5Gの商用サービスが開始
2020年3月から、5G(第5世代移動通信システム)の本格的な商用サービスが携帯通信事業者4社(NTTドコモ、KDDIグループ、ソフトバンク、楽天モバイル)で開始されました。
便利になるのは分かるけど、5Gの本格的な利用・活用ができるのは、もっと先でしょうと思われる方もいらっしゃると思います。たしかに4Gまでの携帯電話では、経済効率性の高い都市部からネットワーク整備が始まり、地方での整備が後回しになってしまうことが問題でしたが、5Gは均等な全国展開を図るために携帯通信事業者で電波の割り当てを行われたことで、2021年4月10日までに、すべての都道府県でサービスが開始される予定です(閣議決定/未来投資戦略2018)。
5Gの特性
- 超高速・大容量
- 超低遅延
- 同時多数接続
5Gは上記3つの大きな特性を有していることはご存知の方が多いと思いますが、4Gと比較すると性能が格段に上がります(図1参照)。
4G |
5G |
機能差 |
|
通信速度 |
最大1Gbps |
最大20Gbps |
4倍 |
遅延速度 |
10ms |
1ms |
10分の1に短縮 |
同時接続数 |
10万台/㎢ |
100万台/㎢ |
10倍 |
図1 4Gとの機能比較
製造業で利用すれば、さまざまな機器と接続するIoT(Internet of Things)向けネットワークとして活用し、工場内のあらゆる機器がネットワークを介してクラウドなどに情報を収集、またカメラから取得された画像を超高速・大容量で送信できます。それらをAIで分析すると機器の状態を可視化することができ、設備の最適化を行え、工場内の生産性向上が実現できます。
生産性向上の例
1)エッジ・コンピューティングを活用した生産現場とリアルタイムな情報共有- 生産進捗管理
- 在庫情報管理
- 迅速なロットトレース
2)実績データを分析
- 機器の故障の予測や検知
- BOP(Bill Of Process)との実績比較によるライン構成や設備の条件の見直し
3)AIとの併用
- 画像による目視検査の自動化
- 画像によるアナログメーターの異常検知
5Gには上記3つの特性以外に、今後加わる新しい2つの機能があります。それはエッジ・コンピューティングとネットワーク・スライシングです。
エッジ・コンピューティング(MEC)は、図2のように、これまでの携帯通信において端末とネットワーク制御を行うコアネットワーク設備やインターネット上のクラウドサーバとの間で行っていたデータ処理を、端末側に近い基地局設備など、ユーザーに近い場所にMECサーバを設置することで、データ処理のレスポンスをさらに高めます。
図2 エッジ・コンピューティング
また、ネットワーク・スライシングは、無線通信区間を帯域分割するかのように、電波の一部を専用線的に利用できる仮想化技術です(図3参照)。5Gでは大容量の特性を活かし、無線通信区間をスライスしているかのように通信し、専用線的に利用できる技術が導入されることになります。
図3 ネットワーク・スライシング
いずれの技術も国際標準化団体である3GPPで技術的な仕様を策定している最中であり、2020年後半以降に5Gネットワークに実装されることが期待されています。
5Gのサービス展開
期待値の高い5Gですが、5Gの展開がいきなり4Gから5Gに切り替わるわけではありません。5Gはもともと4Gのネットワークから移行しやすいよう、4Gネットワークと連携する形で緩やかに5Gへの移行が進むノンスタンド・アロン(NSA)という方法により、2030年頃まで4Gと5Gが一部設備を共用して併存しながらネットワークが進化(設備が徐々にアップグレード)することになります。我が国での4Gの面的カバーは99%であり、5Gへの移行がしやすい状況です。
しかし図4のようなNSA方法での移行となるため、5Gコアネットワークであるスタンド・アロン(SA)に移行されるまで5Gのメリットとしては、高速大容量のみに限定されることになります。
図4 NSA方式
地方を重視した5Gの全国ネットワーク整備の指針が出されているものの、どのように基地局を開設していくかは、ある程度需要見合いになると考えます。このため、地域や世帯によっては、5Gサービスが提供されるまでに、ある程度の時間を要する可能性があります。
やはりネットワーク整備が行われるのを待つしかないのでしょうか。
都市・地方を問わず、地域限定で誰もが5Gシステムを構築できる「ローカル5G」の導入
2024年に国土の隅々まで5Gの基盤設備を整備し、需要に応じて速やかなサービス展開を行っていくことになっていますが、この全国展開には一定の時間を要するため、企業が自ら柔軟に5Gを利用したい場合は、個別に5G免許を取得して「自己の建物」あるいは「自己の敷地内」で構築することで、5Gが持つ高速大容量、低遅延、多数同時接続の特性を利用することが可能です。携帯通信事業者の帯域とは別に、4,5GHz帯および28GHz帯の一部をローカル5G専用帯域として、事業者に割り当てされます。
また企業の所有者からローカル5Gのシステム構築を依頼された通信企業でも構築が可能で、その場合その通信企業がローカル5Gの免許を取得できます。すでにNECや富士通、パナソニック、東芝がローカル5Gを使った「スマート工場」サービスへの参入しています。
ローカル5Gの利用メリットとしては下記の3点があると考えます。
ローカル5Gのメリット
1)携帯事業者によるエリア展開が遅くなる地域において、5Gシステムを先行して構築可能
- エリア限定の免許を得て誰でも5G基地局等を開設し、早期に利用を行える
2)使用用途に応じて必要な性能を、柔軟に設定することが可能
- 自前で特性に応じた柔軟な性能やサービスをカスタマイズできる
3)他の場所の通信障害や災害などの影響を受けにくい
- 限定されたエリア(建物内、敷地内)での利用となり、サービスエリア外での通信障害や災害などの影響を受けにくい
ローカル5Gは2020年にスタートしたサービスであり、コスト面で不透明な部分がありますが、いずれにしましても、できる範囲で工場のスマート化を検証しながら、工場内の生産性向上を図っていく必要があると考えます。
また、工場内のスマート化を図りつつ、収集される情報と顧客や社会のニーズと照らし合わせ、顧客への付加価値サービス提供へ展開するビジネスヒントの検証を行っていくことで新規事業の創出を行うきっかけになると考えます。
新規事業の創出
- サブスクリプション型による製品のサービス提供(モノからコトへ)
- インターネットを介した情報にもとづく、実績フィードバックや予知保全
- 設置機器に対して、インターネットを介した通じたファームウェアの更新
- 機器使用状況に応じたサプライ品のタイミングよい手配・配送(リカーリング)など
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最後に
最近、商談時に「製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入したら何をすればいいのか?」、「他社はどのようにDXに取り組んでいるのか?」という質問を受けることが多くなりました。情報としてお伝えすることはできますが、各社のこれまでの強みや特性を活かして、自社内で検討・検証しながら、競争上の優位性を確立することが重要になります。
コロナショックにより、全世界的に社会構造が加速的に変化している今、企業はこれからの市場変動・市場変革に備えなければいけません。5Gサービスの利用を検討する上でDXを推進する目的を明確にし、自社における生産性向上や価値創造について再度考えてみてはいかがでしょうか。
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