MES(製造実行システム)とは?生産管理に取り入れるメリット

 2021.05.04  株式会社システムインテグレータ

「日本の製造業は、IT・デジタルへの対応が遅れている」と指摘されることがあります。大量生産の時代が終わり、多品種少量生産が主流になるなか、生産工程の可視化や属人化の解消が求められるようになりました。

生産管理に「MES(製造実行システム)」を取り入れて製造プロセスを可視化すれば、特定の社員の属人的なスキルを社内全体に共有したり、「ヒト」「モノ」「時間」といった資源を無駄なく活用したりすることが可能となり、生産性の向上につながります。

本記事では、MESの概要についてや、生産管理において必要な理由とMESが備える11の機能、MESのメリットについて徹底解説します。

また、主なMESを紹介し、生産管理システムやERPとの違いについても説明します。

生産管理業務全般についてはこちらの記事で解説しています。
製造現場を支える生産管理とは?業務内容や効率化手法を解説

生産管理・生産計画デジタル化基本ガイド

MES(製造実行システム)とは?

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MES(Manufacturing Execution System)とは、製造工程の可視化・管理、作業者への指示・支援などを担う情報システムであり、日本語では「製造実行システム」と訳されます。なお、生産管理システムの一部としてMESの機能が提供されているケースもあります。

MESには、

  • 生産資源の配分と監視
  • 仕様・文書管理
  • 保守・保全管理
  • 品質管理
  • 作業のスケジューリング
  • 差立(作業手配)・製造指示
  • 作業者管理
  • データ収集
  • 工程(プロセス)管理
  • 製品の追跡と体系管理
  • 実績分析

といった11個の機能があります。

これらの機能によって、工場の生産ラインにおける各工程と連携し、生産性向上を実現します。

生産管理におけるMESの必要性

Young design team working at desk in creative office

製造業では、徹底的なコスト管理を実行し、生産現場を効率化して生産性を向上しなければなりません。そのために、「ヒト」「モノ」「時間」といった資源を状況に合わせて最適化する仕組みが必要です。

現在は、消費者のニーズが多様化しており、大量生産から多品種少量生産にシフトしているため、「どのような商品について、どのくらい量を、どれくらいの期間」生産するのかを迅速かつ正確に予測し、リソースを配分しなければなりません。

このような複雑な決定を人間の手で実行することは困難であるため、ITの活用が不可欠です。MESによって製造現場における個別の作業内容を細かく管理・可視化すれば、限られた資源から良い製品を、低コストで効率的に製造できるようになります。

MESが備える11の機能

Close up of businessman hand drawing business strategy sketches

アメリカのMES推進団体であるMESA International(Manufacturing Enterprise Solutions Association)は、1997に発表した「MESA-11 model」の中で、以下の11項目をMESの機能として定義しています。

1 生産資源の配分と監視(Resource Allocation & Status)

生産資源の状態を監視・管理し、予約・配分を実施する機能です。なお、この機能における「生産資源」とは、装置、工具、金型、設備、人材のように、製造後も残留するものを意味します。

2 仕様・文書管理(Document Control)

作業に必要な文書(指示書、レシピ、図面、手順書、仕様書、BOMなど)を蓄積したり編集したりする機能です。製造記録の管理も行われます。

3 保守・保全管理(Maintenance Management)

設備や装置、工具などの可用性を確保し、定期保全・予防保全のスケジュールを作成・実行する機能です。

4 品質管理(Quality Management)

生産に関わるデータをリアルタイムで収集・測定・分析し、適正な品質管理を行う機能です。

5 作業のスケジューリング(Operations/Detailed Scheduling)

生産計画に基づいて、詳細なスケジュールを立案する機能です。勤務シフトの作成にも対応しています。

6 差立(作業手配)・製造指示(Dispatching Production Units)

工程における作業の最適な順序を決定し、作業者に対して指示する機能です。なお、受注オーダー、ジョブ、バッチ、ロットなどの作業単位ごとに実行されます。工程内仕掛量を調整する機能を提供するMESも存在します。

7 作業者管理(Labor Management)

作業者の作業状況を監視・管理し、最適な作業割り当てを決める機能です。

8 データ収集(Data Collection & Acquisition)

各工程の進捗状況(誰が、いつ、何をやったか)を収集・分析する機能です。例えば、「作業に着手する際と完了した際に、指示書のQRコードやバーコードをスキャンする」といった仕組みによって、リアルタイムに情報収集が行われます。

9 工程(プロセス)管理(Process Management)

生産状況を監視し、作業者の判断・意思決定を支援する機能です。工程間制御やフィードフォワード、モデル予測制御といった高度なプロセス制御を実行したり、例外状況においてアラートを発したりすることも可能です。

10 製品の追跡と体系管理(Product Tracking & Genealogy)

仕掛品の追跡と次の作業(後工程)を把握する機能です。

11 実績分析(Performance Analysis)

過去の履歴や計画と比較して生産状況を分析し、レポート作成や進捗管理、出荷予測を行う機能です。

参考:「MESA Model」

なお、1~4は「モノの管理」、5~7は「ヒトの管理」、8~11は「全体の管理」についての機能となっています。MESは、これら11種類の機能によって、製造現場の可視化・効率化・最適化を実現します。

MESのメリット

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MES(製造実行システム)を導入するメリットとして、「生産における“無駄”の削減」「トレーサビリティの確保」「技能の伝承」の3つが挙げられます。以下、それぞれについて詳しく説明していきます。

生産における”無駄”の削減

MESを使えば、リアルタイムで作業状況の監視や在庫の把握を行えるため、生産現場(工場)における無駄を削減できます。突発的に在庫の増減が発生しても、フレキシブルに手配することが可能です。

また、蓄積されたデータから機器のトラブルや異常を発見することにより、不良品の発生を未然に防ぎ、製造コストを削減できます。

トレーサビリティの確保

MESでは、各工程の生産実績を把握しているため、設備、レシピ、部品、作業者などの状況をトレースできます。何か問題が発生しても、製品やその部品、原材料の流通経路をたどって生産段階まで追跡可能です。

技能の伝承

MESでは、製造するときに必要な情報を蓄積し、作業に関係する情報(作業手順や注意事項など)をシステム化できます。そのため、熟練作業員のみが把握しているノウハウ・技能を工場全体に共有することが可能になります。

属人的になりがちなスキルを可視化することにより、勘や経験で行っていた業務を平準化できるため、教育・訓練・研修に必要な時間も削減されます。

人手不足が叫ばれるなか、特定の個人に依存していた業務を全社員が実行できるようになれば、会社の利益拡大につながることでしょう。

おもなMESを紹介

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さまざまな企業から多種多様なMESがリリースされていますが、それらの中から3つをピックアップしてご紹介します。

NEC 製造実績 収集/活用ソリューション

NECソリューションイノベータ株式会社の「工場向けIoT・実績収集ソリューション」は、センサーを製造現場に置いたり貼ったりするだけで、さまざまな実績情報をきめ細かく収集できるMESです。大掛かりになりがちな工場の可視化・IoT化をコンパクトに実現し、品質を向上させたり、業務を効率化させたりすることを可能にします。

工場向けIoT・実績収集ソリューション

ecoLLabo MES

中央コンピューター株式会社の「ecoLLabo MES」は、多品種少量生産に適した柔軟な生産スケジューラ「FLEXSCHE(フレクシェ)」を使用したMESです。「実績収集」「ナレッジ蓄積」「データ集計」「可視化」といった機能により、製造工程のPDCAサイクル促進や、生産現場全体の最適化を実現できます。

https://www.chuo-computer.co.jp/solution/1001.html

EXPIO-MES

株式会社ケー・ティー・システムの「EXPIO-MES」は、ERPなどの基幹業務系システム、スケジューラー、各種周辺システムと連携し、「製販一体化」を実現するMESです。製造だけでなく販売・在庫も統合管理するため、市場ニーズに対する素早い対応が可能となり、在庫の過不足防止やキャッシュフロー改善につながります。

https://www.ktsystem.jp/service/expio

MESと「生産管理システム」「ERP」との違い

Young man holding opened book with glass glowing light bulbs flying out

製造業では、「MES」の他に、「生産管理システム」や「ERP」といったシステム・管理手法も利用されています。「どのような違いがあるのかよくわからない」とお悩みの方に向けて、各システムの違いについて説明していきます。

生産管理システムとは?MESとの違い

生産管理システムとは、生産に関わる情報(「納期」や「生産数量」など)を管理し、蓄積されたデータを用いて生産計画を立案するシステムです。なお、生産管理システムによっては、MESの機能が含まれているケースもあります。

生産管理システムとMESの違いは、対象とする業務範囲の広さです。生産管理システムが対象とする業務範囲は、「生産計画」「工程管理」「品質管理」「原価管理」といった製造プロセスに直接関係するものから、「受注管理」「在庫管理」「購買管理」といった製造前後のプロセスにまで及びます。

MESは「製造を実行するためのシステム」であり、「工場の設備・機械・原材料・仕掛品などの状態・数量をリアルタイムに把握し、生産計画に基づいて作業スケジュールを作成・調整して、作業者に指示を出す」ために使われます。範囲が重なっている部分もありますが、MESは「より製造現場の近く」で活用されるという点で、生産管理システムと異なります。

生産管理システムについてはこちらの記事で解説しています。
生産管理システムとは?メリット・機能・選び方を詳しく解説

ERPとは?MESとの違い

ERP(Enterprise Resource Planning、企業資源計画)とは、企業の基幹業務(生産部門や販売部門、会計部門、人事部門など)を支援する手法です。コンピューターによって実行されるものであり、「基幹業務総合情報システム」とも呼称されます。

なお、ERPは、1970年代に提唱されたMRP(Material Requirements Planning、資材所要量計画)が、1980年代にMRP2(Manufacturing Resource Planning、製造資材計画)に進化した後に、1990年代になって登場したという経緯があります。

MRPは商品を製造するために「必要なもの」を「必要なとき」に「必要なだけ」調達する生産管理手法です。MRP2はモノだけに着目した管理手法ではなく、総合的な視点でヒト、モノ、カネを管理して経営資源の最適化を実現する仕組みです。さらに、ERPにおいては、生産部門だけではなく、全基幹業務について経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を一元管理して、業務組織を横断して有効活用し、利益の最大化を目指します。

ERPは、経営層や管理層などが会社全体のリソースを最適化する目的で利用するものであり、トップダウン型の仕組みです。情報管理の粒度は、1日~1年という範囲です。

それに対して、MESは、製造現場におけるヒト、設備、モノの最適活用を目的としており、製造現場主体のボトムアップ型の仕組みです。情報管理の粒度は1秒~1日という範囲です。

ERPとMESは役割が異なるので、部門や役職に応じて適切なものを使いましょう。

まとめ

生産管理においては、MESだけではなく、他のシステムの活用も必要です。例えば、MESと生産スケジューラを連携させて工場の可視化を実現すれば、生産計画や生産実績を把握してPDCAを回せるようになり、MES単独よりも大きな効果を上げることが可能となります。

生産管理を行う目的はQCDの最適化です。実態にあった生産計画を立て、SCMを効率化するためには、生産現場の実態を反映させることのできる生産スケジューラが欠かせません。

Asprovaであれば、実態に合った生産計画を立案し、SCMを効率化し、生産現場の効率化・改善を可能にします。
詳しい資料をご用意していますので、生産計画に課題をお持ちであればぜひ御覧ください。


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