PLMとは?基本のシステムからIoT時代に必要とされる理由まで解説

 2022.12.14  株式会社システムインテグレータ

業務効率化やコスト削減を図る手段として、PLMを導入・実践する企業が近年増えています。昨今は製品の企画・製造などにAIやIoTなどの先進技術を導入する製造業者が増えており、PLMも導入事例が増えつつある先進技術のひとつです。

本記事では、PLMの概要や実施するメリット、およびITを活用したPLMシステムの特徴を解説します。

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PLMとは?

PLMとは?基本からIoT時代に必要とされる理由まで解説

PLMは「Product Lifecycle Management」の略語で「製品ライフサイクル管理」と訳されます。製品の企画から廃棄までのライフサイクルにおける情報を社内で管理・共有することで、業務効率の向上や利益拡大、開発コスト削減などを図る取り組みです。

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PLMという概念が最初に用いられたのは1950年代で、米国国防総省によって開始された構成管理がPLMの基になったとされています。また、一般企業では1985年から実施された説が有力で、製品の図面やデザインなどを企業内で共有し、業務効率の向上を図る取り組みなどが行われてきました。

製造業においては品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)を最適化する「QCD」の考え方が重視されています。特に近年は市場や社会の変化に伴って品質の高い製品を低コストで製造し、タイムリーに市場に出す重要性が高まり、企業全体で製品のライフサイクル全体を管理しなければならなくなりました。そこで製品ライフサイクルの管理に必要な機能を備えたPLMシステムを導入してQCDを向上し、競争力の強化を図る企業が増えています。

PLMとPDMの違い

PLMと同系統の考え方として、PDM(Product Data Management)というものがあります。PLMは製品の企画から販売・廃棄までのプロセスを対象とするデータ管理システムですが、PDMは開発・設計データの管理に特化したシステムであることが特徴です。

PDMは製品の開発・設計段階における業務効率化を図るという目的で開発されたシステムです。具体的にはCADデータや設計部品表といった成果物を企業内で共有管理し、設計業務の効率化を図るために活用されます。

ただし、ベンダーによっては本来の活用目的とは異なる生産・販売業務に対応するシステムとしてPDMを提供することもあります。PLMとPDMの定義はいずれも厳密には決められていないため、PLMの導入を検討する際には、製品の仕様を前もってリサーチしておくことが大切です。

PDMについては以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
関連記事:PDMとは?搭載機能や導入メリット、PLMとの違いまで徹底解説

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PLMを実施するメリット

製品ライフサイクルに関する情報を総合的に管理・共有するPLMを実施することで、製造業における業務効率の改善や品質の向上、コスト削減といったメリットを得ることが見込めます。ここではPLMを実施するメリットを具体的に解説します。

業務効率の改善

製品に関するデータを一括管理するPLMを実施することによって、原材料を発注するタイミングや製造工程の見直しなどの作業時間を短縮できます。近年はユーザーの多様化が進んでおり、短期間でトレンドが変わりやすくなっています。トレンドの移り変わりに対応する手段として、業務効率の向上につながるPLMの導入は有効な方法といえるでしょう。

また、製品に関する情報やフィードバックを会社の各部門で共有することで、仕様変更や改良にかかる時間を短縮できます。製品の企画から製造までのスケジュールを立てやすくなり、原材料の調達時期や製品の販売・撤退の時期を早い段階から策定できることもメリットのひとつです。

なお、PLMを導入する際には、過去に実施された提案や仕様変更の履歴データも共有管理を行う対象になります。図面作成に3DCADを活用する時代になってからはデータの数が大幅に増加しており、効率的にデータ管理を行う手段としてPLMを活用する企業が増えつつあります。

各部門が保有している製品情報を会社全体に共有することで、企画・開発・製造における業務効率を改善できることは会社にとって大きなメリットでしょう。製造業における企画から販売までのプロセスにかかる期間を短縮し、顧客のニーズに対応した製品を継続的に製造できる業務体系を構築できます。

品質の向上

近年は各業界で製品の高品質化が進んでおり、顧客のニーズに応えるために高品質な製品を継続的に供給することが必要とされる状況です。そうしたなか、工数の増大を抑えながら品質向上を図るためには、PLMの導入が有効な解決策になるでしょう。

企業内の製品情報を一元管理することで不具合の発見やフィードバックにかかる時間を短縮し、ワークフローの共有によって品質を底上げできます。

また、不具合修正や改良などをスムーズに進められる業務体系を構築できることもPLMを実施するメリットです。既存の製品情報や業務プロセスを組み合わせることで業務品質の向上を図るため、従業員にかかる業務負担を抑えながら品質向上を行えるのは、PLMならではの利点でしょう。

コスト削減

PLMを実施することで、製品開発にかかる人件費や材料費などを会社内で正確に把握・共有できるようになります。近年は高品質かつ低コストな製造・販売の実現が急務となっており、アウトソーシングやITツールを活用してコスト削減を図る製造業者が増えています。また、市場のトレンドが短期間で移り変わる業界では、PLMを実施することで企画・生産に使う費用や期間を抑える取り組みも重要になるでしょう。

PLMを活用してコスト削減を図る際には、製品の企画から販売・撤退までのタイミングを適切に見極めることが重要です。市場状況の変化に適切に対応するには、PLMを実施し、企画から保守管理までを短期間で行える業務体制を構築する必要があります。

価格調整や仕入れ費用、販売計画に関する見直しなどを適切な形で行い、PLMを用いたコスト削減を効率的に進めましょう。

システムとしてのPLM

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PLMは、マーケティングにおける製品ライフサイクルの概念を表している場合と、製品ライフサイクルを管理するシステムを指す言葉として用いられる場合があります。ここでは、主に製品ライフサイクルの管理に用いられるPLMシステムに関して解説を行います。

PLMシステムは、企業における製品ライフサイクルを総合的に管理することを目的としたシステムです。自動車製造業や医療機器製造業などの分野で導入されるケースが多く、製品開発から設計・製造に関する情報の共有管理を行える機能などを備えています。製造業において重視されるQCD(品質・コスト・納期)を向上させる手段として、PLMシステムを導入する製造業者が増えつつあるようです。

また、近年はクラウド技術を活用したPLMシステムが増えており、3DCADのデータやスケジュール情報などをオンラインで共有できるようになっています。セキュリティ対策が施されたサーバーを経由するため、通信環境が整っている場所であれば国内、海外を問わず安心して利用できることがPLMシステムの特徴です。

現在流通しているPLMシステムには、ポートフォリオ管理・要件管理・製品設計・CADデータ管理・BOMデータ管理・開発スケジュール管理・原価管理・取引先情報管理・サービス部品管理といった機能が搭載されています。ちなみに、BOMデータは部品表のことで、設計部品表はEBOM、製造部品表はMBOMと記述されます。

実際にPLMシステムを導入する際には、複数の機能を組み合わせて導入、運用を行うパターンがほとんどです。各部門の情報をネットワーク上で一元管理することで、データの追加や更新をリアルタイムで確認しながら作業を行えるようになります。ポートフォリオ管理やCADデータ管理といった機能を組み合わせて活用することで、継続的な業務効率の改善やコスト削減による品質向上、競争力強化といったメリットが得られるでしょう。

そして、PLMシステムを新規導入する際には、ERP(Enterprise Resource Planning)やALM(Application Lifecycle Management)といったほかの業務システムと併用することで、より効率的に製品ライフサイクルの管理を行えるようになります。

ERPは、生産活動に用いる人材や金銭などを管理するシステムです。ERPとPLMシステムを連携させることで、財務部門に対して開発スケジュールや必要なコストなどの情報をリアルタイムで共有できるようになります。ALMは、アプリケーションライフサイクル管理を行うシステムです。ALMとPLMシステムを連携させることで、ソフトウェアとハードウェアの開発部門がシームレスに連携を取れる環境を構築できます。

PLMシステムを導入する際には、利用目的に応じて複数の機能が組み合わせられているパッケージを選択することをおすすめします。導入初期は使い方やメリットを現場にアピールして、PLMシステムに対する関心を向上させることも重要です。

PLMシステムの種類

新しくPLMシステムの導入を検討する際には、自社がPLMシステムを導入する目的や必要とする機能に応じて、適切なパッケージを選択する必要があります。ここでは、現在流通しているPLMシステムを3種類ピックアップして、機能面における特徴をご紹介します。

シーメンス PLM

シーメンスPLMソフトウェアは、製造業における部門間連携を効率化するプラットフォームおよびソフトウェアの開発・提供を主なサービス内容としています。プラットフォームを活用して企業のデータを統合・再構築することによって、設計・エンジニアリング・製造の各部門が一体的に連携できる環境を構築することを目標としているプロバイダーです。

シーメンス社の主要なソフトウェア・ポートフォリオ・アプリ開発プラットフォームを統合したPLMシステムである「Xcelerator」は、電子設計の自動化(EDA)や製品ライフサイクル管理(PLM)などを総合的に実施できる機能を備えています。システム内に組み込まれているアプリ開発プラットフォーム「Mendix」を活用することで、プログラミングの専門知識を持たないユーザーでもIoTオペレーティングシステムを組み合わせたアプリケーションを開発できることが「Xcelerator」の特徴です。各種機能を組み合わせることで、経営層から制作現場までにおける業務自動化や情報共有がスムーズに実現できるでしょう。

SAP PLM

SAP PLMは6種類のパッケージを組み合わせて、ライフサイクル管理や製品の原価計算、CADデータ管理などを実施できる機能を備えているPLMシステムです。ポートフォリオ管理や原価管理などの各ジャンルに特化したパッケージを組み合わせて、業務効率の改善や品質向上などを図ることができます。

原価計算を行う際には、ほかのソフトウェアと連携することで柔軟に原価計算のシミュレーションを行えるようになっています。CADデータ管理を行う際にはデザインの3Dビューや部品表などを必要に応じて確認できるようになっており、直感的に操作しやすいインターフェースが特徴です。

また、各国の市場におけるコンプライアンス要件や規制対象物質も確認できるようになっており、国内市場から海外市場まで幅広い局面で活用できます。SAP PLMは海外をメインとして豊富な導入実績を持つPLMシステムをお探しの方には、ぴったりのツールといえるでしょう。

Windchill PLM

Windchill PLMは、製造業におけるコスト削減や業務効率の改善を目的としたPLMシステムです。提供されているパッケージは、比較的簡単に導入できる一般ユーザー向けと、高度な機能を備えたエキスパート向けの2種類に大きく分けられます。

一般ユーザー向けのパッケージでは、設計ファイルや図面などの共有、変更リクエストの申請・却下・レビュー、そして用意されたコンポーネントを組み合わせて必要なアプリを構築できるパッケージが3種類用意されています。使用できる機能を限定することで、システムに関する専門知識を持たないユーザーでもPLMシステムとして活用できるように設計されているパッケージです。

対してエキスパート向けパッケージは、CADデータの共有やドキュメント管理、ビジネスシステムの統合などが行えるベース版をはじめとして、3種類から選べるようになっています。上位版のAdvanced、Premiumでは、設計BOMの管理やCADデータ、ドキュメント、BOMのトレーサビリティといった高度な拡張機能を利用できることが特徴です。

まとめ

業務効率の向上やコスト削減を図る手段として、PLMを導入・実践する製造業者が増加しています。

また、製品ライフサイクル管理に役立つPLMシステムを開発・販売するベンダーも増えており、各業界で業務効率の向上やコスト削減、品質改善といった効果をあげている事例も出てきています。PLMシステムの導入を検討する際には、利用できる機能やシステムの扱いやすさを十分に比較してからパッケージを選択することをおすすめします。

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