商社・卸売業は、取引形態や商材が多種多様なため、最も業務改善が難しい業種のひとつとされています。業種を問わず、業務効率化の切り札として基幹システムが注目を集めていますが、商社・卸売業向けの基幹システムにはどのような機能が求められるのでしょうか。
商社・卸売業が抱える課題
商社・卸売業の業務は、手作業ばかりでシステム化には程遠いなどと言われています。商社・卸売業はどのような課題を抱えているのでしょうか。
手作業中心の複雑な業務
独立行政法人情報処理推進機構による「IT活用に関する実態調査」によれば、大手企業の売上高に対するIT投資額の比率を見ると、機械器具製造業で0.90%、重要インフラで1.41%、企業全体の平均値は1.10%となっています。
これに対し、卸売業では0.48%となっており、これは建設・土木業の0.38%に次いで低い数字です。
・参考サイト:https://www.ipa.go.jp/files/000023617.pdf
このように商社・卸売業でIT化が遅れている背景には、商社・卸売業特有の「手作業中心の業務」があると考えられています。
商社・卸売業では、現在でもFAXが受発注の主要な手段として活用されています。手書きのFAXを自社のデータフォーマットに変換して保管することが大きな負担であることは容易に想像できます。
手作業で行われた注文をさらに手作業で処理すると、人的なミスが発生しやすく時間も取られる一方、あえてデータ化するよりは早いために手作業が減りません。
また、取引先により書類に使用するフォーマットが異なるだけでなく、受託販売・レンタル・リース取引など販売形態も多いため、手作業で個別最適化する傾向にあります。
業務の改善が難しい
商社・卸売業は業務改善が難しい業種だと言われていますが、大きな理由の一つが、商社・卸売業はメーカーが生産した商品を調達し、小売業へ配送する中間業者であることです。
例えば、流通に大きな影響を及ぼす特売が行われる場合でも、商社・卸売業者には情報の共有がされずに、特売日直前に情報が入って大慌てすることは日常茶飯事です。
シーズン品も同様で、生産性やコストを管理する基準がないために、販売予測を立てて売り切る仕組みがなく、商社・卸売業者はメーカーと小売業の間で振り回されているのが現状です。
多くの商社・卸売業者で目の前の業務が優先されるため、KPI(重要業績指標)の設定や内部統制、リスク管理を踏まえた業務設計を行うまでに至っていない企業もあります。
商社・卸売業の基幹システムに必要な機能一覧
販売形態も多く、標準化が難しい商社・卸売業の業務ですが、どの企業にも共通する機能というものは存在します。これらを商社・卸売業の基幹システムに必要な機能として紹介します。
受注・出荷に関する機能
「受注したら出荷指示をし、出荷が完了したら実績を記録する」という受注・出荷を同時に入力する機能は、商社・卸売業の基幹システムとして必要です。
業務改善を行うには、この受注・出荷の流れを統一したフォーマットを使って確実にデータで記録に残すことが重要です。基幹システムはこれらの情報を確実に管理する役割を担います。
在庫管理機能
在庫を持つことはコスト増に直結するため、基本的には在庫は持たないようにしている取引が中心の企業も、実際にはリードタイムを最小化するために、商品を在庫としてストックすることがよくあります。
ただ、同じ商品であっても仕入れの時期や取引先が異なると、仕入れ値や諸掛(送料等の諸費用)も変わってくるため、在庫を抱える場合は、ロット単位に分けて個別に管理することが望ましいです。
商社・卸売業の基幹システムに搭載する在庫管理機能は、個別在庫管理に対応している必要があります。
貿易に関する機能
商社・卸売業だけでなく他業種においても、海外との輸出入取引を行わない企業の方がまれでしょう。商社・卸売業の基幹システムでも貿易に関する機能が充実している必要があります。
例えば、輸出入取引に関する諸掛費用を入力できる利益管理や、船の積み港・揚げ港・仕向地などの情報を管理する船腹管理の機能が求められます。
流通加工に関する機能
富士通マーケティングの「産業財の卸売業における経営戦略やIT化推進状況に関する実態調査」によると、従業員300人以上の企業の46.8%が、流通加工に取り組んでいます。
メーカーから仕入れた商品をそのまま販売するのではなく、商品Aと商品Bを組み合わせたセット販売商品にしたり、発注最小ロット100個の商品を小分けにして、10個入りの商品として再構成したりと、流通の工程で商品を加工するのが「流通加工」です。
仕入れた商品に付加価値をつけることで、顧客満足度を高めたり、他社と差別化したりする目的があります。今後も流通加工に取り組む商社・卸売業は増加していくと見られています。
流通加工するためには、加工指示や加工完了を記録しておく必要があります。商社・卸売業の基幹システムでも流通加工に関する機能は必要不可欠と言えるでしょう。
商社・卸売業向けERPソリューション「GRANDIT」とは
商社・卸売業では、業務改善が困難とされていますが、このような商社・卸売業に特有の課題を解決する基幹システム「GRANDIT」が注目を集めています。「GRANDIT」は、販売・調達在庫、生産管理など、商社・卸売業にとって必要な機能を結合した設計となっています。また、13社からなるコンソーシアム方式で製品機能を拡充し、ノウハウを製品にフィードバックしているので、さまざまな業種業態に適用しています。
この「GRANDIT」について詳しく紹介します。
業務の負担を軽減するさまざまな機能を用意
販売形態や取引先の多さが商社・卸売業の業務改善やシステム化を妨げる要因のひとつであると説明しました。
「GRANDIT」は、扱う商材が多岐にわたることを前提として設計された基幹システムで、国内取引や海外取引など様々な取引形態にも対応しています。個別在庫管理をすることもできます。
企業向けの基幹システムには様々なサービスがありますが、多くはあらゆる業種に対応することを目的として設計されているため、船積管理・個別在庫管理・流通加工といった商社・卸売業務に特化した機能は搭載していません。
これら商社・卸売業務に特化した機能を「GRANDIT」は標準搭載しており、業務に関するあらゆる情報を一元管理することで、ミスを誘発しがちな手作業から開放されます。
豊富な導入実績
以前は製造業向けの海外製基幹システムを使用していたものの、商社・卸売業向けの機能不足のために「GRANDIT」に乗り換えた企業が株式会社アクロス商事です。
金属関連原料・溶材・製紙用薬品・化学品・合成樹脂・半導体関連材料など多様な商材を扱う商社であるアクロス商事では、以前に使用していた海外製基幹システムを自社の業務形態に合わせるために膨大なカスタマイズを施して使用していたと言います。
純国産基幹システムである「GRANDIT」は、国内商社に必要な機能が標準で揃い、かゆいところに手が届くシステムと社員からも高評価を得たそうです。
また、商社・卸売業だけでなく他業種でも、「GRANDIT」の導入が進んでいます。ANAの航空座席予約端末の保守や通信ネットワークを運用するANAシステムズ株式会社も、「GRANDIT」を採用したソフトウェア企業のひとつです。
ANAシステムズで扱う案件は、LANケーブル1本の販売から、ANA空港事務所の開設まで規模が幅広いという特徴がありました。さらに、日本のみでなく海外とも取引があるため利用通貨は多種多様です。
「GRANDIT」を採用した大きな理由は、「GRANDIT」の機能の多様さだったといいます。例えば、見積・発注/仕入・在庫・債権・債務など、「GRANDIT」はANAシステムズが行う業務の大半の機能を備えており、ほぼカスタマイズすることなく使用可能だったそうです。
その他にも「GRANDIT」を採用した企業として、株式会社JTB情報システムやNTTファイナンス株式会社が挙げられます。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
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まとめ
今もFAXでの注文処理が主流などシステム化にはほど遠い業種ともされる商社・卸売業ですが、「GRANDIT」のように商社・卸売業の業務改善に特化した基幹システムの登場で、急速にシステム化・業務効率化が進みつつあります。
業務改善が難しいと諦めかけていた企業においても、基幹システムの導入を検討する時期が来ています。