製造業において、生産管理システムを導入する企業が増えています。生産管理システムを活用すると精度の高い生産計画の立案も可能です。生産管理システムとは何か、またどのような業務効率化が実現できるシステムなのか、これから注目すべきIT活用法も含めて解説します。
そもそも生産管理とは?
製造業の企業では「生産管理部」などが置かれていることも多いでしょう。生産管理とは、生産計画に基づいて予定通りに製品が出荷できるよう体制を管理することです。ただ、生産管理の業務内容や役割については企業によって多種多様です。また体制の管理といってもその範囲は幅広く存在します。主な業務内容には次のようなものがあります。
生産計画
製品を生産するにあたり、原材料の調達から生産数量の決定まで、製品を作る工程を計画します。自社の製造ラインでどれだけの数量を生産できるのか計算することはもちろん、場合によっては、最終的にどのくらいの利益に結びつくのかも計画に盛り込みます。
需要予測
需要と供給の関係では、製造業は供給する側です。需要がないのに生産数量を増やしてしまうと、在庫過多となり利益が落ちてしまいます。需要に対して過不足が生じない数量を生産するために、需要を予測していきます。
品質管理
生産の工程は作って終わりではありません。製品の出荷後には顧客からクレームが入ることもあります。出荷後も品質の管理をするため、ロット番号や製造日時などで製品を区分して管理します。
生産管理システムの重要性
このような複雑かつ多様な生産管理の業務を支えるのが「生産管理システム」です。企業の利益を最大化するため、需要と供給のバランスを保ち、適切な数量だけ生産して供給することが求められています。そのためにも、精度の高い需要予測に基づいた生産計画を行うことが必要です。
生産管理システムでは、人間が手作業で計算することが難しい、過去の生産実績から見込み生産数量を計画する機能なども備えています。生産管理システムは、各生産ラインをシステムで結び情報を収集しています。そのため長期的な視点では、生産管理システムは生産現場全体の改善にも寄与します。
例えば、他のラインよりも生産数量が少ないラインがあったり、工程がストップしてしまったラインなどがあったりすれば生産管理システムに通知されます。これらの問題点を生産管理システムがリアルタイムに把握するため、すぐに改善に着手することができます。また、各ラインの稼働率や生産数量などの情報を蓄積していけば、生産現場全体のオペレーションを改善するために活用できます。
製造業におけるITの現状
総務省が発表した「平成30年版情報通信白書」では、日米のICT投資額の推移を発表しています。日本において、1994年から2016年にかけてのICT投資額は、1994年の14.6兆円から2016年では15.8兆円への微増でした。一方、米国は、2,024億ドルから5,755億ドルへと約20年で3倍程度伸びています。
また、中国でも2015年に「中国製造2025」という製造業発展の目標を掲げ、2025年度までに「世界の製造強国の仲間入り」を果たすべくIT化に取り組んでいます。今後もますますIT
化は世界各国で進むと予測されています。
他国と比較して日本は、IT化に出遅れていると言わざるを得ないのが現状です。日本の製造業においてIT化が進まない原因のひとつが、労働人口の減少とされています。以前にも増して労働力の確保が難しくなり、IT化を推進するための人材が不足している現状があります。IT化に消極的な企業も多くあります。
ただ、日本政府も国を挙げてIT化に取り組むべく、2018年には「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定しています。この計画は行政・地方・民間の3部門のデジタル改革を実現するための基本方針を定めたものです。
また、デジタル政策の一元化を担う組織として、日本政府は2022年を目標にデジタル庁の創設を目指していることも明らかとなり、さらなるIT化の加速が予想されます。
【参照】総務省「平成30年版情報通信白書」
製造業が今後注目したいIT活用法
IT関連のトレンドには様々な技術がありますが、製造業で特に注目を集めているのが「AI・IoT」・「ERPとMESの連携」・「エッジコンピューティング」の3つです。
AI・IoT
製造業において活用が進んでいるのがAI・IoTの技術です。AI技術を活用すれば、画像認識技術により製品の異常を自動的に検知することができます。例えば食品など、ひとつひとつ形状が異なる製品の検査では、これまでは目視で異常を検知する方法に頼っていました。AIに検知方法を学習させれば、人間が検査するよりも圧倒的に早く大量の製品を正確に検査することができます。
また、IoTは大規模な製造工場などではすでに浸透している技術です。例えば、各製造ラインをIoTで繋げば、異常停止したラインを即座に発見できたり寿命が来る前に交換する消耗品を準備したりできます。今後IoT技術がさらに発展していけば、これまでなかなか可視化が難しかったビッグデータの収集・解析が進み、活用や連携、管理が細かくできるようになります。
ERPとMESの連携
製造業に関わらず、販売・物流・財務・経理など企業内のあらゆる業務をつなぐ基幹システム(ERP)を導入する企業が増えています。さらに、製造業におけるトレンドとして押さえておくべきなのが、基幹システム(ERP)と製造実行システム(MES)の連携です。
製造実行システム(MES)は、生産ラインの情報を秒単位で収集し、評価や分析を行います。これは、製造品質の向上やコスト圧縮・納期短縮に寄与します。海外製造拠点の生産状況を把握することは困難ですが、MESを活用すれば海外拠点を細かくコントロールできます。
さらに、MESからのデータを日本国内拠点のERPに反映、データに基づいた指示をMESに返すという連携も行われるようになっています。
エッジコンピューティング
ユーザーのスマートフォンなど、インターネットに接続している機器上で情報を処理したり、ユーザーにより近いネットワーク上で情報処理をしたりするコンピューティングモデルが「エッジコンピューティング」です。エッジコンピューティングは非構造データや映像データなど、さまざまな種類のデータを収集・蓄積することがでます。
情報処理をクラウド上で行うクラウドコンピューティングでは、クラウドに転送するデータ量が膨大化するというデメリットがありました。また、クラウドにアクセスするまでに、数百ミリから数秒のタイムラグが発生します。
しかし、機器の近辺にサーバーを設置して分散処理できるエッジコンピューティングでは、発生するタイムラグは数ミリから数十ミリとなり、より高速な情報処理が実現できるため、リアルタイム性の高いサービスを提供できます。
また、クラウドコンピューティングではアクセスが集中した際に遅延や障害が起こることがあります。しかしエッジコンピューティングでは、データ処理をエッジ側に分散させて行うため、処理の遅延や障害を防ぐことができます。
このようにエッジコンピューティングは、クラウドコンピューティングでは難しかったリアルタイム性や高信頼性といった要求を満たすことができます。
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多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
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まとめ
製造業における生産管理は、かつては経験や勘といった職人技に頼る側面がありました。近年では、人材不足もあり生産管理システムを導入して業務効率化を図る企業が増えています。日本政府もIT化を推進する中、各企業においても生産管理システムや他のIT技術を駆使して効率化を実現するときが迫っているようです。