
ERPや生産スケジューラを活用
生産管理システムの中にも、さまざまなものがありますが、比較的導入しやすいのがクラウドERPです。
通常なら生産管理システムを導入する際には、社内で専用のインフラを構築しなければなりません。高額な導入費用がかかり、導入後は運用していくための人材も必要になります。そのため、中小企業の場合には導入が難しいケースもあるでしょう。
これに対して、クラウドERPはクラウド環境で利用できるという特長があります。インフラを構築しなくても導入できるのが大きなメリットです。
また、業務プロセスごとに必要なシステムが事前統合されている形で利用を開始できます。そのため、情報を一元的に管理できるのです。
生産スケジューラの導入もおすすめです。生産スケジューラを導入すれば、人員や設備などから実現可能な生産計画を立てることができます。イレギュラーな事象が起こったときにも、生産計画の変更など柔軟に対応可能です。時間がかかりすぎていないかどうかということも判別できます。
生産スケジューラを活用することで、生産活動における無駄を発見するのに役立つでしょう。これにより業務効率アップにつながります。
まとめ
生産管理の仕事は、工場内で生産活動が滞りなく行われ、納期までに製品を納品できる状態にすることです。具体的な仕事としては、原材料の調達から品質管理や需要の予測など多岐にわたります。
そして、生産管理を行う目的はQCDの最適化です。実態にあった生産計画を立て、SCMを効率化するためには、生産現場の実態を反映させることのできる生産スケジューラが欠かせません。
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