本記事ではERPと生産管理システムの違いについて、解説していきます。
基幹業務を統合し社内の情報を一元管理し効率化を図るERP、生産工程を見える化し業務内容の改善や効率化を図る生産管理システム。ERPと生産管理システムはそれぞれ効率化を図るという観点で見れば、似たように見えますが実際には大きく違いがあります。それではいったい何がどう違うのでしょうか。
ERPと生産管理システムでできることを解説した上で、その違いや意味について整理していきます。どちらかのシステム導入を検討している方は、参考にしていただけますと幸いです。
生産管理システムでできること
生産管理においてまず大切なのが、「納期」、「在庫」、「工程」、「原価」の4つです。
多くの製造業が、生産管理部門で生産管理業務全般を行っており、企業規模が大きくなるほど複雑な作業になります。また、生産管理次第では、売上が大きく変わるため、経営課題として重要視している企業も多いでしょう。
しかし、生産管理を人力だけで正確に管理することは非常に困難であるため、効率的で精度の高い生産管理を実行できるようになる生産管理システムが必要になります。
生産管理システムでは、部品や材料の調達計画、製品の生産計画の作成、納期の達成率の予測や今後の売上計画、利益の計算など、製造管理の工程を一元化、かつ見える化することができます。
工程を見える化することで、業務内容の改善や効率化をすることが生産管理システムの役割といえるでしょう。
そもそも生産管理の目的は?
生産管理の目的は、質の高い商品をお客様に届け、継続的に収益を上げることです。
生産管理をすることで継続的に収益をあげるためには、商品が完成するまでの全工程において無駄なく効率化された生産プロセスを構築し、需要と供給を適切に整えなくてはなりません。
生産現場では、どの商品を、どのくらいの原価でいくつ生産するのかを厳密に計算し生産を行います。それらは、販売状況や経営状況にもとづいて練られた生産計画によって決められます。生産管理は重要な経営判断の一つでもあるのです。
商品は最終的にはお客様に満足していただかなければなりません。
お客様の満足度が高ければ、商品を継続して買っていただくことができます。
満足度にはQCD(品質、原価、納期)が大事であり、QCDを高めるためには、在庫を過不足ないように調整し、納期までに生産、納品することが重要になります。
その工程を管理し、QCDを高めて、お客様に満足してもらうことが、「生産管理」の目的になります。
生産管理する業務
生産管理の業務は多岐にわたりますが主に以下の4つです。
- 需要予測
- 生産計画
- 生産実行
- 生産制御
需要予測
「需要予測」は生産管理の最初の業務で、後の工程を決める大切な入り口です。商品の生産が決まった時に、その商品の過去の傾向、競合他社の動向、景気などの要素を踏まえて、需要の予測を行います。予測から外れてしまうと、在庫が不足したり、逆に余ったりして、利益が出にくくなってしまうので、需要の予測はとても重要な業務といえます。
生産計画
需要予測後には「生産の計画」を立てます。現在生産できる能力を把握し、どの商品をいつまでに何個生産するのか、必要な材料や仕入れ先など、製造を開始してから出荷するまでの日数を計算していく工程です。生産計画は、生産管理の部門以外とも連携しながら立てていかなければなりません。
生産実行
生産計画を立案後、生産工程に入ります。計画通りに生産ができているか、不良品は出ていないかなどを確認しながら管理や指示出していくのが大切です。生産実行においては、予測と計画の精度しだいなところがあるので、ここが上手くいくかどうかは前工程からの影響が大きいことを抑えておきましょう。
生産制御
とはいえ、生産実行時に、生産計画通りに進まない場合は起こりえます。そこで、生産制御をすることが大事です。生産の遅れがある場合は、原因を探して改善する、在庫が増えすぎた場合は、生産を減らして調節するなど、生産管理には臨機応変な動きが大切になります。
生産管理システムの一例
ここでは例として生産管理システムを2つご紹介します。
R-PiCS
R-PiCSはハイブリット型生産管理システムであり、受注生産、計画生産、個別受注の生産など、多くの生産方法に対応しています。共通部品、共通ユニットには一括管理機能がありつつ、オーダー別や個別の原価把握もすることができるでしょう。製品の増加も柔軟に対応できるため、業務の効率化を狙うことも可能です。
TPiCS
TPiCSは、頻度が高く量も多い生産、同じ商品だけれどカスタムなどで個別に受注する生産、個別に1つずつ受注する生産など、生産の方法はたくさんあります。
それらを1つのパッケージシステムで管理できるのが、「TPiCS」のfMRP製番管理です。
導入企業は1,971社、クライアント数は14,238台にもなる、攻撃型生産管理システムです。
ERPの目的とできること
ERPは、「Enterprise Resource Planning」の略で、企業資源計画のことを指します。企業の基幹となる業務、人事、会計、生産、物流、販売などを統合して管理し、効率化できるのがERPシステムです。
生産管理システムは生産管理に特化しているのに対し、ERPではその一機能として生産管理機能を備えています。
企業全体の情報が1つのデータベースとなるERPでは、手間のかかるビッグデータの分析も簡潔にできるでしょう。企業の情報が、ERPで解析、加工されて共有されるのです。
ERPの目的
ERPの目的は、企業全体の基幹業務を一元的に管理し、経営を最適化、合理化することにあります。また、ERPで一元的に管理することで、ミスや見落としなどを防いだり、データの作成時間などを削減したりできる可能性が高まるでしょう。
ERPは、基幹業務の管理の統合、人為的なミスや余分な時間の減少などによって、業務効率や生産性の向上にもつながります。基幹業務の管理システムは、それぞれ特徴が異なるため、お互いを比較することで経営を見直すことにもつながるでしょう。
ERPの特徴
ERPの特徴には以下の3つがあげられます。
- ミスを減らして業務効率をあげる
- ペーパーレス化できる
- プライバシー保護の強化ができる
業務効率化
ERPは企業全体の業務に関するデータを一元管理するため、入力ミスなどが起きにくく、正確な情報を保存することができるので、ミスを減らして業務効率をあげることにつながるのです。また、作業も自動化するため、従業員の作業や時間も削減でき業務効率や生産性も上げられるでしょう。
ペーパーレス化
セキュリティが備わっているERPを使用すれば、個人情報を集める際に紙で提出することや、保管に金庫を使ったりする必要がなくなります。税務調査に対応したERPであれば、多くの資料から必要書類を探し出す必要もありません。重要な書類も安心してペーパーレス化することができるでしょう。
プライバシー保護
企業には社員や顧客の個人情報など、プライバシーに関する情報も取り扱います。ERPでは、役職や役割に合わせて情報へのアクセス権も設定できるため、プライバシー保護の強化も可能です。
ERPと生産管理システムの違い
生産管理業務を効率化し、最大限の利益を生み出すのが生産管理システムです。生産の工程に特化しているのが生産管理システムだといえるでしょう。
一方、生産管理だけでなく、企業の基幹業務全体を一元化し、効率化や生産性を高めるのがERPシステムです。企業の業務全体をつなぐことで、経営状態を見える化するシステムだといえるでしょう。
ERPと生産管理システムはでは目的が全く違います。ERPの目的が「業務全体の効率化」である一方、生産管理システムの目的は「生産業務の効率化」です。ERPの中には生産管理システムも組み込まれていますが、生産管理システムにERPの性質はありません。
そのようなことから、ERPを導入することで、生産管理システムの機能もまかなうことが可能になります。
リアルタイムに経営判断を行うには、社内の業務全体を俯瞰的に可視化できる環境があると有利です。生産管理システムではなく、基幹業務を統合管理するERPシステムの方がより経営よりのシステムといえるでしょう。
ERPの基本機能についてこちらの記事で詳しくご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
ERP内の生産管理機能で不足はないのか?
結論から言うと、ERP内の生産管理機能だから機能が不足しているということはありません。ポイントは自社に必要な機能が揃っているか、になるでしょう。足りなければどちらもカスタマイズ等で補うという選択肢があるため、最終的には機能の充足度だけでなく、全体的な効果で評価する必要があります。
前述したようにERPは基幹業務全てを網羅しています。そういった観点ではむしろ生産管理機能の方が生産管理に特化したシステムのため、全体的な機能数は少ないと言えます。その理由は、生産管理を含めそれぞれの基幹業務は決して単一で稼働しているのではなく、他の基幹業務との連携によって行われるからです。
何か一つに特化している方が、目的を達成できるのではないかと考えてしまうかもしれませんが、こと基幹業務に関して言えば、統合され網羅された情報がある方が充実しているといえます。
しかし、ERPシステムの中には生産管理が充実しているものと、そうでもないものは存在しているので、導入する時には注意が必要です。例えば、ERPには「クラウド型」があり、安価に導入できると注目されているクラウド型は、使いやすさを向上させた半面、一部の機能に絞っている製品もあるからです。
このような課題を解決するには統合型のERPを選びましょう。
以下に、詳しく説明します。
クラウド型ERPだと難しい
低コストですぐ導入でき、いつでもアクセスできるクラウド型のERPですが、その分セキュリティに不安が残ります。まずクラウド型ERPのセキュリティは、データが外部のクラウド上で管理するため、企業側で管理することができません。
もちろんクラウド型製品もセキュリティ対策は行っているので、使用する際にはセキュリティ要件をよく確認しましょう。また、インターネットで簡単にアクセスできる分、インターネット環境がない場合は利用できないこともクラウド型ERPのデメリットになってしまいます。
統合型がおすすめ
そこでおすすめしたいのが統合型ERPです。統合型ERPをおすすめする理由は2つあります。
- 生産管理まで機能が網羅されている
- 密連携しているため、業務がスムーズ
クラウド型ERPはサービスとして多くの企業に導入してもらうことを想定しているため、どちらかというと汎用的な考え方で作られており、かゆいところまで手が届くかというと、そうではないケースも少なくありません。
一方統合型ERPは、幅広い業務領域をカバーしているだけでなく、企業個別の対応を想定しているため、生産管理機能を備えているのはもちろん、自社に合わせるカスタマイズを行うこともできます。
また、生産管理だけの個別システムではなく、会計や販売などの業務と密連携しているため、業務をスムーズに行うことができます。
カバーする領域が広い分、生産管理システム単独で導入する場合と比べると導入コストは高額になりますが、全体最適が必要な場合、統合型ERPの導入をおすすめします。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
本記事ではERPと生産管理システムそれぞれの特徴や違い、そしてそれぞれを導入した際に起こりえることを紹介し、最終的には統合型のERPをおすすめしました。ただ、今回はセキュリティ面に重きをおき、クラウド型ERPよりも統合型ERPがおすすめです。
この点については企業の目的や規模に応じて、自社にとって最適なERPを選択してください。どういった機能を重視し、コストや使用する目的によっても自社のベストは変わるからです。
そもそもERPだけでなく、中には個別に生産管理システムを入れるという選択肢もあるでしょう。
ただ多くの場合、生産管理業務だけで全体最適が業務改善に必要です。統合型Web-ERPのGRANDITは生産管理も含む全体最適のご提案が可能です。資料をご用意したので、ぜひご検討にお役立てください。