ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)を導入することで、企業は多くの経営課題を解決できます。たとえば、統合されたデータによるリアルタイムな情報活用、業務効率の向上、経営品質の向上、意思決定の迅速化、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)など様々な恩恵を企業は享受することができます。複数の基幹システムが統合されたERPは、こうした課題解決を実現することで、企業成長に大きく貢献するため多くの企業から注目を集めています。
その一方で、ERP製品は、GRANDITやSAP、Oracleといった数多くの製品が存在するため、どの製品が自社に適しているか、どの製品がどれくらい採用されているのか気になるのではないでしょうか?
今回は、ERP製品の紹介とそれらERP製品の市場シェアについて、お話します。
ERP市場規模は堅調に成長
まず、ERP市場規模について紹介したいと思います。
ERP市場の企業による支出額は、堅調に増加しています。矢野経済研究所の調査では、2015年の国内ERPパッケージライセンス市場の成長率は8.0%増、2016年には1,130億4,000万円(エンドユーザ渡し価格ベース)で前年比は4.4%増と推移しています。
引用:EnterpriseZine「ERP市場、伸び率はやや減速、ERPパッケージベンダーにより明暗が分かれる傾向――矢野経済研究所調査」
[RELATED_POSTS]2015年の成長率が高かったのは「マイナンバー制度」の開始に伴うもので、各ERP製品がそれに対応したことによる大幅増でした。その後も伸び率はやや減少しているものの堅調に市場は増大しており、ERPは企業に必要不可欠なソリューションであることが証明されているのはないでしょうか。
2017年のERP市場規模は、前年比4.8%増で1,185億円(エンドユーザー渡し価格ベース)になると予測されています。
海外のERP各製品の市場シェア
それではERP製品の市場シェアについてご紹介します。
まず、世界のERP各製品の市場シェアは、以下のようになっています。
2015年世界ERP市場シェア
No. |
製品 |
前年比成長率 |
市場シェア |
1 |
SAP |
23% |
6% |
2 |
FIS Global |
-2% |
4% |
3 |
Oracle |
3% |
3% |
4 |
Fiserv |
3% |
3% |
5 |
Intuit Inc. |
3% |
2% |
6 |
Cerner Corporation |
38% |
2% |
7 |
Microsoft |
-5% |
2% |
8 |
Ericsson |
17% |
2% |
9 |
Infor |
-0.10% |
2% |
10 |
McKesson |
-4% |
2% |
小計 |
8% |
28% |
|
その他 |
-2% |
72% |
|
合計 |
1% |
100% |
引用:「Top 10 ERP Software Vendors and Market Forecast 2015-2020」
最も多くの市場シェアを獲得しているのは、大手ERPベンダーのSAPです。SAPは、世界で初めてERP製品をリリースしたベンダーとしても知られ、最初はメインフレーム(汎用機)用の製品を提供していました。その他、OracleやInforなど、大手ERPベンダーが高い市場シェアを獲得していますが、この数値からお分りいただけるように、各社とも熾烈な争いを繰り広げており、大差のないマーケット専有率であるということもご理解いただけるでしょう。
【中小企業・中堅企業】日本国内のERP各製品の市場シェア
一方、国内のERP市場シェアはというと、トップはSAPジャパンの「SAP ERP/SAP Business All-in-one」でシェア20.8%となっています。次いでOBCの「奉行 V ERP/新 ERP」がシェア17.8%、富士通の「GLOVIA smart/GLOVIA SUMMIT/GLOVIA ENTERPRISE」がシャア11.6%、日本オラクルの「Oracle Fusion Applications」がシェア9.2%と続きます。
引用:日経BP ITPro「 [データは語る]国内ERP市場、2015年までの累積導入ではSAPがトップシェア―ノークリサーチ」
このデータよりSAPやOracleといったグローバル企業が日本国内でも健闘しているものの、国産ERP製品が台頭してきていることがご理解いただけます。その理由として、日本独自の商習慣や法制度などにきめ細かく対応する国産ERPが不可欠となっているのです。
ERPの3つの種類
オンプレミス型
オンプレミス型とは、自社にサーバーを設置してシステムを構築する手法です。ゼロからシステムを構築するため、自社の業務に適したシステムを柔軟にカスタマイズすることが可能です。また、自社に設置するため一般的なインターネット環境と切り離すことができ、セキュリティを強固にできます。
しかしオンプレミス型の場合、サーバーなどの用意や構築をすべて自社で用意することになるため、導入コストは高額になりがちです。導入までに必要な期間も長くなり、自社の業務に最適化できる反面、一度導入してしまうとシステムの刷新がしづらくなってしまうという点もあります。
導入から日々の運用・メンテナンス、障害発生時の対応などもすべて自社で行うことになるため、専門的な知識を持った人材が必要不可欠です。
クラウド型
クラウド型ERPは、ベンダーがクラウド上に構築したERPを利用する方式です。すでに構築されたERPをサービスとして利用するため、サーバーの用意やソフトウェアのインストール、構築作業などの手間が不要です。そのため比較的短期間で利用を開始することができます。費用についても概ねサブスクリプションモデルでの提供がほとんどで、初期費用を抑えることができます。インターネット環境があればどこからでも利用が可能な点もメリットの一つです。
システム運用は提供ベンダーが対応するので、自社で対応する必要はありません。反面、セキュリティを含めシステム全体をベンダーに依存してしまう傾向にあります。また、すでに構築されたERPを利用する形態のため、カスタマイズ性ではオンプレミス型に劣ります。
ハイブリッド型
ハイブリッド型とは、クラウド型ERPとオンプレミス型ERPを組み合わせる概念で、採用する企業も増えつつあります。クラウド型とオンプレミス型にはそれぞれメリット・デメリットが存在します。ご説明した通り、クラウド型ERPの場合はセキュリティ管理についてもベンダーに依存してしまいます。重要性の高い情報については社内のサーバーで管理し、その他の業務面はクラウド型ERPを利用することで、セキュリティの担保と業務にあったクラウドERPの利用を両立させることができます。
最適なERPの選び方
自社の目的・業務への適合
ERP導入の際に一番重要なことは、「自社がどのような目的でERPを導入したいのか」という点を明確にすることです。ERPは高機能なものから、機能を抑えた低価格帯のものまで多数存在します。導入の目的を明確にし、適用範囲を適切に定めることで実際にどのような機能が必要なのかが分かります。必要な機能が明確になれば、ERPを選定する際にも明確な基準をもって取捨選択することができます。
また、ERPを導入する場合は既存業務の変更も必要になります。自社でゼロから開発する場合を除き、新たなシステムを導入することになるため業務内容をシステムに寄せる必要が出てきます。既存業務の変更は負担にもなりますので、業務にできるだけ適合したERPを選定するのが良いでしょう。
カスタマイズ性
ERPを選定する際はカスタマイズの自由度についても考慮する必要があります。業界によっては特殊な商習慣や業務内容があり、一般的なERPでは対応できない場合があります。
もちろん、特定の業種に特化したERPもありますので、できるだけ業務にあったERPを選定するのが良いでしょう。しかしどうしても難しい場合は、カスタマイズで対応する必要があります。ERPによってはカスタマイズが基本的にできないものもあるため、標準機の腕の対応が難しい場合はできるだけカスタマイズの自由度が高いERPを選定しましょう。
なお、カスタマイズや追加開発は、追加費用が発生したり、システムアップデートがうまくいかなかったりという問題が発生することもあります。カスタマイズによってどのような影響があるのかも事前に確認が必要です。
操作性のわかりやすさ
せっかくERPを導入しても、操作が難しいと現場に浸透しない可能性があります。システムが使いづらく、従業員が情報入力を後回しにしてしまうとERPの情報を最新に保つことができずに、当初期待した効果を発揮できなくなってしまいます。
そのため、ERPは機能だけでなく、現場に導入した際に従業員が使いやすいかどうかも重視しましょう。例えば事前にデモやトレーニングの期間を設けたり、新しいシステムを導入することの事前周知を徹底したりなど、従業員が受け入れる体制を作ることも重要です。社内研修の実施やマニュアル整備なども有効でしょう。いずれにしろ、新しいシステムを導入した際は業務が円滑に回るようになるまである程度時間が必要なことを認識しておきましょう。
サポート体制
実際にERPを導入し、運用を始めてから問題点に気づいたり、トラブルが発生したりする場合があります。そのような場合に十分なサポートを受けられないと業務に支障が出てしまいます。
データのバックアップやメンテナンス、トラブル発生時の対応など、ベンダーがどの程度まで対応してくれるのかを事前に把握しておくと安心です。
また、実際に稼働してから新しく機能を追加したい、カスタマイズをしたいといった場合もあるでしょう。ERPは長期運用することが多いシステムのため、トラブル対応や追加要望にも対応してくれる信頼できるベンダーを選定するのが良いでしょう。
コスト
現在は機能が豊富で高額なERPから、機能を絞っていて低価格なERPまで様々な種類のERPがあります。選定の際に大事なのは自社の目的を達成するために必要な機能が備わっているかという点と、それに対するコストのバランスです。ただ単に機能が豊富なERPを選定してしまうと、必要のない機能が多くて使いきれないのにコストだけ高くなってしまう場合もあります。
まずは自社が必要な機能を明確にし、その機能を保有したERPがどれくらいのコストなのかを比較してみましょう。マストな機能なのか、できればあると良い機能かなど、優先順位をつけておくとより選定しやすくなります。機能によってはライセンス費用だけでなく、カスタマイズ費用が必要になる場合もあります。
また、ライセンス費用は安いが、長期的に運用するとランニングコストの方が割高になってしまうというケースもあります。コストについてはライセンス費用だけでなく保守費用やカスタマイズ費用、ランニングコストなども踏まえて考える必要があります。
国産ERP「GRANDIT」について
いかがでしたでしょうか?
現在のERP市場は、世界・国内ともに、大手ERPベンダーであるSAPがトップシェアとなっており、その強さがうかがえます。国内においても海外製品であるSAP ERPが人気なのは、先進的な海外企業のモデル(ベストプラクティス)を、ERP導入によって取り入れられると考えているからです。
しかし、その一方で海外製品を採用した多くの企業が、高額なコストや使い勝手の悪さなどの問題に直面しており、ERPの導入計画が塩漬け、または使い切れずに国産ERP製品への入れ替えなどもしばしば発生しています。
システムインテグレータが提供する「GRANDIT」は、2004年7月にリリースされ、多くの日本企業のシステム環境を支えてきたERP製品です。
海外ERP製品ではカバーしきれない日本独自の商習慣に対応する「純国産ERP」として市場に投入されました。
GRANDITの特徴の一つは、ゼロベースから作られた「完全統合型」で非常にシンプルな構造になっています。経理、債権、債務、販売、調達・在庫、製造、人事、給与、資産管理、経費の計10個の業務システムから構成され、通常では他のツールと組み合わせて使うようなワークフロー、BI、ECなどの機能も標準で実装されています。
また、拡張性高いアーキテクチャのため市場には、GRANDITの対応範囲を拡張するためのモジュールやテンプレートが出回っています。それらを有効に活用することで自社のビジネスに適合する基幹システムを迅速に導入できるという特徴があります。たとえばシステムインテグレータでは製造業向け、IT企業向けのモジュール、テンプレートを用意しています。
もう一つの特徴は「Web-ERP」である点です。つまりGRANDITはクラウドERPのように、インターネット上で提供されるためクラウドERP同等の恩恵を享受できるのです。そのため、コスト低減に加えて、いつでも、どこでもオペレーションができることでワークライフバランスの実現や業務スピードの向上を強力に推進してくれるのです。
まとめ
ERP製品は国内製、海外製含めて様々な製品が存在します。このため、導入企業もERP選定の際に、迷ってしまうことも多いでしょう。
大切なことは、自社にフィットするERP製品を導入することです。そのためには、まず自社の要件を明確に定義した上でのERP選定が大切です。ERPは組織全体に影響をもたらす“基幹”システムだからこそ、各部門責任者を巻き込みつつ、ERP選定を行っていきましょう。
もし、ERPの導入をお考えの場合にはシステムインテグレータにお任せください。ERP導入検討段階から、導入、運用サポートまで一貫してご相談をお受けいたします。
また、国産ERPの特徴を調査、比較した資料もご用意してあります。ぜひダウンロードしてご覧ください。